TSした俺は、ヤリチン時代に堕とした妖達に攻守一転、百合百合される。   作:ホクホクなタイプのポテト

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ロリコン。

 

 

 

「たっだいまぁ〜!」

 

 

 ヤツフサの陽気で暢気な挨拶が玄関に響く。家に入るなり狼化を解除したため、すっぽんぽんな産まれたままの姿であるが、恥じらいは一切感じられ無かった。

 其の裸族特有の仕草に、リンドウは頭を抱えた。

 

 

「ん……?また誰か来てんな……。」

 

 

 裸のまま廊下を駆けて行ったヤツフサの後ろで、リンドウが気づく。三和土に並べられた下履きの中に、普段とは異なる点を見つけたのだ。宛ら間違い探しのような事でも、見慣れたリンドウにとっては違和感を抱くには十分だった。

 

 ユキハレの下駄、男のシューズ、ヤツフサの履いて来たブーツ、そして見慣れぬスニーカー。

 

 男の物では無く、大きさから、ヤツフサの用意した物とも考え難い。誰か来ていると考えるのが無難であった。

 

 

「今度は誰だ〜?」

 

 

 リンドウは居間の障子を一息に開ける。

 中に居たのは行儀良く座り、ユキハレによって出されたであろう茶を飲む女。そして女を訝しむ裸のヤツフサであった。

 

 

「わぁっ!本当に女の子になっちゃったんだね、リンドウ。」

 

 

 障子が引かれた事で、目的の人物が入って来た事を察知したのだろう。女はリンドウの姿を視認すると、何が楽しいのやら、愉快そうに騒ぎ立てる。

 リンドウもリンドウで、来客が誰であるかを把握すると、「また面倒臭い奴が来たな」という具合に溜息を漏らしたのだった。

 

 

「さぁ、そんな所に突っ立っていないで座りなよ。僕の隣が空いてるよ?」

 

 

 絶えず笑みを浮かべる女は、促すように、自身の隣を軽く叩いた。『当然座るよね?』という圧を感じたリンドウは、またも溜息を溢し、有無を言わさぬ女の威圧感に折れる。

 

 女の隣にどっかり腰を下ろした元男は、本題に入った。

 

 

()()()()、何の用だ?」

 

 

 女の名は、金切(カナキリ)——。

 

 金糸のような狐色の髪を、ボーイッシュに短く切り、彼女の高い身長と合わせると王子様然とした雰囲気すら感じさせる。キリッとした瞳、其の瞳に寄せられ近付けば、人々を惑わしてしまうような淫香が鼻腔をくすぐった。

 

 カナキリは平安の世から生きる大妖、今も尚祓い屋に祓われぬ九尾の狐だったのだ。

 

 

「つれないなぁ。リンドウ、君を心配して僕は駆けつけたんだよ?」

 

 

 カナキリはめそめそと泣き真似をして、リンドウの良心に訴えようとする。しかし、元男は鬼畜も鬼畜、女の涙等見飽きていて、真似事等は通用しない。

 

 目元を抑える狐を尻目に、リンドウはユキハレによって出された、お茶を飲む。畳の匂いと日本茶の香り。リンドウは散歩から帰宅し、漸く一息ついたのだった。

 

 

「もー!意地悪だね、君は。せっかく可愛くなったのに、眉間に皺が出来るよ?」

「牛さんの妖怪かな?」

「もー!……なんてね。」

 

 

 リンドウの茶々に乗ってくれるカナキリ。彼女は案外ノリが良かった。千年以上、人間に紛れて生きて来た為か、世渡り上手の妖怪だったのだ。

 

 

「心配してたのは本当だよ?ユキハレから写真が送られて来たりしたら、誰でも駆けつけるさ。」

「だから、ウチも誰よりも速く駆けつけたじゃん。」

 

 

 リンドウの身を気遣うように、優しく告げるカナキリ。そして、今迄黙って見ていたが、賛同するように割り込んだヤツフサ。

 彼女達はフットワークの軽さ、ナンバーワン、ナンバーツーだったのだ。

 

 

「どうしてこんな姿になったか、お前ならわかるんじゃないか?」

「うーん……。」

 

 

 長く生きるカナキリに、リンドウは男に戻る手掛かりを求めて問いただす。

 

 

「これは、呪術だね。」

「じゅじゅつ?」

 

 

 あっさり答えたカナキリに、少女はオウム返し、阿保面を晒して見せた。

 

 呪術という言葉を知識として知りはすれど、実感は乏しい。我が身をもって受けたリンドウであっても、途絶えた奇跡にも似た秘術を「あぁ、そうか」なんて納得してしまうのは難しかった。

 

 

「カナキリは、解く方法知ってるか?」

「残念だけど、そっちの道は詳しくないんだよね。花子さんであれば、或いは……。」

 

 

 カナキリは妖術に長けた、妖怪の中の妖怪だった。だからこそ、呪術等という不確かな力には頼らず生きて来た。しかし、其れが仇となったのだ。千年以上生きた大妖も、何でもは知らない。知っている事だけなのだ。

 

 

「花子か……。行ってみる価値は有るか……。」

「僕の方でも調べておくよ。」

 

 

 少なくとも、リンドウは男に戻る気持ちは有るらしい。男が前向きである事を知ると、カナキリも協力せずにはいられなかった。此れが惚れた女の弱みか、と彼女は自身を鼻で笑った。

 

 知りたい事は知れたと満足するリンドウに、カナキリは話し掛ける。

 

 

「でも、すっごく可愛くなったよね。髪なんてふわふわだし、目もぱっちり。お姫様みたいだよ、リンドウ。」

「やめれ。」

 

 

 カナキリは、元男の変わり果てた頬を捏ねくり回して、少女の赤子のような肌を味わった。此の為に、態々隣に座らせたのか、逃げ場の無いリンドウはされるがままになっている。

 

 実際、リンドウの姿は、目付きの悪さを除いてみれば、お姫様のようだった。

 胡桃色のふんわりとした髪、精一杯開いても小さいお口。長い睫毛が光っては、宝石のように煌めいた。

 

 

「本当に可愛いよ、リンドウ。何だかミルクみたいな甘い匂いがする。髪、梳いてみてもいい?」

「……勝手にしろ。」

 

 

 カナキリの相手に飽きたリンドウは、口をぽかりと開けて、欠伸する。了承を得たカナキリは、遠慮無く少女の髪に触れ、手櫛で梳いていく。

 小動物の体毛を撫でるように、優しく、優しく進めるカナキリは、「すごい。ふわふわだ。すごい。」と感嘆の声を漏らした。

 

 

「んっ……。」

 

 

 カナキリが近付き過ぎた為に、彼女の吐息が少女の耳とぶつかった。幾ら“最強だった„男でも、姿が変われば敏感な部分くらい出てくる。

 

 

「やめろ!もう終わりだ!」

「えー?恥ずかしがってるの?大丈夫、可愛かったよ?」

 

 

 リンドウは自分の口から妙な声が漏れたのを恥じ、外方を向いて抵抗する。カナキリはカナキリで、元男の其の仕草を可愛く思い、揶揄った。

 

 何時迄も離さないカナキリに、少女の力で躰を押せば、案外すんなり距離が取れた。しかし、其のもたもたによって、体勢を崩したリンドウは、押し倒す形で共に倒れてしまう。

 

 

「女の子になったとはいえ、大胆なのは変わらないんだね。」

「お前、最後腕引いたろ……。」

「バレた?」

 

 

 二人の吐息がぶつかるような顔の距離でも甘酸っぱい青春みたいな空気は流れない。カナキリは悪びれもせず、てへっと笑う。此の王子様フェイスの甘い顔から、時折見せるギャップが人々を惹きつけて来たのだろうとリンドウは思った。

 

 何事も無かったかの如く起き上がったリンドウを、カナキリはすかさず捕らえた。其のまま少女脇に手を入れて自身の膝の上に乗せる。

 

 

「ほんと……やめてって……。」

「へ……?」

 

 

 リンドウを膝に乗せた後も、揶揄うように耳元を責めたカナキリ。しかし、彼女が予想していなかった反応が返って来ると、今度は彼女が驚かされる事となった。

 恥ずかしそうに、しおらしい顔をするリンドウ。けれど、上から見下ろすような状態のカナキリからは少女の表情までは見えなかった。其れでも、少女が下を向いては口を閉ざしている事くらいは判る。

 

 其れが、カナキリの心の奥の何かに触れて、何とも言えない感情が湧き立った。

 

 

「こういうのは客の女だけにしろよ……。」

「う、うん……。」

 

 

 モジモジとするリンドウに、カナキリは生返事をする。

 

 カナキリは、現在コンカフェ嬢として人間社会に溶け込んでいた。其のボーイッシュなルックスは、女性達を虜にし、彼女が接した客のリピート率は百パーセントを誇る程。指名が続く彼女は、当然話術も秀でており、千年以上の命による技術は決して人々を退屈させる事は無かったのだ。

 

 だから、女性を相手取れば、カナキリ程の人物はいなかった。

 

 しかし……しかし、今の彼女の様子は如何か。目の前の少女に釘付けにされて、生娘みたいな反応をしている。

 

 

「……何してんだよ。」

「ごめん、ちょっとヤバいかも。これ、凄い。そう、そうなんだ……。」

 

 

 ちょうど良い位置に在る少女の頭に顔を埋めて、カナキリはブツブツと言葉を紡ぐ。

 

 

「——これが、“ガチ恋„なんだね。」

 

 

 職業柄、何度も自身に向けられた言葉。しかしながら、妖怪の彼女には恋なんて知った感情では無かった。強いて言えば、リンドウとの其れがそうであったかも知れないが、男との関係は三十路の男女のような爛れた関係だったのだ。

 

 だから、知らなかった。恋なんて。其れもガチ恋。

 

 

「なに意味わかんねぇ事言ってんだよ!てか、顔退けろ!」

「ごめん、ごめんね❤︎でも、無理かも❤︎凄い、本当に凄い❤︎リンドウ可愛い❤︎此れが推しなのかな?僕、今の君が居れば他には何も要らない❤︎❤︎❤︎」

 

 

 恋は時に、人を狂わす。其れは妖怪変化であっても同じ。

 

 リンドウを大事そうに抱きしめたカナキリは、離そうとしない。何時の間にか変化も解けて、彼女の狐耳と九尾が露出している。彼女は其れに気付きもしないで、リンドウに夢中といった感じだ。

 

 

「んくっ……!おへっ……!?……おい、いい加減止めろ!!このまま祓ってもいいんだぞ!」

 

 

 何時しか九尾も一緒になって、『だいしゅきホールド』といった具合に、離すまいと少女の躰に絡んでいた。

 

 リンドウは、堅牢な尻尾の束縛を受けて、絡め取られ、実力行使で逃れるしか無いと考える。

 

 

「無理❤︎無理❤︎今のリンドウ、多分男の時の十分の一。いや、百分の一くらいかな?此れなら僕にも勝ち目がありそう❤︎❤︎❤︎」

 

 

 ——リンドウ自身、分かってはいた。

 

 姿形、性別さえ変わった躰に、男としての魂が着いてきていない。少女の体躯は全力を引き出せるだけの器では無いという事を。

 

 

「このワンピース、ヤツフサから貰ったのかな?悔しいけど、似合ってるね。こんな事なら僕も何か買って来れば良かった❤︎」

「俺は飯事遊びの着せ替え人形じゃねぇんだぞ!?」

「あぁ❤︎その可愛い声で怒るのも可愛い❤︎」

 

 

 未だ少女の躰を離さないカナキリは、後悔する。今のリンドウを自分の好みに合わせた服だけで着飾る事が出来れば、何れ程幸せだろうか。夢見るだけで頬が緩む光景に、彼女は心を躍らせた。

 

 

「今度一緒に買いに行こうよ❤︎ね?ね?」

 

 

 カナキリは提案する。デートの約束を取り付けたいのだ。最早彼女の気持ちは爆発していた。

 此れが客と店員の間柄であれば、厄介客どころでは無い。友人間であったとて、一方的なクソデカ感情は、受け手はドン引き間違い無しだった。

 

 

「僕が全部買ってあげるから❤︎お金はいっぱい有るんだ❤︎店の給料も、キャッシュもクレカも全部ぜんぶあげるから❤︎」

 

 

 古くから、カナキリは男に尽くす大妖だった。尽くして、尽くして、尽くし殺す。其れが彼女の妖怪としての本質。

 

 堕落させて、生きる力さえ搾り取ってしまう甘い力。

 

 其れが、如何か。彼女は貢いで、貢いで、貢ぎ。尽くして、尽くして、尽くそうとしている。——さながら貢ぎマゾのように。

 

 

「シフトも増やす❤︎客もいっぱい取る❤︎売り上げは全部、リンドウにあげるから❤︎」

 

 

 カナキリの濁った瞳は、最早リンドウの事しか映さない。長く人間の中で鳴りを潜めていた彼女も、人間なんて使い捨てでしか無いような言い方さえしている。

 

 今の彼女には、リンドウしか要らないのだ。

 

 

「——だから、僕に尽くさせて。僕の小さなお姫様。」

 

 

 彼女は王子様に在らず、腹心の騎士に在らず。ただただ狂恋する妖怪変化でしかない。

 

 

「いらね。」

「えー❤︎貰って貰って貰ってよ❤︎」

 

 

 しかし、リンドウは興味無さそうに、そう吐き捨てた。其れでもカナキリは駄々っ子のように押し付ける。

 

 

「……ちょっと気持ちが昂り過ぎてる❤︎僕らしくも無くグイグイ行っちゃってる❤︎」

 

 

 吐息を荒げて、冷静になるカナキリ。其の吐息もリンドウの頭部に直撃しているが、少女は黙って聞いていた。

 

 

「今日はもう帰るね❤︎ちょっと落ち着きたいかも。」

 

 

 突然帰れを告げたカナキリは、リンドウを優しく下ろし、満面の笑みを浮かべて手を振った。残された少女は嵐が去ったような感覚さえ覚える。

 

 

「なんだったの、あれ。」

「さぁ?」

 

 

 真っ裸のまま寝転んでいたヤツフサが、いきなり口を開いて疑問を述べる。リンドウも答えは得ないままだった為、よくは判かっていないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





 いっぱい評価・感想ありがとうございます。激動だったね。

 お礼です。パリピッピテンアゲな八房を描きました。

【挿絵表示】



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