管理人、職員に転生   作:ナチュラル7l72

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コーヒー

「こんなところに居ていいのかい?君職員だよね~?」

 

デスクの上には散乱した書類と湯気立つマグカップが置かれていた。

それに手を伸ばし口を付ける。かつて飲んでいた青いパッケージのものより何倍もまずかったが時々飲まされるエビ共のジュースよりは何倍もマシだった。

 

ごちゃごちゃと喚かれる無線を外し、着ていたラブを投げ捨てる。壁に張っ付き、謎の赤いジェル状のものをこびりつけながらずり落ちていく。

 

「いいんだよ。命令なんざ破ってなんぼさ。今の幻想体はどうせ俺じゃなくとも作業できる奴らだけだからな」

 

26日目、福祉チームが解放され早速俺はコーヒーを飲みに(サボり)ここへ来ていた。

ループ回数が浅い頃はネツァクのところへ行きエンケファリンを雨のように浴びまくっていたがその高揚感は死後...ループ後へは続かなくむしろ廃人状態の記憶ばかりが残って後味が悪かったのでやめてしまった。確かに気持ちが良かったが好き好んで幻覚幻聴を見たわけではないのだ。それにその快楽はもう忘れてしまった。

 

だがそのコーヒーはかつての苦みを思い出させ幾分か俺にカフェイン中毒を提供した。

 

「よくそのスタンスで管理人やアンジェラ様に終了させられないね~」

 

「こう見えて俺クソ強いからな。俺がサボるより俺を殺した時の不利益の方がでかいから奴らは俺をどうすることも出来ないのさ」

 

鼻で笑いつつコーヒーを一口。うまい。口角が上がりかけ...思い出す。

 

言ったことがある。何万回中何度目のループかなんてもう覚えていないが既視感が確かにあった。

 

だからその時よりも少し状況を変化させようと飲み干したマグカップをズドンと壊れない程度に叩きつけた。

バタフライエフェクトなんて原理もわからないものを信じているわけではないが俺より頭がいい連中が声高にその存在を叫んでいるのだ。きっと存在しているのだろう。

 

未だに俺はループを抜け出そうともがいているらしくその可能性にかけループを抜け出す未来に変わることを祈っていた。

 

変わるはずもない。それを誰よりも知っているというのに。

 

「それに、時々記憶を消し飛ばされてる管理人より俺のが造詣深いからな。適当に助言するのもかなり役立ってるはずだぜ?」

 

「…?それはどういう」

 

「あっとこれは俺の話だ。なんでもない」

 

蒼い塗料を縁に塗られている眼の前の立方体のような形をしたセフィラは無い表情を疑問に変え訝がる。どうせこいつらも管理人の崩壊と共に記憶を消されるんだ。伝える意味など無い。

 

「オリヴァーさん!」

 

扉が開かれでかい声で叫ぶのはコントロールチーム所属の…。

………。

 

まああいつだ。そいつが俺の姿を確認し声を大にする。

 

「O-01-04が収容違反を起こしました!既に死傷者が出ています!」

 

誰だよそいつ。と口にしかけた所で壁を貫通して黒ずんだピンク色の太い光線が突き抜けデスクを破壊する。

 

誰にでも投げキッスをするクソビッチの姿が頭に浮かび虫唾が走る。なんでこんな面倒くさいクソアブノーマリティWOW筆頭みたいなやつを収容したのか。俺は記憶力がなかったから管理人の時はクソ鳥よりこっちの方が嫌いだった。何度処刑を忘れて施設を壊滅させられたか…

 

そういえば、今回のループは管理人の自我崩壊から最初のループだったな。だから憎しみの女王じゃなくてO-01-04なんて面倒な呼び方されてるのか。

 

「…他の奴はさっさと中層から離れろ。オフィサーは処刑弾使って…ってまだ懲戒チーム開放されてなかったな。なら否が応でもオフィサー引きずってここを離れろ」

 

「い、いえでも管理人からそんな指示は…」

 

「あ?てめえ今俺に殺されてえのか?今なら死体の山もクソ鳥もいねえから俺の腕はいともたやすくてめえを粉々に出来るぞ」

 

「ははいぃぃ!」

 

ここに来るときよりも速く逃げ出し扉から出ていく同僚。俺はそれを眺めつつ魂の奥底を深淵を見るように手に取る。

 

「ははは。どうやらサボりタイムは終わりみたいだね」

 

「残念ながらな。おれだって施設が崩壊していく様を見たいわけじゃない」

 

右手にミミックを精製し投げ捨てたラブはぐしゃっと踏み潰し消滅させ笑顔を皮膚のように体から出し装着する。

 

俺の魂はどうやら何万回ものループにより穢れきっているらしい。テセウスの船のように、もはや俺とは言えないいくつもの残穢が俺に入りそれを手足のように展開、収納を可能していた。要は数多の抱え込んだEGOを装備フェーズを無視して装着できるわけだが、それが良いことかはわからない。無視出来るほどに小さい彼らの叫びが幾数も重なり俺を苛立たせる。気分が悪くなる。

 

ケセドに見送られながら扉を開き外へ出る。既に何百何千と地に叩き伏せた巨大な蛇が俺をまるで敵のように憎しみの眼を向けていた。

 

対して俺はそれになんの感慨も抱かなかった。

 

人間的な見た目と手触り。されどその殺傷力は化け物に相応しい。

ならばその振り手も化け物に相違ないのだろう。俺はおおよそ人間的ではない脚力で秒もかからず肉薄し阿呆みたいに口を開け魔法陣を展開する幻想体に横撫する。

 

それだけでそいつは力尽きるように首を垂らし、そして元の少女の姿に戻る。認知フィルターで誤魔化される三頭身の幼女のような画面とはかけ離れた大人びた容姿の少女は地に伏せ眠ったように死ぬがどうせただの演出だ。最初こそなにか感傷的に受け止めていたが今じゃメタ的な面でしか見ていない。何故こいつら魔法少女はこんなにも討伐シーンが豪華なのか。もう少しその豪華さを他のアブノーマリティに分けてやってほしい。クソ鳥とかごま団子になるだけだぞ。

 

さてこれからなんと言い訳するか。今回の管理人はまだ初見だろうからな。27日目には不相応な武器防具の使用はやっぱ止めたほうがよかったか…。

 

無線が入り認知フィルター越しとはいえ一部始終を見ていた管理人からごちゃごちゃとなにか言われるがぼーっとしている俺には鳥の囀りにしか聞こえない。はあ〜っアンジェラ様よう〜お前全部記憶してんだから事前に話すとか今助言したりとかしてもいいんとちゃうんけ?毎回これについて話すの面倒が過ぎる。

 

適当な言い訳で話を切りミミックを消し防具を私服にしている崇高な誓いにする。元のチーム、コントロールチームへ戻れと指令が入るが無視してまずいコーヒーを飲みに俺は福祉チームへと向かった。

 

俺がどれだけ強かろうがまた俺は死ぬ。そして無限に同じことを繰り返し続けるのだ。

 

なににもやる気が出ない当たり、やはり俺はとっくに諦観していた。




追記:現在の日付を27から26日目にしました。恐らく27日目だと懲戒チームも開放されていないとおかしいので。
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