魔王を倒したのにウマ娘世界に転生しちゃったカズマさん   作:はははのは

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筆記試験

 ここは日本ウマ娘トレーニングセンター学園、略してトレセン学園。

 その一室である理事長室で、頭に猫をのせた子供のような見た目の女性と、緑の服を着用し、しっかりと帽子を被った女性が話している。

 

「さあ、たづなよ。今年もトレーナー試験がやってくる」

 

「ええ、そうですね理事長。……今年こそは合格者が増えて欲しいものです」

 

「ああ、そうだな」

 

 ―そういって彼女は、机の上の、願書に目を落とす。

 

「今年もこれだけ、100人以上が試験を受けるというのにな。果たして受かるのは何人いるのか」

 

「……決して人数を絞るためのテストではないのですが……なにせ生徒のウマ娘の皆さんの人生を預かるといっても過言ではない、それだけ責任が大きい仕事ですからね。生半可な覚悟や知識では合格させるわけにはいきません」

 

 そう、トレーナー試験は学校の入試等とは違い、人数制限を設けているわけではない。ただ、一人のウマ娘の人生を左右するほどの仕事であり、重大な責任が伴う。そのため、トレーナーとしての深い知識はもちろん、ウマ娘と言えども思春期の少女たちであるので、そのあたりも加味して慎重に人選せざるを得ない。

 結果、トレセン学園に所属するウマ娘とトレーナーとの人数が釣り合っておらず、トレーナーは常に人手不足なのである。

 

「それはもちろんそうだ。……そうなのだが、どうにかならないものなのだろうか。トレーナーの人手不足のせいで、デビューできない生徒や、トレーナーが名前だけを貸している生徒の存在など、問題は多い」

 

「そのことについても、トレーナーさんたちの人数が増えないと解決は厳しいかと。やはり、合格する方が増えることを願うしかないですよね」

 

「期待ッ! 是非頑張ってもらいたいところである!」

 

「あ、そうです理事長。―この方なんですけど」

 

 そういって緑の服の女性―たづなは、一枚の願書を取り出す。

 

「む? これは?」

 

「はい、この方なんですけれど、少し見ていただけませんか?」

 

 そう言われて、理事長はその願書を読み始める。

 

「何々…………えー、名前、佐藤和真、年齢は……15歳か。中学を卒業してすぐに試験を受けるとは、年齢的に可能ではあるが。……大丈夫だろうか?」

 

「ええ、まあそれもあるんですけど……この方、失礼ですが少し問題があるように思えまして」

 

「疑問ッ! たしかに何かこう……小物臭いというか、ヘタレな感じがするというか……そこはかとなくショボい感じはするが、そこまで気にする程のことだろうか?」

 

「いえ、確かにそれもそうなんですけど、それだけではありません。先日、願書を出された方たちの下見をするということで、全員の方を少し観察に行ったのですが―」

 

「全員をたづな一人でか? かなり大変だったのではないか?」

 

「それなら走ればすぐで―

 んんっ、と、ともかく行ってきたんですけども」

 

「お、おう。……それで?」

 

「はい。そこで彼を少し見ていたところ、なにやら嫌な感じというか、雰囲気をしていたというか。心配しすぎでしょうか」

 

「理解ッ! たしかに気にしすぎかとは思うが、たづながそこまで言うのなら。もし彼が筆記試験に合格した場合は、私がッ、直々にッ、面接をしようではないかッ!」

 

「ありがとうございます、理事長。手間をおかけしますが、その時はお願いしますね」

 

「了解ッ! では、今日の筆記試験の結果を楽しみに待つとしよう!」

 

 

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「ぶえっくしょいっ! 

 んー、誰かが噂でもしてんのかなあ……俺のことを話題に出すほど、仲がいいやつなんていたかぁー?」

 

 ……悲しきボッチの性である。

 

 さて、今日はトレーナー試験、筆記試験の当日である。

 カズマはトレセン学園の正門まで来ていた。

 

「やっぱ周りの人たちはみんな年上だなぁ。緊張するぅ」

 

 当たり前だが、中学卒業とともにトレーナーになろうと試験を受ける者は少数派である。当然、トレーナー育成の専門学校等を卒業し、受けに来る者が大半で、中には何年か浪人している者もいることだろう。

 そんな中で中学を卒業したばかりの15歳の少年は当然浮いていた。

 そこに―

 

「あら、まだかなり若いですね。あなたもトレーナー試験を受けに来たんですか?」

 

「ええ、まあ」

 

「私、桐生院って言います。お互い頑張りましょうね」

 

 カズマ少年に話しかけた女性がいた。少し青みがかった短めの髪をハーフアップにしている。顔はやや童顔で、小さい。

 

「あ、俺は佐藤って言います。そうですね、合格できるように頑張りましょう」

 

 長いボッチ生活の弊害か、若干上ずった声を出してカズマ少年は応えた。

 

「それにしてもそんな年で試験を受けるなんて、何か理由でもあるんですか? 

 あ、言いたくなかったら言わなくても大丈夫ですよ」

 

 おっと。カズマ少年、少し困った質問をされたようだ。まさか年上のお姉さんウマ娘といい感じになってキャッキャウフフするためだとは言えないだろう。

 

「あー、えっと、そのー、……故障で走れなくなるウマ娘を無くしたいんです。そのためにトレーナーになりたいんです。……もちろん俺一人ではできることは少ないと思いますけど。」

 

 願書に(それっぽいことを適当に)書いたことを言ったようだ。

 

「目標を持っているのはすごいですね! ……私は両親がそうだったので、両親に勧められたのもあって、自分の目標というものを持っていなくて……私より若いのに立派ですね」

 

 なんか適当にでっち上げただけのことを言っただけなのに、すごく感心されたようである。そのせいで気まずくなったカズマ少年は、

 

「そ、そうですね、あ、それじゃあそろそろ会場に入るので。またお会いできれば……」

 

 とりあえず話を切り上げて逃げることにしたようだ。

 

「ええ、それでは。お互い二次試験に行けるといいですね」

 

 

 

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 ……さっきの人と話したとき、俺挙動不審だったよな? 

 はぁー、ボッチな俺には初対面の女性とまともに話すなんて無理だって。

 おっと。試験監督の人が来た、気持ちを切り替えよう。俺は絶対この試験を受かって『トレーナーになって年上の担当ウマ娘といい感じになる計画』を達成してやるぜ! 

 

「えー、それでは時間になりましたので、試験を開始いたします。

 用意―始め!」




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