のらりゆりり 作:ゆかマキの百合作品
梅雨時期の独特の湿気と蒸し暑さが残る今日この頃
私は長ズボンを履きチェストプロテクターを着込みその上にプロテクター入りの上着を羽織り関節の位置のプロテクターを調節
その後、ショルダーバッグを腰に付けてヘルメットを小脇に抱えて家を出てガレージに
シャッターを開けて中の相棒に鍵を差し込み回してハンドルのロックを解除する
ガレージから相棒を外に出しキルスイッチ下の細長いスイッチを軽く押し1,2秒押したままでいるとエンジンがかかる
ヘルメットを被り顎紐を止めてグローブを付ける
エンジンをそのままにし暖気をさせる
最後に家の鍵をかけに動き出す
『彼女が帰ってきたら家の鍵をまた開けるのが面倒だから』と、
何時も最後にしてしまう
合鍵も鞄に入れて『何時でも渡せる様に』と
未練がましいにも程がある
近くで電車の音がする
北陸鉄道の石川線
8月には廃線か維持かのどちらかが決まる
もし……
……この家に帰って来るのなら石川線に乗って帰ってくるのかしら……
電車の音が聞こえる度にそう思って、しまう
同棲生活が始まる寸前の所でマキさんは「バンドの仲間と共に東京で挑戦してみないか」と言われて悩むマキさんを
私は笑顔で送り出した
当日、金沢駅のホームで北陸新幹線 かがやき
その車窓の向こうでバンド仲間と楽しげに過ごすマキさん
新幹線が出発し姿が見えなくなった瞬間、
膝から崩れ落ちホームに両手を付き泣きじゃくった
駅の職員さんに声をかけられその場から駆け出した
職員さんの困惑するような声を振り切る様に
あの日以降ずっと未練がましい日々を送っている
そう駅から人々が降りてきて電車が出発し踏切の音と混じり
『がやがや…』と少し活気づくが直ぐに人が居なくなりまた元に戻る
そんな光景の中に髪の長い金髪でギター等の大荷物を背負った彼女
そう、丁度、コッチに向かってくる彼女の………、…。
相棒のエンジン音と彼女の足音が混ざる中、一言
「ただいま、ゆかりちゃん」
駆け出し抱き着き、彼女ー マキさんが一言
「…硬ッ?!…え?まな板みt
3年ぶりの再会は皮のライダーグローブによる平手打ちでした
♢♢♢
「いや、ほんとにゴメンてゆかりちゃん」
「……ツーン」
「久しぶりのツーン!」
「……ッ」
無言で睨み両手で両肩を掴み体を後ろに逸らせば
マキさんは焦った様子で
「バ、バイクのヘルメットでの頭突きは不味いって!ゆかりちゃん!ゆかりちゃんっ!」
本気で焦った声で止めて来たのでやめて鞄に手を突っ込み目的の物を確保しマキさんに押し付け
「この家の鍵です
それとお泊まり会した時と配置は変えて無いので勝手は分かると思います
後、私は赤男爵に行ってこの子の健康診断を見て貰いますので1時間位で帰ると思います」
そう言いつつ相棒に跨りヘルメットのスクリーンを下ろす
「それと、おかえりなさい」
そう言いつつスタンドを畳まずに1速に入れ
……スンッとエンジンが止まる
『バイクを発進させる時はスタンドを足で払って収納した後に
1速に入れましょう
そうしないとエンストします』
と私の事を『ホタルちゃん』と呼ぶ教官の指導が頭に過ぎる
なんという凡ミス……
私は相当浮かれているのを自覚すると共に
ギアをニュートラルに入れてからエンジンをかけて
スタンドを払い収納し1速に入れる
マキさんの顔は絶ッッッッッッっ対に見ない
暖かい目線が痛い……
無言で発進し目的地に向かって駆け出した
♢♢♢
定期検診を終えてガレージに相棒を仕舞い家の中に入り
直ぐさま上着を脱ぎプロテクターを外し
「あっつ……」
とつぶやき長ズボンを脱ぎそのまま脱衣場に
その後シャワーで汗を流し下着姿で自らの部屋へ
部屋はクーラーで冷えている為、
熱いシャワーと外の気温にドライヤーで高まった体を冷ましてくれる
そう思いつつ自分の部屋の扉を開けるとベッドの上で私の名前を連呼し水音を立てる彼女の姿が
髪と服は乱れたままに私の枕を片手で抱き締めながら匂いを嗅ぎ
水音を立てつつ名前を連呼するマキさんが
……理性の糸が切れる音がすると同時に
『据え膳食わぬは女の恥』と言う謎の言い訳じみたことわざが脳裏に過ぎり去り夜伽を開始した
その日の夕飯はピザを出前し手抜きと同時にパーティとして2人で騒ぎ
翌朝、寝不足と腰痛に悩まされたのはまた別の話
星うさぎの郷には熊が出たらしいしですし
能登の赤神の当たりまで行こうかな
それとも医王山?福井の海王丸パークもいいですね…
岐阜の青い池、歴史を感じるなら関ヶ原
動物で思い出しましたが、牧歌の里も…
さて、何処に走りに行きましょうか……
そして、見た光景をマキさんへと伝えましょう…