「...朝か」
俺は昨日、ヲ級が帰った後すぐに部屋に戻り寝てしまった。
だが、昨日ヲ級はまた来ると言っていた。なぜあいつはまた来るなんて言ったんだ?
ただ単に補給をしたいためか、それとも別の目的があるのか...。
「とにかく、今考えてもしょうがないな」
こればっかりは俺ではわからない。
メタルギアソリッドのサイコ・マンティスのような力があれば、ヲ級の考えていることもわかっただろうが、いまさら願ったところでもう遅いな。
「提督、おはようございます。いきなりですが、少しお話があります」
ノックも無しに優花が入ってくる。
その姿は心なしか焦っているように見えた。
こんな朝から、ノックもせずに優花が焦って話す内容ってなんだ?
とにかく聞いてみるか。
「何があった」
「それが、数時間前からレーダーに変な反応がありまして...」
変な反応?
それぐらいで優花が焦るとは思えないのだが...。
「そのレーダーの反応がどんどん増えて行って...最終的に反応が消失しました」
「誤作動じゃないか?」
そんなレーダーの反応が増えて、
最後には消失するなんてレーダーの誤作動以外ありえない。
だが、このアーセナルについているレーダーが誤作動するのか?
「提督、様子を見に行ってもらえませんか?」
優花がそう言ってくる。
まあ、俺も少し気になるから様子を見に行ってくるか...。
「わかった、すぐに行ってこよう。場所は?」
「この鎮守府から南東に数十キロ行ったところで反応が消失しました」
本気で飛ばせばあまり掛からない場所だな。
だけど、いったいどれくらいの反応があったんだ?
「どれくらいの反応があった?」
「...軽く百くらいは...」
少し数が多いな...。
多分、誤作動だから問題ないだろう...。
誤作動なんだから...。
だけど、なんでこんな嫌な予感がするんだ...。
「提督、絶対に戻ってきてくれますよね?」
武装を装備しているときに、優花からそんな声をかけられる。
戻ってくるかなんてもう決まっているだろう。
「絶対に戻ってくるさ。それとこのことは、他の艦娘達に絶対言わないでくれよ」
何が起こるかわからないようなところに、あの子たちを向かわせることはできない。
場合によっては、取り返しのつかないことになるかもしれないしな...。
「わかりました。...提督、私待ってますから」
なかなかうれしいことを言ってくれるじゃないか。
「そうか、出迎え楽しみにしてるぞ」
そう言って俺は海へ出て行った。
「雨が強くなってきたな」
俺はいまだに嫌な予感が消えない。
どうしても俺は今日のことと、昨日のヲ級の言葉がつながっていると思ってしまう。
「ん?」
レーダーに反応があったが...これは...。
...ありえない、なんでこんなことになっている。
「数が多すぎる」
レーダーに反応しているものだけでも軽く二百を超えている。
優花が言っていたよりはるかに多くなっていた。
しかもこの反応は...。
「深海棲艦...」
レーダーの反応は確かに深海棲艦である。
しかも、このままの針路だと深海棲艦はアーセナルにぶつかるだろう。
それだけは何としても避けなくてはならない、あそこにいる仲間を傷つけさせる訳にはいかない。
あの子たちをアーセナルに置いて来て正解だったかもしれない。
もし、ここに連れてきたとしても足手まといになっていた。
「さて、止めに行くか」
俺は深海棲艦のいる場所に向かっていった。
「止まれ」
深海棲艦の先頭に回り込み、止まらせる。
最初は話し合いができるか確認するか...。
「オマエガ、ユウトカ」
そんなことを考えているうちに、向こうから話しかけてきた。
俺の名前を知っているのは、後ろの方に居るヲ級から聞いたのだろう。
やっぱり、あいつわざとアーセナルに忍び込みやがったな。
とにかく、こいつらとしゃべる意味はないから無視する。
「この先には俺の鎮守府がある。もし通りたいなら迂回して行け...」
通りたいだけなんて、絶対にそんなことはないだろうが...。
移動するためだけなら、こんな戦力はいらないだろう。
ちなみに戦力は、泊地棲鬼、装甲空母鬼、南方棲鬼、南方棲戦鬼、離島棲鬼、空母棲鬼
さらに、泊地棲姫、装甲空母姫、南方棲戦姫、飛行場姫、戦艦棲姫、港湾棲姫、北方棲姫、中間棲姫
空母棲姫、泊地空母姫。
それと、あの空母ヲ級、潜水カ級、潜水ヨ級、戦艦ル級、戦艦タ級、戦艦レ級、重巡リ級、雷巡チ級、しかも全員がフラグシップ級で、駆逐艦と軽巡、浮遊要塞と護衛要塞が数えられないほどいる。他にもいまだに見たことがない新型までいる。
もうこれは移動ってレベルではなく、明らかに鎮守府を沈めに来たとしか思えない。
というか、なんで本来海に出ることが出来ないやつまでいるんだ...。
気合か?気合で来たのか?
「ソレハ、ムリナソウダンダ」
飛行場姫がそう言い放つ。
「そうか、なら此処でお前らは通行止めだ!」
俺がそういった瞬間に、大量の艦載機浮遊要塞と護衛要塞が飛んでくる。
こういうのを打ち落とすのは『アレ』が最適だな。
「浮遊型避雷針射出、電撃ユニット出力最大」
俺がそんなこと言っている間にも大量の艦載機と浮遊要塞が攻撃を仕掛けようとするが、
もう遅い。
「放電開始!」
電撃ユニットから出た電撃が、浮遊型避雷針から浮遊型避雷針へと伝わり艦載機と護衛要塞と浮遊要塞を落としていく。
「ドウヤラヲキュウノイッテイタコトハ、ホントウラシイナ」
今度は、戦艦棲姫がそう言うと大量の砲弾が飛んでくる。
普通の艦娘なら避けるだろうが、
俺は逆に突っ込んだ。
「ナニ!?」
どうやら戦艦棲姫もこれには驚いたらしい。
砲弾が何発か飛んでくるが、腰の鞘から高周波ブレードを抜き全て切り落とす。
「動くな」
そして一番近くにいた北方棲姫の首に高周波ブレードを当てる。
なんか、相手が北方棲姫だから俺の方が悪役っぽいな...。
だけど、俺はこの短期間で変わったよな、前の俺なら今頃北方棲姫を切り殺していたかもしれない。
あいつらのおかげで、俺も少し甘くなったかな。
「まず、俺に向けてい主砲を降ろせ。今撃ったら北方棲姫も巻き添えを食う」
俺がそう言うとゆっくりと主砲を降ろした。
よし、撃っては来ないな。
逆に、今撃たれたら北方棲姫を守るしかなくなるからなって俺は何を考えているんだっ。
...前言撤回しよう、俺も完全に甘くなった。電に知られたら何を言われるか、わかったもんじゃないな...。
「ゆっくりと後退しろ」
深海棲艦が後退していく。
...何かおかしい。
なんでこいつらは、こんな冷静なんだ?
仲間が人実にとられているんだぞ?
第一なんで北方棲姫は、さっきから騒がない。
本来、こんな状況になれば騒ぐか暴れるかするはずなんだが...。
そう思い、北方棲姫の方を向くと目があった。その眼には恐怖や怒りなどは全くなく、あるのはなにか期待したような眼差しだけだった。
...まさか。
...もう考えるより聞いてみたほうがいいか。
「北方棲姫、ヲ級から何を聞いた。そしてそれを聞いてお前らは何を思った」
俺の予想が当たっているなら、ちょっとヤバいが...。
「ヲキュウチャンカラユウトトッテヒトハイイヒトッテキイテネ。ソレデミンナデイバショヲワケテクレナイカッテキキニキタノ」
「...マジか」
...完璧に予想外だった...。
俺の予想では、ここに居る全員で補給しに来たとかそんなことを思い浮かべていたが、深海棲艦側はそんなことよりもめんどくさいことになっているらしい。
「どういうことか説明してくれないか?」
「私が説明するよ」
そう言ってさっきまで後ろに居たヲ級が前に出る。
「まず最初に言っておくけど、ここに居るみんなはユウトの鎮守府を攻撃する気はないよ」
少し安心した。
だが、鎮守府を攻撃しないとしたらなんでこんな面子がいるんだ?
「おい「ちょっと質問は後にしてくれない」...わかった」
質問をしようとしたら、途中で遮られてしまった。
まあ、あとで聞けばいいだろう。
「じゃあ説明するけど、この説明するには私たち深海棲艦について話さないといけないんだけど...少しショックを受けるかも知れないけどいい?」
...相当重い話らしいな。
「問題ない、続けてくれ」
「ユウトは、深海棲艦がどこから生まれるか知っている?」
深海棲艦がどこから生まれるか?
普通の艦娘ならば、建造だろうが...深海棲艦の方は全く予想がつかないな。
「深海棲艦はね、艦娘が沈んだ成れの果てなのよ...」
北方棲姫はかわいいですよね。