では、どうぞ。
「ウソだろ...」
ありえない、だとしたら俺は...。
...だったら、だったらなんで...。
「なんで争わなきゃならないんだよっ!」
意味が分からない。
元が艦娘なら話し合いで解決できたはずだ。
だったらなんで、今こんなことになっているんだッ!
「ユウト、私たちは『元艦娘』であって今は『深海棲艦』...化物なのよ」
「違う、お前らは化物なんかじゃないっ!感情があって今こうして話していることがもうそれを証明してんだよっ!」
ヲ級を見ればわかる。
こんな人間臭い化物なんて...俺は知らない...。
「ユウト、泣いているの?」
泣く?
俺は今泣いているのか?...。
俺は袖で目元の雨を拭く。
「泣いてない。雨と間違えてんじゃないか。そんなことより続けてくれ」
「...わかった、私たちは元艦娘と言っても記憶はほとんどもってないのよ。深海棲艦になって初め て思うことは、帰りたいって言う感情だけ...」
ちょっと待て、
もし深海棲艦が鎮守府に近づいたら...。
「たぶんユウトの思っている通り、攻撃されるわ」
...一番の問題はそこじゃない。
問題なのは、攻撃された深海棲艦の方だ。
もし、前の仲間から攻撃されたら...。
「ここで深海棲艦は、三つに分かれるの。一つは、ここで艦娘達に沈められるか。
二つ目は、自分が深海棲艦であることを認めて、二度と鎮守府に近づかないか。ちな みに、ここに居るみんな はこれに当てはまってるよ。」
いや、さっきアーセナルに向かっていたのだが、
まあ、無粋なことは言わないことにしよう。
「そして最後が、今までの帰りたいという感情が怒りや憎しみに変わって鎮守府を攻撃 するの...」
これが、今までの争いの原因か...。
「鎮守府に対して怒りや恨みを抱いている奴は、どれくらいいるんだ?」
「実際に数えたことはないけど、最低でここに居る私たちの数十倍はいるよ。だけど多 分、説得は可能だと思うよ」
説得が可能だと?
それだけの数が居て、どうして説得が可能だと言えるんだ。
「あの子たちも居場所ができる知れば、喜んでこっちに入ってくれるはずだよ。一人を 除いてね」
そんな簡単にほとんどが説得できるのか...。
だが、残りの一人はなんだ?
「残りの一人は、どうして入ってくれないんだ?」
「...残りの一人はリーダー的存在でね、ありえないほどに鎮守府を恨んでいるのよ... もう、居場所がほしいなんて思っていないでしょうね。あるのは多分、復讐と憎悪だ けよ」
...俺の予想だと、もう一人の方も説得はできるはずだ。
多分、その子の恨みと憎悪の裏側は...。
「これで大体の説明が終わったけど、何か質問ある?」
質問か...。
聞きたいことは二つほどある。
まず、
「なんで俺に頼んだ?探せば俺なんかより、優しいやつがいると思うが...」
実際に探せば、俺よりも優しいやつが見つかるはずだ。
なのに、なんで俺なんだ?
「ユウト、あなたは多分自分では無意識かもしれないけど、相当甘いわよ」
...甘いってはっきり言われると少し傷つくな。
そんなに甘いか、俺?
いや、そんな言うほど俺は甘くないはずだ!
...たぶん。
「俺はお前らが思っているよりそんな甘くない!」
「そんなに、自分が甘いことを認めたくないなら認めさせてあげるわ。あなたはまず最 初に私たちに
鎮守府を迂回して通るように言った、普通のなら忠告なんてしないで攻撃するはず よ。
そのあと、私たちが艦載機と護衛要塞と浮遊要塞を飛ばして攻撃しようとしたときに 撃ち落したけ ど、あれは撃ち落すためであって私たちを攻撃するつもりはなかっ た、あなたなら私たちごと攻撃できたのに、まあ一番の決め手はそのあとね」
一番の決め手?
まだあるのか...もう俺、これ以上言われたら立ち直れないかも...。
「ユウト、北方ちゃんを人質に取った後すぐに刀を鞘に納めていたことに気づいて る?」
...そういえば、いつの間にか高周波ブレードが鞘に収まっている。
これはもう、甘いを通り抜けてばかだな。
「もうはっきり言っちゃうけど、ユウトみたいに甘い人はなかなか見つからないと思う よ」
落ち込んでいる俺に、さらに追撃が入る。
......もういい、認めよう。
逆に、認めないと話が終わらない。
「...次の質問なんだが、なんでこんな大人数で来た」
「大人数で来た方が説得しやすいし、ユウトも来てくれると思ったから」
そんな理由でこれだけの深海棲艦を連れて来たのか...。
まあ、それだけ居場所がほしかったってことだよな。
「質問はもうない?そろそろ答えを聞かせてほしいのだけれど...」
此処で答えを出すのは、少し早すぎるな...。
「少し考える時間をくれ」
「...わかったわ。じゃあ返事が決まったらこの海域に来てね...いい返事を期待してる わ」
ヲ級がそう言うと、深海棲艦はゆっくりと海に戻っていった。
「...俺も帰るか」
俺は答え出さなくちゃいけないのか...この答えの仕方で俺の未来は相当変わるだろうな。
だが、あの子たちを巻き込みたくはないから下手に相談することもできない。
俺はどうすればいいんだ...。
...とにかく今は帰ろう。
いま俺はアーセナルに帰ってきているが、気が重い。
こんなことならいっそのこと深海棲艦が襲ってきてくれた方が、気が楽だったな...。
「今帰ったぞ...って」
「提督----ッ」
そう言って優花が猛スピードで俺に突っ込んでくる。
はっきり言って、このままのスピードでぶつかったら相当痛いだろうな...。
だが、逆に避ける訳にもいかないから受け止めるか。
よし、来い!
「...ゴフッ」
...おい、結構痛かったぞ。
どうやったらそんな小さい体で、それだけの力が出せるんだ...。
まあ、そんなことは置いといて。
「優花、ただいま」
「提督のばかっ、心配したんですよ。なかなか帰ってこなくて、もし提督が帰ってこな かったら、私...」
優花...そこまで俺を心配してくれていたのか。
本当に、提督思いの子だ。
「優花、ありがとう。そこまで心配してくれて」
俺には帰る場所があり、優しい仲間もいるが、あいつらには無いんだよな...。
「司令官、ちょっといいかい?」
そんなことを考えていると不意に響から声をかけられる。
響に見つかったか...だが響ぐらいなら言いくるめることができるだろう。
俺はそう思い、声をかけられた方を向いた。
「どういうことか説明してくれますよね?」
...俺の向いたそこにはありえないほどの笑みを浮かべた艦娘たちの姿があった。
なぜだろう、なんで俺はみんなの笑顔がこんなに怖く感じるんだろう。
てか、これは多分勝手に俺一人で出撃したことがばれてるな。
さて、こんな時にやることは一つ...。
「逃げるっ!」
「待てーーー」
待てと言われて待つ奴はいない。
だが、このまま逃げても捕まるだけだな。
ステルス迷彩を起動するか...。
「どこに行ったのですか!」
電がすごい怒ってんな...。
俺、あんなに電が怒っているとこ初めて見たぞ。
これは、早々とこの場所から逃げますか。
「天竜さん、提督は見つかりましたか?」
「優花さん、まだ見つかんないぜ」
まだ探してるのか...。だが俺は見つかるはずがない。
だって...。
「こんなところにダンボールなんて置いてありましたっけ?」
俺は、あの伝説の傭兵が愛用していた....。
「そんなことより提督を探さないと...」
伝説のダンボールを使っているのだから!
まあ、実際は俺が被る衝動を抑えきれなかったのもあるんだけど...。
とにかく、やっとダンボールをかぶることが出来たな、初日に見たときから被りたいとは思っていたが、ようやく些細な夢が叶った。
だけど、武装の中にダンボールが入っていてよかった。
いやー、さすがダンボールだ。伝説の傭兵が愛用しただけある。
全く見つからない。
「ユウト、ナニシテルノ」
「みんなから隠れてるんだ...よ...」
ちょっと待て、俺は疲れて幻聴でも見えるようになってしまったのか?
なんでここに北方棲姫がいるんだ?
「どうやってここまで来たの?」
「ユウトノセナカニツカマッテキタ」
どうして深海棲艦はこのアーセナルに入り込んだり、近づいてくるんだ?
てか、それで気づかないアーセナルのレーダーはどうなってんだ。
...もうアーセナルのレーダーが無能なのは置いといて、北方棲姫はどうしよう?
いまから深海棲艦のところに行くのは不可能だろうし、北方棲姫をそこらへんに逃がすのもどうかと思うし...。
...数日ぐらい何とかなるよな。
「北方棲姫、数日間だけここで生活できるか?」
次回からは、多分シリアスから抜けられると思います。