剣士の帰還、ジェダイとなって調和を齎さんとす   作:アトコー

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第14星 日本の選択は~

 

 

あの会談の後、銀河連邦が提示した内容や大亜細亜連合からの要求など、日本国の急務的問題についての国会審議や国民への公表には5カ月も要していた。その間に天皇陛下への説明も極秘裏に行われた。その後の国民への公表で多少の混乱が見られたものの、大亜細亜連合のこれまでの動きから何かあると踏んでいた国防軍内にも真偽不明情報が飛び交う中、確証ある情報が銀河連邦経由で流されると、真偽不明情報の中から「この情報、真(まこと)では?」という考えに至るものが多かったようだ。案の定、この真偽不明情報や銀河連邦の情報についてどういうわけか野党側が激しく騒いだが、国民が見向きもせず、寧ろ今起きている危機を肌で感じている西日本側の多くの国民は的外れな事ばかり叫ぶ野党議員を無視、場合によっては演説や議員主導のデモを妨害する動きもあった。東日本側の国民は直近の危機という訳では無いが、それでも危機感は抱いており、しかし野党議員らの言い分を信じる者も一定数存在していた。

だが、銀河連邦なる惑星間連合国家の詳細も使者となっているレヴィナスから得た情報を纏めて大高首相は会見を開き、日本国の方針としても大亜細亜連合とソレに与する分離主義勢力による日本国植民地化は避けたいとして銀河連邦との同盟乃至銀河連邦への加盟を示唆。

 

これに対し、一応の同盟国であるUSNAが反応を示したが、日本国は相手にしなかった。

何故か?・・・・それは幾度と国家的危機状況になっても形だけの安全保障条約は何の意味も為さなかったからだ。それ故に本土から切り捨てられた在日米軍を全て国防軍に吸収していた。反発の意思を示すUSNAだが、見捨てた在日米空軍、陸軍、海軍のそれぞれトップが共同記者会見を開き、USNAの当時の国防長官を名指しで批判するなど日本から見ても異常とも取れる状況が数年続いた。その間に、在日米軍を見捨て、切り捨てる判断をした、時の大統領は、市民からの支持を失い政権からも離脱する大臣が増え、事実上総辞職となる事態に。

 

その間に、日本政府は在日米軍の兵士とその家族に日本国籍を与えていた。そして、ほぼ全員が日本へ帰化した事により、日本国内における在日米軍問題は立ち消えた。基地問題に関しても規模を縮小、若しくは地下化、海上化を進めたりしていた。無論、在日米軍が所有していた戦闘機や戦車、艦艇を返せとその大統領派のUSNA国防相は叫んだが、元在日米軍の面々は欲しけりゃくれてやる、だからさっさと日本本土に取りに来いと言って無視。

 

そして、取りに来たといっても実際持っていったのは機密文書の写しだけで兵器類は回収していかなかった。(原本は日本に帰化した将校らが国家機密として国防軍に提出していた。)謝罪も無く、完全に見捨てられたと感じた元米兵も多く、それを汲み取った国防大臣の一案により、結局のところ見捨てた慰謝料と相殺で日本国防軍所有となったという経緯があったりする。

 

 

 

だが、銀河連邦の存在を知った大亜細亜連合側は日本国に対し即時武装解除を要請し、突如として九州地方、四国地方、沖縄地方の領土を明け渡せと迫った。まだ、銀河連邦との正式な関係に無い中なら侵略して制圧出来ると踏んだようだった。

しかし、既に現地入りしていた銀河連邦の使者であるジェダイマスターのレヴィナスが表に出て首相らと会見に出た。既に銀河連邦は、同盟にせよ、加盟にせよ、締結中後に日本国への侵略が確認された瞬間に待機させてある艦隊戦力で侵攻軍を叩き出すと発言した。

この会見の後、大亜細亜連合とそれを支持する政党の勢いは一時弱火となった。だが、まだ侵略への動きを見せている状況である為、国防軍も軍を派遣して警戒に当たっていた。

 

 

 

 

 

そんな状況が数か月続き、兼ねてからの予定で決まっていた沖縄旅行に私と咲那は行くこととなった。

父と母、敏子姉と敏子姉の夫秋房の計6人で、現地で司波家の人達と合流するという。

まだ会った事が無いのでどういう人達かを聞くと、

 

「そうねぇ、過去の事が重たいものだからちょっと気難しいところがあるけど、ずっと友達よ。親友って面もあるかな?」

 

「司波深夜の夫がぼんくらだから3人とガーディアンに1人と聞いているわ。」

 

「ぼんくら?」

 

「男としては最低な奴だな。深夜さんの夫っていうのは、四葉家からの縁談でなったようなものなんだ。だが、あいつは僅か数年で、深夜さんと別居。元々付き合っていた愛人の家に入り浸りしている畜生だ。」

 

「なにそれ・・・。」

 

「これっ、そういう事を言うんじゃありません。アレは四葉の関係者ですら無いのだから。」

 

司波龍朗という男は、聞いた以上にろくでもない奴らしい。普段あまり感情を表に出さない秋房さんがこんなにも怒るって事は相当だと思う。

 

空港から6人で沖縄へと飛ぶ。こんな家族団欒とした光景も久しぶりで、一人1つのカプセル型の座席というのが面白い。1人用、2人用とあるけど、私も咲那も皆1人用のカプセル席に入った。

 

 

 

 

沖縄までの飛行に、天候の問題も無く到着した。

旅客機もあれから50年も経てば、変わるものなのかと思う。機体形状はコンコルドのような平べったい翼でジャンボジェットエンジンが見える形では無かった。

過去にコンコルドのような超音速旅客機の開発が進められていたが、問題となっていた騒音やソニックブームによる衝撃波は、技術力向上に加え一部魔法的技術を取り入れた事で解消されているらしい。しかも、飛行時間はジャンボジェット機よりも早く、ビジネスマンや一部の富豪や観光目的に多く使用されているという。

実際、結構早くに着いたなぁ、って思っていたけど。

沖縄に着いてから目的の司波一家と合流する事になっていたが、どうやら先に司波一家の方が来ていたらしい。

 

 

「お久しぶりですね、由香里義母様」

 

司波一家の中から女性が一人、一直線に私たちの方に来ながら挨拶していた。

 

「あらあら、深夜ちゃんったら。子供を置いて私の元に来るなんて。」

 

見つけて直ぐに向こうから白いスーツ姿の女性が母さんとその女性の方に駆け寄ってきた。

 

「奥様、いくらお身体の加減が良いと言っても無理を為されては・・・。」

 

「あら、穂波さん?最近は頗る調子はいいのですから。」

 

「そう言ってこの前も熱を出しましたよね。」

 

穂波と呼ばれた女性にジト目で見つめられ、何のこと~と目を逸らす深夜と呼ばれた女性。

そして、顔を逸らした女性の顔を両手で鷲掴みにする母さん。

 

「また、無理をしたの?身体の調子が良いからと言って無理をしないとあれほど・・・もう。穂波さん、次から何かあったら私に連絡を入れて頂戴な。」

 

「分かりました由香里様。」

 

その後、其処に合流した面々で自己紹介というか、主に私と咲那の為に母さんがやってくれた。父さんは、司波達也と呼ばれた男子の頭をわしわしと撫でていた。

 

「ところで、穂波さん。別荘の方にいたんじゃなかったの?」

 

「ええそうなのですが、予定より遅かったのと、ある御方が代わりに留守をと。」

 

「それは・・・誰なのかしら?穂波さんも信の置ける人なの?」

 

「はい。奥様も良く知っている方ですよ。」

 

 

空港から車で1時間。レンタルした車2台に分かれて乗車して行った。

プレニア・ミニバンという種類の車種のもの。コミューターという共用車両を使うのかと思ったけど、独自のレンタルサービスで手に入れていた。

片方を父が、もう片方を秋房さんが運転して別荘地へ。

 

その別荘で待っていた人に司波一家からは驚きの声が、主に深夜さんから上がった。

 

「お父様!?」

 

「おお、深夜か。元気そうでなによりだ。」

 

別荘の玄関の椅子に座って新聞を読む壮年の男性が、司波元造というらしい。

 

「な、なんで此処に!?」

 

「それは・・・だな。まあ、仕事の一環だ。また直ぐに出なくてはならん。」

 

そう言った元造だったが、身内からも掩護射撃が続いた。

 

「忙しくても娘や孫の姿は見たいと思うものだ。深夜、覚えておくといい。」

 

「おお!剛蔵か!?久しいな。」

 

「まったくだ。何時になったら一杯呑みに行けるのか分からんな。」

 

「今日の夜、空いているか?」

 

別荘で待っていた人物は、話には聞いていた人で、今は深夜さんと同じく司波姓を名乗っている司波元造(四葉元造)だった。聞いた話では、祖父と仇討ちに行った生き残りと聞いていたけど・・・。

フォースから読み取れるオーラから、普通じゃないっていうのはよく分かった。

 

2家の別荘の屋敷は非常に大きく広かった。共同でというより、四葉家御用達というものらしく、分家も使うからこうなったとか。

司波兄妹が散歩に出かけるというが、私は部屋でのんびり過ごしたかった。

今までが忙しすぎたというのもあるけど、それ以上にコルサントでの質素な生活があまり合っていなかったから。オーダーの厳格な規定に反した行動を常々取っていた私だけど、それに対してあれこれ言ってくるマスターはあまり居なかったというのもある。

 

 

 

ベッドの上で自堕落に過ごす・・・なんて夢のような事が現実に出来るなんてと思ったけど、咲那はどうやら眠たくなって私のお腹に顔を埋めて寝てしまったらしい。

咲那を助け出してから、咲那は私に対して依存しているかのような態度、行動を取って来た。ソレを直す為に色々して来たけど、心のトラウマばかりは完全に治療は出来なかった。

だが、一般的なジェダイとしては中の上で、ヒーリングフォースの使い手でもある咲那は戦場ではコンバットメディック、野戦衛生兵としての能力は高かった。が、当然敵も咲那を狙って攻撃を集中する事がある。だが、戦場において咲那のヒーリングフォースはトルーパーたちにとって強心剤や治療薬よりも大きな力となるものだった。故に、狙われていると判断したトルーパーのそれぞれが個人個人の判断で守りを厚くしたり、後方へ退避させるなどの対応を取った。前衛を私の隊とした時、中衛か後衛に咲那の隊が必ずあって、一緒に戦う時に私は咲那からあまり離れる事はしなかった。

そんな咲那も守られている事が分かっていても、負傷したトルーパーたちを全員助けるという意思は強く、飛び出してトルーパーを抱えて助けに戻った時は何度もヒヤヒヤさせられた。

 

 

あの大戦を常に一緒に戦い抜けてきたからこそ芽生えた感情も、私は分かっているつもりだった。咲那の心の治療が不完全なのも、私が一端でもあることも。

だから、私は咲那と添い遂げようと思っている。それが私の責任なのだから・・・。

 

「ジィー」

 

「ジィー」

 

「?・・・・・!?」

 

咲那の頭を撫でながらゆっくり過ごしていたけど、まさか扉を少し開けて覗き見していた人がいるなんて思いもしなかった。心臓に悪いよ、母さん、敏子姉。

2人して笑みを浮かべながら去っていったけど、達也たちは大丈夫かな?

 

 

 

そんな心配は的中するものなのか、案の定2人は現地人に絡まれたらしい。達也が追っ払ったようだけど・・・。なんか2人の関係ギスギスしているような感じだ。あまり踏み込むのは、今はしない方がよさそう?

 

 

 

夕方になって、穂波さんが何か手紙を受け取っていた。宛先は深夜さん宛。

内容は・・・

 

「パーティーですか?」

 

「ええ、貢さんが沖縄に来ているようなの私のところにも招待状が届いたようね。由香里義母さんはいかがです?」

 

「そうねえ、剛蔵さんは元造さんと呑みの約束をしたみたいだし、ご一緒するわ。体調は大丈夫なの?深夜ちゃん」

 

「ええ。最近は頗る調子が良いから参加するわ。穂波さん、服を見繕って頂戴。それと、深雪と達也の分もね。紫音さんと咲那さんはどうする?」

 

「四葉家の者として重要人物が主催となるパーティーですからね・・・行きましょうか。」

 

気合を入れる私に呆れたように言う敏子姉

 

「まったく、あんまりそう難しく考えなくていいのよ。」

 

危惧している内容は違えど、秋房さんは別の心配をしていた。

 

「まあ、貢が達也をあまり好ましく思っていないのは今に始まった話じゃない。何かあればフォローするさ。それよりも、紫音達はある意味社交の場に出るのは初めてだろ?」

 

「そうだね。地球のパーティーと今までのパーティーは違うだろうから観察も兼ねようかな?」

 

「はぁ~、子供なんだから仕事としての面はいいんだ。」

 

「そういえば、紫音さん達は・・・どういうところに?」

 

穂波さんがそう聞いてきたので、秋房さんが私に視線を向けてきたけど、まだ話す時じゃないと首を横に振った。

 

「済まない、まだ話せる段階じゃない。」

 

「というと?」

 

「紫音と咲那の身分に関しては警察でも国防軍でもなく、日本政府預かりなんだ。」

 

「何れ、話す時が来ますよ。それが何時かはまだ言えない。ですが、信用はして欲しいのです。」

 

「奥様。」

 

「大丈夫よ。由香里義母さんも分かっている事だから。」

 

「それなら・・・・・じゃあお二人もドレスアップしましょうか。」

 

そう言いながら手をワキワキさせる穂波さんだが、

 

「大丈夫よ。2人とも、それ用の服を持っているから。」

 

 

 

由香里母さんの話の後、それぞれで着替えに向かったが、私と咲那の服は決まっていた。

ジェダイの正装に似せた和風スーツを2人して着こんでいた。トレードカラーの深紅のカラーラインが斜めに入った和風スーツが私で、浅緑のカラーラインが咲那。

深夜さんたちは先に向かったようで、私は敏子姉が運転するレンタカーでパーティー会場へ向かった。

パーティー会場のドアの前には既に司波家一行と先に行っていた母さんらが居た。

 

「あらあら、そんなのでいいの?」

 

「派手さは必要ないので、地味であろうとこれが私たちなのですよ。」

 

「これでも柔らかい方なのですよ。厳格な規定を重視したらもっと質素な恰好になってしまいますし。」

 

「ふぅん。じゃあ、行こうか。」

 

と、深夜さんが扉に手を掛けようとしたところで、勢いよく扉が開いた。

 

「メンソォーレっ!!」

 

ハイテンションで扉を開けたのが黒羽貢。

だが、あまりのハイテンションぶりに深夜さんでさえ顔を手で隠すような仕草をしながら呆れたような表情になっていた。

 

「よく来てくれた・・・奥様!?」

 

「あらあら、貢さん。気合入り過ぎよ。達也も深雪も驚いてしまうわ。」

 

「え、ええ。」

 

「まあ。気配で察しづいていましたが・・・。」

 

「いやはや、奥様が来られるとは・・・。」

 

「聞いて無かった?そうよ、だって言って無いもの。それに、一緒にこの方々も招いても問題無いでしょう?」

 

深夜さんがそう言いながら私たちを紹介した。

 

「九條殿・・・これは失礼しました。」

 

「いいのよ、今日は紫音たちのココでの社交の場として見てもらうつもりだったから。」

 

「と、なるとこちらが件の・・・?」

 

「ええ。」

 

「九條紫音と申します。こちらが立華咲那。」

 

お辞儀しながらそう答えると彼もお辞儀して答えてくれた。

 

「黒羽貢だ。いつもお世話になっていましてな。」

 

「こちらの情勢には疎いもので、貴方の知識をお貸しいただければと。」

 

彼はチラリと深夜さんを見て、会釈したのを確認すると

 

「分かりました。微力ながらお力添えが出来ればと思います。」

 

「さて、達也も深雪も自由にしていらっしゃいな。」

 

「じゃあ、私たちも社交の場に精を出すとしますか。」

 

達也と深雪がペアになって歩いていき、深夜さんは母さんと一緒に、敏子姉は夫婦で移動していった。

会場に入ってからも貢さんから色々聞いたりしているが、どうも達也に関してはあまりいい感情をお持ちではないようだった。

 

「達也が気になりますか?」

 

「・・・いえ。」

 

「誤魔化さなくても分かりますよ。私も咲那もそういうのは長けていますから。」

 

「・・・・・。アレはこのような場にふさわしくない。如何に当主が善しとしていても、四葉にもそぐわない。」

 

「はてはて、子供に生まれて来た段階からあれだこれだと求めるというのは酷では?」

 

「君には分からんだろうがね。」

 

そう言ってそっぽを向けた貢に私は、今その達也と深雪が会話をしている貢の子供たちを見ながらいった。

 

「では、貢殿。達也を貴方の子供たちに置き換えて考えては?それでも尚考えが変わらないというなら、親失格以前に人間として必要な重要な部分が欠落しているとしかいいようがありませんよ。」

 

そう言いながら、その場を咲那と後にした。

深夜さんがある種主賓という扱いでパーティーが進んだが、貢さんは途中で離脱していった。随分と考えこんでいるようだったが、後は本人が考えを纏めなくては意味がない。

 

 

 

尚、父と元造さんは沖縄の古風な飲食店で店の料理を食べ尽くし、泡盛等沖縄で作られたお酒に舌鼓を打ちながら夜を明かし、朝帰りしてきたのを母さんに説教されていた。

いい大人2人が正座をさせられて娘、孫の前で叱られる光景など異様なのだが、秋房さんや敏子姉曰く、「何時もの事。」らしい。

 

 

 

 

 

 

パーティーの日の次の日、夕方にセーリングに向かう前に一悶着があった。

沖縄は夏という事もあり、気温は35度を超えていた。しかし、都会のジメジメッとした熱気が無い分過ごしやすい環境・・・でもあった。まあ、私としてはムスタファーのような溶岩惑星や年中炎に包まれた惑星、タトゥーインのような砂漠の惑星での経験があるから、それと比べるのは問題だよねぇ・・・・・・・と思いながらもフォースの修行をしていくうちに身に着けた体温調節能力の向上は、様々な環境に適応して活動出来るようになったというだけ。極端に暑い寒いでない限りは問題無く過ごせるというわけだが、それは置いといて

 

 

達也と深雪が敏子姉と秋房さんと一緒にビーチに行って来たらしいが、ビーチに居た不良に絡まれたそうだ。深雪の可愛さもあって擦り寄る不埒な考えを持った男共に達也が守るように応戦。喧嘩に近い騒動になる寸前で敏子姉と秋房さんが割って入って終わったそうだ。いつも持ち歩いている警察手帳を見せつける事で怯えて逃げ出していったというが、付け狙われ過ぎじゃない?と思ったのは私だけじゃなかった。

 

地元の不良グループが、その手の悪事に染まっている事実も大きく、深雪はマークされているようだった。加えて咲那も。

秋房さんがネット情報を洗い流した事で分かった事だが、だからと言って簡単に警察は動いてくれるわけじゃない。この年になっても警察機構の腰の重さは問題だった。

とはいえ、魔法が使えない事を妬んで魔法師等に集団で襲い掛かり暴行や監禁するような事件を起こしている為、指名手配はされていた。だが、実行犯は捕まっても指示役の主要実行犯が捕まらないままだという。

 

「困った事ね。外出する際は大人が付いていないといけないなんて。」

 

「どうも、沖縄県警の方では、捜査はしているが大きな進展は無いままらしい。付け狙われるのが本土からの旅行者に集中している、というのが分かっているぐらいだが・・・。」

 

秋房さんが地元警察署で話を聞いてきたようだが、あまり動いてくれるような状態じゃなかったらしい。もやもやしたままだけど、予定通りにセーリングヨットでのクルージングへ出かけた。秋房さんはまだ調べることがあると言い、敏子姉もソレに付き合って乗るのは母さんと私と咲那と元々の予定の司波一行。

 

海で船に乗って楽しむという事が今まで無かっただけあって、既視感を覚えるものは幾つかあった。だが何れも碌な事が起きた事はなかった。

 

 

「カミーノみたいですね。」

 

「な、訳ないじゃん。あっちはもっと荒く時化た海だったよ。これだったらモン・カラマリの方がいいでしょうに。」

 

「あっちの方が穏やかでしたっけ?」

 

「もっと穏やかで平和なのがナブーとオルデランだけど、前者の2惑星はどちらもいい思い出が無いね。」

 

そう言いながら過去の戦場を思い出していた。どちらもイカのような大型ドロイド兵器に襲われた事があったからだ。そうでなくても、どういうわけか、ナブーでも

アンクラというグンガンの亜種に絡まれた事があったからだ。

 

「このまま、何も無ければいいのですが・・・。」

 

「咲那、それフラグ。」

 

そう言うと限って予感というは的中してしまう。海に出たらリラックスしての航海は許されないのかなぁ?

 

「緊急連絡!緊急連絡!」

 

船長が叫びながら無線で呼びかけていた。

 

「伊江島南南東にて、所属不明の潜水艦を発見!」

 

「・・・・・・・・・やっぱり。」

 

「マスターの予感はいつも当たりますね。」

 

「当てたくて当てているわけじゃないのよ。」

 

「なんで潜水艦が!」

 

「日本の領海内に潜水艦って、大亜連合が戦争でも始める気なの!?」

 

事態は一刻を争う状況となった。

船長は無線を殴り捨てながら帆を上げるように指示を出してエンジンを掛けた。

 

「港に引き返します!」

 

船長も乗組員の船員1名も元軍人というだけあって、即座の判断で対応し現海域からの離脱を選択した。だが、潜水艦はそう易々とは逃がさないつもりらしく、でも此処には守る為に戦うつもりでいる者もいた。

 

「此処はガーディアンにお任せを、奥様も由香里様もお下がりください。」

 

穂波さんがCADを構え、立ち上がりながらそう言い、深雪もバッグからCADを取り出して魔法の準備をしていた。だが、それよりも早くに、

 

「魚雷、発射態勢に入ります!」

 

「アクティブソナー検知!魚雷来ます!」

 

咲那がフォースの感覚で真っ先に感づいた。

次いでクルーザーのソナーが魚雷の発射の前兆を掴み、船員が叫んだ。

 

「魚雷!?警告も無しに撃ってくるのか!?」

 

セーリングヨットにも魚雷が映ったようで、

 

「魚雷、放たれました!真っ直ぐこっちに来ます!回避しますので御掴まり下さい!」

 

そう言ってセーリングヨットは右に急旋回した。

しかし、魚雷は急旋回したヨット目掛けてまだ走り続けていた。

 

「回避したのに!?」

 

深雪が回避して避けた筈の魚雷に驚きながら叫んだ。

 

「ホーミング魚雷、音響探知式なら真っ直ぐ来るね。仕方が無い。」

 

私はフォースを使って水中の魚雷に干渉した。

推進機構そのものに干渉してスクリューを捻じ曲げたのだ。当然捻じ曲がったスクリューは他の部分と干渉し推力を無くしただの鉄の塊となる。もうこれで脅威は無いだろうと思ったが、第1波が失敗したと分かるや否や、潜水艦から第2波、第3波の魚雷が2本ずつ放たれた。なんとしても目撃者を消したいらしい。

第2波は達也が手を魚雷に翳した事で、どういう原理か魔法かは分からないが分解された。

第3波も同じくとなるかと思えばこの魚雷、まるで意思でも持っているかのように達也の魔法?を避けて散布界を広げて突き進んでいた。

 

「クソっ!どうなってやがるんだ!」

 

「無線は故障していません!」

 

「妨害電波か!だが・・・あれは!?」

 

丁度その時、こちらがジグザグに航行しているのを不審に思ったのか、海上保安庁の巡視船がこちらに接近しつつあった。

その巡視船は3500トンクラスのヘリコプターを搭載出来る大型の巡視船だった。

『なは』と書かれたその巡視船は、クルーザーの動向を遠くから確認しており、突如急旋回をしたかと思えばジグザグに航行し始めたのを不審に思い、ヘリコプターを先行させて近づいていたのだ。だが、クルージングヨットへ近づくにつれて、無線が取りにくい状況となっていった為、即座にクルージングヨットの救出並びに国防軍への通報を同時並行させていた。

こちらのヨットの方はと言えば、無線で途切れ途切れに保安庁の巡視船から通信が届くが、妨害電波が強すぎる所為でよく聞き取れなかった。

 

「船長、巡視船の方に向かってください。相手はこっちを撃沈か拿捕しようとしているようですが、巡視船の傍まで行けば状況を伝えられる筈です。」

 

「そうだな、よし。」

 

船長は、取舵一杯で巡視船の方へと艦首を向けた。

巡視船から飛び立ったとみられるヘリがヨット上方に見えたが、同時にヨット後方からさっきの魚雷が向かいつつあった。

 

「2つとも離れた位置か。達也、左を任せた。」

 

「・・・・分かった。」

 

達也が左の魚雷を分解し、私は向かってきている魚雷を、フォースを使って海面に押し出した。

上空のヘリコプターが、ヨットの後ろで魔法を行使するのが目撃され、うち1つが魚雷そのものを海面に叩き出した事で、事態を察するところとなった。結局、穏やかなクルージングは潜水艦騒動でおじゃんとなり、巡視船について行きながら港へと戻った。

その後、海保の巡視船の通報を受けた国防海軍の嘉手納基地、那覇空港より哨戒機が発進、同時に警備艇や哨戒艇も出動していた。即座に捜索、追跡を行ったが通報にあった国籍不明所属不明の潜水艦の足取りを一度は探知したものの、そのまま逃し、掴めずに終わった。沖縄の内側に所属不明の潜水艦が出現した事態に国防軍は、急を要する事態であるとして国防海軍第7機動艦隊、第5護衛艦隊に沖縄海域の警戒の為、それぞれに出撃を要請していた。

 

 

 

散々なクルージングとなってしまったが、海保と国防軍の方から事情聴取があるという事で、事態に見舞われた事を考慮して後日聞きに来る事となり、家に帰って寛いでいると・・・

 

 

「国防軍が?」

 

「ええ。どうも先ほどの件でリビングに。」

 

後日と聞いていたのに、そう聞き返した私だけど穂波さんも同じく軍人らに聞き返したらしい。だが、事が事である為、性急に聞き出したいという事だった。

困った。魔法を行使した事を咎められる可能性があるのか?

けど、攻撃に対する自衛行動だから、ある程度許されるだろうし・・・。

そう思いながらリビングに向かうと国防軍の軍人が立って待っていた。

スクリーンに地図まで用意して聞きたい内容がなんであるかは直ぐに分かった。

今回のクルージングのコース途中での接触、恩納瀬良垣から伊予島へと進むその途中での所属不明の潜水艦との接触。だが、詳しい事は船長や乗組員から聞けばいいものを何故か此方にあれこれ見て無いか聞いてくる終いには

 

 

「君たちは何か気付かなかったかな?」

 

黙って聞いているだけの私と達也に直接聞いてきた。

 

「目撃者を残さぬために我々を拉致しようとしたのではないかと考えます・・・。」

 

「ほう?拉致ね、・・・理由は?」

 

「クルーザーに発射された魚雷は発砲魚雷でした。」

 

「発砲魚雷?」

 

「なんですか、それは?」

 

「弾頭に大量の泡を作り出す薬品が仕込まれた魚雷の事です。

泡で満たされた海域はスクリューが役に立たなくなりますから足止めをして事故を装って乗務員を捕獲、拉致しようとしたと思われます。」

 

「成程ね。だから何発も撃ってきたわけか。」

 

そう言う目的だったのかと感心していると軍人が更に聞いてきた。

 

「2発では無かった・・・と?」

 

「迎撃しましたから。ですが、逃げ回りながらでしたので、結局何発撃たれたのかは・・・。」

 

「ふむ。だが、発砲魚雷を使って拉致しようとしたと思う理由は・・・何かな?」

 

「あの時、クルーザーの無線が妨害されていました。発砲魚雷を使って拉致する前段階として無線妨害をした上で事故を偽装しようとした。」

 

「成る程、だが兵器を断定する根拠としては薄い。他にも理由があるかな?」

 

「確かにありますが、・・・回答を拒否します。」

 

「ふむ、では君は・・・どう思う?」

 

「大体は達也が言ってくれましたし、他に言う点としては所属不明の潜水艦は随分と不用心であったというところでしょうか」

 

「不用心?」

 

「所属不明の潜水艦に追い回されている時、海上保安庁の巡視船とヘリコプターに見つけて頂いた時も魚雷を放っていました。達也の言う拉致も当初はそれのつもりでいた筈です。」

 

「それで?」

 

「ですが、クルーザーの上空に海保のヘリが到着しても潜水艦は潜望鏡を上げたままこちらへの雷撃を続けています。ソナー探知機が巡視船には無いとは思えませんが、だとしても目撃者を消すつもりなら巡視船が来た時点で破綻した筈です。」

 

「・・・・・・確かに・・・。だが、確執した理由が君らにあるのかもしれないと思うのだが?」

 

「ただのクルージングで?」

 

最早くだらない問答になりつつあったのを見かねて、深夜さんが声を掛けた。

 

「大尉さん、そろそろよろしいのでなくて?

これ以上、私たちにお役に立てるお話は出来ないと思いますよ。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

大尉と呼ばれた男性軍人は、協力の感謝を述べた後退室していった。

 

「後は孝行兄さんに任せるしかないね。」

 

「孝行さん・・・ですか?でもどうやって?」

 

穂波さんが不思議そうに聞いてきたので答えた。

 

「国防海軍は第7機動艦隊を沖縄海域に進出させることを決めたみたい。」

 

「あら?今孝行は本土に居なくて?」

 

「本土から多分司令艦に乗って出航したんじゃないかな?わざわざ揚陸艦も動員しているみたいだし。」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!?その孝行さんってどういう方なのですか?」

 

「第7機動艦隊、艦隊司令にして海軍少将・・・だっけ?」

 

「この前中将に昇進したって言っていたわ。」

 

「へっ!?」

 

「ねえ、お母さん。うちには普通の人は居ないの?」

 

「その普通を壊しちゃったのは紫音なんだけどもね。」

 

「・・・・・・・・・」

 

私の失踪事件が原因でそれぞれがほぼ軍の道を歩むことになっているという現実に頭を抱えそうになった。だけど、それ以上に驚いているのは穂波さんの方だったらしい。

 

「穂波さん、お茶を頂こうかしら?・・・・・穂波さん?」

 

驚いた表情のままじっと動かない穂波さんが、深夜さんのお願いをスルーした。

通常じゃあり得ない事に深夜さんが不思議そうに穂波さんを見つめていたが・・・。

 

「あらあら、立ったまま気絶しちゃっているわ。」

 

母さんがそう言った事で、穂波さんを一先ずソファーに寝かせて落ち着かせ、ハーブティーはお母さんが用意してくれていた。

その間に敏子姉たちが戻って来たお父さんと一緒に、そして丁度穂波さんも気が付いたけど、前後の記憶が飛んでいるらしい。

 

「事件に遭遇したようだな。大丈夫だったか?」

 

「ええ。紫音と達也がやってくれましたから。」

 

「なら、後は孝行に任せようか。」

 

そう言いながら、父さんは私に書類を渡して来た。何処から手に入れたのか分からないけど、出撃した第7機動艦隊の全容だった。

空母2隻、ミサイル巡洋艦4隻、ミサイル駆逐艦15隻、潜水艦13隻、揚陸艦7隻の41隻からなる大艦隊が横須賀、呉、佐世保から出航。揚陸艦はLCACを搭載して戦車を含む揚陸部隊を全軍搭載しての出航だった。また、第7機動艦隊所属の哨戒機も横須賀から此処嘉手納基地に向かっている事に加え、在日米空軍だった戦略爆撃隊も出撃態勢に入っているという異常っぷり。何れも大亜細亜連合を意識しての事だった。普段はこんなにも動かせない筈なのに、これに加えて第5護衛艦隊、空母1、ヘリ空母1、イージス艦4隻、護衛艦16隻、潜水艦10隻の艦隊も沖縄へ向かっているらしい。

 

「足りると思うか?」

 

「こればっかりは分からないとしか言いようがない。」

 

恐らく先の潜水艦騒動は向こうにとっても想定外。で、あれば数日中に動く可能性はゼロでは無かった。

 

 

 

次の日は生憎の雨模様だったので、琉球舞踊へ行くことになったのだが、女性のみであった為、達也は基地見学へ。それに深雪と敏子姉夫妻が同行していった。家では父さんと母さんがお留守番する事となった。

琉球舞踊で着付け体験まで出来たのだけど、こんなに派手というか鮮やかな服を着た事がなかったから少し恥ずかしかった。尤も、そんな恥ずかしがる私を弄ってきた穂波さんは丁寧に私と咲那の琉装を写真に収めていた。こんなにも楽しいのは久しぶりで年甲斐もなくはしゃいで係員に注意された。

 

 

 

もっとも、それが沖縄に来て最後の楽しい一日になるとはこの時はまだ思っても居なかった。

 

 




別荘に戻った後、何やら咲那が深夜さんをヒーリングフォースを使ったマッサージしていた。何か不調でもあったかなぁ?
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