それから暫くして楽しくも気楽な日々を過ごしていたある日の朝、否早朝に事は起きた。
それは早朝の臨時ニュースによる情報だった。
『お伝えします。本日早朝、沖縄諸島沖にて所属不明の潜水艦が出現。
海上保安庁の巡視船と国防軍の警備艦が攻撃を受け、
巡視船が爆沈、警備艦が大破しました。
国防軍は迎撃態勢を固めましたが、所属不明の艦隊は尚も侵攻を続けており、
現在久米島、慶良間諸島、粟国島を攻撃中との情報が入って来ています。』
「なっ、戦争が始まるのですか・・・!?」
そのように狼狽える深雪をしっかりと抱き締める達也。もうすっかり兄妹って感じがするなぁ。初めて会った時はまだギクシャクしていたのに、抱き締められて顔を赤らめる深雪は達也の腕を掴んでいる様子で「お兄様」と言いながら離れないようだった。
だが、私や咲那、父さんに敏子姉はニュース映像に映るドロイド兵器をしっかりと見ていた。
「間違いないね。通商連合が確実に与してる。国防軍だけじゃ戦線は崩壊するよ。」
「だが、まだ許可が下りてないのだろう?」
「うん。マスターの話では国会で紛糾しているみたい。だけど、このような状況でどうなるか・・・。」
――――――――――――――――――――――――――
空いている日にマスターに連絡はしていたが、銀河連邦に関する情報を公表してからというのも、銀河連邦加盟に賛成と反対、様子見の3勢力に分かれた状態となっており、特に反対派の意見は有りもしない内容を好き勝手に流して印象操作をしているようだった。
だが、何回目かの国会審議でマスターがホログラムを使ってコルサントの議長室と繋ぎ、パルパティーン最高議長とオーガナ議長補佐がホログラム通信で直接対話を果たした事で反対派に言い分の大半が嘘であるという事が国民にバレて支持率も下がっているという。
だが、それでも銀河連邦との加盟にしつこく反対している状況だとか。
それらの議員について父も誰なのかを聞き出していたが、父曰く
《共産主義派閥の問題ばかり持っている奴ら》
だという。
その殆どが大亜細亜連合側と繋がりを裏で持っているとされている議員ばかりで公安にもマークされているが、表に出ていないだけでかなりの献金を大亜細亜連合側にしているのだが、調べても何も出てこないらしく政権としても目の上のたん瘤なのだとか。(つうか、国会議員なのに公安にマークされてるって・・・)
「マスター、上級偵察部隊を使っては?」
『彼らか。・・・・・確かに潜入のプロだ。だが、国内での活動は善しとはされないだろうね。現状はまだその時じゃない。』
「ええ、ですが大亜細亜連合側に繋がりのある議員に関する情報収集の名目なら。」
『その情報を政権側に売る・・・いや提供すれば加盟へ向かいやすくはなるだろうな。だが難しい話だ。・・・尤も、紫音たちの先の不意遭遇(国会審議では民間人が遭遇した事になっている)は国会でも取り上げられた。連中、随分とふざけた事ばかり抜かす愚か者ばかりだな。ドゥークーを呼ばなくて正解だった。』
「マスタードゥークーを御呼びすれば、政権反対派は一人残らずフォース・チョークで絞められるでは?」
『有り得ん話ではない。ともかく、まだもう少し掛かりそうだ。』
だが、この話の後、父の知り合いの手引きで密かに国内に上級偵察部隊のトルーパー6名が潜入。対象としている議員に関する情報を搔き集め始めた。
奇襲や戦闘よりも敵の情報収集能力に長けた彼らはあらゆる作戦における影の功労者でもあった。このトルーパー、ジェダイですら任務中、滅多にその存在を気付けないのだ。高位のジェダイでもマスターヨーダレベルに高いフォース感知者でなければその存在を見つける事は困難だった。
その為、僅か2日間の間に膨大な量の情報と各議員の隠し金庫に隠された政権転覆を狙う情報等を回収してマスターレヴィナスに渡していた。
そして、それらの情報は軍機扱いで首相官邸へと送られ、首相以下政権関係者を驚愕させるのだった。
――――――――――――――――――――――――――
大亜細亜連合軍による侵攻にどうするかという時に2種類の電話が鳴った。
達也と穂波がそれぞれ電話を取り、達也が
「深夜義母さん、風間大尉から基地内のシェルターに避難してはどうかと、申し出がありました。」
すると、穂波さんが
「お話し中失礼いたします。奥様、真夜様からお電話です。」
そう言って代わった電話から真夜さんの声が漏れていた。
世間話という前置きの後に、彩夢さんを通して軍に話を通してくれたのだと。
また一緒に一家も居るという事で、皆でシェルターに向かえるよう手配もしていた。
その手配した車両というのも直ぐに到着していた。
6人乗りの軍用車両2台が恩納基地より別荘の前までやって来ていた。
此処で、敏子姉と秋房さんは治安維持の名目で別れる事となった。街中でゲリラによる破壊活動の可能性も考えられる事から、密かに持ち込んでいた機動隊用アーマースーツ一式とサブマシンガン(MP10A6)を装備して2人は覆面パトカーで那覇市内へと走っていった。
移動中、運転手の軍人から状況を聞いたが、あまり芳しくない様子で既に慶良間諸島等の島々は陥落。住民がどうなったかも不明なままで、侵攻軍潜水艦隊と国防軍が戦闘を継続している状況だった。まだ本島には上陸を許していないものの、状況次第ではどうなるか分からないという。
連れられてやってきた地下シェルターへの連絡通路で待つように言われて連絡通路の待合席で待っていたが、何時まで経っても案内の兵士が来る様子が無かった。
すると基地内だというのに、銃声が断続的に響き渡った。
「達也君、状況は分かる?」
「いえ、ここからでは・・・。この部屋には魔法を阻害する効果のあるもので、外の様子までは分かりませんね。」
「ええ、この部屋というより、基地建物全体に魔法的な探査を阻害する術式に覆われているように思えるわ。」
アサルトライフルによる断続的な銃声は、明らかに基地内部から響いており、父は護身用に持ち込んだ拳銃をスーツの内側から取り出して構えていた。
「ふむ、魔法的なものは分からんが、穂波ちゃんや達也くんがそう言うならそうなのだろう。だが、この銃声は・・・正規軍の使うアサルトライフルのものだぞ。」
「まさか、反乱が?」
「分からん。」
国防軍内部の反乱分子によって引き起こされたとすれば、事は大きくそして自分たちも危険な状況下にあるものと同義だった。
「・・・・・・達也。」
「はい、なんでしょうか。深夜義母さん」
「外の様子を・・・見て来てくれるかしら?」
「達也一人に行かせるのか?この状況で?・・・・・いや、俺も見に行こう。」
深夜さんが達也に見にいかせようと静かに言った事に父が反応した。
そして、父も軍人としての本能なのか、連絡通路に隠された武器庫からアサルトライフルを手に取って弾倉の弾薬と予備弾倉を確認してから、達也と共に外の様子を見に行くと言い出したのだ。
「でも、それじゃあ誰が・・・。」
「安心してください、奥様。私がガーディアンとして居りますから。」
「父の代わりとなるかは分かりませんが、私も咲那も居ますので。」
その咲那は壁に手を当てて、フォースを使って外の様子を探ろうとしていたが、あまり良い表情をしていなかった。
父と達也が通路の入口から走り去るのを見てから、私はジェダイローブを荷物から取り出して身に纏った。
そして早着替えでジェダイの正装に着替え直ると、その状態に初めて見る深夜さんや穂波さん、深雪がびっくりしていた。
「!?・・・紫音さん?」
「やっぱりこの格好じゃないと、だね。」
私は驚く深雪を余所に咲那に問いかけた。問いかけられた咲那も既に着替え終えており、私も咲那も新調した新しいタイプのジェダイ正装に着替えていた。
オールインワンタイプの灰色と濃緑色のコンビネゾンロンパースにカーキ色のベストで7分袖の私に対して咲那は長袖のフィンガーレスグローブ一体型だ。
だけど、どちらにしてもこの場では異色に見えるだろう。
「「「・・・・・・・・・・・」」」
だけど、そんな周囲の反応も置き去りにして私と咲那は即座に扉の先の通路からの足音を聞きながら円柱の柱の裏に隠れた。直後、ドアが乱暴に開け放たれた。
「失礼します!空挺第2中隊の金城一等兵であります!」
柱の後ろに隠れながら深夜さんの傍にいる穂波さんに目配せで合図を送った。
基地内で武装している事は置いておいても先の基地内の銃声について聞かなくてはならない、先にすべきことの一つだからと。
穂波さんもそれを理解して、金城一等兵が地下シェルターへ案内する事に対して拒む深夜さんの問答の後に先の銃声について問い質した。すると、
「先の銃撃は、基地内で反逆者が出た為です。御安心を、既に制圧済みです。」
それだけで、私と咲那は判断材料として十分だった。この人達の銃器から匂う硝煙の匂いは然程ついていなかった、それは銃撃戦を如何にも行いましたと思わせる為。
普通の人間なら騙せたでしょうが、生憎この手の罠を幾度も経験してきた私たちを騙す事は出来なかったとみるべきだ。そうじゃなくても、深夜さんは達也と私の父さんが外の様子を見に行っていると建前でそう言った。母も元軍人というだけあって、既に入って来た軍人たちの挙動から察し付いていたようだった。穂波さんと深雪は、深夜さんが建前でそう言ったと言って気付いたというより、深夜さんの直感が鋭いのを思い出した感じだった。
建前で待つという判断をした此方に対し、金城一等兵は全員来てもらうと言い放った。
怪しいという疑心は確信に変わるには十分だった。
後はどうしようかという時、彼らが入ってきて閉じられていたドアがまた蹴破られた。
蹴破った本人は通路の壁に戻ったが、その通路から叫ばれた内容から、どちらが正規軍なのかは想像に難くない。
唐突に始まる銃撃戦に母はカウンターを蹴って即席の壁を作ると同時に深雪を引き寄せてソファーチェアの後ろに隠れさせた。続けて深夜さんも母の傍に寄った事で一か所に集まり、穂波さんはガーディアンとしての務めを果たそうと魔法でシールドを形成した。
「障壁魔法だと!?小癪な!」
シェルターに続く通路で金城と一緒にやって来ていた兵士の一人が穂波さんの魔法に気付き、腕をかざして来た。それがなんであるかは、長く戦争を経験してきた私も咲那も分かる代物だった。ただ・・・・・
「威力が・・・・」
「・・・・・弱いですね。でも、これでも、此処の魔法師には脅威のようですし。」
魔法が解除された上、深夜さんが頭の痛みを訴えるように座り込むのを見て咲那が別の魔法を使った。
「なっ!?もう一人居たか!・・・・・はぁ!?」
咲那が形成した魔法はサークル型の多重障壁魔法だけど、効力は非常に強く、また癒しのフォースに長ける咲那のサークル内では随時癒しのフォースによって傷ついた箇所を癒すというもの。咲那は癒しの技をパダワンの時に習得し、戦闘の過程で範囲も広く多くの者に作用する癒しの技を編み出し構築していた。
そして、今回も同じように構築したが、彼が使ったアンティナイトによるキャスト・ジャミングは咲那の障壁魔法を打ち消す程の威力は無かったようだった。
「馬鹿な!?軍用のアンティナイトだぞ!」
「だったら!」
そう言いながら通路の先に銃撃を続けていた金城らの銃口は咲那に向いた。サークルの真ん中にいる咲那にも銃撃は無意味だろうけど。そう思っていたら動揺してキャスト・ジャミングが弱まったのを好機と見たのか深雪が飛び出して魔法を行使していた。相手はアンティナイトを持った男に対して。発動速度が速いのなぁって思っていたけど、相手を殺したわけじゃない?・・・・・いや、違う。
肉体は死んでいない。死んだのは・・・精神。成る程、これが、四葉家が持つ精神干渉系魔法・・・ということか。使いどころを間違えれば大きな問題にもなるけど、今は非常時だし。
それよりも、飛び出した深雪の安全の方が優先だね。
深雪は、行使した魔法がなんであるかを理解したらしく敵を目の前にして俯いてしまっていた。精神を殺されて、肉体的には死んでいない・・・ほぼ死んだも同然の同僚に声を掛ける敵兵士達。しかし、受け答えも出来ずに佇んだままの男に残った兵士達が深雪に向けて銃口を向けた。
「やらせはしないよ。」
咄嗟に深雪を自身の元に引き寄せて、私はフォースシールドを張る。
障壁魔法も使えるけど、此処はフォースの方が良い。
フォースシールドは、幾重のブラスターの弾丸すら止めることが出来る私の障壁魔法とは違う強力で身を守る為のフォース。
金城ら5人の兵士が私に向けて、正確には椅子や楯にされたカウンターに隠れた母や友人の元にアサルトライフルの弾丸が殺到した。
「なっ、何が起こってやがる!」
「いいから兎に角撃て!」
「くっそっ!効いてないぞ!魔法なのか!?」
弾丸はフォースシールドによって私に当たる事無く彼らと私の中間より私よりに空中で静止する形で止まっていた。
そして、弾倉の弾丸を全弾撃ち尽くしたのか銃声が止んだ。
「えっ!?こんなの・・・」
「そんなっ!?」
「ばっ、バケモノ・・・・・。」
「有り得・・な・・・い!!」
引き寄せられて私に抱きしめられた深雪もガーディアンとして即座に復帰した穂波さんも、敵となった兵士たちも唖然とし、驚愕した。放たれた弾丸は全て当たる事なく、静止しているだけでなく、防いだ私もただ、左手を胸元に伸ばしてかざしていただけの恰好でいたのだから。
そして、フォースシールドを解除すると、空中に浮いていた弾丸はその運動エネルギーを無くしたように床に音を立てて落ちていった。数百発の弾丸がカランカランっと音を立てて落ちた事態に彼らは復帰出来ないようだった。だけど、私は彼らに猶予を与えるつもりは無かった。即座にフォースプルで4人のアサルトライフルだけを引き寄せて、代わりに外側に立っていた2人をフォースプッシュでその場から押し出して壁に縫い付けた。
残りの2人は武器を奪われた事実に加えて間髪入れずに両脇の同僚が叩き付けられた事態に逆上して軍用ナイフを取り出して襲い掛かってきた。
「あ、あぶない!」
「此処は、私が!」
穂波さんがCADを弄って何かをしようとしていたけど、咲那が肩に手を置いて止めさせた。
「大丈夫ですよ、マスターは。」
「大丈夫って、・・・それにマスター・・・って・・・!?」
穂波さんの目に映ったのは、紫音がいつの間にか右手に光る棒を持っていたということ。そして、襲い掛かって来た3人をさして脅威ではないと言わんばかりに簡単に斬り伏せてしまっていた事実だった。金城を含めた3人はナイフを持っていた腕と片足をライトセーバーで斬られた事で腕は切り捨てられ、片足は深く抉るような深い火傷を負う事となった。
このような状況になって漸くというべきか、こっちの一時的と言えど危機的な状況を察した達也が飛び込んできた。
「深雪っ!!」
誰も怪我も無い状態で問題無いと達也を落ち着かせると、達也は深雪を優しく抱き締めていた。
「良かった。・・・・・ありがとうございます紫音・・・さん」
「紫音でいいと言ったでしょ、達也。」
「お兄様、ちょっと・・苦しいです。」
「あっ、すまない。」
自然と力が籠ったのか、強く抱き締めていた事を謝罪する達也。だが、深雪は達也の身体の震えと抱き締める力から、どれだけ心配されていたのかを思い知るのだった。
「まったく、幾らキャスト・ジャミングが弱まったからって飛び出すなんて、暫く達也にそうしてもらいなさい。」
深夜さんは、妹愛の強い達也の行動に半分呆れながらも、深雪が取った行動が一つ間違えれば甚大なものになっていた可能性が十分にあると確信していた。だから、達也に成すが儘にされなさいと言い、言われた深雪はエッ、と驚いたままだった。
其処で漸く父を含めた国防軍正規軍の兵士たちが連絡通路へと集まり、反乱を起こした5人の兵士の確保に当たっていた。
だが、一人だけ尚も反抗せんと拳銃を抜いてその銃口を紫音に向けていた。
「化物ぉ!!」
「「「!?」」」
「「「!!」」」
項垂れて抵抗していないと思って確保を後回しにした正規兵の誤りだった。
拳銃を抜いたその男が引き金を引く前に男の頭部に1発の青い光弾が狙撃され、死亡した。
誰が撃った!そう父が叫ぶ前に連絡通路の窓から現れた4人の黒い装甲服を着た兵士たちがやって来た。
「流石な腕前だね、ノーマン。」
「将軍でも反応出来たのでは?」
「私がしようかどうか迷っていたところだったよ。」
私が彼らと話し始めた事で、事情を知る父は反乱兵の始末を、命令を待つ正規兵に優先させていた。
「んで、ノーマンたちが来ているという事は・・・。」
「そろそろ通信が届くかと。」
連絡通路の後片付けを済ませた父の指揮下にある兵士たちが一旦通路から出るのを見てから父が切り出した。
「そろそろ、話してもいいんじゃないか?紫音」
「そうだね。ノーマン、マスターは何か言っていた?」
「通信を寄こすとは言っていましたが・・・。」
そう言った丁度その時、コムリンクが反応した。
ホログラムによる通信を行うとその通信先にはマスターレヴィナスが映っていた。
「丁度良いタイミングです、マスター。」
ホログラムで映し出されたマスターとの通信に初めて見た国防軍兵士、士官、そして司波一家は驚きを隠せずにいた。それも当然、この世界にはそんな技術無いのだから。そして国会中継を見ていたものは気付いた。銀河連邦からの使者が持ち込んだものと同じものを持っている事に。
『そちらのごたごたは収まった頃合いだと思ってな。』
「マスターの方は?」
『議会の方は漸くと言ったところだ。この国の王と言うべきか、天皇陛下臨席の元で行われた臨時国会で、晴れて決まったようだ。テレビを付けてみると言い。』
マスターの発言に兵士の一人が連絡通路に置かれたテレビのスイッチを押した。
『速報です。政府は先ほど、銀河連邦なる銀河系組織への加盟を正式に決定しました。
繰り返します、日本国政府は銀河連邦への加盟を決定しました。ご覧ください、映像には銀河連邦元老院からの代表として訪れているベイル・オーガナ議長補佐兼副議長と大高彌三郎日本国首相が厚く手を取り合っています。』
テレビではどのチャンネルでも一斉に銀河連邦加盟を報じていた。沖縄への軍事侵攻を報道する最中に行われた今回の加盟騒動。銀河連邦が提示した情報量と加盟に当たってのメリットデメリットは、早急に日本国が欲する戦力等を理由に上回った結果だった。
だが、銀河連邦という超惑星間連合国家に地球の一国である日本国の加盟は、世界にも多大な影響を及ぼすものだと危惧されていた。
それでも、
「漸く、銀河連邦に・・・ですか。」
『そうだ、後は・・・紫音。出番だ。』
「銀河連邦に加盟した日本国は、云わば銀河連邦傘下の国家。その国における如何なる侵略行為に対し我々はあらゆる手段を以って外敵の排除を行わなくてはならない。」
『そうだ。・・・・・副議長』
そう言ってホログラム先の人間が変わった。出たのはベイル・オーガナ副議長。
『マスタージェダイ、九條紫音殿。沖縄に侵攻する分離主義勢力を伴った侵攻軍の排除を銀河連邦元老院議長代行として要請したい。』
「・・・オーガナ副議長、それは正式に・・・ですか?」
『そうだ、これまでの緊急の軍事行動も含めて全て銀河連邦元老院の認可の上であるということだ。』
「承知しました。軌道上に展開する全軍を直ちに侵攻軍を撃退に向かわせます。」
『幸運を祈るよ、マスター九條。』
『紫音、軌道上の艦隊には紫音の部隊を最優先で降ろすよう先に命令しておいた。時間の短縮にはなるだろう。加えて、先にイオタ分隊がいるだろうが、後続のUウィング支援機2機とヘリコプター部隊も到着する筈だ。』
「特殊作戦部隊のトルーパー20名と国防軍の・・・ですか?」
『指揮官には話を通しておいたから自由にやれ・・・・・死ぬなよ。』
「問題ありませんマスター。フォースと共にありますから。」
『ああ、フォースの加護があれ紫音。』
そう言って通信が切られると、其処に数人の足音が近づいているのを感じ取った。
ドアからやって来たのはマスターと一緒にやって来ていた特殊作戦部隊のキャプテンフィーリーと国防軍士官4名だった。
「キャプテンフィーリー、彼らは?」
「はっ、自分は国防陸軍中央即応連隊所属尾田大尉であります。国防大臣の命により、指揮下で戦えと。」
沖縄侵攻の報道を受けてから直ぐに特殊作戦部隊の出撃命令をマスターレヴィナスが出していた。国防省の作戦司令室で連絡したのを見られており、司令官が即座に待機中の中央即応連隊から4個小隊60名を先駆けに派遣を命じ、立川基地から2機のUウィング支援機が発進するのに合わせて、立川基地から2機、木更津基地から1機、朝霞基地から1機の計4機のMV-22オスプレイが出撃、Uウィング支援機の編隊に合流して沖縄へ向かっていた。
これに合わせて西部方面軍も沖縄支援の為の戦力派遣を行いつつ、大亜細亜連合に対する更なる警戒を強めた。西部方面軍が管轄する空軍基地から戦闘機、攻撃機、爆撃機、輸送機等が次々に装備を整えて発進。侵攻軍の脅威に晒されつつある沖縄へ軍を派遣していた。
時同じく東部方面軍、東北方面軍からも部隊抽出され、海軍、空軍の力を借りて沖縄へ出撃しつつあった。尤も、沖縄へ最初に着いた築城基地所属の戦闘機からの第一報で戦力輸送が困難な状況になるという報告がされた。
《敵艦載機群ニヨリ、沖縄ノ上空、敵制空権下ニ有リ》
銀河連邦からもたらされた分離主義勢力のドロイドスターファイターの情報により、沖縄の空はヴァルチャー・ドロイド・スターファイターやヘヴィ・ミサイル・ドロイド・ガンシップ、ドロイド・トライファイターによって、沖縄から先発発進した迎撃隊は数が少なく編隊としても多く揃える事が出来なかった為、奮戦虚しく全機落とされていた。
Uウィング支援機とオスプレイ隊は、侵攻軍に制空権が確保されつつある中、嘉手納基地から発進した国防空軍や統合空軍の戦闘機飛行隊の援護の元、恩納基地に到着を果たしていた。
戦闘機隊は壊滅したものの、ヘリコプター部隊は損害を出しつつも上陸部隊や低速移動するスターファイターの撃墜に成功していた。それでも、状況はゆっくりと国防軍側が押されつつあった。
こっちがホログラム通信をしている間に達也が参戦の意欲を示していた。
深雪に手を出された事がかなりキテいるらしい。達也の参戦には父が反対し、深夜さんが宥めようとしたようだけど、行くという意思の固さに父が最終的に折れた形となったようだった。だが、達也には自分から離れるな、勝手は許さんと2つを守れるなら良しと父が言い聞かせていた。
「さて、状況は極めて深刻だ。九條中将、母さんたちはシェルターに?」
私の普段とは違う変わりように一瞬狼狽えた父だったが、即座に反応してみせた。
「あ、いや、・・・・ああ。風間大尉。」
「はっ、基地内で最も装甲の厚い防空指令室に案内します。九條閣下も一旦此方に。」
そう言ってその場の面々でその防空指令室に案内された。
母さんたち4人は将官視察用の部屋に案内されて、私たちはこのまま指令室に留まった。
防空指令室は基地内で最も奥まった場所にある上、地下指令所でもあった。
その為、基地内では最も装甲が厚いが無論退路が断たれたような形でもあった。
緊急脱出用の通路が2か所あるようだけど、それでも万が一を考えれば危険な香りがしていた。
「咲那。」
「はい、マスター。」
「貴女は此処で、クリフ、カート。2人も残って咲那の指揮下に。」
「「はい、将軍。」」
咲那を此処に置いたのは、万が一に備えて。だけど、私のフォースが危機を教えてくれていても、それを話したところで信じられるのは咲那とコマンドー2人だけ。そして3人は私の言い分を察してくれていた。
「牛島基地司令、敵の進行状況は?」
「九條中将、状況はかなり切迫している。敵は慶良間諸島を完全に制圧。其処を橋頭保として進軍を許している状況だ。既に那覇空港基地は爆撃で滑走路、管制塔を含む機能を消失。敵の主力は空港を占拠せず宜野湾からの侵攻を始めている。現在浦添市、宜野湾市、北谷町の三か所で国防陸軍防衛隊と義勇軍が迎撃しているが、名護湾から上陸部隊が接近しているという報告があった。それから宜野湾市で防衛指揮をしている八原君からも同様の報告を受けた、映像を」
そう言ってスクリーンに映し出された映像には、海面にびっしりとまるで蝗のようにやってくる、パースウェンダー級タンクドロイドにホーミングスパイダードロイド、クラブドロイド、ドワーフドロイドにトライドロイド、それに加えて上空には上陸艇にスターフリゲートまで。異常とも取れる大軍団が名護湾を目指して向かって来ている事が無人偵察機によって分かった。この無人偵察機は、大軍団を撮影出来たものの、トライファイターによって撃墜された。
「中将らには名護湾に向かって欲しい事になるが・・・・・。」
「キャプテン、GL持ちは?」
「4名です。」
「スナイパーは?」
「同じく。」
一緒に来た即応連隊所属の小隊長たちには父、中将の指揮下に入ってもらった。いきなり他国の軍を指揮するというのは、勝手が違うから難しい。だから、一緒に出ると言った父の指揮下の方が動きやすいだろうし。
「どうするのだ?紫音」
「どうもこうも無いよ。名護湾から侵攻する部隊を何処かで撃退する必要がある。・・・・・此処だ、名護岳にしよう。」
私はホログラム通信で艦隊に通信回線を開いた。
スタークルーザーの艦橋にある通信ルームには、コマンダーブレイブを含む各コマンダーたちが詰め掛けていたようだった。
『将軍、我々は準備が出来ています。レヴィナス将軍の命の元、現在短距離ハイパースペースに入ろうとしていますが。』
そう答えたのは今回の艦隊先遣司令を任されたコバーン提督だった。
「コバーン提督、短距離ワープののち、太平洋上に降りると思うが艦隊は沖縄南東沖全域に展開させて欲しい。推定でも5個軍団規模のドロイド軍の攻勢だ。激しい戦いになる。」
『分かりました。第11スカイ・コープスは何処に向かわせますか?』
「情報を送る、名護岳周辺に部隊を展開するよう頼む。ブレイブ」
『はい、将軍。お任せください。』
「国防軍が得た映像も送るが、ジオノーシスやキャッシーク、マイギートよりも激しくなりそうだ。ウォーカーやタンクを名護岳周辺に展開させつつ、兵力は私が居る場所を中心に展開して。ただ、制空権の確保が必要になる上、ドロイド軍に囲まれた状況に陥っているかもしれない。」
『そこは腕の見せ所って奴ですよ。』
コマンダーヘルダーがそう言った。航空爆撃連隊を率いるコマンダーとしての実力も今までの戦闘で確かなのだ。
「任せるよ、各コマンダー、キャプテンには改めて伝えるが国防軍を主力とした防衛戦だ。恐らく、沖縄の外側で攻めあぐねている事だろう。我々はどんな防壁であっても穴を開ける事は得意だ。侵攻軍諸共海の藻屑とするぞ!」
『『『『『『はい、将軍!!』』』』』』
艦隊の方はこれで何とでもなる、後は此方だけど・・・。
何故か、国防軍の皆さんが唖然とした表情で此方を見つめている・・・?
「はぁ~、キャプテン。」
そんなに私の変わりように驚くかなぁ、まったく。
「はい。」
「我々は名護岳に向かい、其処から西進する。北部には市街地が広がっているからなるべく敵の意識をこちらに引き付けるぞ。」
「なら、今回は激しくなりそうですな。」
「今回も、だろ?ランス。さて、拠点として何処かいいところが無いか・・・。」
キャプテンフィーリーとコマンドーランス、コマンドーノーマンと作戦を練って話しているだけに何処が良い籠城地となるかが分からなかった。
年若い私がそんな軍将官のような振る舞いに呆気に取られていた国防軍人たちだったが、名護岳の話になった時、オペレーターの一人が名護岳から海岸線までの広範囲地図を表示してくれていた。
同時に漸く復帰した士官たちも自らの行動目的を思い出して行動を開始していた。
「・・・九條・・・将軍。」
たどたどしくだが、言い慣れないのかそう言いながら士官の一人が私を呼び出した
「ん?なにかな?」
「名護城跡はどうでしょうか?」
オペレーターとしている士官の一人がそう言った。
同時に映し出された名護城跡は、石垣しか残っていないものの、段々畑のように階段状に連なっていた。
「通れる範囲も限定されていて、且つ防御地点としては役立つかと。」
「馬鹿、其処じゃ包囲されやすくて危険だ。通り道以外が切立った森になっているとはいえ、側面の防御が不安定過ぎる。」
「だが、小数でも防衛は出来るな。」
「危険過ぎます。」
「他に案があればいいが・・・。」
危険だと言った何人かの士官は代案を用意出来なかった。
差し迫った状況で代替出来る拠点が名護岳周囲で其処しか無かったのだ。
「防衛火器としては貧弱ですが、改良型ブラスター・タレットが4基あります。」
「Uウィング支援機の重連射ブラスター砲を取り外して拠点防衛火器に回せない?」
「直ぐに対応します!」
外に残ったトルーパーに連絡するキャプテンとのやり取りを見た基地司令も部下に問い質した。
「おい、拠点防衛火器に重機関銃は無かったか!?」
「武器倉庫なら、何か・・・。」
「直ぐに確認させろ!場合によっては持って行かせろ!」
「はい、直ぐに確認します!」
2機のUウィング支援機の合わせた積載物として改良型ブラスター・タレット4基に加え、分隊用のエネルギーシールドが8基、レーザーマインが20個、イオン・タレットが2基、強力な爆発物となるサーマルインプローダーが10個、積載の重連射ブラスター砲4基で防衛する方針を固めた後、国防軍側の方でも、M5重機関銃(40mm70口径)4基に81mm迫撃砲2基、迫撃砲弾20発、ロケットランチャー20発分に簡易SAMランチャー1基(8発分)を名護城跡へ輸送する事が決まった。
MP10A6・・・MPXのタクティカル仕様、9mmパラベラム弾使用型
第11スカイコープス(空挺兵団) 構成兵員約36800名
麾下主力部隊 第327機動大隊・・・TX-130Tセイバー級ファイヤータンク、TX-135Tシェリダン級ファイヤータンク、AP-DP、AT-RT、UT-APCを有する機動力と強力な火力のある部隊。
Uウィング支援機・・・インコム社にある設計図を見つけた紫音の要望で開発、その後軍へ引き渡して使用した結果、特殊作戦を実行する部隊から好評で特殊作戦部隊やコマンドー部隊の移動手段に使われるようになる。現在は連邦軍特殊作戦部隊と一部部隊にのみ提供されるに留まっている。