後1話で終わる予定で・・・。
討論会当日、咲那は深雪たちに同行して講堂の方に行くのを見た後、私は屋上に移動した。
学内差別撤廃を目的とする有志同盟による生徒会との公開討論会と題して開かれた討論会は、内容はさておいても有志同盟の不利的状況から始まっていた。
生徒会会長七草真由美は、学校からの情報を元にした実績と共に有志同盟が言う差別的状況は無いと言った。だが、これらの情報は誤りがあった。学校からの情報というが、実際はそうでは無かった。学校から齎された情報自体が誤りのある情報だったわけだ。
クラブ活動における予算が、魔法競技系に優遇されているという点においては正にそうであった。魔法競技自体が大会も少なく、全国展開されていないものが多いのに関わらず、予算が多く配分されていた。それは複数の予選通過や大会優勝が考慮されているとは言い難く、非魔法競技クラブの方が、多くの予選や地区大会を経て、地方大会や全国大会へと出る為、当然競技者人口は現在でも魔法競技よりも多い。第一高校では剣道部や男女バレーボール部、弓道部、書道部が地方大会や全国大会にて優勝、準優勝しているケースが多いが、翌年に配分される予算は少ない傾向がある。中には遠征に行く予算を個々から捻出していくクラブもある程だった。無論、その点有志同盟も負けてはいなかった。
予算編成で実績があるクラブに多く予算を降ろしているなら非魔法競技クラブの方が魔法競技クラブよりも高い実績を出していると発言し、見劣りしない予算と言いながら結局は非魔法競技クラブを下に見ているから低い予算を割り当てていると痛烈に批判していた。
だが、この反論にも事前に提出された予定予算から勘案していると反論し、論戦はヒートアップしていた。
「溜まった鬱憤を吐き出す機会・・・だけど、甘く見ると痛い目を見るよ。彼らはそれだけの事を受け続けてきた。判断を間違えれば、どうなるか分かっているのだろうね。」
咲那の無線機から聞こえる講堂の討論を聞きながら、自信満々にしていた七草会長の今後の予想が崩れようとしている等、思いもしないだろうなと他人事ながらに思っていると・・・
「紫音姉、忠仁兄さんが来ているけど何か知ってる?」
「・・・ええ、遂に動くって事よ。」
「・・・!成る程。」
咲那も、今後の動きがある程度予想付いた。
今尚白熱する討論で七草会長は具体的な事例や数字を持ち出して、有志同盟の反論を一つずつ答えて言っていた。
その上で、七草会長は任期中に生徒会の役員指名の制限を撤廃すると宣言した。
だが、其処でうちの兄が動いた。
「真に見事な討論だった。だが、聞くが役員制限を君が撤廃したところで君が止めた後に復活する可能性は考えた事はあるかな?」
突然現れた男性に会場の生徒達がざわめきだした。
「七草君、君が幾ら情で訴えても根強く残った差別感情は簡単には塗り替えられない。任期後に若しくは君が推す人材が居なくなった後に元通りになる事だってある。」
「そ、それは・・・。」
「無論、難しい事だ。それに、君らが言うやり方は、君らが禁止している用語で言えば、ブルームがウィードに対してそれらの権利を与えようとも取れるぞ。結局は十師族も考えはブルーム視点と一緒だったとな。それ故の、起こるべくしての暴発では無いのかな?」
暴発・・・放送室立て籠もりを指しているが、七草会長はこの男性が誰なのかを思い出せずにいた。だが、ふと、来賓で空いた席の札を見て、血の気が引いた。
そう、その札には『国立魔法大学学長』と書かれてあったからだ。
「だが、君ばかりを責めるわけにもいかない。そもそも、一科、二科の制度よりも問題なのは君らが着ている制服だ。」
此処で別のざわめきがあったのは教員側だった。
「元々、一科も二科も制服は同じであり、紋章も入ったものだった。一科二科共に同じ制服だったにも関わらずどういうわけか、紋章入りと無しに分けられた。さて、どうしてかな?校長」
「そ、な、いや、それは・・・。」
「全く同じ紋入り制服だったなら、問題は此処まで大きくならなかったものを、此度の騒動が君ら学生だけではない、学校側の意識の問題も加わって来る。」
「く、九條学長。こ、此処は生徒達が主役であり・・・・・」
「ああ、生徒が主役だ。本来なら私が出て来る筈は無かった。君らが虚偽報告ばかりしてきた所為で、出向く事になったがな。」
校長は、なんとか宥めて矛先を学校側に向けないようにしようとしたが、
「よもや学校側が意図的に二科生を中退、退学を推進していたとは思わなかったな。それも生徒間の差別を利用してとは恐れ入る。」
最早あれこれ弁明したところで止まる話題では無くなった。
有志同盟も、生徒会側も知り得ない新事実に会場の生徒達も大騒ぎになっていた。
「今更大人が介入して何になるんだ!」
「ああ、今更だとも。悪い大人に騙されて気付けなかった。それは事実だ。弁明しようがない。が、少なくとも、これらからは違う。これからは・・・」
ドゴォォォォン
話を続けようとしていた兄もそうだが、それに集中していた私も、ふと正門を見て遂に来たかと思った。RPGを撃ち込んだ工作員と一部が損壊して炎上する実技棟。
直ぐに私は、事前連絡で決めていた通りに立川警察署対策本部に連絡を入れた。
『遂に来たか。』
「ええ、応援お願いします。」
『分かった、第一高校で攻撃だ!』
電話の向こうで慌ただしく動き出す署員の足音と、通信指令センターからの放送が聞こえた。
『警視庁から各局、国立魔法大学付属第一高校にてテロ事件が発生。よって、高校を中心に10キロ圏配備発令する。』
『至急、至急、はやぶさから警視庁。現在、第一高校より煙を発見、炎上している模様。
また、正門前にあっては不審車両4台、ハコ車1台を確認。武装したマル被も多数有り。』
『増援を逐次連絡しながらPC(警察車両)を上空から誘導せよ。』
『はやぶさ了解。』
「CP(コマンドポスト)、正門からの武装兵は10人前後、BD(バトルドロイド)の積み下ろしも確認。また、裏門、西門より構成員の侵入を確認。図書館、実験棟、実技棟への侵入も確認。」
『了解、・・・行きますか?』
「ええ、組織犯罪対策部と4機、SAT第3中隊と保安部隊に連絡して。私も合流するわ。」
『了解。第一高校の方は我々警察にお任せを。』
立川・八王子警察署から自動車警ら隊と交通機動隊、機動捜査隊が急行し、八王子警察署に集めていた機動隊も第一高校へ急行しつつあった。
サイレンを鳴らしながら最初に到着したのは、第一高校最寄りの駅交番から急行した地域課の警察官だった。遅れて、八王子警察署管轄の警察車両八6、八14が。更に交機隊や機捜隊の警察車両も次々に高校周囲に駆け付けていた。
事前準備がされていた事もあって、機動隊員を乗せた警察バスも傍に到着し、第一高校周囲を規制線が張られ、包囲が完了しつつあった。
警察官達の所持火器は、PDW(個人防御火器)のMPX-TacticalやスコーピオンEVO5、散弾銃のM590A1、拳銃のP45Tで統一されていた。また、ライオットシールドではなく、折り畳み式のバリスティックシールドを多用しているが、簡易設置型のモバイルカバーも銃撃の激しい遮蔽物が少ない場所でも使っている。
第一高校は正門から主力が侵入しており、また校内の有志同盟による手引きで裏門と東門からブランシュ工作員が多数侵入済みだった。
その為、踏み込むべきか現場で混乱が生じたが、作戦司令室から校外の工作員のみ対応し、逃亡する工作員や有志同盟に属する生徒を確保する事に徹した。だが、正面の正門付近にはバンが4台とハコ車1台、そのハコ車からは格納されていたB1バトルドロイド30体が降ろされ、起動しようとしていた。
「イオングレネードを投げろ!」
「ブラスターピストルはスタンモードに変更しろ!間違っても実弾は撃つなよ、流れ弾が校内に飛ぶ危険性があるからな!」
鎮圧の為に渡されていたイオングレネードは電子機器を無力化する手榴弾、用はEMPパルスを周囲5m以内に放つ非殺傷火器である。無論それは、工作員が持つブラスターピストルやブラスターライフルにも効果があった。
とはいえ、通常火器には無意味である為、バトルライフルの無力化と通信手段を奪う程度の能力しかない。その為、投げ終わった後が本格的な銃撃戦に発展していた。
ガス銃(催涙ライフル)を使う訳にも行かない為、警察官達はバリスティックシールドを正面に構えた機動隊の後ろから工作員目掛けて発砲を繰り返していた。
工作員は、目当てのブラスターライフルE-5が使えないと知ると、AKS-74Uアサルトライフルを取り出して発砲し出した。
「退避しろ!」
「車体の陰に!」
機動隊が楯を前に前進していたが、如何な警察と言えど、アサルトライフルの斉射は危険と判断するところだろう。だが、前面に出ていた八王子警察署管轄の機動隊は一歩も引かず、寧ろ後方からスタンモードのブラスターピストルによる攻撃が工作員を襲った。
「裏門制圧完了!」
「西門から逃亡する工作員7名を確保、門を制圧下に置きました!」
「よしっ、後は正門だけだ。」
スタンモードで当たれば、工作員とて気絶するのだが、当たればの話であった。現状、当たって気絶したのが3人しかいない上、正門にはまだ10名以上工作員の存在があった。
だが、警察がやややっている最中に別の車両隊が到着した。それも管轄違いの別の隊だった。
「やっぱりこうなったか。」
「踏み込みが遅くなったのも今あれこれ言っても仕方ないでしょう。加勢しますよ!」
現れた人達に警察官も学校教員も驚愕した。
この混乱の中、現れたのが文部科学省の高等教育魔法科の職員たちだったからだ。それも複数の教員免許を持った職員も引き連れて。
学校側からすれば、何故?という疑問と一緒に教員たちは事の重大さがまだ理解出来ていなかった。
「ブランシュの工作員にも魔法師が居るのに吹き飛ばされないのだな、機動隊は。」
「よく見てみな。空気圧縮弾を楯で受け止めているけど、楯自体が魔法を分散させているぞ。あれじゃ、並の魔法攻撃は防げるわけだ。」
「それだけじゃない。機動隊は魔法攻撃を考慮して2列、3列の密集陣形で前進している。前列が崩されても修復力は高いぞ。」
吹き飛ばされず前進する機動隊と周囲から掩護する交通課の警察官達。拮抗した状況に文部省所属の魔法師教員も加わった事で、正門は瞬く間に警察によって制圧された。工作員による銃撃で警察官に複数の負傷者が出たが、事前に搬送先を決めていた事もあって、応急処置後に直ぐに救急搬送されていった。
また、討論会を開いていた体育館では、窓から催涙弾が数発撃ち込まれたが、生徒会に属する学生の活躍により処理された。その後、侵入してきたガスマスクを付けた工作兵1隊は風紀委員長により制圧、追加で突入してきた武装兵の一団は一時付近の学生を人質に取ろうとするも、国立魔法大学学長によって全員が地面に縫い付けられた。
そう、後で確保に来た教職員も思わず絶句する、両手足の関節まで地面に埋まっているかのように見える埋められ方をした武装兵がいたからだ。
どうやってこのような事が出来たのか、使われたであろう魔法に関しても完全にオリジナルで流通していない魔法らしく、大学教授も務める教員は聞き出そうとしたが、学長が
「君らには私だけで無く別の者が話を聞きたいようだぞ。」
と言われ、親指で差された方へ向けられた先に立つ人達に校長以下教員らの表情が青くなった・・・。
無論、文部省の職員である。
校内における騒動の大半は生徒会、風紀委員会、部活連によって鎮圧され、西門から逃亡を図ろうとした司甲も風紀委員と警察の板挟みとなり、風紀委員に御用となったという。
尚、学外に逃げ出したエガリテに参加していると思われる生徒は、一時警察が身柄を拘束したが、学校内で起きた騒動にまで関与する予定は無いという理由からそれらの生徒は風紀委員へ引き渡しが行われた。
学内に侵入したブランシュの工作員は、教員らによって大半がお縄につき、最後まで抵抗していた魔法師工作員らも駆けつけた文部省職員と外部教員らによって鎮圧された。
「此処までの事態になるまで学校側は何をしていた!?」
「二科生たちの暴発は、成るべくして起きた事件です。有耶無耶になどと行くと思わないでいただきたい。」
学校長や主だった大学教授を兼任している教員らが集められた会議室で彼らは厳しい視線に晒されていた。
それもその筈、九條国立魔法大学学長と魔法大学から来賓として来た複数の教育科の教授や学生の他は文部省高等科魔法教育局に所属する職員と文部省魔法技術局の職員に臨時教員らが第一高校職員を囲っていた故であった。
「事態は既に文部省としても座している場合では無いと判断した。また、今回の騒動は既にその兆候があるとして大臣にも報告済みだったが、先程事態が急変し鎮圧したとこまで報告したが、文部大臣としても重い腰を上げるとまで言って来た。」
「まさか、たかがこの程度の事で・・・」
「たかが?ブランシュの襲撃を受け、その下部組織に当校の生徒が属しているような事態がたかがという気か?」
九條信春は怒気を強めながらそう聞き返した。そうでなくても、彼らは自分たちの責は無いと言わんばかりに言い訳を言い始め、皆が呆れていた。
「本件は、国立魔法大学学長として文部省高等科魔法教育局に一任したく思う。また、学長として出来る限りの協力体制を敷きたいと思うが、文部省側はどうかな?」
九條忠仁学長は、馬鹿な発言ばかりする自分の大学に属する教授たちの言い分に心底うんざりしていた。その為、馬鹿共の意見を聞くよりも教育機関としてさっさと決めて処罰内容を考えたかった。
「そうだな、一任してくれるなら有難いが、仮にも国立魔法大学付属だ。改革の主導は、学長、貴方が行ってもらう。その上で我々、魔法教育局が指導する方が余計な混乱を生まない。」
「そうだな、そうしよう。だが、送検するなり対応の必要がある教授らは先にしておくべきだ。」
「それなら心配無いよ。既にうちの部下が各教授室を回って書類を纏めて詰めている頃だ。それも捜索差押令状付きでね。」
「それは心強い。」
「とはいえ、学長。貴方にも責は・・・」
「当然、有るだろう。知らなかったとはいえ、事実として表に出るまで全く手にも付けていなかったからな。事実を知ってからは、証拠集めをしていたさ。それらも抑えるといい。先に提出してもいいかな?」
「捜査協力して頂けるのであれば、こちらとしても言う事は有りません。」
文部省職員と臨場した警察官はそう言った。
「一先ず、事件に関わったエガリテに参加していると思われる生徒は自宅待機でいいかな?」
「家裁に送らない・・・と?風紀委員による取り調べで図書館の魔法情報を盗もうとしたようだが?」
警察官の質問に、学長は頷いた。
「事の問題の筆頭は学校側の不誠実な対応から始まっているのだ。彼らは被害者だよ。取った対応が過激だが、強盗未遂として送るには弱い。実際に生徒が関わったのは幇助だろうが、学長としては彼ら生徒にそこまでの責は無いと考える。無論無罪放免とは行かないが。」
既に取り調べで洗脳されていた可能性を示唆する証拠も出始めており、その全てを生徒個人の責任とする流れは無かった。
「では、どうすると?」
「関わった学生は家裁送りにはしない。謹慎処分とする。」
「停学にするの?」
「いや、それでは意味が無い。表向きは停学だが・・・・・」
その後も関わった生徒達の処遇について第一高校職員関係者そっちのけで話し合われた。
寧ろ、第一高校の校長を含めた職員らは取り調べを別室に連行されて受けていた。既に、国が介入し、付属の上の組織たる大学側が主導で対処している状況など異常でしかない。
が、その異常事態を作り出した職員らの多くが減棒や降格処分を受け、大学教授を兼任している教員に対しては教授権限を限定剥奪し、研究よりも教育に専念する念書も書かせた。
徹底的に教育政策を見直す必要があるとして、九條学長は臨時教員制度を利用して一科生のみに集中している授業制度を廃止せず、一科生の授業は既存の学校職員に受けさせ、二科生分は学外から召集した非常勤講師と臨時教員で対応を決定。
国立魔法大学からも教育学部に属する大学生が第一高校の教鞭を仕切れる対応策などを取った。だが、同時に第一高校以外の各校への緊急査察を文部省は開始した。
「第一高校の件は一先ずこれで様子見としよう。しかし、停学指定の生徒への特別授業というのは如何なものかと思うが?」
「その状況を生み出した学校職員に言ってくれるか?」
「それはそうなのだが、表ではある種の犯罪者だ。一科生からの反発も必死だろう。」
「だからだよ。・・・まあ、特別授業って言っても、1週間大学でその授業を受けるってだけだ。」
「それもそれで問題が・・・」
「なら、別の解決案があるのか?」
文句ばかり言う捜査官に文部省職員も、大学職員も嫌気が差していた。だからこそ、代替案を求めたが、捜査官はそんな代替案は無いと言わんばかりに黙りこくった。
「案が無いなら口出しするな。話が長引くだろうが。」
そうして会議が終了しようとしていた時に、連絡が入った。
「・・・何?ハマーが一台出た?誰が運転を・・・十文字ぃ?」
「十文字克人か。何をしに?」
「複数の生徒を乗せて廃工場へ向かったとのこと。」
「なんだと!?」
「放っておけ。」
「・・・・・どういう事です?九條学長、放っておくなど・・・。」
「十文字が未だに十師族特権を警察に使えると思い込んでいるのなら、廃工場で無駄足を踏むだけだ。違うか?」
「まあ、あそこには機動隊もいるし、なんとかなるだろう。」
「機動隊だけじゃない、SATも要請されたし、銀河連邦からも軍が派遣されている。」
信春の言葉通り、廃工場にはそれら警察組織の部隊が集結しつつあった。
法的な文言はそれっぽい事を言っていますが、正しいのかはちょっと不安があります。
後、警察無線もそれっぽくしているだけです。
討論会は、個人的に言えば学内だけで収まるようなシンプルな内容とは思わなかったので、追加であれこれ組み込んだ結果です。何より、制服の紋章に関しても、それが理由である種の虐めが起きているのに対応を示さない学校側と魔法研究にしか頭が無い大学教授と、後々変わるとしてもそれに対して学校側のアクションが無いままっていうのも、現代の学校の現状とあまり変わらない感じがしました。
それ以前に、学校教員が大学教授と掛け持ちしていいのか?という疑問もありましたからね。現代なら懲戒ものでしょうし。
後、1話で入学編完結、急ぎます。出来れば今日中。
追加設定入れ込みすぎたなぁ、設定作りで一日が終わる。