去年に1話出す予定が狂いまして、年明けに漸く出せました。
休みも今日で終わり。
また仕事の日々が始まってしまうと思いながら・・・・・
第一高校を最後に九校戦に参加する全ての代表チームが会場入りを果たした日の夜、
九校が宿泊するホテルでは懇親会の準備が進んでいた。
毎年恒例の懇親会パーティーといえども勝負相手との顔合わせも兼ねており、各高校間の交流としての役割もあった。
主要となる高校生たちが懇親会をそれぞれが楽しんでいる中、懇親会を開いている大広間の2階フロアとなる観覧通路には深くフードを被った一団があった。
「目立つからとはいえ、此処からとは・・・。」
「しょうがない、議長も賛同してしまった以上、我々護衛は此処から見るしか有るまいて。」
「とはいえ、会場にいるのは魔法師界における名士ばかりだ。其処まで警戒する必要も無いだろうな。会場内に潜り込めるとは思えん。」
護衛団の代表を務めるジェダイマスターヴァン・アゲートはそう呟いた。
実際、ホテル会場の外は軍と警察を動員した厳重警戒態勢にあるのだ。ネズミ一匹も入れぬ筈の異様な警戒態勢であったからだ。
「紫音、此処は君らに任せる。私たちは全体を見て来る。」
「分かりました。」
そう言って、会場に残ったジェダイは九條紫音、立華咲那、直江優姫、朝武奈波、更識聖羅、黒姫嶺衣奈の6名だった。他はレッド・ガード2名のみ。
準備が完了してから司会が懇親会パーティーの進行を始めた。
「ご静粛にお願いします。
これよりご来賓のあいさつに移ります。」
そうして始まった、魔法師界の名士や魔法企業の会長らの挨拶。
粛々と挨拶が進み、老師と名を謳われる九島烈からの挨拶となった時、少ししてから私たちは頭を抱えた。
壇上に上がったのは女性で、九島烈の姿は無かった。
だが、私と咲那は気付いていた。女性の後ろに隠れる九島烈の姿を捉えていたからだ。
ジェダイであっても気付きにくいソレを一般兵が気付く事は難しい。
レッド・ガードである彼らであってもその絡繰りには気付けなかった。
その一人が凝視しながら呟く。
「どういうことだ?」
「問題はありませんよ。女性の後ろを見るようにしたらいいですよ。」
「咲那、それは無理な事だよ。この手の精神干渉魔法は、意識を対象に吸い寄せる魔法だ。それも会場全体に展開しているから猶更ね。」
「むぅ、議長は安全なのか?」
「害はありませんよ。これは・・・俗に言う悪戯のようなものですからね。」
そう、ただ悪戯しているに過ぎない。だが、私が議長の方に目をやると、何かを断ち切るような動作をしていた。女性が舞台袖に移動しようとしたその瞬間に、魔法が解除された。
「(ほう、こういう風にも出来るものなのか。面白い。)」
「あっ。」
「・・・・・・・・。」
議長が何をやったか分かった私と咲那は頭を抱えた。
パルパティーン議長は九島烈が会場全体に掛けていた精神干渉魔法を何の躊躇いも無く、無邪気に魔法を試す勢いで断ち切ったのだ。いや、断ち切れてしまったと言うべきか、それを為した事、内心出来てしまった事に表情に出さずも焦っているパルパティーン議長だが、一番驚いているのは九島烈本人だった。
こちらも表情に出していないが、移動しようとした女性の方が驚いていることから予定に無い事である事が一目で分かってしまった。
「(議長!?何やっているのですか!!明らかにやっちまったって顔しているんじゃないよ!)」
どうしていいかも私たちには分からない。
「(いたずら爺は後で〆るとして、会場は・・・まあ大丈夫そうか。)」
見えていなかった老人の姿が見えるようになってから学生達の話は進んだようだった。
「誰だ?」
「女性の後ろに誰かいるわ。」
「なんだろう、ハプニングでもあったか?」
少ししてから九島烈は、騒めく会場内で静かに話し始めた。
「さて・・・悪ふざけに付き合わせた事から謝罪しよう。」
誰が魔法を解除したのかを探す間も無く、そう話し始めた九島烈。
「今のは魔法というより手品の類だ。視線操作とも言うが、この手品のタネに気付いた者は見たところ5人だけだった。
つまり・・・・・・もしも私がテロリストだったとして、私を阻むべく行動を起こせた者は5人だけだったという事だ。・・・まあ。」
九島烈は、二階の方に目を向けて自分を見ながら来賓席に目線を向ける2人に気付いていた。学生たちからなら5人・・・だが、恐らくあの2人は行動を起こすでは無く、対処出来る部類だろうと読んでいた。尤も、2人の隣にいる者も含めて仮面のようなモノで何者なのか全く分からないという怪しい点を除けばの話だが。
そうでなくても、九島烈の例えの表現は会場の学生たちを静かにさせるには十分すぎた。
「諸君、私が用いた魔法は低ランクのものだが、君らはそれに惑わされ私を認識出来なかった。魔法とは所詮取れる手段の一つに過ぎないのだ。
魔法ばかりが何も全ての手段では無い。そうやって視界を狭めてしまえば、取れる手段は限りなく少なくなってしまう。
何が言いたいかというと、明日からは諸君にとって九校戦の本番となる。魔法は使い方次第では有利に働く事もあれば不利に働くこともある。時には、魔法以外の対処方法も良いだろう。諸君の工夫を楽しみにしている。」
そう締めくくられた九島烈の話は、万雷の拍手と共に終わりを告げた。
来賓席にはまだ挨拶をして居ない者も居たが、其処は紹介のみで済まされた。
尤も、最後の紹介でパルパティーン議長が応えたわけだが。
「それでは最後になりますが、此方の方は銀河の遥か彼方より参られました現共和国元老院議会最高議長シーヴ・パルパティーン氏になります。」
立ち上がって軽く挨拶したパルパティーン議長。
まあ、学生たちにしてみれば誰だそれ?という者となんでそんな人が此処にという両者に分けられた。それもその筈、日本の表舞台に立ったのは今回が初めてで政府会談時は当初、公開して行われていなかったからだ。
会談の様子が公開されたのはごく最近である為、多くの生徒は知る由も無かった。
「(傍から見れば大きな政治的肩書を持った爺さんにしか見えないか・・・。)」
尤も既に複数の高校は共和国による恩恵を受けていた。
導入した機材は元より、魔法練習における効果的な的等(主にドロイドを使った動く的等)を共和国加盟国から輸入している高校もあったからだ。(主に第七、第八高校であるが。)
「紹介にあったシーヴ・パルパティーンだ。ああ、知らない者も無理は無い。なにしろ銀河の果てだ。が、そんな銀河の果てにも超能力・・・魔法にも似た力がある。ソレとの相互確認と、この惑星の魔法についてを今回来たところだ。君ら学生はまだ学ぶことが多い身だ。力の使い方を誤る事の無いよう、そして誠実に正々堂々と競技を見せて欲しい。」
パルパティーンのそんな発言は、唐突過ぎる事も有って大多数にはあまり受け入れられないような雰囲気だったがパルパティーンはふむ、と考える仕草をしてから、
「丁度飲み物が欲しいところだったな。」
そう呟いて、学生達の方にある食事が置かれているテーブルにある水が入ったコップを、フォースを使って引き寄せると会場内は爆発的に騒めいた。
距離にしても50mと離れた位置から、魔法の兆候も無く、水が入ったコップが水を零す事無くその者の手に納まったからだ。
そしてそれは第一高校の生徒達にとっても既視感があるものだった。
「そう言う事なのね、あの時の人は・・・。」
「どういうことだ?真由美。」
「あの時の事故で現れた人の事だろう?関係者と見るべきか。」
「ええ、そうね。恐らくそうよ。ローブを着た人達、さっきも見たから関係者なのでしょうね。」
「あの力が使える関係者・・・か。未知数だな。」
渡辺、七草、十文字が先の事故の件で話し合っている中、別の場所では・・・
「お兄様、やはりあれは・・・。」
「ああ、姉さんたちが此処に来れない理由が分かった。それにさっきの事故で対処していたのは、恐らく咲那さんだろう。」
「やはり。けど、どうしてこのタイミングで・・・。」
「分からん。だが、あのパルパティーン議長もジェダイに関係する何かだという事か?」
司波兄妹でそんな会話をしているうちにパルパティーンの番が終わり、懇親会パーティーが進行していったが、そのパルパティーンも自身の席に戻る途中で司波兄妹を見つけて目に掛けていた。
「(成る程な、『アレ』か紫音が言っていた・・・成程。育ち過ぎだが、フォースの因子を持って居る。それに・・・・・・・)」
パルパティーンは司波兄の方を見やりながら、
「(紫苑が危惧しただけはある。光より闇の比率が大きい。・・・ふむ、これは一種の依存か?)」
パルパティーンは、面白い種が育ってきたものだと思いながら妹の方も見て思った。
「(フォースの気配は僅かながらある。ジェダイのようには使えずとも兄のように特筆した才覚が有るやもしれぬな。)」
パルパティーンは、遠い星に現れたフォースの資質を持つ者の存在を喜びながらも弟子のように何かを教えるには魔法に関して知らない事が多すぎる自身を鑑みて2人の成長を見守る事にした。
舞台は九校戦大会、2人の魔法師としての実力も其処で知れようと考えたからだった。
懇親会パーティーはその後、今回の九校戦大会の概要説明をして2時間の交流会をした後、解散となった。
多くの生徒がホテルに戻っていく中、各校のCADエンジニアは大会に向けた最終調整を作業車の中で行っていた。設備の整った施設を借りる高校も有る中、ホテルの青空駐車場に停まった作業車の中でエンジニア達は各々の作業を進めていた。
CAD調整は各高校、共に時間は様々だが、休憩を挟みながらも深夜を回っても作業は続いていた。
「司波君、そろそろ調整を切り上げた方がいいよ。司波君の担当は後の方だから最初から根詰めない方がいいからね。」
第一高校の作業車内で遅くまで作業を続けていたのは五十里啓と司波達也の2人だけだった。
「零時・・・もうこんな時間でしたか。」
スクリーンの時間には00:15と表示されており、達也も時間に気付かずに作業を進めた結果だった。
「僕は明日出場する担当選手がいるからもう少し調整をするよ。」
「分かりました。では先に失礼します。」
達也は頭を下げて作業車から出た時だった。
「まだ作業していたのか?」
そう声を掛けてきたのは、会場の周りを警備していた赤いラインカラーのショックトルーパーだった。
「あ、はい。自分はもう終わりで。」
「僕ももう少しだけ作業して戻りますよ。」
そう言った2人にショックトルーパーたちは、ビニール袋から自販機で買った飲み物を渡した。
「そうか、これ差し入れだ。
一応軍基地施設内だから安全だと思うかもしれないが過信しない方がいい。」
尚、ペットボトルという概念が然程浸透していない共和国において、兵士達は自動販売機で手軽に買えるドリンクを青田買いしようとして指揮官に怒られていた。
好きなフレーバーのドリンクでもあったのだろうか、炭酸系が特に買い占めに走っており、その後、スーパー直送で任意のドリンクが箱で届いた事で騒ぐ共和国軍兵士達が居たとか。
そして、その光景を異様な目で見つめる国防軍警備兵が居たという。
それもそうだろう。共和国では炭酸系の飲み物は珍しいからだ。いや、実際にはあるが、どれも微炭酸程度。だが、この国で手に入る炭酸系飲み物は共和国軍兵士のみならず、幹部連中や士官らを唸らせるにはとてもいい物だった。尚、大人気は強炭酸だとか・・・
今話休題
ショックトルーパー達は困惑する学生達に対して、急に決まった事だと話した。
「俺達がどうしてこの配置についているのかは聞かないでくれ、急遽決まった事でな。
重量のある電子機器が有るなら言ってくれ。
何でも今年からその辺りの保管も厳しくなったそうだ。作業車は動かせるのか?」
「ええっ!?此処じゃダメですか?」
五十里は、此処以外の駐車が海上関係者から認められていない旨を伝えると、
ショックトルーパー達は無線を使って上に報告し、その返答を伝えた。
「今、青空駐車している各高校に呼び掛けているが、車両はホテル地下2階の駐車場に置いて欲しい。」
「ですが、其処は僕らでは入れないんじゃ?」
その返答に顔を見合わすトルーパー達。
一人が頭を抱えながらも、
「分かった。作業が終わったらこれで呼んでくれ。
次回以降は地下2階になるが、学生証を見せてくれ。それが許可証代わりになる。」
そう言って携帯型のコムリンクを五十里に渡したトルーパー。使い方を一通り教え実際に使って見せてから彼らはその場を離れた。
「何かあったのかな?」
「どうだろうな。国防軍では無く、共和国軍の兵士がホテル会場外の警備をしているというのは何とも・・・。」
達也も共和国軍の事を知っていても、現状の詳しい事情を知らない為、なんとも答え難かった。
達也は、部屋に戻る前に姉、紫音に連絡を取って紫音達がいる部屋に向かって事情を聞きに向かった。
同ホテルの上層階に到着した達也は、警備に立っていたショックトルーパーに中に入るのを止められるも、迎えに来た咲那に連れられて部屋に案内された。
達也が咲那に連れられて部屋に入ると、其処には姉である九條紫音の他に直江優姫、黒姫嶺衣奈の姿もあった。
「やあ、来たね。」
「ん・・・その子が、マスターが言っていた姪っ子ですか?」
「そう、彼が司波達也。少しばかりフォースの因子も持っているから鍛えているけど・・・時期が時期だから、まあまあかな。」
「ところで、マスター。本題に入った方がいいのでは?夜も遅いですし。」
「そうだね。達也が気になっているのは何故共和国軍が展開しているか、かな?」
「ええ、あまりにも厳重だったので。ついさっきも巡回のトルーパーに聞かれたところなので。」
「ああ、そう言う事ね。」
「達也さん、幾ら共和国元老院議会最高議長が来ているからと言ってここまでの警備は、はっきり言って必要無かったのです。」
「という事は、昼の一件が原因か?」
達也が言う一件は、バス襲撃の事だったがそれに対して紫音は首を横に振った
「それはあくまで切っ掛けかな。タイミング的にもね。」
「って事は、バスの前であの自走車を止めたのは・・・」
「私だよ。偶々、こっちの出発が遅れていたのも有るけど、万が一と思って私が動いたの。」
予知的にどっちでも良かったのだけど、達也や深雪が居るから積極的に動いただけだよと、言う咲那に達也は感謝を述べたが、原因となる理由は紫音から齎された。
「咲那が動く前の時間に、協議会場そのもので工作員の侵入があったからだね。私たちが会場入りを果たす時とその前に侵入を許した。仮にも軍施設だ。本来なら有ってはいけない事だというのは、達也も分かるでしょ?」
「ええ。」
本来では絶対に有り得てはならない不祥事、それが起きたのは九校戦開催委員会による不備で片付けられるような簡単な内容では無かった。
「会場入り前は国防軍が抑えたけど、会場入り後に議長の専属護衛のレッド・ガードが工作員を引っ立ててその後、会場となるフィールド内で破壊工作を行っていた工作員をショックトルーパー部隊が捕らえた事で、今回の警備態勢になったってわけ。」
「本当にそれだけですか?仮にそうだとして、国防軍の戦力増強で足りると思いましたが・・・。」
達也の疑問も尤もだった。幾ら会場入り前と後で工作員の侵入を許したからと言って国防軍では無く、共和国軍が出張っているのは可笑しなことだったからだ。
「鋭いねえ、司波君は。そう、普通の工作員なら国防軍に任せたまま警戒を強化するだけで終わった。だけどね、連中が隠し持っていた武器や装備品で状況は一変したのさ。」
直江優姫が達也の指摘に笑みを浮かべながら答えた。
「工作員が持っていたのは、私たちが散々戦ってきた分離主義勢力が主に所持していたアシッド・ランチャーや強化インパクトリモート爆弾、ディスラプション、更にはレーザーマインまで。それらが見つかった瞬間に警備は国防軍のみでは行かなくなったってわけさ。」
・アシッド・ランチャーは、強力な酸をまき散らすキャニスターを発射するランチャー。酸の威力は、人間は元より鉄筋コンクリート壁を簡単に溶かし、穴をスライムのように開ける事が出来るほど。
・強化インパクトリモート爆弾は、爆発範囲が通常よりも拡大し威力が向上した手動起爆可能な設置型爆弾。威力はC4爆薬の3倍。
・強化ディスラプションは、イオン化エネルギーを放出する改造デバイス。電子機器の無力化や爆発物の起爆停止等出来る。今回の場合、CADの起動を止める事が出来る。
範囲は約30m。
・レーザーマインは、レーザーをトリップワイヤーに利用した一般的な地雷。爆発威力はSマインのような跳躍地雷に似ている。
これらの兵器が出て来た時点で国防軍は警備を強化するだけでなく、駐留共和国軍に共同警備を要請したのだ。国防軍上層部は、これらの兵器に対して有効に対処出来る部隊は無く、大きな事件を引き起こさない為には共和国軍の協力が不可欠と判断したからだった。
現在、仕掛けられた爆弾等は無いものの、探査・警戒エリアを広めて更なる工作員の侵入を防ぎ、学生らに被害を出さない為にも共和国軍部隊による検査のみならず、スキャナー等を国防軍に貸し出しながら大会が終わるまで警備していく事となった。
次話は、また数か月後になりそうです。
ジェダイ主体なので、そんなに物語には絡まないかも・・・
続編にご期待ください。