夜の子供   作:かりん2022

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炎姫=猿鬼

「君、可愛いね。一緒に遊ばない?」

「私、可愛い?」

 

 フラフラと歩いていると、イケメンの男の子にそう囁かれて、私は思わずそう聞いた。

 

「うんうん、すっごく可愛いよ」

 

 異国風の服装のイケメンはそう言って、私の腰を抱いてくる。

 黒髪黒目、真っ白な肌。うっとりするほどのイケメンだった。

 そして、何より私は、どうなってもいいほどに寂しかった。

 

「おいでよ、気持ちいい事しよう。優しくしてあげるよ」

「うん、いいよ。優しくしてね」

 

 私は、ホイホイとイケメンの男に付いていく。

 宿に着くと、私を裸にした男は、首筋に唇を寄せた。

 

 快楽。

 

 私は、首筋に歯を立てられて、はしたなくも絶頂した。

 心臓がうるさく音を立てる。

 毒が血液に乗って全身に送り込まれているのがわかる。

 怖い。怖いよ。

 私ははっはと浅く息を吐く。

 

 でも、優しく抱きしめられて。抱きしめ返して。

 

 

 私の意識は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、気がつけば裸でベッドに横になっていた。

 

「ここ、は……」

 

 知らない天井だ。いや、知ってる。昨日泊まった宿。

 私は起き上がった。イケメンはいないみたい。

 

 ぼんやりと目のピントを合わせると、気持ち悪い半透明のお化けが見えて、私は反射的に炎を出していた。仕方ない。だって、この世界では、人や動物は突然魔物に変ずる可能性を秘めており、魔物を見たら即攻撃は体に染み付いているのだから。

 

「げっ」

 

 燃えちゃう!

 焦ったが、その炎は半透明で美しくゆらめいて気持ち悪いお化けを燃やし、消えた。ベッドに燃え移る様子は全くなかった。

 

「なんなのよ」

 

 その時、夜が明けて日が差していく。

 その日差しは、私の肌を容赦なく焼いた。

 

「イタタタタタタ! 痛い痛い痛い! どういうこと!?」

 

 私は慌ててシーツで日差しを遮る。

 なんとか一息ついた私は、シーツに隠れて服を着た。

 

 は、肌が赤くなっちゃってる。あのまま日差しを浴び続けると灰になってしまうのだろうか。

 これってあれよね。そういうことよね。

 私は自分の歯を確かめた。尖ってないわ。

 いやでも、夜に尖る可能性もあるな。

 

 はー。この世界、吸血鬼いたんだ。びっくりですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は転生者だ。

 異世界に、それもアニメみたいなファンタジーのある世界にトリップして、炎の異能があるってわかって、私はそりゃもう喜んだ。

 私はこの世界の主人公なんだ。そんなバカみたいな事を本気で思った。

 努力して努力して、私はこの力を磨いた。

 いつか、この国を救う聖女となって、王子様を救ったりするんだって、キャーキャー言って、ホイホイ貴族の養子にするって話に乗って。実家を捨てて。

 我こそは炎姫、なんて調子に乗って。意気揚々と異能者の学校に乗り込んで。

 実習で見事鼻っ柱を粉砕されたのだった。

 それから、努力しても努力しても王子様という名の暴君に転がされる日々。

 

 周囲から猿鬼って呼ばれてる事を知り、そもそも女の子で戦闘訓練してるの私だけって事実に遅まきながら気づき。

 

「大体、あの顔でお姫様を名乗る神経w」なんて笑われて。

 

 私はイケメン吸血鬼に身を投げ出した次第である。

 

 それにしても、あの化け物はなんだろう。燃やせるからいいけど。

 窓を覗くと、いるわいるわ、ふわふわと化け物が。うっすらと陽の光の元だとすごーく見えにくいけれど、とにかくいる。

 

 でも誰も気づいていないようだった。

 

 私は炎を出してみようとする。

 先ほどは出せたのに、うんともすんとも言わない。

 直ぐに、陽の光の元では出せないんだとわかった。

 

 え、炎が出せない?

 私、学校、首!???

 

 とにかく帰らないと。

 私は、シーツを宿から買取り、頭から被って宿を出た。

 

 私は無断外泊した挙句、男に性病を移され、炎の異能を失い、醜い肌となって追い出された大馬鹿野郎、失礼、大馬鹿女となった。

 

 一応、夜なら炎は出せたのだが、 むしろめちゃくちゃレベルアップしてたのだが、その炎は誰の目にも見えなかった。

 

 化け物が見えるんですなんて言って信じてくれるはずもない。

 一応、コウモリの羽も牙も出せたので、それを見せたら……討伐まっしぐらだな。

 

 諦めよう、私は吸血鬼になってしまったのだ。なんなら魔物より討伐される存在である。

 

 どうしようもなくなって、王都を飛び出して家に帰ったら暖かく受け入れてもらえて、私って本当に大馬鹿だと自覚した。

 それから、朝昼は家の中で内職、夜は外に出て狩りのついでに街一つ炎の海に沈めるのが私の日課になった。大丈夫。私の炎は何人たりとも燃やせないのだ。燃やせるのはお化けだけ。

 人間を食べたら人として終わるので、仕方なく野生動物の生肉をいただいている。

 夜だけ上がる身体能力に感謝である。

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