ドアがノックされて、私はシーツを被って扉を開ける。
「うおっ」
「アルスとレオじゃない。何よ、笑いに来たの」
「アルス様にレオ様だろ、え・ん・き」
私はグッと歯を食いしばり、それからアルス様、レオ様と渋々言った。
今の私は貴族でも異能者でもないのだ。
ましてや、相手は、特にアルス様は異能者で王子様。むしろ以前の私がどんだけ傍若無人だったのよ、若さって怖い。
アルス様は、学生服ではなく、討伐隊の制服を着ていた。
無駄に格好いい。くそう。私は彼のお嫁さんになりたかったのだ。
学も教養も武力もなかったくせに、よくもそこまで思い上がれたものである。過去の自分が怖い。いやまあ、学校もざっくばらんな雰囲気だったけどさ。
「なんか調子狂うよな。俺に勝って嫁に押しかけるんじゃねーのかよ。つかなに、この布」
「おや、私の嫁になるのでは? 男と見れば節操なく声かけてましたよね」
「うるさいうるさい。日差しを浴びると肌が焼け爛れんのよ」
「性病ってマジ?」
「マジ。笑いたければお笑いなさい。そしておかえりください」
「あー。君、この町で仕事をしたかい?」
「炎は使えなくなりましたわ」
「この町、お前が力を失うのと同時期に魔物の出現がパタっと途絶えてんの」
「なんで?」
「俺が知りたい」
「それを調べに私達が来てるんだよ」
私は頭を悩ませるが、心当たりは皆無だ。
強いていうなら、毎日毎晩のファイヤーぐらいだろうか。
まさかね。
「陽が落ちてからなら、案内できるだろ。案内しろよ」
「夜に女子に案内しろと申すか」
「お前えんきじゃん」
「うっさいわ。うるさいですわ」
「敬語」
そうして、私は夜に案内をすることになってしまったのだった。
さて夜。私は後悔していた。猛烈に後悔していた。
扉を開けた途端、化け物にガッチリ捕まっているレオ様が見えたのだ。
「ピャッ」
「なんだい?」
「変な顔」
なんか半透明の化け物ととってもグロく同化してますが。
これはいかん。いかんよ。
「ファイヤー!!」
私は渾身の一撃を繰り出した。唸る炎がレオ様にぶつかる!!
悍ましい断末魔と共に、化け物は消えた。
「何かな? 変な顔を変な顔って言って何が悪いのかな」
「うっそ、あんたどうとも感じないの?」
「?」
アルス様とレオ様はきょとんとしている。
それから、気づいた。
「えっと、えんき、もしかして化粧してる?」
「してるわ。学生の時からしてたわ」
「化粧するとすっごく変わるんだね。昼間とは大違い」
「肌の白さとかな。綺麗になった?」
「夜でよく見えないから綺麗に見えるのよ」
実際は夜の吸血鬼効果だろう。
それから、私はクラスメイト二人を案内した。
結局異常は見つからなかった。
「しばらくこっちに常駐するから、何かあったら言えよ」
「クラスメイトだったんだからさ、たまにはお茶しようよ」
そんな言葉を交わし、見送る。
残念ながら、人間の食事はノーサンキューです。
お茶ぐらいなら……飲めるといいなぁ……多分、お茶菓子がアウトだと思う。
二人を見送ってしばらく。私は、街の外へと出た。
実験のためである。
ネズミをおばけに放り込む簡単なお仕事です。
おや? ネズミとお化けが一体化して……?
いくつかお化けを取り憑かせると、ネズミは魔物に変じた。
魔物は襲ってきて、私は慌てて炎を出した。
燃えない!?
でもまあネズミはネズミなので、なんとかナイフで倒す。
なるほど。
魔物メカニズム見破ったり。
んー。
両親には世話になったし、ここで街を守りつつ余生を過ごしますか。
でも、このままだと食べていくの大変だし、なんとか商売に結びつけられないかなー。