夜の子供   作:かりん2022

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我らのクラスのアイドルで、マスコットで、ペットで、暴君で、猿。

「おーほっほっほ! 絶対! 無敵! この炎姫に負けたら諦めて私をお嫁にしなさい!」

「は? 絶対嫌だけど?」

 

 これが炎姫との出会いである。

 炎姫は、本当に、ああ、貴族に引き取られるのが遅くなってしまったんだな、というような子供だった。

 ザ・庶民。ザ・餓鬼大将。ザ・チンピラ。

 同じ土俵に立つ方が愚かと断じられるような相手だった。

 そもそも、女のくせに戦うのが信じられない。

 制服だって、改造制服で見る影もない感じで、しかも太ももが見えるハレンチなミニスカート。

 がさつで、女のくせに引っ込んでろよ、と言わせないほどに、それが意識に上る前にもう最前線で戦ってる猪突猛進野郎。しかも成果もバンバン上げやがる。

 まさしく実績と立ち居振る舞いで全てを黙らせるタイプ。

 

 でも。

 

「危ないっ! ぼーっとしてんじゃないわよ、バァカ!」

 

 俺より弱いくせに、身を挺して庇ってくれた。

 

「大丈夫だから、私の後ろの隠れてなさい!」

 

 そう言って、炎を纏わせた炎姫は綺麗だった。

 

 負けたら嫁として迎え入れろというくせに、実際に炎姫に負けて戦々恐々とする男子には、「弱い奴に命令したらパワハラになるでしょ!」 なんて言う奴だった。

 

 どれだけ怪我をさせても、また歯向かってきた。決して俺を恐れなかった。

 

 理解不能。蛮族。でも、おもしれー女。

 猿鬼猿鬼言いつつも、少なくとも、あいつの努力は皆、認めてた。

 

 炎で姫で猿で鬼。だからえんき。

 

 そんなえんきは、やっぱり馬鹿だった。

 

 ホイホイ見知らぬ男についてって、得体の知れない病気をもらって、そこでリタイア。

 

 魔物にならないで済む地域を調べるのが仕事だったけど、えんきの様子を見たかったのもあって、無理やり仕事をクラスメイトから奪って向かった。

 

 爛れた肌をシーツで隠すえんき。でもいつも通りに会話してくれて、そこはほっとした。

 

 夜、改めて訪ねて行った時、爛れた肌は治っていた。

 綺麗だった。思わず視線が吸い寄せられるほど。

 

 相変わらず、猿って感じだったけど。

 

 王族相手にもこのかんじ、本当えんきって感じである。

 

 冗談めかして、半ば本気で夜を誘ったら、普通に性病うつるからと断られた。

 

 あの時、付き合ってればなぁと後悔してしまう。

 

 えんきは本当に可愛い。

 王都が魔物で荒れた時も、来てくれた。

 

 ただ、気になる噂を聞いた。

 

 えんきの故郷に、また魔物が現れ始めたと。

 

 えんきに友達ができたと聞いた時、嫉妬した。

 一緒に商売をすると言うことで、オープンした店に呼んでもらった時、その手の店かと思った。

 

 制服が可愛い。店員が可愛い。

 トール可愛い。男なのに可愛い。リン可愛い。でもえんきが一番可愛い。

 

 悔しいっ 中身全員がさつで蛮族なのにっ ああでも可愛い……。

 

 しかも全員病気持ちである。異能が消える病気らしいので、絶対に手を出せない。

 

 でも理性に爪立てるほど可愛い。

 

 討伐隊総出でお店に遊びに行って、夜のお茶会など楽しんで、幸い、王都に魔物が出る事がなくなって、このまま平和が続けばいいと思ったのだが。

 

 隣国が魔物に滅ぼされたと聞き、討伐に出て、捕まって、最後に、えんき達の事を思い浮かべて……

 

 気がついたら、裸でえんきに蹴られていた。えんきも裸だ。

 っていうか、店員皆、裸で乱暴された跡が色濃い。

 混乱しつつも、隣にいる裸のレオが魔物化したことは思い出す。

 そのあと、俺も魔物化した……?

 

「変態共、服着てとっとと出ていきやがれ!!」

 

 えんきが怒り狂っている。顔が赤い。可愛い。

 え、まさか、病が移って魔物化が解けた……!?

 

「俺を助けたのは、お前、なのか……?」

 

 隣国の王子達が、涙を流す。

 

「たす、けてくれ……! 妹達が、魔物に変じて……!」

 

 そして、えんきは頼られたらなんとかしてくれる人である。でも異能は消えたのに。

 

「はぁぁ。行ってくるわ。リンちゃん、トールくん、手伝ってくれる?」

「王子様だろうが、なんだろうが、関係ない。後で、ぶん殴る」

「おー、ぶん殴ったれ」

「私も、殴る」

「その意気だ、リンちゃん」

 

 そして、3人は蝙蝠のような翼を出した。

 魔物!? だが、3人は理性を保っているように見える。

 

 外に出て、半透明の化物達がうっすらと見えた。

 空に大きな亀裂と化物。

 

 息を呑んだ瞬間、えんきを中央に、赤い半透明の花が咲き乱れた。

 

 ほのお。

 

 えんき。

 

 炎姫。

 

 ああ、炎姫は能力を失ってなどいなかった。

 炎は化物どもを焼いていく。

 炎姫は美しかった。

 

 それからは圧巻だった。

 

 りんが半透明の黒い鞭を魔物に纏わり付かせ、ひっぱると薄い化物が引っこ抜かれて人間が後に残った。

 化け物はトールが美しい半透明の剣で切ってしまう。

 

 その半透明の全ては、どんどん薄く、見えなくなっていく。

 

 消えるのではない。ただ、魔物化の影響が消えて見えなくなっていくだけ。

 

 俺たちは、魔物の足止めに終始した。

 

 炎姫もリンもトールも夜の王宮で踊って、踊って、踊って。

 俺達は、それに惹きつけられていた。

 それは唐突に訪れた。

 

 日が差した瞬間、3人の羽が日光に焼けたのだ。

 

「あっちゃっちゃ!!」

「アチーっ」

「痛いよーっ」

 

 3人は墜落し、そして俺達が我に帰ってシーツで隠すまで、日光に焼かれ続けた。

 助けるの遅れて悪い。

 

 でもさ、えんき。

 

 色々、話してもらうからな。

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