「おーほっほっほ! 絶対! 無敵! この炎姫に負けたら諦めて私をお嫁にしなさい!」
「は? 絶対嫌だけど?」
これが炎姫との出会いである。
炎姫は、本当に、ああ、貴族に引き取られるのが遅くなってしまったんだな、というような子供だった。
ザ・庶民。ザ・餓鬼大将。ザ・チンピラ。
同じ土俵に立つ方が愚かと断じられるような相手だった。
そもそも、女のくせに戦うのが信じられない。
制服だって、改造制服で見る影もない感じで、しかも太ももが見えるハレンチなミニスカート。
がさつで、女のくせに引っ込んでろよ、と言わせないほどに、それが意識に上る前にもう最前線で戦ってる猪突猛進野郎。しかも成果もバンバン上げやがる。
まさしく実績と立ち居振る舞いで全てを黙らせるタイプ。
でも。
「危ないっ! ぼーっとしてんじゃないわよ、バァカ!」
俺より弱いくせに、身を挺して庇ってくれた。
「大丈夫だから、私の後ろの隠れてなさい!」
そう言って、炎を纏わせた炎姫は綺麗だった。
負けたら嫁として迎え入れろというくせに、実際に炎姫に負けて戦々恐々とする男子には、「弱い奴に命令したらパワハラになるでしょ!」 なんて言う奴だった。
どれだけ怪我をさせても、また歯向かってきた。決して俺を恐れなかった。
理解不能。蛮族。でも、おもしれー女。
猿鬼猿鬼言いつつも、少なくとも、あいつの努力は皆、認めてた。
炎で姫で猿で鬼。だからえんき。
そんなえんきは、やっぱり馬鹿だった。
ホイホイ見知らぬ男についてって、得体の知れない病気をもらって、そこでリタイア。
魔物にならないで済む地域を調べるのが仕事だったけど、えんきの様子を見たかったのもあって、無理やり仕事をクラスメイトから奪って向かった。
爛れた肌をシーツで隠すえんき。でもいつも通りに会話してくれて、そこはほっとした。
夜、改めて訪ねて行った時、爛れた肌は治っていた。
綺麗だった。思わず視線が吸い寄せられるほど。
相変わらず、猿って感じだったけど。
王族相手にもこのかんじ、本当えんきって感じである。
冗談めかして、半ば本気で夜を誘ったら、普通に性病うつるからと断られた。
あの時、付き合ってればなぁと後悔してしまう。
えんきは本当に可愛い。
王都が魔物で荒れた時も、来てくれた。
ただ、気になる噂を聞いた。
えんきの故郷に、また魔物が現れ始めたと。
えんきに友達ができたと聞いた時、嫉妬した。
一緒に商売をすると言うことで、オープンした店に呼んでもらった時、その手の店かと思った。
制服が可愛い。店員が可愛い。
トール可愛い。男なのに可愛い。リン可愛い。でもえんきが一番可愛い。
悔しいっ 中身全員がさつで蛮族なのにっ ああでも可愛い……。
しかも全員病気持ちである。異能が消える病気らしいので、絶対に手を出せない。
でも理性に爪立てるほど可愛い。
討伐隊総出でお店に遊びに行って、夜のお茶会など楽しんで、幸い、王都に魔物が出る事がなくなって、このまま平和が続けばいいと思ったのだが。
隣国が魔物に滅ぼされたと聞き、討伐に出て、捕まって、最後に、えんき達の事を思い浮かべて……
気がついたら、裸でえんきに蹴られていた。えんきも裸だ。
っていうか、店員皆、裸で乱暴された跡が色濃い。
混乱しつつも、隣にいる裸のレオが魔物化したことは思い出す。
そのあと、俺も魔物化した……?
「変態共、服着てとっとと出ていきやがれ!!」
えんきが怒り狂っている。顔が赤い。可愛い。
え、まさか、病が移って魔物化が解けた……!?
「俺を助けたのは、お前、なのか……?」
隣国の王子達が、涙を流す。
「たす、けてくれ……! 妹達が、魔物に変じて……!」
そして、えんきは頼られたらなんとかしてくれる人である。でも異能は消えたのに。
「はぁぁ。行ってくるわ。リンちゃん、トールくん、手伝ってくれる?」
「王子様だろうが、なんだろうが、関係ない。後で、ぶん殴る」
「おー、ぶん殴ったれ」
「私も、殴る」
「その意気だ、リンちゃん」
そして、3人は蝙蝠のような翼を出した。
魔物!? だが、3人は理性を保っているように見える。
外に出て、半透明の化物達がうっすらと見えた。
空に大きな亀裂と化物。
息を呑んだ瞬間、えんきを中央に、赤い半透明の花が咲き乱れた。
ほのお。
えんき。
炎姫。
ああ、炎姫は能力を失ってなどいなかった。
炎は化物どもを焼いていく。
炎姫は美しかった。
それからは圧巻だった。
りんが半透明の黒い鞭を魔物に纏わり付かせ、ひっぱると薄い化物が引っこ抜かれて人間が後に残った。
化け物はトールが美しい半透明の剣で切ってしまう。
その半透明の全ては、どんどん薄く、見えなくなっていく。
消えるのではない。ただ、魔物化の影響が消えて見えなくなっていくだけ。
俺たちは、魔物の足止めに終始した。
炎姫もリンもトールも夜の王宮で踊って、踊って、踊って。
俺達は、それに惹きつけられていた。
それは唐突に訪れた。
日が差した瞬間、3人の羽が日光に焼けたのだ。
「あっちゃっちゃ!!」
「アチーっ」
「痛いよーっ」
3人は墜落し、そして俺達が我に帰ってシーツで隠すまで、日光に焼かれ続けた。
助けるの遅れて悪い。
でもさ、えんき。
色々、話してもらうからな。