バッファの力で、シンフォギア世界を無双するぜ! 作:リュウ・セイ
「来週から一人暮らしを始めるって、何を考えてるのよ!!このバカ牛尾ッ!!」
「うっせえよ!!近所迷惑だ!少しは考えろ!バカ姉貴!」
「うるさいとは何よ!!うるさいのはアンタの声でしょうがッ!!」
あの後、風鳴司令官の配慮で自宅に帰ったオレは姉貴と母さんに「来週から一人暮らしを始める」と言った途端、姉貴に怒鳴られた。
仕方がないだろ?こっちだって、つい数時間前に決めたことだからな?
「まぁまぁ、落ち着いて、牛美」
「これが落ち着いていられるわけないでしょ!?お母さんも何か言ったら、どうなの!?」
「……」
姉貴を宥める母さん。だが、姉貴の言葉に母さんは黙り込む。
無理もない。突然、息子が一人暮らしを始めると言い出したんだ。母親である彼女が心配でない筈がない。
「……わけを聞かせてもらえる?」
「……」
母さんの問いにオレは黙り込み、少し考えた。
正直、話したくない。話したら最後、巻き込まれるかもしれない。
けど……ここまで心配してくれている家族の為に、話さないわけにはいかない。
何より、オレのこの身体、“紫牛尾”の為にも、話さないわけにはいかない。
そう思ったオレは腹を括り、これまで起きたことを姉貴と母さんに話した。
流石にオレが転生者であることは話さなかったが、オレが仮面ライダーバッファで影でこっそり人助けをしたり、キャロル率いるオートスコアラーと戦っていること、そいつらに対抗している二課の人達に会ったこと……その他諸々、今日まであったことを話した。
「なるほどね。それで一人暮らしを始めるってわけ?」
「うん……」
「母さんは反対よ」
「「え?」」
意外な返答にオレと姉貴は驚いてしまった。
いや、当たり前か。流石に母さんでも、オレの一人暮らしは反対か……。
「反対……だけど、あなたが決めたことなら母さんは止めないわ……」
「母さん!?」
「良いのか!?」
「ただし!ちゃんと一人暮らしができてるか、月一確認するから、覚悟しなさい!」
「は、はい!」
び、ビックリしたぁー……。
一瞬、ダメかと思ったが、母さんから了承を得られた。
これなら大丈夫そうだな……。
意外な返答に驚きつつ、オレは母さんから了承を得られたことに安堵した。
その後、母さんは椅子から立ち上がり、晩御飯の仕度を始めた。
「それじゃあ私、晩御飯の仕度を始めるから牛尾も引っ越しの準備をしなさい」
「お、おう……」
母さんにそう言われて、オレは立ち上がり、自分の部屋に戻って、引っ越しの準備を始める。
「……アンタ、変わったわよね?」
「?そうかー?自分じゃ、そう変わったとは思わないけど……」
部屋の前で、姉貴はふっと、オレが変わったと言い出すが、オレは変わってないと否定した。
全く、何を言っているんだ?姉貴は?
オレがバカなのは生まれつき、いや、転生する前だからな?
……やべ、自分で言って悲しくなってきた。
「はぁー、今のアンタを見たら、父さん、なんて言うんだろう……」
「さぁな?多分、立派な男に育ったな、とか言ってるんじゃない?」
突然、親父の話題を出す姉貴。
対してオレは父さんが言いそうなことを言うと、姉貴は手に顎を当てて考え出す。
「言いそうね。アンタの親父だし……」
「姉貴の親父でもあるんだから、そんなことを言うなよな?」
「わかってるわよ、そんなこと……」
いつも通り。いつも通りに他愛もない、
「父さんが亡くなった時、アンタ、死んだ魚の目をしていたわよ?誰よりも父さんに慕っていたアンタが……」
「……」
それは“今のオレ”が転生する前の“紫牛尾の話”だ。
一応、“今のオレ”が転生する前の“紫牛尾”の人柄はある程度、調べている。
だからこそ。一番近くにいた
同時に怒って、叱ったのだろう。普通に姉弟としては当たり前の行動だ。
だけど、オレは……。
「それが今じゃ、こんなに明るく……いや、なんかこう、何だろ?人柄がすごく変わった?まぁ、この際、何でも良いや」
「……」
いや、良くないだろ?一番肝心な所だぞ?何なら、今ので、オレが転生者であることがバレそうになったぞ?
「まぁ、私が言いたいのは、姉としては驚いているわ。同時にこんなにすごい弟を持って、自慢できるぐらいよ?」
「姉貴……」
オレは今、初めて、姉貴……牛美の優しさに触れた気がする。
普段はぐうたらで、だらしなく、バイトをしてるのか、仕事をしてるのか、よくわからなかったが、今のでいくつかマシになった。そんな気がする……。
「……牛尾。母さんを泣かせたら、私、許さないからね?」
「わかったよ、姉貴。なるべく無理はしないでおくよ」
「そう?わかってるなら、それで良いけど……」
「……」
「……」
一瞬、オレと姉貴は黙り込み、沈黙するが、それは長く続かず、先に破ったのは姉貴だ。
「……はい!この話はお終い!いつまで突っ立ってるの?早く引っ越しの準備をしないと、あっという間に、来週になるわよ!」
「……姉貴。ああ、そうだな!」
姉貴の声を合図にオレは姉貴と協力して引っ越しの準備を進めた。
──その日の晩。
牛尾と牛美の母である紫
その写真にはまだ幼い二人の姿と、スーツ姿の
「……貴方が亡くなって、もう3年になるのね、牛世さん」
3年前に亡くなった紫牛世。
死因はノイズ発生の際、民間人を避難させるため、活動し、そのノイズに触れて、灰化し、亡くなった。
「……牛世さん。貴方が亡くなった時、牛尾、激しく泣いたわ。悔しい!何で父さんが!何で父さんが!って言って暴れてたわ」
それは今の牛尾が転生する“前の牛尾”である。
彼女が知る紫牛尾は誠実で、真っ直ぐで、正義感が強く、真面目な子だった。
けれど、父、牛世が死んでからは彼は一変した。
何もかもが許せず、イライラする日々を過ごしていた。
──しかし、それは長くは続かなかった。
「ある日ね、牛尾が言ったの。このままじゃダメだーって言って、それからはいつも通りに戻って、高校生になってからは垢抜け?って言うのかしら?貴方が居た頃よりも毎日楽しそうにしてるわ。けど……」
──一人暮らしを始める。その一言で、美尾は牛尾の行動に今まで以上に驚いた。
同時に、恐怖を感じた。
「……牛世さん。私ね、不安なの。牛尾が段々と貴方に似てきて、いつか居なくなるんじゃないだろうかって……けど、母親として、子供が決めたことは最後まで応援したいの。だから……あの世で牛尾のこと、見守ってくれる?」
今は亡き父親、牛世。その父親が写っている写真に手を当てる美尾。
どうか、牛尾が無事で生きてくれることを彼女は強く願った。