バッファの力で、シンフォギア世界を無双するぜ! 作:リュウ・セイ
──翌日。
学園の昼休み。
「……どうしたもんかなー?」
「?何がだ?」
「いやー、ちょっとなー……」
食堂で、昼食をとりながら、オレは今後について、考えていた。
いや、考えるまでもないが、ただ、後一歩が進めねえ……。
──何だ?このモヤモヤは?
──このやりきれない気持ちは一体何だ?
ふっと、自分の中に感じるモヤモヤにオレはどうしたらいいか、わからないでいた。
「……私はどうしたら良いんだろう」
「響……」
そんな時、いつもならテンションが高い響が何やら落ち込んでおり、気になったオレはクリスに問いかけた。
「立花のやつ、どうしたんだ?」
「……歌が歌えねえことに悩んでるんだよ」
「?歌……?」
確か、響達が使うシンフォギアは歌を力に変えてるんだよな?
戦う時も、ギアを纏う時も歌っている。
んで、響は今、歌が歌えない、ってことは、シンフォギアを纏うこともできないのか?
「……それって、まずいんじゃないのか?」
「ああ、まずいってものじゃないさ……」
もし、このタイミングでオートスコアラーが襲ってきたら詰みだぞ?
そう思ったオレは打開策を考える。が、冷静に考えて、今のオレじゃあ、完全に足手まといな気がすることに気づき、オレは深い溜め息を吐いた。
「ハァー、どうしたら良いんだ……」
「お前、今日、ずっとその調子だな。なんかあったのか?相談ならいつでも乗るぞ?」
溜め息を吐くと、ふっと、クリスが心配して、オレに声をかけた。
推しに心配させてしまったな……。
ファンとして失格だな、これは……。
「……心配してくれて、あんがとよ。けど、今は一人で考えたい」
「……わかった。あまり無理はするなよ?」
「大丈夫だ。どうしようもない時はゲーセンか何かで、気分転換するからよ。その辺は気にするな……」
と言っても、それで解決するわけないが……。
まぁ、何もしないよりマシか……。
──放課後。
結局、これといって、何も打開策が浮かばなかったオレは学園の近くにある、バッティングセンターで、体を動かしていた。
「オラッ!」
カコンッ!と、ボールがバッドに当たる音が鳴るが、ボールが行く先は『アタリ』、と、書かれた場所から上に飛んだ。
「クソッ!またか……!」
さっきは下に飛んで、その前は右、その前の前は左……んで、次は……。
「は、ハズレたぁぁッ!?なんでぇぇッ!?」
しかも、『アタリ』に当たる寸前でハズレた!クソ!相変わらず、運が悪いぜ!
「随分と惜しいところで外れたね?」
と、落ち込んでいる中、後ろから聞き慣れた声が聞こえ、オレは振り返った。
そこにはスーツ姿の火野宮勝奇がいた。
「いや、何でアンタ、普通にいんだよ!?学園の仕事はどうした!?学園の仕事は!?」
「ハハッ、サボってきた!」
「堂々と言ってんじゃねえ!!」
マジ、何やってんだアンタは!?
後で他の先生達に怒られても知らねえぞ?
「なーに、ちょっと体を動かすだけさ」
「ぜってえー、ちょっとじゃねえだろ?まぁ、良いけどよー……」
と、気を取り直して、オレはもう一度、『アタリ』を狙って、バッドを構える。
そして──全力で振るうが、
「クソ!全然当たらねえ!」
「
「こう……か!」
勝奇のアドバイスで、バッドを振るい、ボールの方角は──またしても、『アタリ』の手前である。何でだ!
「……惜しいね。もう少し力を入れてみようか?」
「感覚で言うな!感覚で!こっちは……前世はただのオタクだよ!」
叫びながらバッドを振るうが、またしても、『アタリ』に当たる寸前で、ボールが飛んでいった。
そして、終了のコール音が鳴り、オレは一度、ネットの中から出て、ベンチに座り、水分補給をした。
「140キロ……か。まぁまぁ早いな……」
「……アンタ、元は野球選手か?」
「?いや、違うよ。元はボクサー……だったけど、今は引退して、学園の保健と体育の担当をしているよ」
「それは知ってるけど、アンタの体つき的に、ボクサーの体じゃないだろ?」
「……身長の話をしてる?」
「いや、そうじゃなくて……」
めんどくせえなぁ、この教師は……。
「まぁ、何でも良いけどよ……」
「……それよりも、そろそろ時間じゃないの?」
「え?何が?」
「何が?じゃないよ。響ちゃん、助けなくて良いの?」
「あ……」
完全に忘れてた!
いや、でも、今のオレの実力で、助けられるのか?
「……」
「何を迷っているの?」
「……怖いんだよ。戦うことが」
「今に始まったことじゃないだろ?」
「けどよ……」
「……はぁ、めんどくさいなー。フィーバースロットバックルある?」
「え?あるけどよ……」
「なら貸して」
「何で?」
「良いから、早く」
突然、フィーバースロットバックルを貸せと言い出す勝奇に、オレは渋々、鞄の中からフィーバースロットバックルを取り出して、勝奇に貸した。
「ほらよ」
「ありがとう……一つ、賭けをしよう」
「?賭け?」
何を言い出すんだ?コイツは?
そう思った時、勝奇は不敵な笑みで、オレにこう言った。
「うん。賭け。モンスターか、マグナム、ビートが出たら、響ちゃんを助けに行く。それ以外が出たら、響ちゃんを助けに行かない。どうだろう?」
「どうって?いや、そんなんで……人の命を賭けて良いのかよ?」
「ウジウジしている君が悪いんだよ?」
「……」
いや、そうだけどよ……仮にも、人の命がかかってるんだぞ?
「それに良いじゃないか?時には運命に任せて、行動するのも?ま、賭けに勝つのは僕だけど……」
「……良いぜ!やってる!」
自信満々に言う勝奇の態度に、オレはムキになり、その賭けに乗った。
「それじゃあ、回すよ?」
「……」
ゴクン、と、思わず、喉から唾を飲み込む音がなり、それを合図に勝奇はフィーバースロットバックルのダイヤルを回した。
〈FEVER SLOT!〉
ダイヤルが回され、マスが出るのに、数秒かかり、やがて、ピチーン!と、音が鳴り、マスが止まった。
その音を聴いて、オレと勝奇はマスを確認した。
止まったマスは──MAGNUM。
よって、賭けは勝奇の勝ちだ。
それを見た勝奇は満面の笑みで、オレに見せつけた。
「賭けは僕の勝ちだ。約束通り、響ちゃんを助けに行くんだよ?」
「……わかったよ」
そう言って、オレはフィーバースロットバックルを鞄の中に戻し、バッティングセンターを出ようと出口に向かった。
「牛尾!」
出口の手前で、勝奇はオレに呼びかけ、オレは振り返った。
「何悩んでるか知らないけど、運命は自分の手で掴むもんだよ!それから、迷った時は、運に任せると良いよ!さっきのフィーバースロットみたいに!」
「……フッ、何だよそれ……けど、わかったよ!」
──ダメ元で、やってみるかッ!
そう決意したオレは、出口を出て、今度こそ、バッティングセンターを後にし、響の元に向かった。