美少女に転生したので配信者になりますっ!   作:Senana..

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初の取材です!(出版社の男目線)

 

「もうすぐだな…」

 

東京都文京区にあるとある出版社の応接室で、俺はそわそわと腕時計を数秒ごとにチラチラと確認しながら、ある人物を待っていた。

 

「おい、もうちょっと落ち着いてくれ、頼むから。俺まで緊張が酷くなるじゃないか」

 

肘で俺をつつきながらそんなことを言ってくるのは、俺の上司である目つきの悪い男だ。普段はその目つきに加えて髭も無造作に伸ばしているから、威圧感がすごくて女性社員などからはかなり怯えられている。

 

今日は相手が大物であるうえに可愛らしい少女であるためか、いつもの髭は綺麗に剃られ、髪型もスーツもいつもの数倍はカッチリとキメている。それだけできるなら普段からすればいいのに、と思ったが口には出さない。

 

「分かってますよ、でもどうしても緊張するんです。あなただって知ってるでしょう?俺が駄天使だってこと」

 

そう、俺は駄天使である、それもそれなりに古参の。もうすぐ活動3周年を迎える彼女だが、その活動開始の約1ヶ月後には彼女の配信を見始めていた。

 

「そりゃ知ってるが仕事は仕事だ。せめて彼女が来たらしっかりしろよ」

 

「はい、頑張ります。俺も彼女に変なやつだとは思われたくないんで」

 

そう、なんと今日はこの出版社に彼女、七海七瀬がやってくるのだ。

 

先日の配信で、自身に他者からの連絡手段がないと気づいた彼女はすぐさまTwitterのアカウントを作成した。いままでさんざん彼女への接触を試みてきた我々含む各業界関係者としては、あまりにもあっさりと長い間求めていた連絡手段が手に入ったことに目を丸くしていた。

 

しかし、驚いていたのも一瞬で、彼女との繋がりを欲していた者たちは一斉に彼女へと連絡を送った。芸能事務所、音楽レーベル、出版社、ゲーム会社など、数え切れない連絡が彼女に届いたことだろう。

 

そして、彼女がTwitterを開設した次の日の配信で、彼女はあまりの連絡の多さにどうしたらいいか分からないとリスナーに相談していた。そこで、届いた連絡から無作為に選んで受ける仕事を決めてはどうかと言った駄天使のアイデアから、運良く俺たちの会社は彼女への取材を取り付けることができたのだった。

 

そんなに適当でいいのかと思われるかもしれないが、彼女は完全に個人で活動をしているため、誰かにそういった連絡を捌いてもらうこともできず、そういった方法でもとらないと普段の活動の時間を削ってまで連絡に対応しなくてはならなくなるだろうことは想像に難くない。

 

そう考えると、彼女のそのような対応も仕方のないことだと俺は思う。

 

そういうわけで、幸運にも彼女への取材を行えることになった俺たちは、今こうして2人で彼女の到着を待っているというわけである。

 

相変わらずソワソワと彼女の到着を待っていると、隣の上司の携帯が震えた。

 

「どうやら1階の受付に到着したみたいだ。もう来るぞ」

 

上司はそう言うとネクタイを確認して襟元を正し背筋を伸ばした。

 

「はい」

 

俺も上司にならって身だしなみを確認すると、自分にできる最大限のキリッとした顔で扉の方を見つめた。

 

ーガチャー

 

応接室の扉が開き、俺たちの目の前に1人の少女が姿を現した。

 

俺と上司の2人はその姿を視界に入れると、知らず知らずのうちに息を飲んで固まっていた。

 

あまりにも美しい、それが彼女を初めて生で見た素直な感想だった。普段の配信ではその仕草や話し方から可愛らしさを全面に出している彼女だが、こうやって初対面で、配信では見せない澄ました顔を見ると、その美しすぎる容姿にはもはや冷徹さすら感じてしまう。

 

「あの…えっと?」

 

彼女は固まる俺たちに困惑したように眉を傾ける。ああ、表情が変わるとかわいい…。

 

「あっ、すみません!ようこそおいでくださいました、わたしはーーー」

 

我に返った上司は慌てて立ち上がって彼女に歩み寄ると、名刺を渡していた。俺もすぐに立ち上がって上司にならう。

 

「俺は、こういう者です。よろしく、お願いします」

 

俺は名刺を渡そうとして目が合った彼女の上目遣いの破壊力に内心発狂しながらも、必死に冷静を装って名刺を渡した。

 

「私は七海七瀬といいます、よろしくお願いします」

彼女はその美しい黒髪を揺らしながらぺこりとお辞儀をして言った。

 

やばい、俺たちこんなんでちゃんと取材できるのか?

 

推しを前にして興奮しっぱなしの俺は、同じ側の手と足を同時に動かしてロボットのようにぎこちなく歩きながらも、なんとか応接室の椅子に座り直したのだった。

 

ーーーーー

 

「それでは、ほんとうにおひとりで活動してらっしゃったんですね」

 

「はい、家にはわたし一人しかいませんし、手伝っていただけるような知り合いもいないのでそうなりますね」

 

いまは上司が今度出版する雑誌に載せる記事のために彼女にインタビューをしている。上司も彼女のあまりの美しさに狼狽えていたが、いまはなんとか真面目に仕事をこなしていた。

 

「すごいですね、MVの制作からアニメの制作まで、実際に配信で見ていなければとても1人でやっているとは思えませんね」

 

「そうですよね、普通は企業として何人もの人が協力して作るものでしょうから、ははは」

 

彼女は自分がありえないようなことをしている自覚があるようだった。にしても苦笑いした顔もかわいいな…。

 

「つい先日最終話が投稿されたあのアニメなんかは、どのようにして構想されたのでしょうか?」

 

「あれはですね、むかしからーーー」

 

上司のインタビューはまだしばらく続きそうだ。

 

 

ーーーーーー

 

「えっ!ほんとにいいんですか!今までそういったことはされてなかったように思いますが…」

 

「ええ、ぜんぜん大丈夫ですよ!むしろ多くの人に興味を持ってもらう機会になりますからありがたいくらいです!」

 

いま、俺はダメもとで言ってみたグラビア撮影にまさかのノリ気である彼女に驚いていた。

 

「別に過激な格好とかさせられるわけじゃないんですよね?可愛く撮って頂けるならぜひやってみたいです!」

 

彼女は華が咲くような笑顔でやる気をみせている。

 

「ええもちろん、七瀬さんのイメージもありますし清楚路線な服装になると思いますよ。まさかOKしてもらえるとは思ってませんでしたが 笑」

 

「いや〜、良かった。今や日本で1番の人気を持つと言っていい七瀬さんですから、インタービュー記事だけでもかなりの注目を集められるとは思っていましたが、やはりその圧倒的な美しさは七瀬さんを知らない方にも興味を持っていただけますからね」

 

隣の上司も彼女の写真を載せられるとなってとても嬉しそうだ。

 

「ふふ、ありがとうございます。撮影の日程が決まったらこのアドレスに連絡お願いします。」

 

彼女はそう言ってメールアドレスの書かれたメモ用紙を机に置いた。

 

「あ、メールアドレスもお作りになったんですね。こちらとしても仕事のお話をTwitterのDMでというのは少し不安だったので助かります。」

 

「ですよね、なんで今まで作ってなかったんだろうと気づいた今となっては思ってます 笑 とりあえずこのメールアドレスは直接会った方にしかお渡ししないようにする予定ですので、他の方に教えたりは御遠慮いただけるとありがたいです」

 

「なるほど、分かりました。撮影についてと、出版前の最終確認などは連絡する決まりですので、このアドレスにご連絡しますね」

 

直接会った人しかもらえない七海七瀬のメールアドレスという、駄天使なら喉から手が出るほど欲しい激レアアイテムをゲットした俺は心の中でガッツポーズしていた。

 

「では、そろそろ帰らないと今夜の配信に差し支えますので、お暇しますね、今日はありがとうございました」

そうか、インタビューや仕事の話しかしていないがかなりの時間が経っていたようだ。ああ、幸せな時間だったな…。

 

小さなポーチを持って立ち上がった彼女を、俺は上司とともに1階のロビーまでお見送りする。

 

「じゃあ、改めてありがとうございました。連絡お待ちしてます」

 

彼女はぺこりと可愛らしくお辞儀をすると、出入口をでて夕暮れの街に消えていった。

 

「いやあ、偶然とはいえ彼女の取材ができてほんとに良かったな。七海七瀬の初のメディア出演という大きな話題をもらえたし、しかもグラビアまで使わせてもらえるとはな。それに、生で会う彼女はなんというかオーラがすごかったから、ファンというほどでない俺にとってもいい時間だったよ」

 

上司は去っていく彼女の背中を見ながらそんなことを言っていた。

 

「そうですね、俺は彼女が実在したという事実と、実際に会えたという感動に今さら泣きだしそうですよ…」

 

そんなことを言いながら、俺たちは自分のデスクのあるオフィスまで戻っていくのだった。

 

 

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