美少女に転生したので配信者になりますっ!   作:Senana..

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閑話✿お洋服を買いに行こう

 

 

とある日のお昼どき、俺は珍しく家を出て家から一番近くにあるショッピングモールにやってきていた。

 

何をしに来たかと言えば、3日後に控えている初めての雑誌の取材に向けて、着る服を調達しに来たのだ。

 

「あ〜、なんかすっごい視線感じる…」

 

俺は現在、周囲の人々の訝しむような視線に晒されながら洋服屋の立ち並ぶ通りを歩いていた。

 

「やっぱりちょっと怪しすぎたか?でも変装しないと騒ぎになりそうだしなあ…」

 

今の俺の服装はというと、頭から、黒のキャップ、黒のサングラス、黒のマスク、黒のパーカー、黒のスキニー、黒のスニーカー、という怪しさ全開の真っ黒くろすけスタイルである。

 

家族連れで賑わう賑やかなショッピングモールにはとうてい似つかわしくない服装だ。

 

この格好をしているのがガタイのいい男であったりしたものならば、すぐさま誰かに通報されていたことだろう。

 

幸い、今の俺は神も認める超絶美少女であるから、どちらかといえば不審者というよりは不審者に狙われる側である。

 

この格好をしていても、キャップから伸びる長い黒髪や胸元の膨らんだパーカー、スタイルが良いとはいえ160cm台前半の身長から、女性であろうことは明白で、そのおかげでなんとか視線を向けられるだけで通報されずにすんでいる。

 

「ん〜、どこに入ろうか。とりあえずここでいいか」

 

洋服屋の前を一通り歩いてどんな店があるか確認した俺は、特にこれといった店が見つからなかったので、とりあえず目の前にある店に入ることした。

 

「いらっしゃいませ〜、どのようなお洋服をお探しでしょうか?」

 

店に入ると、俺の怪しすぎる格好に一瞬眉をひそめたものの、一瞬で元の営業スマイルに切り替えたアパレル店員のお姉さんが、俺に声をかけながら近づいてきた。

 

「あ〜、えっと…お仕事で少し大人の方と会うんですけど、着ていく服がないな〜と思って…」

 

俺はお姉さんのこちらをうかがうような視線に少しドキマギしながらも、なんとかこたえた。

 

普段の配信では、ジェラートピケという、こちらの世界ではまだそこまでの知名度はないが将来的にはかなりの人気ブランドになる部屋着ブランドの服や、シンプルなワンピースを好んで着ている。

部屋から出ることが滅多にないので、過ごしやすくて着心地のいい服が1番なのだ。

 

「なるほど、お仕事用のお洋服ですね!女性らしさを出すカジュアルさとお仕事にも合うフォーマルさのバランスがなかなか難しいですよね〜。もしよければ私からいくつかオススメさせていただきましょうか?」

 

おお、これは助かる。正直服装に関しては"超学習"なんて使ってこなかったから、どれを選べばいいかなんてサッパリなのだ。お姉さん頼んだっ。

 

「あ、ぜひお願いします!」

 

俺の返事をきくと、お姉さんはニコリと笑って"少しお待ちくださいね"と言って店のあちこちから服を集め始めた。

 

ーーーーー

 

「えっと、なんか多くないですか…?」

 

いま、俺の目の前には大量の、色とりどりの洋服がハンガーにかけられて吊るされていた。

 

「はい、お姉さん、失礼ですが、ショッピングモールにそのような格好で来ていらっしゃるくらいですから、あまりお洋服を持っていらっしゃらないのではないかと思いまして、たくさんご用意させていただきました!どれもちゃんとサイズを見てありますので、とりあえず全部試着してみませんか?」

 

なんと、お姉さんは今の俺の服装をみて気を使ってたくさん服を持ってきてくれたみたいだ。この服装は変装のためだからそんなことは、と言いたいが、お姉さんの言っていることは事実である。

 

そもそももっといいお出かけ用の服があったならそっちを着てきている。変装なんて顔さえちゃんと隠せばほとんど問題ないのだから。

 

だからといってこの量はどうなんだろう、と俺は思った。お店の試着室のハンガーラックにパンパンになるくらいかけられた洋服たち。これ全部試着してたら何時になるんだよ!

 

とはいえ、お姉さんが善意からこうやって用意してくれたことは分かるので、ありがたく全て試着させていただこう。時間はまだまだあるしね。

 

「じゃあ、試着お願いしますっ」

俺は靴を脱いで試着室に入ると、お姉さんに手渡される服を次々と試着していくのだった。

 

 

ーーーーー

 

「七瀬ちゃん、あなたほんとに何でも似合うわね!次はこっちを着てみてよ!あ、あとこれもこれも!」

 

試着をはじめて約1時間、俺はアパレル店員のお姉さんに着せ替え人形にされていた。

 

さすがに試着のときまでキャップにサングラスというのはあれだと思ったので仕方なく外して試着を始めたのだが、お姉さんにはすぐに俺が七海七瀬であることがバレてしまった。

 

まあ、歌やらアニメやらの人気のおかげで、日本ではほとんどの人が少なくとも顔くらいは知っているという状況になっているから、マスクをしていてもバレる可能性は考えていたが。

 

俺がサングラスを外してお姉さんの方をみたとき、彼女はとても驚いた顔したと思ったら、俺の両肩を掴んで"実在したんだー!!"と大興奮しながら俺を揺さぶってきた。

 

バレたならいいかと思ってマスクも外したところ、俺のあまりの可愛さにお姉さんは過呼吸になっていたから焦った。

 

とまあ、そんなことがありながら、俺が七瀬だとわかって興奮の収まらないお姉さんは、俺に次から次へと様々な服を着せていたのだった。

 

「えと、あの、もうここにある服すべて買うので解放していただけませんか〜!?」

 

数え切れないくらい着せられては脱がされ、着せられては脱がされを繰り返した俺は、ついには精神的な疲労からギブアップを宣言したのだった。

 

「あ、ごめんね!つい楽しくなっちゃって!七瀬ちゃんがほんっとうに可愛いからつい色んな服着せたくなっちゃったの!」

 

俺の言葉でハッと我に返ったお姉さんは、てへっと頭に手を当てながら謝った。

 

「いいですよ、私も楽しかったので。あんまりお洒落とかしてこなかったので色んな服を着れて新鮮でした!」

 

俺はそう言って笑顔を見せた。ちなみにこれは本心である。

 

「あ〜もう、七瀬ちゃんほんとに可愛い!服の値段もちゃんとサービスするわね!お家に送っておくからぜひ配信でも着てみてね!あと、最初に言ってた仕事に使うのはこれがいいと思うわ!」

 

お姉さんはぬいぐるみを抱くように俺を抱きしめながら、きちんと俺の求めていた取材用の服も見繕ってくれたのだった。

 

ーーーーー

 

「はあ…つかれた…」

 

お姉さんのお店を出たあと、ショッピングモールを出るために下りのエスカレーターに乗っていた俺は、ふいに見つけた階下の喫茶店のショーケースに並ぶスイーツたちに惹かれて、ふらっと喫茶店に入店していた。

 

「どれにしようかな、これもいい、これもいい…いや、もう全部だ!」

 

喫茶店で通された席の机に広げられたメニューをみて、どのケーキを選ぶか迷っていた俺だったが、どうしても食べるケーキを絞りきれなくて、なんとメニューにのっていた10種類のケーキ全てを注文したのだった。

 

これには注文を取りに来た店員さんも俺を見て心配そうに苦笑いしていた。

 

だってどれも美味しそうだったんだから仕方ない。

 

ちなみに俺の今の服装は、さっきまでいた服屋さんでお姉さんに選んでもらった、少し長めのフレアスカートが大人っぽい街歩き用としてオススメされたコーデだ。

 

ちなみに顔部分は、マスクはそのままでサングラスは濃い茶色でギリギリ目が見えないくらいのものに変えた。真っ黒のサングラスはあんまり似合ってないよとお姉さんに言われたので、そっこう変えてやった。

 

「お待たせしました〜、ベイクドチーズケーキと、モンブランと、フルーツロールケーキと、ーーーーー」

 

ついに来た。

 

注文をしたときは苦笑いの店員さんだったが、いまはたくさんのケーキを運ぶことに集中していたのか営業スマイルを浮かべながらも少し真面目な顔をして、俺の目の前に置かれたケーキたちを紹介してくれている。

 

「これでご注文の品はお揃いですね、あの、お持ち帰り用のケーキの紙箱もご用意出来ますので、必要でしたらお声かけください」

 

そう言って柔らかな笑顔を浮かべた背の高い店員さんはお店の奥に戻っていった。

 

「うん、たしかにこの量を俺みたいな女の子が食べ切れるとは思わんよな…ははは」

 

いくらお腹が空いていてケーキが美味しそうだったからといって頼みすぎたかな、と少し反省した俺だった。

 

ーーーーー

 

「ねえ、あの子、あのケーキで8個目よ?大丈夫なのかしら」

 

「え!?さっき並べられてたあの大量のケーキ、もうあんなに減ったの!?」

 

いま、俺はお店にいるお客さんたちにものすごく注目されながら、それでも美味しいからそんなことはあんまり気にせずに、黙々とケーキを頬張っていた。

 

ん〜、美味しい!とろけるクリームがさいっこう…ほっぺた落ちちゃうよこんなの…

 

マスクは外したがサングラスはつけたまま、なんとかケーキの美味しさに蕩けている顔を半分隠すことに成功している俺だったが、お客さんたちが注目しているのは俺のとろけ顔ではなくてその食べっぷりだった。

 

「あの!お姉さん、大丈夫なんですか?その、そんなに食べて…」

 

「お腹壊したりしませんか?そんなに食べて歩けます?」

 

「ん?」

 

俺に声をかけてきたのは、俺の隣にあるテーブル席にいた女の子2人組だった。パッとみたところ年齢は15歳くらいだろうか。2人の前のテーブルには半分ほど食べられたショートケーキが置かれている。

 

うん、普通は1つでいいよね、ケーキ。

 

「心配ありがとう、でも大丈夫だよ。私こう見えてもかなりの大食いなんだよね」

 

相手はおそらく歳下ということで砕けた言葉で穏やかに返した。まあ室内なのにサングラスをかけながら大口でケーキを食べてしまっているからいまさら清楚なお姉さんというキャラには修正不可能だろうが。

 

「最初から気になって見てましたが、ほんとにすごい食べっぷりですね…どこにあんなに入るんですか…」

 

2人いる女の子のうちの片方、長めの茶髪をポニーテールにしている女の子がそう言う。

 

「う〜ん、普通に胃に入ってるよ?たぶん」

 

これはほんとに多分である。いままで言ったことはなかったが、実は俺はまだこの身体になってから排泄というものをしたことがない。

 

神様からこの身体をもらったときに、食べ物は摂らなくても死なないということは聞いていたが、食べても出てこないというのは聞いていなかった。

 

俺は食べるのが好きなので、必要があろうがなかろうが食べたいものは食べるが、実際、ほんとに食べた物はどこに消えているのだろうか。不思議である。

 

「お姉さんそんなに食べてるのにすっごくスタイル良いですね!あと服もおしゃれでかわいい!」

 

俺のスタイルの良さは神スペックボディゆえ当然である。服はお姉さんのおかげ、さっそく褒めてもらえたよお姉さん、ありがとう。

 

「ありがとう、君たちも可愛いよ。普通はケーキ何個も食べたりしないよね、心配させてごめんね、ははは」

 

俺はサングラスの下で女の子たちの前のケーキに目線を向けながら言った。

 

「なんだかお姉さんの食べ方が、いま私たちがはまってる配信者の女の子にすっごく似てるねって2人で話してたんです」

 

「そ、そうなんだ」

 

わお、それぜったい俺だと思うんだけど 笑

 

まだ配信者ってそんなに数がいないし、その中に俺と同じような食べ方をする女の子がいるとは考えにくいよな?

 

よし、ここはいっちょ、すこしファンサービスでもしてやるか。そう思った俺は、周りのお客さんたちの目がこっちを向いていない時をうかがって、少し彼女達に近づいてサングラスをズラした。

 

「いつも応援ありがとうね、駄天使ちゃんたち」

 

そう言って俺は、世界一可愛いと自負している必殺スマイルを2人にお見舞すると、サッとサングラスを元の位置に戻して自分の席に戻った。

 

「「っ!?!?」」

 

うんうん、2人ともめちゃくちゃ驚いてるね。声出しそうになったけど、俺のことがバレないようにちゃんと口に手を当てて声を殺してくれたのはありがたい。いい子たちだ。

「うん、これもおいし〜」

 

俺は2人の反応を楽しみながら、残りのケーキを口に運び、ペロリと10種類すべてのケーキを平らげたのだった。

 

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