美少女に転生したので配信者になりますっ! 作:Senana..
3周年記念配信から1ヶ月が経った。
いま、俺は机に広げられた自身初掲載となる雑誌をニヤニヤとだらしない顔をしながら上機嫌で眺めていた。
つい2週間前発売されたその雑誌の表紙には、巻頭グラビアとして白とピンクを基調としたドレスを着て花吹雪の中で微笑みをうかべた俺の写真がでかでかと載っている。
初めての出版社での取材から数日後、俺は初めてプロのカメラマンさんとの仕事にのぞんでいた。現場にはカメラマン以外にもスタイリストさんや出版社の関係者の方などたくさんの人がいて、この世界に来て初めて大勢の方と話すことになったのでかなり緊張してしまった。
最初の現場入りと挨拶の時には、初めて生で見る俺の美しさにみんな目を丸くしていたが、すぐに仕事であることを思い出して丁寧に対応してくれた。
まあ、自分で言うのもなんだがこの神スペックボディは本当にこの世の者とは思えないくらいに美しすぎるので、初見で俺を見て平然としているというのは無理な話だろう。
撮影では、カジュアルなパンツスタイルから豪華なドレスまで様々な衣装を着させてもらった。撮影時の演出もすごくて、巨大な扇風機で風を起こして髪を靡かせたり、花吹雪や紙吹雪を散らしたりなど、俺自身は可愛く見えるだろう顔をして言われた通りポージングしていただけだがすごく楽しかった。
撮影の後、俺の写真が良すぎたのかなんなのか、事前の話にはなかった表紙まで飾らせてもらえることになった。俺としては自分を宣伝できるいい機会なのでいくらでも使ってくれという感じである。
雑誌の中では、配信活動や音楽制作、アニメ制作などいくつかのセクションに分けて、配信から切り取った写真や今回撮影してもらった写真なども使いながら、なんと12ページにも渡って俺の記事が掲載されている。
発売からまだ2週間しか経過していないこの雑誌だが、俺の初掲載ということで普段より大幅に初版の部数を多くしたにも関わらず既に全国で売り切れが続出しているらしい。
連絡を取り合っている出版社の方から聞いた予想では、すぐにその会社の最高発行部数を更新するだろうということだ。
配信のコメント欄やTwitterのリプライには雑誌の購入報告がたくさん来ていて、駄天使たちもみんな買ってくれたようだ。嬉しいね。
ただ、インタビューやグラビア撮影、出版前の確認の打ち合わせなど、想像していた以上にひとつの雑誌に出るだけでも時間がかかることが分かってしまったので、しばらくはメディア出演はいいかな、と思っている。この後に話すが、あの後にもうひとつメディア出演もしたしね。
もちろん出ることによる宣伝効果は凄まじいものがあるけど、正直、既に日本には俺のことをまったく知らないような人はほとんどいないので、わざわざ時間を使って出演する必要は薄いと思うのだ。
知らない人がいたとしても、その人たちはそもそもテレビや雑誌などを見ない人である可能性が高いから、出たところであまり変わらないだろうと思う。
なので、とりあえずはまた今まで通り毎日配信をしながら動画を作って、たまにアニメや歌も作って投稿して、という生活を送ろうと思っている。
さて、初めての雑誌の反響やこれからのメディア出演についてここまで語ったが、この1ヶ月間で、もうひとつ大きなトピックがある。
それは、俺のファーストアルバムの世界的な"大ヒット"だ。
配信者としての3周年記念日にアーティスト"七海七瀬"としてメジャーデビューし、その翌日にオリジナル曲10曲を収録したファーストアルバムをリリース、YouTubeにも新たにリリースされた7曲のMVを投稿したわけだが、これがこの1ヶ月で爆発的な人気を獲得していた。
特に、このファーストアルバムの表題曲であり、自身初めての英語歌詞の曲である『Ready to fly』が世界中の賞賛を集めている。
ハンドクラップやカホンなどを使った軽くて乗りやすいリズムと俺の弾くギターだけ、というシンプルでアコースティックなサウンドが特徴のバックサウンドと、俺の美しくも力強い伸びやかな歌声が魅力のこの曲は、いま世界中のあらゆる音楽チャートで首位を飾っている。
自分的にもお気に入りの曲だし、表題曲として1番こだわって作った曲ではあったが、まさかここまでの大ヒットを生むとは思っていなかった。
YouTubeに投稿されたこの曲のMVは、既に今までに投稿してきた動画の再生回数を軽々と追い越しており、投稿からたった1ヶ月で5億回にまで到達している。そのうち10億という数字にも届くことだろう。
この世界的なヒットを受けて各メディアでは、この○○というランキングで1位をとりました、だとか、この音楽家がこのように賞賛していました、だとか、あるいは七瀬の歌のここがすごいんです、などと連日このアルバムについて様々な特集をしている。
もはや自分でも自分に向けられた有名人のコメントなどを追いきれていないところがあるので非常に助かる。
このアルバムのヒットにより、国外にも七海七瀬の名前が広がり始めているようで、最近の配信の同接は見間違いかと思うような数字を叩き出している。100万人にもせまる数の同接にも耐えるYouTubeLiveくん、きみは本当に優秀だね、好きになってしまいそうだよ。
俺のメインチャンネルの登録者数は現在422万人になっていて、アルバムのリリース前、3周年記念配信のときにもうすぐ200万人いきそうだねと駄天使たちと話していたことを考えると、この1ヶ月間で倍以上にまで膨れ上がっていることがわかる。音楽の力ってすごい…世界でバズるってすごい…
この422万人という数字は、現在世界で4番目のチャンネル登録者数である。いま1位の位置にいるアメリカのYouTuberレイ・ウ○リアム・ジ○ンソンさんは既に600万人目前という話だから、俺が1位になるのは少し厳しそうだが、世界4位でもめちゃくちゃすごいと思っていいだろう。
それに、俺はたくさんチャンネルを持っているから、全部含めれば世界1位ですと言えるかもしれない。言わないが。
最近は、契約した音楽レーベルの方からテレビの音楽番組の出演オファーが大量に来ているという知らせがよく届いていて、困っていたりする。
雑誌の話のときに軽く言ったが、既に先週、某有名音楽番組○ステにも初出演し、生のお客さんの前で演奏する緊張感と楽しさを味わってきたところだ。
バックバンドありでの演奏はなかなか楽しくて、いつもより張り切って歌った。他にも生でタ○リさんと会えたのは少し嬉しかったりした。
たくさん来ているオファーに少しずつ応えて行くのもありではあるのだが、いかんせんかなり時間が取られてしまう。ものによっては今までの3年間で欠かしたことのない毎日の配信までついに休むことになってしまうかもしれない。
人気がでて色々なところに出るのもいいが、やっぱり俺の本業は配信者であり、その本分である配信を他の用事で休むことは出来ないな、と俺は思った。
俺は机に広げていた雑誌をパタンと閉じると、時計を見て配信までまだ時間があることを確認し、また視聴者を驚かせる為に考えたある計画に向けて、駄天使たちが喜ぶところを想像してニヤニヤとしながら動き出したのだった。