美少女に転生したので配信者になりますっ!   作:Senana..

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魔法を使ってマジックするよ?

 

 

田舎にいけば元気に鳴くセミの声が鼓膜を絶え間なく揺らしてくれるだろうある夏の日。

 

少し前に7月7日の誕生日配信を終え、しばらくは特にイベントはないかな〜などとぼんやり考えながら、俺はTシャツにパンツ一丁という世界一の美少女を自負する者としては些か意識の低い格好でリビングのソファに大の字に寝転んでいた。

 

日々の配信や動画づくりはもちろん楽しいし、幸せな日々であることに間違いはないのだが、特に変化のない平和な日常が続くと何か刺激が欲しくなって来てしまうのが人間というものである。

 

それは人間かどうかが怪しい神スペックボディの持ち主である俺も例外ではない。

 

最近も今まで通り、新作ゲームをプレイしたり、ゲームの新たな世界記録に挑戦したり、たまに歌配信やお絵描き配信をしたりと、変わらぬ日々を送っているなかで、なにか新しいことをしたくなってきたのだ。

 

既に進行中の計画が2つあるにはあるのだが、それはまだすぐにどうこうできるものではないので、少しずつ準備を進めるしかない。

 

そうなると、この新しい何かを欲する気持ちを満たすためにはどうすれば良いのか、俺は考えた。そして思いついたのが、

 

よし、使っていなかった新しいチート"魔法"を使ってみよう!

 

ということだった。

魔法と聞いてどのようなものを思い浮かべるかは人それぞれだろうが、これを読んでいる人の多くが想像するのは、剣と魔法、ファンタジーの世界で使われるような魔法だろう。

炎を出したり、水を操ったり、雷を落としたりなど、空想の中の魔法使いは様々な魔法を使うことが出来る。

 

そして、この俺がもらったチート"魔法"はまさに、そういう魔法が使えるチートである。すっごくワクワクするだろう?

 

これまで色々と忙しくしていて忘れていたけど、"魔法"なんて凄く面白そうじゃないか、具体的にどんなことができるのかは使ってみないと分からないが、きっと面白い配信が出来る!

そうやって、謎の確信を得た俺は、神様がくれたチート"魔法"

を色々と試しながら、初めての"魔法"を使った配信に向けて準備を進めるのだった。

 

ーーーーー

 

「こんばんは〜、マジシャン七瀬の配信へようこそ〜!こんばんは〜」

 

・その格好どうしたの!?

・魔女っ子かわええ…

・急にコスプレ??

・こんばんは〜

・めちゃくちゃ似合ってる!どしたの?

 

俺は自作の魔女のコスプレ衣装を身にまとい、これまた自作の魔法の杖を振って駄天使たちに挨拶をした。

 

「今日は〜、はじめての〜、マ・ジ・ッ・ク配信で〜す!!」

俺は少し溜めてから今日の企画を発表し、YouTubeの配信タイトルも、『マジシャン七瀬のマジックショー☆』に変更した。

 

・マジック?

・これはななちゃんの新たな能力の予感…

・ななちゃんが本気でマジック練習したらやばそうね

・今度はマジックか〜!たのしみ!

・おお〜!

 

駄天使たちは今までさんざん俺の人間離れした能力を見てきているので、ちょっとやそっとのことでは驚けなくなってしまっている。そんな可哀想な駄天使たちを救うため、俺は信じられないようなマジック(ただの魔法)で度肝を抜いてやろうと決めているのだった。

 

「駄天使さんたちはマジックを見たことありますか〜?テレビとかではたまにやってますかね?」

 

・そうだね〜、テレビぐらいかな?

・あるよ〜

・簡単なのならできるぜ

・コインとかのやつなら

・少しは見たことある!

 

「うんうん、少しは見たことがある人が多いみたいですね。コメントにもありますが、よくあるやつだとコインとか、トランプとかですよね。本格的なものだとハトだったり?何度も見るとタネが分かるものもあったりしますよね」

 

・トランプのやつはよく考えたら分かるね

・うんうん

・ハトはまじでどうやってんのかいつも分からん

・コインは指で弾いたりしてるみたいね

・ななちゃんはどういうマジックするの?

 

「う〜ん、どういうマジックかはネタバレになっちゃうので、さっそく始めちゃまいましょうか!人前でするのは初めてなので、もし失敗したら見なかったことにしてくださいね! 」

 

・おーけーおーけー

・ワクワクする

・マジシャン天使

・了解!笑

・初めてでよく配信でやる勇気でたねww

 

「それでは!七瀬のマジックショー始まり始まり〜」

 

・88888

・頑張れ〜

・さて、新たな伝説が生まれるのか

・パチパチパチ

・初めてのマジックショー!

 

俺は笑顔で手を広げてマジックショーの始まりを宣言すると、早速1つ目のマジックをはじめる。

 

「それではみなさん、ここに折り紙でできた小さなカエルさんがいます。見えますね?では、このカエルさんを、私の右の手のひらの上に乗せます。横から見るとこんな感じです。大丈夫ですね?そしたら、手のひらを閉じてカエルさんを包みます。カエルさんはこの手の中にいるはずですよね?1度手を開くと…ちゃんといますね」

 

・すごい、語りが本格的

・カエルさんどうなっちゃうの!

・魔女のマント以外はただのジェラピケの服だし、袖もまくってるから隠す場所はないはず…だよな?

・おてて可愛いw

・まだいるねぇ…

 

「ではもう一度、カエルさんを右手で包みますね?じゃあ、5秒数えます。5.4.3.2.1.ぜろ!この右手を広げると…?あれれ〜?カエルさんがいなくなっちゃいました〜!」

 

・なにぃぃぃ!?

・カエルさんどこ行ったの〜??

・マジか…

・手のひらの裏は?

・すごっ

 

「手のひらの裏も…いませんね〜、手をヒラヒラとしても…出てきませんね?」

 

・え〜!これはまじでわかんない

・右手で包んで5秒数えただけだよな?

・指で挟んでるわけじゃないのか

・まじで消えたじゃんww

・ちゃんとマジックしてるなあ

 

よしよしよし、俺は最初のマジックが上手くいったことでひとまず安心していた。

 

新しいチート"魔法"を使うために考えたこの配信、"マジシャン七瀬のマジックショー☆"には、自分の中だけで呼んでいるもうひとつの裏タイトルがある、それは"チート魔法のゴリ押し!マジックショー☆"である。

 

何がゴリ押しなのかって?マジックというのは、様々な高度な技術を使って、現実では一見ありえないような出来事を起こし、さも魔法を使ったように見せるエンターテイメントのことだ。

 

マジシャンたちは、見る者の視線を上手く誘導したり、上手く相手の死角を利用したり、訓練された目にも留まらぬような早業を使ったりと、色々な工夫を凝らして人々を楽しませている。

 

一方、俺のマジックショー☆は、ただの魔法である。

 

さっきのカエルのマジック、あれは、ただ折り紙のカエルを手の中で灰すら残らないように高火力の炎魔法で燃やしただけである。

 

なんて単純なんだろうか。世には燃えカスの残らないフラッシュペーパーなるものも存在するらしいが、魔法があればそんなものは必要ない、もやし尽くせばいいのだ。もし灰が残りそうになったら魔法で無理やり分子に干渉して二酸化炭素にしてしまえばいい。力技である。

 

「はい、みなさんタネは分かりましたか〜??カエルさんはどこに行っちゃったんでしょうね??」

 

・まーじで分からんw

・燃やすくらいしか思い浮かばないけど手の中で燃やすのは危ないしなあ

・消えましたね…

・分かりません!

・マジシャン七瀬やるじゃん…

 

「それでは、次のマジックにいきますね〜!はい、こちらのコインを見てください。裏も、表も、普通のコインですね。では、このコインをまた、私の右手で包みます。1度開くと?まだありますね。もう一度包みます」

 

・また消えるんか…??

・カエルさんの次はコインが!!

・消える?消える?

・瞬きできないww

・どうなる!?

 

俺は手の中のコインを炎魔法で一瞬にして融解させると、氷魔法で温度を下げながら魔法で形を成形する。

 

「では、今度は3秒数えますよ?3.2.1.じゃ〜ん、おや〜?コインが星型になってる〜!?」

 

・えぇぇぇぇぇ!?

・変形やと!?

・消えるんじゃないのかw

・星型!?

・意味わから〜ん!w

 

「ではもう一度この星型の金属を手で包んで〜?」

 

俺はまた炎魔法で星型になった金属板を融解させると、元のコインの形に成形して氷魔法で冷却する。

 

「開くと?あ!コインに戻った!」

 

・わがんなぃぃぃぃ!

・なんでえええ

・どゆことー!?

・コインの模様までちゃんと戻ってる…

・分からんなあ

 

うむ、いいねぇ、楽しくなってきた。

 

ーーーーー

 

「いまからこのコインを指で弾きます。見ててくださいね?せーのっーーぱちん!」

 

俺は弾かれて飛んだコインに指パッチンと同時に重力魔法をかけてコインを宙に浮かせる。

 

「はい、コインが浮きました〜」

 

・はああああああ!?

・え!?まじで!?

・糸?糸なのか!?でもさっきまでも使ってたコインだしついてないよな?

・なんで浮いてるの!?

・え?え?え?

 

ーーーーー

 

「今からこのコップを傾けて、入っている水をもう片方の手で作った輪っかに注いでいきますよ〜、いきますよ〜?それ〜」

 

俺はこぼれ落ちてくる水がカメラから見て俺の手の輪っかの奥で見えなくなっているタイミングで炎魔法で蒸発させ、蒸気を風魔法ですぐにカメラから見えない方向に飛ばしていく。

カメラから見ると、手で作られた輪っかに注がれる水が消えていくように見える。

 

・!?!?!?!?

・ちょっ、ん?どうなってる!?

・あっ、コップの水全部無くなった…

・どこ!?水はどこ行ったの!?

・机も全く濡れてない…でもたしかに水はななちゃんの手に隠れるまでちゃんとあったのに…

・マジシャンガール七瀬ヤバスギィ!!

 

ーーーーー

 

「またまたこのコップに水を注ぎますね?はい、コップの水をよく見てください?ちゃんと普通の水ですよね?それでは、このコップをもう片方の手のひらで一瞬隠すと?」

 

俺は手のひらでカメラから水が見えなくなった一瞬の間に、氷魔法でコップの中の水を完全に凍らせる。

 

「はい、コップの中の水はすべて凍ってしまいました〜」

 

・!!!

・あの一瞬で何があった!?

・水ってそんなすぐ凍るの??

・もう参りました…

・えぐぅぅ

 

ーーーーー

 

「この箸の先に水を付けて、水が滴るのを待ちます…お、来ますよ〜?ーーーぱちんっ」

 

俺は水滴が箸の先から落ちたのを確認すると重力魔法で水滴を浮かせる。

 

「はい、今度はコインじゃなくて水が浮きました〜!」

 

・………

・ぇぇぇぇ…

・な、なにこれぇ…

・水に糸は付け…られないよなぁ…

・なんで?どうして?

・……やば

 

 

その後も俺は"魔法"を試すなかで思いついたものを次々と駄天使たちに披露していくのだった。

 

ーーーーーー

 

「はい!それではマジシャン七瀬のマジックショーはこれにて終了です〜!ありがとうございました!」

 

・88888

・うん、もう凄すぎて何も言えないww

・ひとつもタネが分かりませんでしたw

・もうななちゃんは魔法使いってことでいいよw

・88888888

・マジシャン天使凄すぎました!!

・もう驚き疲れたわww

 

「いや〜、なんだかんだ1時間近くやってましたねー。 初めてのマジック楽しかったです!でも疲れた〜!」

 

・初めてのマジックでこれ…??

・今までみたマジックの中でダントツで意味がわからなかったけどw

・おつかれさま〜!

・そりゃ疲れるよね

・マジックは神経使いそうやもんね

 

「それでは、やってみたかったマジックショーが出来て満足したので、今日はこのあたりで配信を終わりたいと思います〜!駄天使の皆さん、最後まで見てくれてありがとうございました〜!マジックのタネがわかった人はコメントしてくださいね〜!おやすみなさ〜い」

 

・おやすみ〜!

・おつかれさま!

・いや分からんてww

・楽しかったです!

・おやすみ〜

・解析班たのんだ!

 

 

俺は配信停止ボタンを押してコメントの流れが止まったことを確認すると、魔女のコスプレで身につけていた紫色のマントと魔女の帽子をとってホッと息を吐いた。

 

いやぁ〜、楽しかったけど疲れた〜!

 

ただ魔法を行使しているだけとはいえ、タイミングがシビアでかなり神経を使った。カメラへの見せ方も気を使ったし、考えることの量が多くて精神的な疲労も大きい。

 

これ、本職のマジシャンってまじで凄いな。魔法もなしに人を驚かせられて、しかも見せ方もめちゃくちゃ上手いし…

 

魔法を使ってのゴリ押しマジックショーをしたことで、本物のマジシャンのすごさを実感した俺だった。

 

にしても、後半調子に乗って明らかに科学じゃ説明がつかないようなことをたくさんした気がするけど大丈夫だろうか…水って浮かす方法ないのかな…風とか?

 

まあ、たとえ科学で説明のつかないことが多々あったとしても、これはカメラを通しての配信であるから、映像技術だとかカメラの画角外に何かあるだとか色々と考えて説明しようとしてくれるだろう。

 

人間というのはファンタジックなものが大好きで、娯楽としてもファンタジーな世界観を題材とした小説やアニメが人気であるにも関わらず、現実にはそういうものは存在していないんだと決めつける人がほとんどだ。

 

幽霊やエイリアン、占いや願掛けなど、そういった概念自体は好んでいるのに、それが実在しているということを証明できないので本当は存在しないものなんだと思っているのだ。

 

俺も元はそういう人間だったからこそ、大丈夫だと思える。

 

誰かがUFOをみた、魔法をみた、と言っても、そっかそっか、と言ってあまり本気にしないのが人間なのだ。

 

そう思いながらも、配信の後半の暴走を少し反省してベッドに潜り込んだ俺だった。

 

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