美少女に転生したので配信者になりますっ! 作:Senana..
4周年記念配信からしばらくが経過し、青く瑞々しい植物たちから夏の到来を感じ始めた5月下旬。
俺は自分の家から数駅分ほど離れた場所にあるとあるマンションの一室にやって来ていた。
「七瀬さんの曲から『Ready to fly』と『蒼星』でいいですか??」
「はい、大丈夫です!私の曲練習してくださったんですか?」
「もちろんですよ、七瀬さんとコラボセッションさせてもらえるなんてめちゃくちゃ貴重な機会ですから」
大きな三脚で固定されたビデオカメラと、これまた三脚で固定された2対の大きな照明の前で、俺たちは撮影前の軽い打ち合わせをしていた。
「僕が最初に合図を出すんで、七瀬さんはそれに合わせてギターイントロに入ってください。あとは、楽しみましょう、ですかね 」
「わかりました!そういえば、この部屋って大きな声出しても大丈夫ですか?配信見てるだけじゃ分からないかもですけど、私けっこう声量があるので」
部屋は彼くらいの年齢の男性の一人暮らしにしては広く、そしてよく片付いている。YouTuberをやっているくらいだから防音もよく考えられているだろうが、俺の声は本当にかなり大きいのだ。○ステのリハでもかなり驚かれたくらいだ。
「大丈夫ですよ。僕も普段の動画でかなり大きな声出してますけど苦情とかは来たことないので」
「なら良かったです、じゃあ、始めますか?」
「そうですね、じゃあ録画開始します」
俺がギターを手に取って準備を終えたのを確認すると、彼は自分もマイクを持って電源が入っていることを確認してから、ビデオカメラの録画ボタンを押した。
ビデオカメラはまだ少し上を向けられていて、ソファに座る俺の姿は映っていない。
「VoonVoon.Hello Youtube!! どうもヒ○キンです!きょ・う・は!なんと!とんでもないスペシャルゲストが来てくださいました!今日はその方とコラボセッションをさせていただきます!それでは、スペシャルゲストはこちらの方です!」
彼、ヒ○キンさんはそう言うと、上を向けていたカメラをソファ全体が映るように角度を調整した。
ヒ○キン。前世では日本のYouTuberのパイオニアとしてかなりの知名度を持っていた人物だ。ビートボックスの動画からYouTuberとしてのキャリアをスタートし、子供でも安心して見ることが出来る体な動画作りで、商品紹介やゲーム実況などをメインにシフトしながらもずっと日本のトップYouTuberの名前を背負っていた。
今世では俺がいるせいで、今のところパイオニアと言われることも、トップYouTuberと言われることもない彼だが、その堅実な活動は前世と同じくきちんとファンを獲得している。
4周年記念配信が終わって配信者である七海七瀬としての最後の1年を過ごし始めた俺は、今までやってこなかったことでもしようかと思い、考えたのが他のYouTuberとのコラボだった。
そこで、前世で俺が死ぬ時まで大きな問題も起こさずずっと一定の人気を維持していた彼に目をつけ、Twitterで彼と連絡を取り合い今回のコラボが実現されたのだった。
「どうも〜!配信者の七海七瀬です!よろしくお願いします〜!」
俺は、カメラが自分を画角に入れて固定されたのを確認すると、いつもより元気に挨拶をした。
「はい!なんとあの!いま日本中、いや、世界中で大人気の配信者であり歌手でありアニメクリエイターである、七海七瀬さんに来ていただきました〜!!いや〜、本当にありがとうございます!よろしくお願いします!」
「ははは、もっとフランクにしてくださって大丈夫ですよ!今日は初めてのビートボックスとのセッション、すごく楽しみにしてきたので、一緒に楽しみましょうね!」
「ありがとうございます!それではさっそく!セッションを始めていきますか!1曲目は七瀬さん作曲のオリジナル曲から、昨年世界中で大ヒットしたあの曲!『Ready to fly』です!いきますね?ワン・ツー・スリーッーーーー」
ヒ○キンさんのカウントに合わせてイントロを弾き始めた俺は、初めてのコラボセッションを新鮮な気持ちで楽しんだのだった。
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「いや〜、楽しかったです!どちらも本当にいい曲ですね!それと、なんといっても七瀬さんの歌声がすごかったですね〜!七瀬さん、ありがとうございました!」
2曲のセッションを撮り終わった俺たちは、動画の締めに入っていた。
「いえいえ、こちらこそありがとうございました!機会あればまたセッションしましょうね!」
「もちろんです!それでは、今日の動画楽しんでいただけましたら高評価・グッドボタンぜひぜひお願いします!そして、概要欄に七瀬さんのチャンネルのリンクもありますので、そちらのチャンネル登録もぜひぜひお願いします!最後までご視聴ありがとうございました!バーイ!」
「ありがとうございました〜、ばいば〜い!」
ヒ○キンさんに合わせて俺も必殺スマイルを浮かべて手を振った。
ヒ○キンさんは手を振ってから少し間を置いてビデオカメラの録画を止めると、ほっと安心したように息をついた。
「緊張しましたか?セッション中はすごく入り込んでたように見えましたけど」
俺はその様子をみて声をかける。
「いやいや、まあ、そうですね ハハ… プロの歌手の方とセッションするのは初めてだったので、かなり緊張しましたね。でも楽しかったですよ」
「それは良かったです!私もテレビに出た時以外で誰かと一緒に演奏するのは初めてでしたけど、すごく楽しかったです!ビートボックスってあんなにしっかり音が出るんですね!ノリノリで歌っちゃいました 笑」
「楽しんでいただけたようで良かったです!それじゃあ、ずっとカメラの前にいてもあれなので他の部屋に移動しましょうか、軽くお菓子でも出しますね」
「ありがとうございます〜」
こうして俺の初めてのコラボ動画は無事撮影が完了したのだった。