美少女に転生したので配信者になりますっ! 作:Senana..
街路樹の下には茶色い枯れ葉が積み重なり、吐く息の白さが目立つようになった12月中頃。
俺は冬用の7種のコーデの1つ、白のニットに赤茶色のロングスカート、上にブラウンのロングコートを羽織り、臙脂色のマフラーを巻いた姿で、赤や緑のクリスマスカラーに包まれた街中を歩いていた。
口元はマフラーで覆い、目元は縁の大きな黒縁メガネを掛けてなんとかバレないように工夫している。
いま俺がどこに向かって歩いているかというと、以前服を買ったアパレルショップの店員だったお姉さん、紅葉さんが今年の春にオープンした服屋さんである。
初めて紅葉さんと出会ったあの日から、定期的にあの店に服を買いに行っていた俺は、いつの間にか紅葉さんと連絡先を交換して定期的に連絡を取り合う仲になっていた。
今世ではほとんど他人との交友関係を築いていない俺であるので、彼女は俺の数少ない大切な友人である。
今日はお昼で営業を終わる彼女の店に紅葉さんを迎えに行って、そのまま一緒にランチに行く予定だ。今までも度々一緒にご飯に行ったりしていたので、特に珍しいことではない。
「今日寒いなあ…せめてこの風がもうちょっと弱かったらいいんだけど」
今日は今冬で1番の冷え込みが予想されると朝のニュースでやっていたので、かなり厚着してきたつもりではあるのだが、風が吹くとどうしても寒い。はやく紅葉さんのお店に行って暖まろう。
そう思い、俺が少し足を速めた時だった。
俺が歩いている通りの車道の反対側、立ち並んでいる様々なお店の1つの正面扉から、バタンッ、と強く扉を開いて中学1年生くらいに見える男の子が飛び出してきた。
足を速めていた俺はギリギリ男の子を躱しきれずぶつかって尻もちを着いてしまう。
「あっ、ごめんなさい!お姉さん大丈夫ですか!?」
男の子はそう言って尻もちをついた俺に駆け寄ってくる。
「うん、大丈夫だよ。きみも大丈夫?ケガは無い?」
俺はおしりをぱんぱんと軽く払って立ち上がった。
脳は男の子の動きに完璧に反応していてかわそうとしていたのだが、身体が脳の指示に応えきれなかった。今まで、少しダンスを練習したくらいで筋力や運動神経はあまり鍛えてこなかったのがいけなかったようだ。
こういう時のために今度"超学習"を使って身体能力も鍛えておこう、と俺は思った。
「はい、僕は大丈夫で…」
「ん?」
何故か途中で言葉が途切れて固まった、俺より少しだけ背の低い男の子を俺は"どうしたの?"と見つめる。
「あの…七海七瀬さんですか!?!?」
え?
男の子は俺の顔をじっと見つめたまま大きな声でそう叫んだのだった。
あ、まずい。と俺は思った。
ここはクリスマス前の街中、それも日曜日。俺がいる通りはたくさんの飲食店や服飾店が立ち並ぶメインストリートである。
さすがに人にぶつかりながら歩くような人の多さではないが、今男の子が出したような声の大きさならば、俺がいる側の歩道はもちろん、向かい側の歩道にいる人まで、100人弱にはその声が聞こえてしまうだろう。
「え?七海七瀬?」
「え?どれ?あっ、あの子??」
「え、本物じゃん!!」
「ねえねえななちゃんいるよ!!ほらあれあれ!」
「ほんとだ!ななちゃんだ!」
俺は耳に届く人々の声に半ば諦めたような気持ちになりながら、足元に落ちていた黒縁メガネを"これのせいか…"と思いながら拾い上げた。
「あっ!ごめんなさい!こんなところでいったらやばいですよね!?」
まさかの本物の七海七瀬に驚いてついうっかり言ってしまったのだろう。俺の名前を街中で大声で叫んだ少年は、しまったという顔をしながらも、興奮が収まらないのかやはり大きな声でそう言ったのだった。
「え〜と、うん、七海七瀬だよ〜!さすがにこんな場所で人に囲まれるのは嫌だから逃げるね!またね坊や!心配ありがとう!」
俺は男の子にそう言うと、俺を取り囲みつつあった人混みの隙間から急いで脱出。小走りで人混みに紛れたのだった。
ーーーーー
チャリチャリーン。
俺は目的のお店の"CLOSE"と掲げられた扉を開けると、やっとたどり着いた安息の地にホッと息をついたのだった。
「あら、思ったより早かったのね?というかどうしたの?なんだか息切れしているみたいだけど」
ドアベルの音を聞いてお店の奥から出てきた紅葉さんは、扉の前で呼吸を整えている俺をみてそう言った。
「ちょっと色々あって、小走りで来たんです」
そう言った俺の言葉を聞いて、紅葉さんは"よくわかんないけどとりあえず奥においで?"と言って俺を店の奥に招き入れた。
ーーーーー
「なるほど〜、それは大変だったわね。突然七瀬ちゃんが現れたらそういう反応しちゃう男の子の気持ちも分かるからあれだけど、災難だったわね〜。はい、紅茶のおかわり」
出されてすぐに飲み干してしまった紅茶のおかわりを紅葉さんがゆっくりと注いでくれる。
「ありがとう〜、あぁあったまる〜」
俺は紅茶の香りを楽しみながら口に運ぶと、蕩けたように顔を綻ばせた。
「ふふ、ほんとに七瀬ちゃんはかわいいわよね。きっとその男の子もあなたに恋しちゃったに違いないわ」
そんなことを言って紅葉さんは笑っている。
「まあ、生で私を見たら、そうかもしれませんね?ふふ」
俺は紅葉さんの冗談か本気か分からない言葉に冗談で返したのだった。
※
紅葉さんの名前の読み方(