美少女に転生したので配信者になりますっ! 作:Senana..
8月・ペルー -- クスコ
『お待ちしておりました、七海七瀬さん。初めまして、わたくし、当列車の乗務員をしておりますディエゴと申します。どうぞよろしくお願いいたします』
俺の前に立った、体が大きくて堀が深いがくりっとした目が親しみやすい乗務員のディエゴさんは、俺に向かって綺麗なお辞儀をするとそう言った。
『初めまして、七海七瀬です。1度は乗ってみたいと思っていたので今日をすごく楽しみにしていました、よろしくお願いします。あと、英語でも大丈夫ですが、スペイン語の方が話しやすければそちらでも大丈夫ですよ』
俺は、ペルーでは多くの人がスペイン語を話しているという事前情報を聞いていたので、余計なお世話かもしれないがそう言ってみたのだった。
『ああ、ありがとうございます。まだあまり慣れていなかったので助かります。ところで、うちはつい先日運行を開始したばかりなのですが、それ以前からこの列車についてお知りになっていたのですか?』
そうスペイン語で返した彼の言葉に、俺はしまったと思った。
俺が今から乗ろうとしている豪華寝台列車 ベルモンド・アンデアン・エクスプローラー は、俺が前世でたまたま知ってずっと乗ってみたいと思っていた豪華列車だったのだ。
前世では2017年に運行を開始したこの列車だったが、今世では何があったのかなんと2年以上もその運行開始が早まり、それを知った俺は、ちょうどそのあたりに南米に来る予定だったこともあり、すぐに予約を取っていたのだった。
う〜ん、どうしようか。運行開始が発表されたのは数ヶ月前だし、その時に知ってからずっと乗りたかった、という意味だったことにしようか。
『ああ、数ヶ月前の運行開始の発表のときから乗りたいなと思っていたということですよ、ははは。実際、予約の受付が開始されてすぐに予約を取らせていただきましたからね』
俺はそうスペイン語で返した。
『なるほど、そういうことでしたか。さっきああ言いましたのは、うちは東アジアとの繋がりはあまりありませんので、もしかしたらうちのトップが関係しているのかと思いましてね』
『トップ?ですか?』
『はい、うちの社長、実は七瀬さんの大ファンでして、もしかしたら直接七瀬さんに売り込みでもしたのかと思いあのような質問を。ちなみに、私も普段は"駄天使"として応援させていただいていますよ』
制服の上からでもわかる筋肉質な身体をピシッと正しているディエゴさんは、ニコッと笑ってそう言った。
『ええ!?そうなんですか!?ベルモンド社の社長さんってとんでもない大富豪じゃ…それに、ディエゴさんも!日本からこんなに離れた南米にも私のファンがいてくださってたんですね。これは嬉しいことを聞きました』
これはさすがに驚いた。ベルモンド社といえば、世界各地に豪華列車やホテル、クルーズ、レストランなどを保有する大企業である。まさかそんな企業の代表さんまで駄天使だったとは…配信の口調が無意識に丁寧になってしまいそうだ。
『ははは、いやいや七瀬さんは今や世界的な大スターですから、この国にもたくさんファンがいると思いますよ。私の友人にもたくさんいるくらいですからね』
その後も少しだけディエゴさんと軽い会話をしたあと、俺はついに憧れの豪華列車 ベルモンド・アンデアン・エクスプローラーに乗り込んだのだった。
ーーーーー
豪華列車が動き出して7時間、ラウンジでの昼食や午後のお茶の時間を終えた俺は、列車内の自室であるスイートルームに戻り外を眺めたり寝転がったりしてのんびりとした時間を過ごしたあと、「そろそろか」と配信の準備を始めた。
三脚にビデオカメラを取り付け、画角に広い室内が入るようにカメラを設置すると、画角の中心にスイートルームの椅子をカメラに向けて置いた。
「駄天使のみなさん、ご機嫌よう。七海七瀬の配信のお時間です。本日はお集まりいただきありがとうございます」
膝を閉じて斜めに揃え、背筋をピンと伸ばして極力上品に椅子に座った俺は、配信が始まったことを確認すると、貴族のお嬢様をイメージして丁寧に挨拶した。
・ん!?
・こ、こんちわ…
・ご機嫌よう…??
・初めて見る服着てる!
・ななちゃん!?
・今日は清楚さが限界突破してるな
・七瀬お嬢様!?
・どったの!?
・カジュアルドレスとか珍しいね?
・後ろのいかにも高級ホテルって感じの壁とベッドはいったい…?
・ご機嫌よう?
「今回は、南米はペルー、クスコから出発いたしました豪華列車、ベルモンド・アンデアン・エクスプローラーのスイートルームからお送りしておりますわ。…おほほほ?」
・ベルモンドアン…なんて??
・メキシコの次は南米来るやろと思ってたけどペルーか!
・豪華列車かぁ!どおりで部屋がすごいw
・初めて聞いたけど白と青の配色がすごい綺麗な部屋やね
・そうなんですわね!!すごいですわ!
・最後迷ってもうてるやんww
・これ列車の中ってこと!?
・お嬢様キャラが崩れかかっていましてよ?
「そうなんですわ、ここはお列車の中でございまして、今もお走りになっているところなのですわ…?……私にはお嬢様は無理みたいです…とほほほ」
・お列車www
・頑張ってる頑張ってる
・とんだエセお嬢様ですわ!!
・無理しなくていいですわ??w
・"おほほほ"みたいに"とほほほ"って言わないでwww
・お列車がお走りに?ww
・なんか色々違和感すごいよww
・いつものななちゃんも十分清楚だから安心して
「とまあ、おふざけはこれくらいにして、皆さん!今回は初めて豪華列車からの配信ですよ!ぱちぱちぱち〜!」
・豪華列車乗ったことないな〜
・おお〜!
・背景だけで高級感が伝わってくるww
・88888888
・ペルーにそんな列車があるのは知らなかった
・これはななちゃん富豪やなあ
・列車の中にこんな広い部屋あるんや
「この列車はつい先週運行を開始したばっかりですし、日本からは地球の裏側ってくらい離れてるので、日本にいて知ってる方はなかなかいないんじゃないですかね?」
・そんなに新しいんだ!
・逆によくななちゃんは知ってたねww
・めちゃくちゃ新しい豪華列車なわけか
・ななちゃん地球の裏側にいるのか〜遠いな〜
・先週!?
・ペルーは遠いねぇ
・完全な裏側はウルグアイかブラジルだっけ?
「私は運行開始発表をたまたま見つけて知ったんですよね。それで、乗ってみたいって思って予約したんです。この白地の内装がすごく綺麗で惹かれましたね〜」
・たしかにすっごい綺麗
・なるほど〜
・なんかロイヤルって感じするw
・外の景色みたい!
・南半球だからそっちは冬?
・ところどころの差し色がいいねぇ
・そのベッドで1人は広すぎんかww
「あ、外見てみますか?ちょっと待ってくださいね。あ、あと今コメントにも来てましたが、こっちはいま冬ですね。とはいっても日本の冬よりかは全然あったかいですね〜」
・そっか、半球が変わると季節も逆転するのか
・見る見る〜!
・ペルーってどこらへんだっけww
・東京の冬は結構冷えるもんねぇ…
・ななちゃんが急に近寄ってくるとドキッとするw
・ありがとう〜
・どんな場所走ってるんだろ
・寒すぎないのはいいね〜
俺はビデオカメラの向きを三脚ごと変えると、車窓が広く映るよう画角を調整した。
「はい、皆さん見えますか?かなり大きい窓なので迫力すごいですよね」
・すごい開放感…!!
・がっつり山の中を想像してたらめちゃくちゃ平野だったw
・すごぉ〜
・結構なスピード出てるね
・これは外見てるだけで楽しいわ
・奥の山のとんがり具合すごいな
・気持ちいいやろなあこれは
・お〜、ほんとに走ってるんだ
「ちなみに今は平坦な草原を走ってますけど、しばらくしたら山に入って大自然の中を通るみたいですよ。タイミングが合えば皆さんにもお見せできるかもですね」
・いい部屋やなぁ
・豪華列車乗ってみたくなるなww
・それも見てみたくはあるね
・これからなにするの?
・なるほど〜
・この何も無い平原から森に変わるのか
・この画角でななちゃんが映ると映画みたいw
「あ、そうでした、この後のことを説明していませんでしたね。えっと、もう少ししたらラウンジでディナーの時間になるんですけど、なんとそこで演奏させてもらえることになりまして、しかも他のお客さんを映さなければ、その様子を配信に映してもいいことになったんです!!」
・ななちゃんにだったらむしろお願いしたいくらいだろ
・マジか!!
・すげえ
・他のお客さんめっちゃ幸運だな
・だから今日は気合い入った服着てるのね
・居合わせたかった…
・おおお〜!
・生のななちゃんに会えるうえに生演奏とか…
・よかったね〜!
「目の前にお客さんがいる状態で歌ったことは数回しかないので少し緊張しますけど、今日は皆さんもいてくれますし頑張りますね!時間的にもうすぐディナータイムなので、おしゃべりしながら呼ばれるのを待ちましょうか」
駄天使たちと前回の配信から今までの間にあったことなどを話したりして10分ほどがたった頃、乗務員さんに呼ばれた俺は、演奏のためにラウンジへ向かったのだった。
ーーーーー
「〜〜♪〜♪〜〜〜♪」
・綺麗な音ですねぇ…
・楽しそうに弾くなあ〜
・ななちゃんクラシックも弾けたんだねぇ
・まさかお客さんのリクエストを弾くとはww
・音の粒がほんとにきれい
・あのおじさんもなかなか大胆なことするよなw
・ななちゃんがクラシック弾けるか分からないのにリクエストするとは…
・弾けなかったら気まずかったなwwななちゃんが知ってる曲で良かった
俺はいま、ラウンジの端に置かれたグランドピアノでお客さんからリクエストされたクラシック曲を演奏しているところだ。
当初の予定では、お客さんたちのディナーの邪魔にならないよう落ち着いたジャズを選んでバックミュージックに徹し、食べ終わる人が出始めたあたりで俺の曲の中からバラードを数曲選んで歌うつもりだった。
ところが、俺が2曲目を弾き終わったタイミングで近くのテーブルにいたご家族の男性が、あるクラシック曲をリクエストしてきたのだ。
ドイツの有名な作曲家の書いた楽曲であるその曲は、全体的に落ち着いた雰囲気で進行するノクターンであり、この場で演奏するのにはたしかに向いていた。
しかし、ジャズから急にクラシックに移るのはどうなんだろうと思っていたところ、他のお客さんたちからもその曲を是非弾いてほしいと要望を重ねられたので、彼らが望むなら躊躇う必要もないかと思い演奏することにしたのだった。
今まで配信ではクラシックを弾いてこなかった俺だが、数年前ピアノを練習し始めたときには有名な作曲家の楽曲は1度は演奏してみていた。
かなり前のことなので、その時"超学習"を使って演奏していなかったら確実に譜面を忘れていただろうが、幸い練習中はずっと"超学習"を使っていたので、すぐ記憶を呼び起こすことが出来た。
「〜♪〜〜♪♪〜〜、〜♪」
改めて弾いてみると、やはりクラシックの名曲というのは奥が深い。そもそもの音楽の持つパワーというか、人を引きつけ心を動かす旋律や構成といったものが驚くほど洗練されている。
それでいて、演奏者によってその表情を大きく変え、それぞれに独自の解釈が生まれるんだから聴き飽きることがない。
俺も一奏者として、歴史に名を残す偉大な作曲家が楽曲に込めた意図を探りながら、それを自分自身の解釈で表現していく。
この身体になってピアノを弾くようになるまでは知らなかった"音楽を読み解き表現する楽しさ"を、俺は演奏しながら身体全体で感じていた。
「〜♪〜〜♪〜…。ありがとうございました」
・88888888
・いつにもまして真剣だったな
・でもすごく楽しそうだったね
・88888888888
・ななちゃん汗かいてるし、それだけ集中してたってことか
・888888
・軽くタッチしてるように見えるのにちゃんと強弱が完璧にコントロールされてるのすごいな
・クラシックもいいなぁ
・浄化されたわ…
俺は演奏を終えると立ち上がり、ラウンジにいるお客さんの方に向けて小さく礼をして拍手を浴びると、食べ終わっている人が多いのを確認して自分の曲の演奏に入ったのだった。
ーーーーー
『七瀬さん』
ラウンジでの演奏を終え自分のスイートルームへ向かって歩いていた俺は、ゲストルームのある車両の入口で待っていたディエゴさんに声をかけられた。
『突然演奏をしてほしいなどと無理なお願いをしてしまい申し訳ありませんでした。そして、無理を言ったにも関わらずあんなにも心のこもった演奏を披露してくださり、本当にありがとうございました。
私共はもちろん、あの場にいたゲストの方々も、七瀬さんの演奏を生で聴くことができて大変喜んでおられました』
彼は俺に向かって丁寧に頭を下げる。
『いえ、こちらこそ貴重な機会をいただけたこと、感謝しています。ゲストの皆さんも素敵な方ばかりで、笑顔で私の音楽を楽しんでくださっていたのでとても心地のいい空間でした』
急なお願いをしたことを悪いと思っているのか、少し不安そうな顔でこちらを見つめているディエゴさんに、俺はふわりと笑顔を浮かべてそう返した。
『っ、そう言っていただけて少し安心いたしました。せっかくのディナータイムをこちらの我がままで後にずらしてしまったことも重ねてお詫び致します。
これからお部屋の方に、今回の演奏への感謝のしるしとして特別メニューを加えたスペシャルコースをお運びいたしますので、ぜひお楽しみください』
『え!特別メニュー!!?あっすみません、つい興奮して声が…はは。ディナー、楽しみにしていますね』
俺はそう言ってディエゴさんに小さく頭を下げてから、大きな声を出してしまった恥ずかしさから逃げるように、そそくさと再び自室に向けて歩き出したのだった。
ーーーーー
「みなさ〜ん、お待たせしてすみません!部屋に帰って軽くシャワーを浴びたりしていたら思ったより時間が経ってしまいました!」
俺は三脚に取り付けたビデオカメラのマイクのミュートをオフにすると、横に置いてあるノートパソコンで配信画面をカメラの映像に切り替えた。
・大丈夫だよ〜
・ななちゃんその格好は!!!
・ネグリジェ…
・めちゃくちゃ可愛い!!
・待機中の画面にMV流してくれてたからあっという間だったよ
・ななちゃんが着ると本物の天使みたい…
・なんだこの愛らしい生き物は…
・可憐だなあ
そう、俺がいま着ているのはいつものジェラートピケの部屋着でもなければ動きやすさ重視のシンプルなワンピースでもない。
この豪華列車での夜に着るために用意していた、光沢のある肌触りのいい生地でできた純白のネグリジェである。
「ふふふ、可愛いですか?本当はディナーまでさっきの格好でいる予定だったんですけど、乗務員のお姉さんが訪ねてきて
『さきほどは素晴らしい演奏をありがとうございました。演奏で汗をおかきになられたと思いますので、先にシャワーをお浴びになってはいかがでしょうか。お部屋でのディナーですし服装などはお気になさらなくても大丈夫ですよ』
って言っていただけたので、シャワーを浴びてさっそく用意してたネグリジェに着替えちゃいました〜」
・乗務員さんナイスすぎる
・ありえないくらい可愛いよ
・それがなかったら俺たちこのネグリジェ見れてなかったかもしれないのか
・まさしく天使っていう姿になったね…
・ななちゃんが可愛すぎて俺昇天しそう…
・ネグリジェの生地に光沢があるからかななちゃんがいつも以上に神々しく見えるww
・ななちゃん俺に養われてくれないか…??
・独特なプロポーズすなw
・ななちゃんの音楽で癒された次はななちゃんの可愛さで癒してくれるのか
・幸せな配信だぜ…
ーーコンコン。
「あ、ディナー来たみたいですね。ーーはい、どうぞ」
俺はビデオカメラを机の前に置いたそのままに、ノックされた扉を開いた。
『失礼します。っっっ!?』
俺が扉を開けると、前菜と思しき料理を乗せたトレイを持っているディエゴさんが立っていて、彼は俺のことを目を真ん丸にして見つめていた。
「あの…?どうしました?」
『あっ、いえ!失礼しました。前菜お持ちしましたのでテーブルに並べさせていただきますね』
俺の問いかけにハッと動きを取り戻したディエゴさんは、元の調子でテーブルに前菜を並べて足早に帰って行った。
「前菜来ましたね〜!わあ〜、美味しそうです!!」
・あの乗務員さんどう考えてもななちゃんに見惚れてたの草
・カメラ越しでこの可愛さなんだから、生で見てしかも下から上目遣いで見上げられたらああもなるよwww
・この格好のななちゃんだから無理もない
・目ガン開きだったぞw
・罪な天使ね
・ななちゃんは可愛すぎて困る
・美味しそう〜!
・駄天使が1人増えた瞬間だったな
・俺らもななちゃんに実際に会ったらああなるんだろうなw
ああ、あれやっぱりディエゴさん俺の可愛さに思考停止してたのかな。駄天使だって言ってたし、俺のことが好きならこの格好を生で見たらああなるのも仕方ないのかもな。
「皆さん何の話してるんです?待ちきれないので食べてもいいですか?」
・どうぞどうぞ!
・たくさんお食べ!
・もちろん!
・なんでもないよ!
・俺たちほっといて食べていいよ!
・早く食べたくてウズウズしてるななちゃん可愛いw
・前菜のカルパッチョ美味しそう!
その後、続々と運ばれてくる料理をひと口ひと口満面の笑みで幸せそうに食べる俺は、駄天使たちをその可愛さで次々とノックアウトしていったのだった。
ーーーーー
「ほわ〜、とっても美味しかったです、ご馳走様でした」
ディナーの最後に運ばれてきたデザート、ペルーの人気スイーツであるドーナツ型のお菓子"ピカロネス"の胡桃シロップがけと、その甘さにいいアクセントとなる酸味のきいたベリーのジェラートを食べ終えた俺は、そう言って手を合わせて食事を終えた。
・よく食べました〜
・すごく美味しそうだったけど明らかに量がおかしかったww
・よかったねななちゃん
・まさかのななちゃん専用フルコースだった!?
・あれは普通の人だと絶対に食べきれないw
・列車の人たちななちゃんのことよく分かってて草
・メインディッシュみたいなの5個くらいあったよ?w
・満足気なななちゃん可愛い
「乗務員さんから聞いたんですが、演奏のお礼に特別メニューを付けてくださったみたいです。急な依頼だったこともあって気を遣ったんですかね?
楽しかったので私は全然気にしてないんですけどね。まあ特別メニューが付いてきたのは飛び上がるくらい嬉しかったですが…」
・演奏させてもらえることになったって言ってたけど、向こうのお願いだったわけね
・なるほど、そりゃこの豪華コースになるわけだ
・ななちゃんお客さんの前でライブしたこととかテレビで1度しかないし、めちゃくちゃレアだからね〜
・実際次々と大皿が運ばれてきた時は飛び上がってたように見えたけど?ww
・楽しそうに弾いてたもんね〜!
・頑張ってお淑やかにしてるのに料理が来てすぐ剥がれちゃうななちゃん可愛いw
「演奏前の時間にも話してましたけど、直接人前で演奏したことってほんとに少ないですよね。日本に帰ったら○○○ミュージックの方にライブの相談もしてみますね」
・気長に待ってる!!
・やった〜!!
・ななちゃんのライブならどんな箱でも絶対埋まるだろうから拒否されることはないね
・生でななちゃんに会えるの楽しみ〜!
・これはしばらく死ねなくなった
・これからも仕事頑張ってお金貯めないとだな
そんなふうに駄天使たちと話していると、乗務員の方がディナーの片付けを終わらせて部屋から出ていった。
「それじゃあ、急遽演奏することになったりして時間はかなり遅くなってしまいましたが、せっかくなので一緒に少しのんびりしましょうか」
俺はそう言うと三脚からビデオカメラを取り外し、カメラに着いている生配信用のエンコーダーごと持ってベッドに向かって歩き出した。
・一緒にのんびりタイムだ〜
・賛成〜
・お、ビデオカメラどっかに移すの?
・は〜い
・違うところに移動するのかな?
・天井しか見えな〜い
・のんびり〜
・お?
・お外みる?夜だから真っ暗かw
パソコンをメインテーブルに置いてきたので、コメントを見るためにベッド横のローテーブルからスマホを取った俺は、ちゃんとコメントが動いていて配信が途切れていないのを確認すると、そのままベッドに飛び込んだ。
ーーぼふっ。
「ど〜〜ん、ベッドごろ〜ん」
・えっ!?
・カメラがえらいことになっとるww
・このまま!?
・目が回る〜www
・ななちゃんごろんしたの!?
・どういう状況!?
・世界が回転してるぞww
お、いけないいけない、駄天使たちが目を回してしまう。
俺はベッドに横向きに寝転がると、カメラを両手で掴んで自分の顔の正面に持ってきた。
「駄天使の皆さん〜、ベッドの上からこんばんは〜」
・へあ!?!?
・添い寝ですか!?
・近っ!?!?
・ふぁあああああああ
・なにこのキョリィィィィ!?!?お顔が!お顔が…!!!
・上目遣いの破壊力ヤバすぎるwww
・待て待て待て至近距離で見るななちゃん可愛すぎだろぉ…
・なんだこの神アングル!?!?
・これはもう俺たちの彼女ってことでおけ…??
「ふふふ、ちゃんと見えてますか??皆さんはいま、私の隣に寝転んで、私と見つめあってるんです、ふふっ」
俺はカメラのマイクがいつもより近いことを意識して、落ち着いた声で話す。
・ふおおおおおおおおお
・耳が、耳が溶けるぅ…
・可愛すぎる可愛すぎる可愛すぎる
・なんだこの癒ししかない配信画面は…
・ななちゃん今すぐ俺と結婚してくれ!!!
・ひょおおおおぉぉぉ
・どんだけキレてる奴でもこの画面見せたら一瞬でデレデレになるわ確実に…
・これがななちゃんの彼氏目線か…夢に出てきそう
「駄天使さんたちよしよ〜し、いつもお仕事頑張っててえらいねっ、よしよし、ふふふ」
・うぅぅぅうわぁぁぁぁん
・幸せだよォ、俺いますっごく幸せだよぉ!!!!
・ふにゃあああああ
・ほんとに天使に見えるよぉななちゃ〜ん
・幸せすぎて蕩けそう…
・あぁぁ…
・!!??!?
・ななちゃんハグしよ〜よ
「はぐする??い〜よぉ?はい、ぎゅ〜〜」
俺はカメラを引き寄せて胸に抱き込むと、暖かくて癒される声をイメージしながら少し腕に力をこめた。
・ななちゃんの声がめちゃめちゃ甘い…
・ふあ〜〜〜〜
・超絶至近距離からのハグボイスきたぁぁぁ
・ぎゅぅぅぅ!
・これはガチ恋不可避ww
・癒しのかたまりやぁ
・俺いますっごくドキドキしてる…
・ありがとう、ありがとう。
・今だけはすべて忘れられるわぁ
その後も俺は駄天使たちの日頃の疲れを癒してやろうと、カメラとの添い寝をしばらく続けたのだった。
派遣先の嫌味な上司や最近 精神不安定気味な嫁を反面教師にしたのか、七瀬の世界の人たちはとっても優しくて暖かいですよね。ああこの世界に行きたい…