美少女に転生したので配信者になりますっ!   作:Senana..

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とあるニュース番組

 

 

 

「次のニュースです。昨夜、オーストリア・ウィーンのインネレ・シュタットにあるシュテファン大聖堂の前で、世界的歌手・七海七瀬さんによるゲリラライブが行われました。

 

午後6時頃に告知なく開始されたこのライブは、偶然その場に居合わせた約2000人ほどの観客とともにスタートしました。

 

ライブが始まると、"#シュテファン大聖堂前に天使が降臨"というTwitterのハッシュタグが瞬く間にオーストリアのトレンドの首位を飾り、オーストリア中から七海さんの音楽を少しでも生で聞こうと多くの人が集まりました。

 

開始から約1時間半が経過したライブ終盤では、大聖堂を中心に半径約700メートルを埋め尽くす数の人が集まり、ゲリラライブとしては史上類を見ない規模のライブとなりました。

 

このライブに詰めかけた約13万人の人々の証言では、この半径約700mの範囲ではどの場所にいても綺麗に音が届いており、遅れて到着して聴けないだろうと落胆していた七海さんのファンの方々も、その姿を見ることは叶わないまでも、七海さんの音楽を聴いてこのライブを楽しむことができたということです。

 

ここで、現地で演奏を聴いた人へのインタビュー映像をご覧ください。」

 

『はい、本当に幸せな時間でした。七瀬ちゃんが登場したときのオーラがすごくてまず驚きましたし、演奏前のスイッチを入れる瞬間?っていうんですかね?とにかくその瞬間に本当に空気が変わったような気がします!本物のスターは空間を支配できるんだなって感動しました!』

 

『いや〜、まさか旅行先で生のななちゃんに会えるとは本当に思ってもみませんでした。本物のななちゃんは動画でみるよりもさらに綺麗で、歌声もピアノの音色も、何もかもが洗練されていました。一生の思い出になるクリスマスになりました』

 

『っ!っっ!ぁぁ、ずみません…!インタビューですよね…目の前で七瀬さんの歌を聞けて、この思い出は宝物になりました。彼女の音楽には不思議なパワーがあるのか、ライブ中はすっごくぽかぽかしていて、ほんとに心地のいい時間でした』

 

『ーーーーー』

 

『ーーーーー』

 

 

「はい、いくつかのインタビューをご覧いただきました。皆さん生のライブを見ることができた喜びを噛み締めていらっしゃいましたね。

 

現地メディアの報道では、オーストリアの首相〇〇氏やラグビー・オーストリア代表の〇〇〇選手、現在はアメリカのハリウッドで活躍されているオーストリア出身の俳優〇ー〇〇〇さんなどたくさんの著名人が、広場周辺の建物を使ってライブを鑑賞していたようで、七海さんの世界的な人気の高さが窺えます。

 

さて、今回の七海さんのライブについて概要をお伝えいたしましたが、芸能コメンテーターの〇〇さん、今回の七海さんのライブ、その影響力や人気について、どのようにお感じになられましたか」

 

 

「はい。いや〜これねぇ、皆さん分かっておられると思いますけど、まずはゲリラライブにも関わらず約13万人を動員しているということが衝撃的なんですよね。

 

SNS上で何か匂わせのようなものがあれば、いや、あっても信じられないくらいの数ではあるんですけど、そういうものが一切なくてこれだけの人数を集めているというのが、彼女の圧倒的な人気を物語ってますよね。

 

そしてさらにすごいのが、その場所がここ日本から遠く離れたオーストリアという地であるということなんですね。

 

彼女は普段の配信を日本語で行っていますし、東京に住んでいたことや名前からも日本人であることは間違いないでしょう。そして活動の中心もこれまでの5年間はずっと日本でした。

 

にも関わらず、旅先で訪れたオーストリアのウィーンという地に、この映されている現地の写真でも分かるようにこれだけたくさんのファンがいるというのが、本当にすごいことですよね。

 

もちろん彼女は信じられないくらい多くの言語を学び、他言語のチャンネルを運営したり、アニメや動画に字幕を入れたりなど、海外のファンのためにたくさんの努力をしてきたと思います。

 

そして、それで実際に結果を出しているというのが私は本当にすごいことだと思います。

 

いくら色んな言語をマスターして字幕を入れたり動画を作ったりしても、結局はその人自身に魅力がないとここまでの人気は得られないんですよね。

 

それだけ彼女の魅力が、国や文化、人種という垣根を越えて人々に伝わり愛されているということが、私は同じ日本で育った人間として誇らしく思いますし、1番すごいことだなと思いますね。 」

 

 

「なるほど、七海さんの努力を実際に実を結ぶものにした、世界を夢中にさせる七海さんの人柄や可愛らしさといった魅力が1番のポイントだということですね。〇〇コメンテーター、ありがとうございました。

 

それでは、この七海さんのライブに関して、その動員数に並びもうひとつ話題となっている要素についてお話いただくため、〇〇〇大学・波動工学科教授の物理学者〇〇〇さんにお越しいただきました。〇〇〇教授、よろしくお願いします」

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

「まず、その話題となっているもうひとつの要素について、私から簡単に説明させていただきます。

 

今回話題となっているのは、その音の届いた範囲についてです。まず、画面に映っているこのマップを見てください。

 

マップの中心、周囲が開けているこの大きな建物が、今回七海さんがライブを行ったシュテファン大聖堂です。ここから少しマップを縮小します。

 

はい、いまシュテファン大聖堂を中心にしたままマップを縮小しました。そして、同時に薄い赤色で塗りつぶされた範囲がありますね。この赤で塗られた範囲は、七海さんのライブの音を正確に聞き取ることができたと言われている範囲です。

 

この範囲の中でシュテファン大聖堂から最も離れている地点では、直線で約950mの距離があり、この距離を音が伝わり、そのうえで七海さんの歌う歌の歌詞まで鮮明に聞き取ることができたという人々の証言が、世界中で議論の的になっています。

 

さて、この不可解な現象について、先生はどのようにお考えになられていますでしょうか。〇〇〇教授、お願いいたします 」

 

 

「はい。そうですね、まず具体的にどの部分が議論されているかという話ですが、前提として、950m離れた場所に音を届かせるということ自体は可能です。

 

雷などがいい例ですが、大きな音は伝わる媒質にもよりますが、かなり遠くまで届かせることができます。単純に、音が減衰していっても元の音が大きいので、その分遠くまで届くわけですね。

 

そして今回のライブについてですが、その元の音量が、950m離れた地点まで届くにはあまりに小さすぎるというのが、議論されている理由となります。

 

実際に現地にいた方々の映像を検証したところ、ライブで発せられていた音量はせいぜい200m先に聞こえるかどうか、歌詞を正確に聞き取れる距離となると100mないくらいの音量だったのです。

 

ならば街中にスピーカーが置かれていたかというとそういうわけでもなく、音の発信源は七海さんのいた場所にあるボーカル用マイクのスピーカーと、グランドピアノ本体のみでした。

 

つまり、本来100mほどにしか届かない鮮明な音が950m先という10倍近く遠い場所まで届いていたというのがありえないと言われているわけですね。

 

しかし実際にこのマップで色付けられた範囲で撮影された映像では、はっきりと歌詞が聞き取れる七海さんの歌声が収められていましたし、 その映像の時間を見ると音のスピードによるラグは計算通りの値を示していて、別の音源から発せられた音という可能性も低いということが分かりました。

 

ここまでいったい何がありえないと言われているかについてお話しましたが、この現象についての現状の私のコメントとしましては、"分からない"です。

 

本来は分からないにしても色々な可能性を提示するべきなのでしょうが、私の研究室の者も一緒になって様々な角度から考察を重ねた結果、"分からない"のです。

 

少なくとも、今出ている情報を考慮した結果、"ありえない"としか言えないわけですが、実際に"ありえた"わけですから、私のコメントとしては"分からない"となるわけですね。

 

期待されているような解答を出せず申し訳ありません。

 

そしてもう1つこの音の話とは別にお伝えしたいことがあるのですが、それはこのときの気温についてです。

 

このマップで示された範囲では、七海さんのライブ中の気温がその外部に比べて異様に高かったことが報告されています。

 

当時のウィーンの気温は冬の夜ということもあって、0°C前後でした。ですが、七海さんがライブを行っていた18時から19時40分のあいだ、この範囲では気温が17°Cほどもあったことが分かっています。

 

今は音の届いた範囲についての議論が重ねられていますが、すぐにこの気温についての議論の方が加熱するでしょう。

 

というのも、屋外のこれだけ広大な範囲の気温が短時間で10°C以上も上昇し、さらにそれを1時間半以上も一定の気温で保つということが、音を遠くまで届かせることよりもよっぽどありえないからです。

 

まだ、ウィーン全体の気温が一時的に上がっていたならもう少し考える余地もあったかもしれませんが、このとき気温が上がっていたのはこの大聖堂を中心とした半径約700mの範囲だけなのです。

 

気温に差があればすぐに気圧の差などで空気が交換されて気温が平均化されてしまう屋外ですから、ある地域だけ、しかも10°C以上も気温が高かったなどというのはありえないんです。

 

しかし、これも実際に起こってしまった。おそらく、いま世界中の科学者はこのときウィーンで何が起こっていたのかを調べるのに必死になっていることでしょう。

 

科学で説明のつかない現象が同時にふたつも起こっていた七海さんのライブ。その中心にいた七海さんはこの現象に何か関係しているのではないかと言っている一般人の方もいますが、それはありえません。

 

少なくとも、気温については世界が総出でこれと同じ現象を起こそうと思っても苦労するでしょう。壁や膜で空間を仕切ってもいけない、大規模な発熱装置を使ってもいけない。その場にいた誰も気づかないような別の方法でこの現象を起こすのは非常に困難でしょう。

 

そんなことを、世界的な影響力があるとはいえ1人の少女である七海さんが起こせるわけがないんですね。

 

まあ、天使といわれている彼女が起こした"奇跡"と考えれば、関係しているということになるのでしょうがね」

 

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