美少女に転生したので配信者になりますっ!   作:Senana..

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釣りしますよ!

 

 

3月・イタリア -- ラ・スペツィア

 

 

まだ冬の寒さが色濃く残る3月上旬、俺、七海七瀬は空から暖かい日差しが降り注ぐなか海釣り用の全長15mの船に乗って蒼い海の上にいた。

 

『七瀬ちゃん、そろそろ予定の海域に着くぞ』

 

船室で窓の外に見える海をぼーっと眺めていた俺は、操舵室でハンドルを握るいかにも海の男といった風貌の彼、サングラスをかけて白の混じった顎髭を分厚い指で撫でているシモーネさんに声をかけられた。

 

時計を見ると船着場から出発して約40分が経過している。事前に聞いた話では、今向かっているのはシモーネさんオススメの釣りスポットということらしい。

 

『わ、もう着くんですね!じゃあ配信始めさせてもらいますね』

 

俺はそう返して船室の椅子から立ち上がると、横に置いていた鞄からビデオカメラと配信用のエンコーダー、服につけるピンマイクを取り出して配信準備を始める。

 

ビデオカメラを取り付ける三脚は、船の出発前に船室の外にロープなどを使って船の揺れで倒れないように固定しておいた。

 

俺は配信準備を終えたビデオカメラを持って船室を出ると、船首側と船尾側の2箇所に設置されている三脚にそれぞれビデオカメラを設置した。

 

この2つのカメラの視点の切り替えは手元のスマホや船室のパソコンから行えるので、配信を開始したらビデオカメラに近づく必要はない。

 

三脚に取り付けられたカメラがしっかりと固定されているのを確認すると、俺はスマホを取り出して1ヶ月ぶりに見るYouTubeの配信ボタンを指でそっと押した。

 

 

ーーーーー

 

 

「こんにちは〜!七瀬の配信のお時間ですよ!駄天使の皆さんお久しぶりです〜!」

 

俺はスマホを右手で持ち画角に自分と船の白い壁だけが映るように調整して配信の挨拶をした。

 

・ななちゃんだ〜!!

・こんちには!

・久しぶり〜!!!

・会いたかったああ!

・こんにちは〜〜!

・今日はどこだ〜??

・今日の天使も可愛い〜!!

・顔アップで始まってドキっとしたww

 

「またしばらく配信の間隔が開いてしまってごめんさい!今日は初めてのことに挑戦しますので、ぜひ楽しんでいってください!」

 

・大丈夫だよ!

・ななちゃんは旅を楽しんでいいんだからね

・いまスペイン語チャンネルの動画見ていってるところ!

・初めてのことってなんだろー?

・寂しくはあるけど、こうやってたまにでも配信して元気な姿見せてくれたらいいからね!

・大丈夫!

・楽しみ〜!

 

「さあ、皆さん、私はいまどこにいるでしょうか??まだ後ろの白い壁しか見えませんね〜」

 

俺はカメラを覗き込むように首を傾げて問いかける。

 

・さすがにわかんないwww

・ぐはっ!上目遣い…!!

・ここで分かったらやばいだろw

・ピンマイクしてるってことは音がうるさいところかな

・小悪魔っぽい表情のななちゃんも良いわぁ

・髪が靡いてるし風が強そうね

・あ、ほんとだ。これピンマイクで声拾ってんのか

・う〜ん…教えて!w

 

「まあここで分かるわけないですよね、ふふふ。じゃあまずは私のまわりの景色を皆さんにお見せしますね!では、どうぞ!」

 

俺は配信画面をスマホの外カメラの映像に切り替えると、水しぶきを上げる白い船首とその向こうに広がる一面の蒼い海を画角におさめた。

 

・海ですと!!

・!?!?

・船の上だ!

・すんごい景色ww

・この海綺麗すぎんか!?

・天気いいなぁ〜!

・青い空と蒼い海がめちゃくちゃ綺麗

・なるほど船にいたのね!

 

「そうです!どうですか?驚きましたか?船からの配信は初めてですね〜」

 

・これはびっくりした

・予想してなかったな

・船気持ちよさそう〜

・どこの海だろう??

・普通にびっくりした!

・旅始まってからは初めての配信場所ばっかりやけどねww

・海で何するのかな?

 

「いま私がいるのは、イタリアの都市ラ・スペツィアから船で50分ほど沖に出たリグリア海の上でした〜!あたった方いますか〜??」

 

・イタリアか!

・いやいるわけないwww

・次はイタリアかなとは思ってた

・知らない都市に知らない海ww

・こんな綺麗なんだね

・分かるかーいw

・スペツィア…初めて聞くなぁ

・地中海に出てきたんや!

 

「イタリアにいることは予想してた方もいたみたいですね〜。さて、これから何をするかと言いますと!今日は配信で初めて…釣りをしてみたいと思いま〜す!!わーいわーいっ」

 

俺はぴょんぴょんとはしゃぐようにして釣りをすることを発表した。

 

・チャーター船で沖にいるくらいだしやっぱ釣りか

・おお〜!!

・釣りいいね〜!

・なるほどなあ、船で海釣りとか憧れるわ

・この天気なら釣り日和やねぇ〜

・釣りか!

・はしゃぐななちゃん可愛すぎか…

・ここでは何が釣れるんだろう?

 

「実は私まだ釣りをしたことがないのでどうなるか分からないんですが、とにかく立派なお魚さんを釣れるように頑張りますね!」

 

俺はそう言って初めての釣りに向けて意気込むように拳をグッと胸の前で握った。

 

すると、目的地に到着したのか船のスピードが落ちて停止し、操舵室からシモーネさんが出てきた。

 

『あ、シモーネさん!着きましたか??』

 

俺は振り返ってシモーネさんの方を見て言った。

 

『ああ、ここで始めようか。そっちは準備できたか?』

 

シモーネさんは眩しそうにサングラスを片手で持ち上げると、こちらの様子を見た。

 

・なんかとんでもないイケおじ出てきたんだけどww

・かっけぇ…

・身体がごっついwww

・見るからに強そうな人だなw

・サングラスを外した方がカッコイイだと…!?

・これが海の男か…

・腕の筋肉ヤバすぎだろww

・どっからきたマッチョおじさん!?

・ダンディィ!

 

『準備OKです!いつでも始められます!あっそうだ、シモーネさんをリスナーの皆さんに紹介させていただいてもいいですか?』

 

『おお、いいぞ。そっちに立てばいいか?』

 

俺の問いかけに了承を示したシモーネさんは俺のいるデッキの方に歩いてくる。

 

それを見て、俺は2人が画角におさまるように配信画面を船首に固定されたビデオカメラの映像に切り替えた。

 

「はい、カメラを切り替えたのでこれで映りますかね。では、皆さんに今回ご協力いただいている方をご紹介したいと思います!私がチャーターしたこの船の今日の船長であり、私の釣りの先生でもあるシモーネさんです!ぱちぱちぱち〜!」

 

俺は日本語で話しているが、シモーネさんは自分が紹介をされたことが分かりカメラに向かってポーズをキメて腕の筋肉をアピールしている。

 

うわぁ、腕ふっとい…かっけぇ…

 

前世では男として生きていて大きな筋肉に憧れる気持ちがあったからか、俺はシモーネさんの鍛え上げられた筋肉を見てキラキラと目を輝かせていた。

 

・す、すげえええ

・上腕二頭筋丸太かよwww

・これは俺ワンパンで死ぬ自信ある

・腕撓骨筋もゴリゴリでまじで太いな

・おじさんノリいいなw

・てか身長も高いな…ななちゃんがめちゃくちゃ小さく見えるぞww

・ななちゃんはやはりロリだった…!?

・ダンディなイケおじでゴリマッチョとか強すぎかよw

・お、おい、ななちゃんそんな目をキラキラさせてどうしたんだい!?

・まさかななちゃんの好きなタイプはこういう人だった!?

・なんだって…!?!?

・ななちゃんが初めて見る顔をしている!!!

 

俺はコメント欄が妙にザワついているのを確認しながらも、早く釣りをしたい気持ちに押されて配信を進める。

 

『シモーネさんありがとうございます、紹介出来たのでさっそく準備しましょうか!』

 

『おう、とは言ってもだいたいの準備は既に出来てるから、あとはここでの釣りの仕方を教えれば終わりだけどな』

 

『そうなんですね!何から何までありがとうございます!じゃあ、レクチャーよろしくお願いします!』

 

シモーネさんはその俺の言葉を聞くと、釣り道具を取りに船室に入っていった。

 

「皆さんお待たせしました!シモーネさんがこれから釣りについて教えてくださるそうなので、最初はそのレクチャーを受けてから、初めての釣りに挑戦していきたいと思います!やっるぞ〜!おー!」

 

・やっぱ色んな言葉が話せるのって強いなあ

・ななちゃんほんとどんな言語でもスラスラ話すよね

・シモーネおじかっけえっす

・俺イタリア語チャンネル見てたからちょっと内容わかったww

・ななちゃんはマッチョが好きなのか…

・俺、今日から筋トレ始めるわ

・ななちゃんのチャンネルでちゃんと学んでるの凄いな

・シモーネの兄貴ぐらいムキムキになれば俺もななちゃんにあんな目で見てもらえるかもってこと!?

 

コメント欄では七瀬のマッチョ好き疑惑について駄天使たちが盛り上がり始めるが、七瀬はいよいよ釣りができるとなってワクワクと釣りへの移行作業をしていた。

 

配信画面を再びスマホのカメラに切り替え、シモーネさんのいる船室へと向かった俺は、シモーネさんの釣りレクチャーを駄天使たちと一緒に受けたのだった。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

『うし、じゃあ始めるか!』

 

『はい!楽しみです!』

 

・お、終わったっぽいね

・ちゃんとななちゃんが内容を翻訳してくれるから俺たちも無料でレクチャー受けれてしまったw

・俺も今度釣りいこうかな

・意外とすぐ終わった!

・釣りだ釣りだ〜!

・生配信の釣りは初めて見るなぁ

 

「皆さん!さっそく釣り始めていいみたいです!釣っていきましょ〜!」

 

・お〜!

・大物!大漁祈願!

・釣ってこ〜!

・どれくらい釣れるかな?

・大きいの釣れますように!

・がんばれ〜

 

俺はシモーネさんに教わった通り仕掛けに餌をつけて手元のリールを操作すると、"とりゃっ"と言って仕掛けのついた釣り糸を海に投げ入れた。

 

「あとはお魚さんが掛かったら、教わったとおりに釣りあげればいいですね!」

 

俺は竿のしなり具合を注意深く観察しながら駄天使たちと雑談でもすることにした。

 

『よし、俺も始めるか』

 

俺が配信のコメントを見ながら最近あったことでも話そうかなと思っていると、船室から竿を持ったシモーネさんが出てきて仕掛けを海に投げ入れた。

 

「あ、シモーネさんも始めたみたいですね。シモーネさんが立派なお魚さんを釣れるように祈っておきますか。釣れますように〜釣れますように〜…」

 

・シモーネさんが"ザ・海の男"すぎるww

・ななちゃん優しい

・シモーネおじ絵になるなぁ…

・ななちゃんのお祈りはなんか効きそうw

・そうだね、2人ともたくさん釣れるといいね

・あの太い腕に見合わず繊細な竿さばきだな

・世界一グラサンが似合う男

・あの筋肉は釣り上げるときに使うんだろうな

・絵面は天使と戦神って感じw

 

俺は何気なく手をスリスリと合わせてシモーネさんの釣果を祈った。

 

 

ーーーーー

 

 

『お、さっそくきやがったな』

 

「わあ、みなさん!シモーネさんの方の竿!すっごくしなってます!」

 

シモーネさんの前に固定されている竿の先は海面につかんばかりに垂れ下がっていて、かなりの大物が期待できそうだ。

 

『七瀬ちゃん、船尾の方にタモ(網)があるから取ってきてくれないか』

 

『分かりました!』

 

シモーネさんはさっそく竿を上下に揺さぶり魚の体力を奪う段階に入っている。

 

俺はシモーネさんの後ろを通って船尾の方へ移動し、置かれていた柄の長さが調節出来るタモを取って戻った。

 

・ここや、ここであの筋肉がいるんや

・腕の筋がどえらいことになっとるww

・血管ボッコボコやwww

・ちょこちょこ走ってるななちゃんが可愛い

・おじさん頑張れ!

・シモーネさん力入れたら身体ひと回り大きくなった気がしたん俺だけ?ww

・これはデカそう

 

『っ…、こいつなかなか重いな。だがもう少しだ』

 

シモーネさんは竿を激しく振り回し魚を疲弊させつつ少しずつ糸を巻いていく。

 

「すごい…」

 

俺は目の前で繰り広げられる海の男とまだ見ぬ獲物との力比べにただただ見入っていた。

 

・持ってる竿が大剣か何かに見えてきたぞ…

・これが海の戦士か

・シモーネ先生がんばれ!

・パンプアップしすぎて服はち切れないか!?w

・めちゃくちゃ熱い戦いや

 

『よし、影が見えたぞ!ってマジか…!?』

 

『どうしたんです!?』

 

パンパンに膨らんだ腕によるパワーは少しずつ魚を水面に引き上げる。ついにその魚影が船上からでも確認できるまでになると、シモーネさんはその魚影の大きさをみて驚きの声を上げた。

 

『こいつクロマグロだ!おそらくだが3mを余裕で超えてるぞ…!!』

 

『ええ!!?』

 

・トゥリーメートリっていった!?3mってこと!?

・はあ!?

・デカすぎんか!?何の魚!?

・たぶんクロマグロって言ったと思う…

・3mのマグロやと!?

・それかなりでかいぞ…!?

 

俺たちがそうやって驚いていると、水面から数メートルのところまで引き上げられたマグロがさらに抵抗の力を強めた。

 

『ぐっ、これはかなりやばいぞ七瀬ちゃん!こいつ本気出してきやがった!持ち上がらんぞ!』

 

『そんな!?わ、私も手伝います!!』

 

まだ3月で気温は10度ほどしかないにも関わらず大粒の汗を浮かべて格闘しているシモーネさんを見て、俺はただ見ているわけにはいかないと思い慌てて駆け寄る。どうするべきかと迷ったが、持っていたタモを置いてシモーネさんに加勢した。

 

・ななちゃんが筋力で加わっても微差なのでは…

・こりゃまずい…

・がんばれ、がんばれ…!!

・おじさんふぁいとおおお!

・シモーネさんの腕の筋肉がまじで漫画みたいになっとるww

・ななちゃんシモーネさんを可愛さで奮い立たせるんや!

・それは逆に癒されて力抜けんか!?

 

『だめだ、糸が逆流しだした。このままこいつの体力が尽きるのを待つしかないが、たぶん先にへばるのはこっちだな…!』

 

俺はシモーネさんの隣で竿を必死に持ち上げてサポートをしようとするが、この身体の筋力ではほとんど加勢になっていなかった。

 

どうする…。筋力を強化する魔法なんて使ったことがないから今すぐには無理だし、魚の体力や筋力に干渉する魔法なんてもっと使える気がしない。

 

俺はどうにかこの状況を打破出来ないか必死に頭を動かす。

 

ん、待てよ。別に体力を無くすんじゃなくても、普通にマグロを弱らせてしまえばいいのでは…?

 

俺はシモーネさんの筋肉ばかり見ていて身体能力に関することばかり考えていたが、マグロを引き上げるというのが目的なら、マグロの体力を削る魔法なんて考えずに、普通に氷魔法や雷魔法で気絶させてしまえばいいのでは無いかと思いついた。

 

氷魔法は水を凍らすのによく使っているし、雷魔法も電子機器を充電するのに頻繁に使うため、かなりの精度で制御することができるようになっている。

 

これならいける…!

 

俺はマグロを弱らせる手順を考えると、さっそく魔法を行使する。

 

まずは弱めに抑えた氷魔法でマグロの体温を下げていく。こうすることで筋肉の動きが抑制され、かなりのパワーダウンが起こる。

 

マグロは急に身体が冷えたことで驚いたように体を震わせるが、既に思うように動かなくなくなっているだろう。

 

さらに、動きの鈍くなったマグロに追い討ちで微弱な雷魔法を頭部に直撃させると、脳からの神経伝達が阻害され一時的ではあるが身体の自由を完全に奪った。

 

『お?こいつ思ったより早く体力が尽きやがった!いけるぞ七瀬ちゃん!こいつはタモには入らないからそこにあるフィッシュグリップを取ってくれ!あと俺にロープを巻き付けて船から落ちないように固定してくれ!』

 

『分かりました!』

 

シモーネさんは力の抜けたクロマグロを体力がなくなったのだと判断すると、すぐに俺に迅速な指示をとばした。

 

俺は巨大魚にも使えそうな大きなフィッシュグリップをシモーネさんに手渡すと、言われた通りロープをシモーネさんに巻き付け船と繋いだ。

 

・ついに競り勝ったか!

・巨大マグロに1人で粘り勝つシモーネおじさんハンパねぇ…!

・力isパワーや

・さすがあの巨体は伊達ではなかった

・まさかの巨大クロマグロ釣り上げっすか!?

・おじさんかっけえよ!!

・あと少しや!がんばれ!

 

『いける!よし!届いた!引き上げるぞ!ぐぅぅどぅるるぁぁぁぁ!!!!』

 

『あっシモーネさんだいじょ……えぇ…』

 

俺は巨大マグロを引き上げるのに使えそうな重力魔法を準備して使うタイミングを伺っていたのだが、シモーネさんは最低でも300kgはあるだろう巨大マグロをたった1人で船に引き上げてしまったのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

『七瀬ちゃん、そう落ち込むな。釣りではよくあることだ。七瀬ちゃんの竿じゃないがこんなに釣れたじゃないか』

 

『いえ、落ち込んではないんですけど。そうですよね…ええ。代わりにシモーネさんがたくさん釣ってくださって楽しめましたし、まったく落ち込んではないんです』

 

俺は現在、数時間にわたる釣りを終えてこれから港へ帰ろうというところで、眉をハの字にして少し困った顔をしたシモーネさんに慰められていた。

 

・しょんぼりななちゃん可哀想だけど可愛いww

・まさかあんなに釣れないとはなあ〜

・ななちゃんにも出来ないことがあったか

・釣りは運もあるからねぇ…そう簡単ではないよね

・とはいえ横でシモーネさんがひっきりなしに大物釣りまくるからなww

・これが海の男かあ

・拗ねすねモードのななちゃん珍しくていいな

 

なぜ俺がシモーネさんに慰められているかと言えば、俺の釣果があまりにも酷いものだったからだ。

 

午前中に釣り配信を開始した俺たちは、シモーネさんが最初に巨大なクロマグロを釣ったことで、テンションMAXで釣りを始めた。

 

クロマグロを釣りあげてわずか5分後にはまたもシモーネさんの竿が大きくしなり大物を釣り上げた。その後もシモーネさんの竿にはシモーネさんでさえ今まで見たこともないような巨大魚が次から次へとかかり、俺はずっとそれを船へと引き上げる手伝いをしていた。

 

隣で釣りをしていたシモーネさんがこれだけ釣れていたのだから、俺の竿にも大きな魚がかかっていいと思うのだが、残念ながら俺がこの数時間で釣ったのは海中を漂っていた大きな毒クラゲだけだった。せめて食べれるものが良かった…ちくしょぉ…

 

『ほら、そう悲しそうな顔をしないで釣り道具を片付けて港へ帰ろう。港へ着いたら俺が今日釣った魚を捌いてやるから、な?』

 

シモーネは目の前で三角座りをして拗ねている七瀬にまるで自分の娘のような愛らしさを感じながら慰めの言葉をかけた。七瀬が既に成人した大人の女性であることは知っていたが、シモーネには今の七瀬は可憐な高校生くらいの女の子にしか見えなかった。

 

『 「おさかな…」はっ!そうでした!楽しみはここからなんでした!』

 

俺はシモーネさんの言葉を聞いてガバッと立ち上がると、船の生け簀の入口を見つめて今日の晩御飯に思いを巡らせる。

 

・おっ、元気になったっぽい

・シモーネさんが港で魚捌いてくれるみたいよ

・生け簀の方を見つめてる…?

・なるほどwこれから食べることを思い出したのねw

・やっぱり食いしん坊天使で草

・シモーネさんななちゃんの機嫌のとり方分かってんねぇ

・だから急に顔が明るくなったのかww

・ななちゃん単純やなw

・あ、どんどん笑顔になっていくw

 

『よし、持ち直したみたいだな。それじゃあ片付けて出発するぞ』

 

シモーネは今日1番の笑顔を浮かべる七瀬をみてそれだけ言うと釣り道具を持って船尾の方へ歩いていった。

 

『はい!お魚食べるの楽しみです!』

 

シモーネさんの釣った大量の魚が刺身や料理になって出てくるのを想像して釣りの開始時よりご機嫌になった俺は、ヨダレが垂れるのを必死に抑えながらテキパキと片付けを行ったのだった。

 

 

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