ヒスイカズラは今日も咲く 作:いわば体液
唐突に決まったデュエル大会への参加。
シングル戦のトーナメント形式で決勝を含めて全4戦。参加人数は16人と大会の規模としてはまあまあでかい物となっていた。飛び入り参加も可能という事で人が足りていないのかと思ったが、別にそういう訳でもない様だ。
おそらく通常のランキング戦とは違って一本勝負のシングル戦という事である程度の回数デュエルを回すことが出来るという判断なのだろう。
『これを勝てば優勝だね』
「うーむ……まさかここまで行くとは想定していなかったが、どこで当たるかは置いておいて俺の最後の相手があいつになるだろうという事はある程度想像出来てたな」
「何ぶつぶつ言ってんんだ! 俺のターンはこれで終わりだぜ!」
VS 遊佐緋色
今どきのデュエルは数ターンで決着が着く事も少なくない。まあ、デュエルディスクがカードの処理を代行してくれないテーブルデュエルだとシングル戦でもデッキによってはとんでもない時間がかかることがあるが、今はそれは関係ない。
お互い愛用のデュエルディスクを使ってのスタンドデュエルだからな。
とまあ、今回の大会では俺の相手が小学生や中学生がほとんどで、こう言っちゃなんだがあんまり強くなかったお陰もあってするすると決勝戦へと駒を進めることが出来た。
そして現在のお相手はこの会場でも結構顔が知られていた「ヒーロー使いのヒイロ」こと遊佐緋色だった。
やすみんも準決勝までは勝ち残っていたものの、そこで当たった緋色に敗北している。この男、シスコンとは言えデュエルでは実の妹ですら手加減しないデュエル野郎である。
アロマージのライフアドバンテージ戦略もHEROの火力で押し切られてしまっていた。
かわいそうに。
「先輩! 兄さんなんてボッコボコのけちょんけちょんにしてやって下さい!」
「おいおい、妹ながら酷いな! お兄ちゃん泣くぞ!」
「はい。どうぞ」
「……」
向こうで行われている兄妹の見慣れたやり取りを横目に、俺は状況を整理する。
後攻1ターン目なので俺のライフは8000。
対して、緋色は魔法カード『ヒーローアライブ』から動き始めたためライフは半分の4000。
しかし、場には所謂ヴァイオン展開から繰り出された『X・HERO ワンダー・ドライバー』、『E・HERO サンライザー』、『E・HERO アブソルートZero』、『M・HERO ダーク・ロウ』。アブソルートZeroとダーク・ロウは『ライトニング・ストーム』を警戒してか守備表示だ。
そして、魔法・罠ゾーンにはアブソルートZeroを融合召喚した時にワンダー・ドライバーの効果で墓地から『マスク・チェンジ』が伏せられている。
さらにこれだけ好き勝手展開しているというのに残りの手札は3枚も残っている。頭がおかしくなりそうだ。
下手に動こうものならアブソルートZeroを『M・HERO アシッド』にマスクチェンジする事でこちらのモンスター・魔法・罠ゾーンが一気に破壊されてしまう。
サンライザーの効果で攻撃力が相手フィールドのモンスターの属性の種類×200アップしているため、戦闘破壊も難しい。しかも、サンライザー以外に戦闘を仕掛けようものならサンライザーの効果でこちらのカードが1枚破壊されてしまう。
さらに立っているだけで俺だけ『マクロコスモス』状態にされるダーク・ロウまでいる。こいつがフィールドに鎮座していると墓地へ送られるカードは墓地へは行かず除外されてしまう。何がマズイってダーク・ロウが居ると「墓地へ送って発動」系のカードの効果が使えなくなってしまう事だ。そして、問題なのは俺が使うデッキには「墓地へ送って発動」系のモンスターがそこそこ存在していることだ。
なあ? 手札に来ているアクティさんよ?
『……~♪』
俺の横で下手くそな口笛を吹こうとしているアクティもその一人。
召喚・特殊召喚に成功した場合、手札から水属性モンスター1体を「墓地へ送って」発動できる彼女の効果は、水属性モンスターを墓地へ送れないこの状況では使えないのである。
さて、そんなHEROデッキのこの盤面の弱点は『サンダー・ボルト』の様な相手フィールドを一掃するカードなんだが、残念ながら今の俺の手札に『サンダー・ボルト』は無い。緋色を相手にして後攻でやる場合、『サンダー・ボルト』を持って居ない時の俺の勝率は……極めて低い。
『どうすんのこれ?』
「と言われてもね……まあ、何をするにもまずはこれからだな」
俺はデュエルディスクを操作して緋色の場にいるアブソルートZeroをリリースし、緋色の場にモンスターを特殊召喚する。
「何~~~~!?」
「いつもありがとう。氷水の『海亀壊獣 ガメシエル』を相手のフィールドに特殊召喚」
海亀壊獣 ガメシエル
ATK2200 レベル8 水
『ありがとう』
「いや、そんなモンスターは居ねぇだろ!」
俺の手札から相手のフィールドに特殊召喚されたガメシエルは「え? 俺も氷水なんスカ?」みたいな顔をしているが、アクティもお礼を言ってるから君は氷水でいいよ。
「アブソルートZeroがフィールドから離れたことで俺のモンスターを全て破壊する効果が発動するが、俺の場はがら空きだから関係ないね。あ、それと当然ガメシエルを置く位置はワンダー・ドライバーのリンク先だ」
「くっ……」
ワンダー・ドライバーはリンク先にHEROモンスターが召喚・特殊召喚された場合、墓地の「融合」魔法カード、「フュージョン」魔法カード、「チェンジ」速攻魔法カードの内いずれか1枚をフィールドにセットする効果を持っている。
これで緋色が『マスク・チェンジ』を使ってもワンダー・ドライバーのリンク先にHEROモンスターを置くことが出来なくなった。
これであいつの妨害の半分くらいは崩したと言っていいだろう。
「手札から魔法カード『氷水揺籃』を発動。デッキから同名カードがフィールド・墓地に存在しない「氷水」モンスター1体をデッキから手札に加える。俺が加えるのは『氷水のエジル』」
「この瞬間、ダーク・ロウの効果発動! 相手がドローフェイズ以外でデッキからカードを手札に加えた場合、相手の手札をランダムに1枚選んで除外する!」
それはダーク・ロウの第2の効果。
墓地メタ効果だけでも相当強いのにサーチに反応してハンデスまでこなしてしまうこのカードは本当に強い。
ランダムに選ばれたカードは『氷水のエジル』。今デッキから呼び寄せたカードだ。
「よし! 当たりだ!」
涙目で除外ゾーンに吸い込まれていくエジルを幻視したような気がするが、大丈夫大丈夫。
「いや、それはこっちの台詞だな。フィールド魔法『氷水底イニオン・クレイドル』を発動する」
フィールド魔法の発動によって周囲の景色が市民プールからアクティ達の故郷でもあるイニオン・クレイドルへと変更されていく。
「イニオン・クレイドルの発動時、墓地及び除外されている「氷水」モンスターを1体手札に加えることが出来る。俺はさっき除外されたエジルを手札に加える。そして、そのままエジルを通常召喚」
「キーカードを回収されたか……」
氷水のエジル
ATK1000 レベル3 水
除外ゾーンから帰ってこられて一安心かと思いきや、目の前に立ち並ぶ上級モンスター達に気圧されてフィールドのソリッドビジョンであるはずのエジルが凄い涙目でこちらを見てきている気がする。
『エジルちゃん頑張れ~』
残念。エジルはアクティの応援しか貰えなかった。
「そしてエジルの効果でデッキから「氷水」魔法・罠カード1枚を手札に加える。手札に加えるのは2枚目の『氷水揺籃』」
ダーク・ロウのハンデス効果は1ターンに1度しか使う事が出来ない。しかし、名称ターン1制限ではないため、ここでダーク・ロウをマスクチェンジで2枚目のダーク・ロウに変換する事でもう一度ハンデス効果を使う選択肢が緋色にはあったが、彼は動かない。
俺の氷水デッキが1ターンで攻めきれるだけの火力に乏しいとよく知っているためか、『マスク・チェンジ』は温存して置くことにしたようだ。
「そして『氷水揺籃』を発動。手札に加えるのは『氷水帝コスモクロア』」
最近のカードは基本的に1ターンに1度しか使うことが出来ない様に使用には制限がかけられていることが多い。しかし、この『氷水揺籃』という魔法カードはサーチ先に縛りがあるためか、所謂ターン1制限が無い。
手札でダブっても腐らないからお気に入りのカードだ。
「フィールドゾーンに表側表示でカードが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚出来る。出でよ! 『氷水帝コスモクロア』!! 守備表示で特殊召喚だ」
『コスモクロア様ー。かっこいー!』
氷水帝コスモクロア
DEF3000 レベル10 水
下級の氷水モンスター達に比べて暗めの身体のその女性は氷水達の帝。
悠久の時を生き、氷水達の守護者たらんとする彼女の背中はとても大きかった。
涙目だったエジルもコスモクロアの後ろに隠れてほっとしている様子。
「そして、モンスターが召喚・特殊召喚された事でイニオン・クレイドルの効果を発動。水属性であるコスモクロアを対象にして、このカードと相手フィールドの表側表示のモンスターの攻撃力を対象のモンスターの攻撃力分ダウンさせる」
「く~、何回食らっても地味にキツイなこれ」
氷水帝コスモクロア
ATK1500→0
X・HERO ワンダー・ドライバー
ATK1900→2500→1000
E・HERO サンライザー
ATK2500→3100→1600
M・HERO ダーク・ロウ
ATK2400→3000→1500
海亀壊獣 ガメシエル
ATK2200→700
氷水モンスター達の攻撃力は総じてそんなに高くはない。その問題を解決してくれるのがこのカードだ。こちらの攻撃力が低いなら相手の攻撃力をもっと下げれば良いという発想である。
「そして、手札から『氷水艇キングフィッシャー』をコスモクロアに装備する」
「うげ! そのカードも持ってたのか!」
キングフィッシャーを装備した「氷水」モンスターは守備力を攻撃力として扱い守備表示のまま攻撃出来るよう成る。「氷水」モンスターの中でも特に高い守備力を持つコスモクロアに装備することが出来れば非常に頼りになるアタッカーとして運用することが出来るのだ。
しかも、キングフィッシャーにはもう一つ効果がある。それは装備しているモンスターの守備力以下の攻撃力を持つモンスターを対象にとって手札に戻す効果だ。破壊するとマズイモンスターや破壊耐性を持つモンスターに対して強く出ることが出来るいい効果だ。
コスモクロアに装備すれば大抵のモンスターをバウンス出来るし、これで俺が相手の場に特殊召喚したガメシエルを対象にとればガメシエルを再利用することが出来る。
「バトルだ! コスモクロアでサンライザーに攻撃! そして、コスモクロアの効果により、「氷水」モンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ、その相手モンスターの攻撃力を1000ダウンさせる!」
E・HERO サンライザー
ATK1600→600
「ぐぅ……ッ! 墓地の『V・HERO インクリース』の効果発動! 自分が戦闘・効果でダメージを受けた場合に墓地のこのカードを永続罠カード扱いで自分の魔法・罠ゾーンに表側表示で置く」
緋色が先行1ターン目のヴァイオン展開で利用したインクリースが墓地から魔法・罠ゾーンに戻ってくる。
このカードは残しておくと次のターンで盤面の立て直しに利用されてしまうため、残しておきたくはないのだが、今の俺にインクリースをどうにかする手段は無い。
緋色
LP4000→1600
「サンライザーがフィールドから居なくなった事でHERO達の攻撃力は下がる」
X・HERO ワンダー・ドライバー
ATK1000→400
M・HERO ダーク・ロウ
ATK1500→900
「エジルで……ワンダー・ドライバーに攻撃!」
「冷たッ!」
エジルが作り出す氷のシャボン玉に触れたワンダー・ドライバーは一気に凍り付いて砕けてしまった。結構えぐい攻撃である。
コスモクロアの効果は他の氷水モンスターでも適用されるため、ワンダー・ドライバーの攻撃力は1000ダウンする。
X・HERO ワンダー・ドライバー
ATK400→0
緋色
LP1600→600
ワンダー・ドライバーは戦闘または相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に手札から「HERO」モンスター1体を特殊召喚する効果を持って居る。出来ればキングフィッシャーのバウンス効果で処理したい所だが、次のターンを考えればやはりこの効果はガメシエルに使いたい。
ダーク・ロウは守備表示であるため、攻撃力1000のエジルではどうしようも出来ない。かといってワンダー・ドライバーを残しておくのも怖いので俺はエジルに攻撃を命じた。
ここは賭けになるな。
「手札からの特殊召喚は?」
「……しない」
しない、か。これは手札に「HERO」モンスターが居なかったから出来なかったとみて良いか?
「メイン2。相手の場のガメシエルを対象にとり、コスモクロアに装備されたキングフィッシャーを特殊召喚する。そして、ガメシエルは俺の手札に戻る」
『ガメシエル、おかえり~』
氷水艇キングフィッシャー
ATK2500 レベル9 水
「そして、キングフィッシャーをもう一度コスモクロアに装備してターンエンドだ。イニオン・クレイドルの効果で下がっていたダーク・ロウの攻撃力は元に戻る」
最後にインチキ臭い壊獣の再利用コンボを使うことで緋色のフィールドに残るのは守備表示のダーク・ロウと永続罠扱いのインクリースのみになった。
正直サンダー・ボルトを引けていなかった時点でもっと一方的な展開になるかと危惧したが、意外と勝負になっている。
「やってくれたなー! 俺のターン、ドロー!」
緋色のライフは残り僅か600。しかし、逆に言えば俺はこの僅か600のライフを削り切れなかったという事だ。
やはり氷水デッキで1ターンキルを狙うというのは中々難しい。
カード1枚から展開してくるHEROデッキにターンを返したくは無かったが、さてどうなるか。
「手札を1枚捨てて『超融合』」を発動!」
「!? 伏せずに手札に残していたのか!」
超融合は自分と相手のフィールドのモンスターを素材に融合召喚出来る速攻魔法カード。融合素材に幅があるHEROの様なテーマなら相手の邪魔なモンスターを処理しながら展開できる優秀なカードだ。
もしこのカードが伏せられていたら負けていた!
「羽箒を警戒してたんだが、裏目に出ちまったな。まあいいさ。俺はダーク・ロウとお前の場のコスモクロアを素材に融合召喚! 来い! 『E・HERO アブソルートZero』」
E・HERO アブソルートZero
ATK2500 レベル8 水
「そして、リバースカードオープン! 『マスク・チェンジ』!」
緋色の場にいるHEROモンスターは水属性のアブソルートZeroのみ。という事は……
「さあ、衣装チェンジだ! GO! 『M・HERO アシッド』!」
M・HERO アシッド
ATK2600 レベル8 水
「フィールドを離れたアブソルートZeroと特殊召喚に成功したアシッドの効果発動! お前のフィールドのモンスターと魔法・罠カードを全て破壊する!」
「うぐっ……折角慎重にアブソルートZeroを処理したっていうのに結局食らうのかよ……というか、アブソルートZeroを2枚も採用するのか? 普通」
「どこかの誰かが水属性ばっかり使ってくるからな」
なるほど。俺ですね。
普段から緋色とデュエルしまくってる弊害が出ているな。
「インクリースが永続罠カード扱いの場合自分フィールドの「HERO」モンスター1体をリリースして発動できる。アシッドをリリースしてインクリースを特殊召喚!」
V・HERO インクリース
ATK900 レベル3 闇
魔法罠の破壊効果を使って役目を終えたアシッドをリリースしてインクリースが特殊召喚される。インクリースが特殊召喚されたという事はまた展開が始まるな。
「インクリースが魔法・罠ゾーンからの特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル4以下の「V・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。特殊召喚するのは『V・HERO ヴァイオン』!」
V・HERO ヴァイオン
ATK1000 レベル4 闇
「ヴァイオンが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動! デッキから「HERO」モンスター1体を墓地へ送る。墓地へ送るのは『E・HERO シャドー・ミスト』! そして、墓地へ送られたシャドーミストの効果でデッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。 手札に加えるのは『E・HERO エアーマン』。そのままエアーマンを通常召喚だ!」
E・HERO エアーマン
ATK1800 レベル4 風
「さらにエアーマンの召喚に成功したことで、デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える効果を使用する。手札に加えるのは『V・HERO ファリス』!」
なんという事でしょう。
緋色のフィールドにはいつのまにかインクリース、ヴァイオン、エアーマンと3体のモンスターが並んでいる。しかも、超融合で手札を1枚切っているはずなのに未だ手札は3枚である。1枚はファリスとして、1枚はこのターンでのドローカード。もう1枚は初手で持って居たカード。
手札を使わずに展開出来るデッキは羨ましいね……
「よし。ここからだぞ! 魔法カード『D-フォース』発動!」
「なるほどなぁ……」
「このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキ・墓地から『D-HERO Bloo-D』1体を選んで手札に加える事が出来る。そして、フィールドのインクリース、ヴァイオン、エアーマンの3体をリリースしてBloo-Dを特殊召喚!」
D-HERO Bloo-D
ATK1900 レベル8 闇
「自分フィールドに「D-HERO Bloo-D」が存在する限り、俺はドローフェイズにドローできないが、自分フィールドのカードは相手の効果の対象にならず、俺のフィールドのBloo-Dは、攻撃力がお互いの墓地のモンスターの数×100アップし、相手の効果では破壊されず、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる!」
俺の墓地のモンスターはエジル、コスモクロア、キングフィッシャーの3体。そして、相手の墓地には2回のヴァイオン展開によって墓地へ送られた大量のモンスターと俺が何とか倒した融合モンスター達が合わせて15体。
お互いの墓地のモンスターの数だから全部合わせて18体!
D-HERO Bloo-D
ATK1900→3700
しかも、D-フォースの効果で2回攻撃出来る。
「バトル! Bloo-Dで2連続攻撃! ブラッディ・フィアーズ!」
「うわっ!!」
LP8000→4300→600
奇しくもお互い残りのライフは600となった。
「決めきれなかったな……。ターンエンドだ」
「俺のターン。ドロー」
ドローカードは今更来ても仕方がない『墓穴の指名者』。おめー、いつも欲しい時に来てくれないな。
相手の場に居るBloo-DはD-フォースの効果で戦闘破壊も難しく、対象耐性・破壊耐性が付与され、さらにこちらのモンスターの効果を無効にしてくる厄介なモンスターだが、リリース出来ないとは書かれていない。
「ガメシエル、いつもありがとう」
『君を名誉氷水として認めるよ』
「ですよねー」
海亀壊獣 ガメシエル
ATK2200 レベル8 水
Bloo-Dを押しのけて再び緋色のフィールドに現れるガメシエル。
これでやっかいな状態から抜け出したことになる。
「だけど、なんだかんだ言ったってガメシエルの攻撃力は2200ある。これを超えられるか?」
緋色の言う事は正しい。
俺の手札は残り3枚。
今引いた『墓穴の指名者』、ダーク・ロウのせいで効果が使えなくて腐っていた『氷水のアクティ』と『氷水のトレモラ』。トレモラさんは水属性なら手札から上級モンスターでも特殊召喚する事が出来る良いカードなんだが、彼女もこのカードを「手札から墓地へ送って発動」するタイプだったため、ダーク・ロウで腐らされていた。
『ここは私の出番かな?』
「アクティ、やれんの?」
『任せてってば』
何やらアクティが自信満々にそう宣言するので、彼女を信じてみることにした。
「俺は『氷水のアクティ』を召喚!」
『むんっ!』
氷水のアクティ
ATK1000 レベル4 水
「そして、召喚に成功したアクティの効果発動! 手札から水属性モンスターのトレモラを墓地へ送ってデッキからカードを1枚ドローする!」
デッキトップに指をかけ、この状況を打破できるカードを考える。
召喚権はアクティに使ってしまった。となると、ガメシエルをどかすことが出来る魔法カードか?
そんなことを考えながら俺はカードを引く。
「!」
『ね、だから言ったでしょ』
ドローカードは『氷水艇エーギロカシス』。キングフィッシャーの様に手札から氷水モンスターに装備する事ができ、装備モンスターの攻撃力と守備力は除外されているモンスターの数×400アップする。
俺の除外ゾーンにはモンスターは居ないが、緋色はヴァイオン展開の途中で何体かモンスターを除外していた。これでガメシエルを超える攻撃力にする事が出来る!
「俺は手札からエーギロカシスの効果を発動! アクティに装備!」
アクティに装備されたエーギロカシスによって彼女の力が増していく。
ガメシエルは壊獣テーマの中でも特に攻撃力が低いカードだ。それならば攻撃力を上回るのにそう苦労は無いはずである。
確か、緋色のカードで除外されたのは『融合』を手札に加えるためにヴァイオンによって除外された1枚目のファリス、自身を除外してデッキから同名カードを特殊召喚する『D-HERO ディアボリックガイ』の1枚目、アブソルートZeroを『ミラクル・フュージョン』で融合召喚するために素材とした『E・HERO リキッドマン』と『X・HERO クロスガイ』の4体。
つまり、アクティの攻撃力は400×4アップして……
氷水のアクティ
ATK1000→2600
「微妙に足りてねぇじゃねぇか!」
『てへっ』
確かにアクティがガメシエルの攻撃力を上回る事には成功したが、これで攻撃しても与えられるダメージは400のみ。残りライフは600だから後200足りて……あ。
「魔法カード『墓穴の指名者』発動。墓地のインクリースを除外する」
「うわー! 最後の手札でそれかよ!」
指名者の効果によって墓地に居たインクリースは除外ゾーンへと移動する。本来は墓地で発動するモンスター効果を無効化するための妨害札なのだが……
『うおおおおお! 力が漲るううう!!』
氷水のアクティ
ATK2600→3000
除外されたモンスターが4体から5体へ増えたことでエーギロカシスの攻撃力アップ効果が1600から2000へと上昇する。
まあ……うん。さっきはあんなこと言ったけど、俺は指名者君の事頼りにしてるんだぜ?
「バトル! アクティでガメシエルに攻撃!」
『ごめんね? 恨むなら私じゃなくてあっちでよろしく』
俺を指差してとんでもない責任転嫁の言葉を吐きながら、ムキムキになった(攻撃力的な意味で)アクティは持っている杖を大きく振りかぶってガメシエルをぶっ飛ばす。
「うわあああああああああ!」
遊佐緋色
LP600→0
こうして俺は飛び込み参加のデュエル大会で優勝を手に入れることが出来たのだった。
HEROはあまり詳しくないので多分もっといい方法あると思うし、何なら普通に主人公が勝てないルートばかり思いついたのでかなりご都合主義です。ごめんなさい。