迷い人と星の子   作:ポテチバタースキー

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お気に入り、評価始め、皆様、読んでいただきありがとうございます。
正直申しまして、ここまで多くの方に読んでいただけると思っていませんでしたので、大変恐縮しております。改めまして、皆様ありがとうございます。
今話から小学校高学年編です。冒頭の部分は三人称っぽくなってます。
では、どうぞ。





3度目の人生 小学校高学年編(2000年~2003年)
第5話ー①:身バレ


 

 

 

 

 2000年11月3日深夜、幸燦園屋上。

 柔らかい月光と、燦然(さんぜん)と輝く星々が闇夜を照らす中、本来ならば洗濯物を干すために使うその場所で、1人の少年が大の字で仰向(あおむ)けに倒れていた。

 

「はぁはぁっ……クソッ」

 

 汗(まみ)れの少年は、歯を食いしばって起き上がる。

 彼の食いしばった歯の隙間から、荒い吐息が漏れ出た。

 苛立(いらだ)ちを(はら)んでいるような熱い吐息だ。

 

「チッ……これだけやって駄目なら……やるしかないよな」

 

 舌打ちをして一呼吸置いた少年は、考えを整理するようにブツブツと呟きながら、近くの転落防止用フェンスに目を向ける。彼の碧眼(へきがん)には、いつもの柔和な色は無く、実験動物に向けるような無機質さだけが現れていた。

 即断即決と言わんばかりに、少年は素早くフェンスをよじ登り、フェンスの反対側――所謂(いわゆる)、パラペット――の端に立つ。

 地面はアスファルトで舗装(ほそう)された道路。

 当然、転落すれば死あるのみだ。

 

「失敗したら……怒られるよなぁ……」

 

 己の所業がバレた未来を想像したのか、ヒクヒクと頬を引き()らせ始めた少年。

 彼に引っ付き虫な少女や、姉御肌な施設長始め、皆さぞ激怒することだろう。いや、激怒ならまだマシな方で、泣かれる可能性も多分にある。いやいや、それどころか誰かの手によって監禁や逆○という可能性も……。

 (いず)れにせよ、周囲の人間からどれだけ想われているのかを、少年本人だけがいまいち理解できていない。

 

「頼むぞ、俺の体」

 

 そう言葉を残して、――少年は宙に(おど)り出た。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 光陰(こういん)矢の(ごと)し。

 20世紀末にはノストラダムスの大予言が云々と話題になっていたが、無事21世紀に突入。

 ついこの間、俺とアイが小学5年生に進級したと思ったら、もう12月下旬だ。

 年齢を重ねたアイは美幼女から美少女にクラスチェンジしつつあり、絶世の美少女として学校で噂になっていて良くも悪くも人を()き付けるようになっている。今年のアイの誕生日に、4年前に約束していた市民プールへ行った時も視線を独り占めしていた。

 (もっと)も本人曰く、学校に友達は居ないとのこと。あくまでビジネスライクな関係なんだとか。

 まぁ、幸燦園(こうさんえん)胸襟(きょうきん)を開ける相手が居る以上、無理して学校での交友関係を広げる必要は無い。

 実際に昨年、同級生の女子数人が、アイに対して典型的な(いじ)め行為をしようとしていたし。

 あのガキ共、アイの体育館履きに大量の画鋲(がびょう)を仕込んでいたのだ。普段から警戒しておいて正解だった。

 言うまでもなく、アイが知る前に俺の方で秘密裏に処理しておいた。残念ながら言語では通じなかったので、肉体言語で理解してもらう形で。

 内心ぶちギレていようとも、物事を進めるのにあたってステップを踏むことは大事なことだ。

 女子も、股間を蹴り上げられたり踏み抜かれたりするのは痛いらしい。

 悪いな、俺はうずまきナルトみたいに優しくないんだ。

 ゴホン!

 ともかく、猫を被ったままではあるもののアイが学校でも俺にべったりついて回るようになったことや、席替えをしても必ず俺とアイが隣同士になること(など)、予想外な事が度々起こっているが、概ね平穏な生活を送れていると思う。

 さてさて、今日も今日とてアイを起こすとしよう。

 俺は、コアラのような格好で正面から俺に抱きついてるアイを、ゆさゆさと軽く揺すった。

 

「アイ、朝だぞ~。飯食べ損ねるぞ~」

「むにゃ〰〰……」

 

 アイは、すぴぃ〰〰と鼻提灯(ちょうちん)が見えそうなくらい熟睡していて、起きる気配がまるで無い。

 信頼されているのはありがたく思うが、これ情操教育的に不味いよなぁ……。

 実は節子姉さんの判断で、2年前から俺とアイは別々の部屋になっている。

 性差が徐々に出てくるのだから、当然の処置だろう。

 だがアイは、皆が寝静まったタイミングを見計らって、毎日欠かさず俺の部屋に忍び込み布団に潜り込んでくる。

 節子姉さんや(しおり)姉さんもアイに根負けした様で、事実上この状況を認めてしまった。

 つまるところ、アイちゃん大勝利ぃ!! なわけだ。

 

「むにゃむにゃ……もう食べられないよぉ……」

「これまたベタな寝言を……。アイ、起きてくれ~。俺も起きれないからさ」

「ししゅい君のぉ……えっちぃ……」

「……」

 

 アイの夢の中で、俺は何をしているんだ……?

 俺、アイにスケベって思われてた? ショック……。

 俺が抱き枕状態で放心していると、階段を上る足音が耳に入ってきた。足音の間隔からして、節子姉さんのようだ。

 

「お~い! 2人とも朝だぞ~!」

 

 予想通り、節子姉さんが俺の部屋の扉を開けて入ってきた。

 俺は節子姉さんに視線を向けて助けを求める。

 

「あ〰〰……やっぱ、こうなってたか……。アイちゃん、朝だから起きな~!」

 

 節子姉さんは布団を引っぺがした。冬の冷たい空気が一気に体を包み込んでくる。

 寒いと思ったのは俺だけではなかったようで、アイも更にしがみついてきて俺の体から離れようとしない。同時にアイの柔らかい女性的な感触や拍動が服越しに伝わってきて、何とも言えない気まずさを覚える。

 

「むにゃ〰〰……」

「……アイちゃん、実は起きてるだろ?」

「……てへっ、バレちゃった?」

「えっ?」

 

 半眼の節子姉さんに指摘されたアイは、目をぱっちり開いた。

 ベタな寝言を呟いたと思っていたが、(たぬき)寝入りしていたのか。

 あれ?

 さっきの「ししゅい君のぉ……えっちぃ……」は寝言?

 あれっ??

 朝から混乱している俺を他所(よそ)に、アイは俺の腰に(またが)ったまま体を起こして、ぐ〰〰っと背筋を伸ばした。

 

「ん〰〰っ……支翠(しすい)君、節子お姉ちゃんおはよー」

「……あ、ああ、おはよう」

「おはよう。アイちゃん、着替えは自分の部屋でな」

「え〰〰っ! 前も言ったけど、シスイ君なら大丈夫だよー!」

「駄目だ。毎回言ってるけどな、1年生の時とは違うんだぞ。それにな、男が皆支翠と同じではないからな? 正直、支翠が例外なだけだ」

「ぶぅ〰〰……節子お姉ちゃんのケチッ」

 

 頬を膨らませて不満を表明するアイ。(いま)だアイの柔らかい内腿(うちもも)が、俺の腰骨にがっちり組み付いている。

 アイには悪いが、概ね節子姉さんの言う通りだ。

 もし俺が普通の小学生だったら、色々と勘違いした挙げ句にやらかしていただろう。

 互いに本気ではないものの、アイと節子姉さんは無言になって視線を戦わせている。ここ(しばら)く、毎度お馴染みの光景だ。

 そして、俺が2人の間に入るのも毎度お馴染みだったりする。

 

「節子姉さんも意地悪で言ってる訳じゃないんだ。アイも女の子だから注意しましょうねってことさ」

「でも、シスイ君は私に嫌なことしないでしょ? ならいいじゃん」

「それはそうだけど、男はケダモノだから警戒しないと」

「シスイ君もケダモノなの?」

「そうかもしれないぞ? がおー!」

 

 どうも、俺の頭は錯乱状態から回復していなかったらしい。

 冬の寒さとはまた違う、寒々しい一陣の風が部屋を吹き抜けた。

 アイと節子姉さんの生暖かい視線が俺に集中し、両手を鉤爪(かぎづめ)のように構えた俺は、羞恥(しゅうち)で急速に赤面していくのを自覚する。

 

「……なっ? 支翠が体を張ってくれたんだから、アイちゃんも自分の部屋で着替えよう?」

「……うん、分かった。シスイ君、その、ごめんね?」

「あああ!! 優しくされると余計に恥ずかしぃぃいいい!! いっそ、殺せぇぇえええ!!」

 

 両手で顔を押さえて、(もだ)え苦しむ俺。

 アイが俺から退()いてくれたこともあって、思わず俺は枕に顔を埋めて足をバタつかせた。

 羞恥で死ねるなら、今死ねる自信がある。

 何だ「がおー!」って!

 肉体年齢11歳、精神年齢おっさんで「がおー!」!?

 

「んしょっと。それじゃシスイ君、また後でね。『がおー!』 って可愛かったよ」

「アイちゃん……そっとしといてあげな」

 

 そう言って、自身の部屋着を持ったアイは、節子姉さんと共にそそくさと俺の部屋から出て行った。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 起きて早々新たな黒歴史を生産し悶えるだけ悶えた俺は、のろのろと着替え等を済ませ、階下のリビングに移動した。

 リビングテーブルには、既に身なりを整えたアイが着席している。

 俺がどれだけ深い傷を負い、回復に時間を要したのか分かるというもの。

 

「あっ、やっと来た」

「お待たせ。遅くなってごめん」

 

 アイに一言謝ってから席に着く。

 テーブルに置かれた朝食を鑑みるに、食べていないのは俺達だけのようだ。アイに悪い事したな。

 

「おっ、支翠も下りてきたか。さっき出来たばっかだぞ」

「朝ごはんありがとう、節子姉さん」

「どういたしまして」

 

 節子姉さんはコーヒー片手に、俺達の対席に着いた。

 今日の朝食は、いちごジャム付きトースト、みかん、ホットココア、味噌汁だ。

 

「それじゃ、いただきます」

「私も、いただきまーす」

「どうぞ召し上がれ」

 

 食前の挨拶をしてから、朝食のいちごジャム付きトーストに(かじ)りついた。

 うむうむ。流石(さすが)、節子姉さん。

 トーストがパサパサになっていなくて美味しい。

 どれ、味噌汁の方は?

 (はし)で豆腐を一欠片食べてから、ずずっと(すす)る。

 おおっ!

 豆腐や(ねぎ)で埋もれていて気づかなかったが、しじみの味噌汁だったか!

 しかもアイに配慮して、しじみが身だけになってる!!

 脳内で食レポ(もど)きを展開している俺を尻目に、節子姉さんは案じた様子でアイに話し掛ける。

 

「久しぶりのしじみの味噌汁だけど、アイちゃん大丈夫そうか?」

「うん、大丈夫だよ! 美味しいし、ジャリジャリしないし。ありがとう、節子お姉ちゃん」

「そっか、良かった良かった」

 

 アイの食べている様子を見て、安堵している節子姉さん。

 アイのトラウマに配慮するためとはいえ、しじみの貝殻だけでなく、砂抜き後のしじみが吐き出した僅かな砂利も味噌汁から全て取り除くなんて、並大抵の労力ではない。

 それを手抜かり無くやり抜ける節子姉さんはパーフェクトママンだ。本当にパーフェクトママンだよ。

 節子姉さんに改めて感謝しつつ食べ進めていると、アイがふと思いついた様子で俺の方に顔を向けてきた。

 

「ねね、シスイ君。今日さ、部屋で勉強した後、そのまま遊ぼ?」

「ん? 良いけど、知っての通り俺の部屋は遊び道具無いぞ? 歴史の漫画くらいしか無い」

「良いよ、大丈夫っ」

 

 俺の返事を聴いたアイは、両手で小さくガッツポーズをしている。何をしても可愛らしいね、全く。

 俺がお兄ちゃんポジになる決意をしていなければ、コロッと落ちてたかもしれない。

 

「そういやぁ、支翠(しすい)ってゲームとか欲しがらないよな~。アタシには不思議だわ。大抵皆ゲームとか、カードとか欲しがるのに」

「それ私も思った。この前、私も少しやってみたけど、楽しかったよ?」

 

 アイと節子姉さんは、2人して寸分違わないタイミングで首を傾げてる。

 そう言えば、幸燦園(こうさんえん)の共有物としてプレ○テを買ったと、この前節子姉さんが言ってたっけ。

 どう答えたものか。嘘は()きたくないし、嘘吐いてもアイにバレるからなぁ……。

 よし、嘘にならない範囲で(ぼか)して言おう。それでもアイに感知されるかもしれないけど。

 本当のことは言えない。心配を掛けるし、大目玉を食らうこと受け合いだ……。

 

「まぁ、……楽しそうだとは思うけど、眼が悪くなるし、何というか……スポーツしたり体を鍛える方が性に合ってるっぽい? 多分」

「あぁ〰〰。確かに支翠は運動得意だもんな~」

「体を鍛えるっていうと〰〰……部屋に入ると、たまに脚をぺたーんって開いたりしてるよね。ああいうの?」

「まぁ、そんな感じ」

 

 そう答えて、残り少ないトーストを口に放り込む。

 アイのレーダーに、何とか引っ掛からずに済んだみたいだ。

 最近のアイは、嘘だけでなく伏せていることも結構な頻度で感知する。流石に相手の思考を読むことは出来ないようだが、何か隠し事があるということを直感的に察知しているらしい。

 (まさ)しく詐欺師の天敵だな。アイを騙せる人間なんて居ないだろう。

 それからも俺とアイは、節子姉さんと他愛もない話に花を咲かせつつ、ゆっくりと朝食を終えた。

 時たま、俺をじ〰〰っと見つめていたアイに、内心ビクついていたのは仕方あるまい。

 ()いたみかんを一切れ摘まんでアイに食べさせたら、アイは満足そうにしていたので感づかれてはいないのだろう。多分、きっと、メイビー。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 結局、昼食後に予定していた遊びの時間はアイの昼寝の時間になった。勉強を不得手とするアイが、随分と熱心に勉強していたのだ。その分、体力も使ったのだろう。

 勉強終了後、こっくんこっくんと舟を()いでいたアイを目にした俺は、アイの了解の下、彼女をお姫様抱っこして俺のベッドに寝かせた。

 俺がアイをベッドに下ろす時、俺の首に腕を回していたアイに、そのままベッドへ引きずり込まれそうになったが、それはアイのお茶目という事にして欲しい。

 言うまでもなく、俺は頑張ってアイに抵抗した。位置からして、アイの胸に顔からダイブすることが確実だったからな。

 俺が力の限り踏ん張らなければ呆気なくベッドに引きずり込まれ、おっぱいダイブな事案が発生していただろう。

 アイの細腕の何処(どこ)にそんな力があるのか……。頼むからアマゾネスの系譜を受け継がないでくれ……。可愛い天真爛漫(てんしんらんまん)なアイのままでいておくれ……。蛮族スタイルはアイには似合わないよぉ……ふぇぇ……。

 閑話休題。

 ともかく俺は、時折アイの(よだれ)を拭いてあげながら暇潰しの読書でのんびり過ごし、アイが目覚めるのを待った。

 夕方前にアイが目覚めてからは、早めの入浴と夕食等を済ませ、そうこうしているうちにもう寝る時間だ。

 いつも通り、常夜灯(じょうやとう)に切り替えてから(しばら)くして、俺の部屋の扉がゆっくりと開いていく。

 

「シスイ君、寝ちゃった?」

「いや、まだ寝てない。布団どうぞ」

 

 アイが入れるよう、掛け布団とベッドのスペースを譲る。

 部屋の常夜灯から発せられる、暖色系の薄暗い灯りを頼りにアイが近づいてきた。

 

「おじゃましまーす」

「いらっしゃい」

 

 いつの間にか定着した挨拶を交わしてから、アイは(はや)った様子で布団に潜り込んだ。鼻歌交じりに遠慮なく俺の右腕に抱きついている。

 

「やっぱり、これが一番だぁ」

「ん?」

「シスイ君の隣が一番安心できるなぁって」

「……そっか。ありがとう、アイ」

 

 随分と過分な評価をされていると思うが、今まで失敗続きの俺なんかを信頼してくれることに、感謝と共に安堵の念を抱いた。

 少なくとも、今のところはアイの寄る辺として俺――陸路(りくじ)支翠(しすい)が機能しているという事なのだから。

 

「何でシスイ君がお礼言うのー? 変なシスイ君っ」

 

 可笑(おか)しそうにクスクスと笑って、顔を寄せてきたアイ。

 アイの吐息が首筋に当たって、少しくすぐったい。

 

「ふぁああ〰〰……何か()()()()()()()()()()

「夜も遅いからな。おやすみ、アイ」

「おやすみ、シスイ君」

 

 少しして、アイの穏やかな寝息が聞こえてきた。

 俺は、眠りに就いて力が弱まったアイの腕から、そっと自分の腕を抜いていく。

 

「アイ、ごめんな。俺にはまだやることがあるんだ」

 

 1人呟いてから起き上がった俺は、両手の人差し指と中指を立てて十字に印を結ぶ。前世で慣れ親しんだ影分身の術だ。

 直後、ぼふんと間抜けな音と煙を立てて、影分身の俺が現れる。

 

「それじゃ、俺は修行してくるから。アイのこと頼んだぞ」

「ああ、任せとけ」

 

 自分が自分にお願いするという摩訶(まか)不思議な状況だが、まぁ影分身あるあるだ。

 2年前、俺は幸燦園(こうさんえん)の屋上から飛び降りて、(ようや)くチャクラを練れるようになった。

 輪廻眼(りんねがん)の開眼条件を参考に、死に(ひん)する経験をしてみれば俺の肉体が何かしら反応するのではないかと考え、一か八かの実験をしてみたのだ。

 結果は大成功。

 大枠では転生に入るのだろうが、憑依のような形で生を得たためなのだろう。前世と比べて肉体は脆弱(ぜいじゃく)なままではあるものの、前世の技能をそのまま継承していた。チャクラ体としての俺が今まで習得したものを、陸路支翠という肉体を使って発動しているらしい。

 (なん)にせよ、そのお陰で己の瞳術を発動でき、地面をすり抜けて――正確には自分の体を時空間へ移動させて――転落死を回避できたというわけだ。

 永遠の万華鏡写輪眼万歳!! 神威(かむい)万歳!!

 

「さてと……」

 

 ベランダ側の大きな窓を静かに少しだけ開けた。

 開けた拍子に、冬の刺すような冷たい空気が俺の顔に当たる。

 部屋に流入する冷たい空気は最小限にしとかないとな。

 そうして俺は、窓際に立て掛けておいたトレーニングシューズを手に持って、ベランダで()こうとした――その時。

 

「やっぱり()()()()んだぁ。色々()きたいことがあるんだけどさぁ、……シスイ君、どこに行くのかなぁ?」

 

 背後から聞こえる(はず)の無い声が聞こえた。

 しかも、普段からは想像も出来ないような粘着質な感情を(はら)んだ声が。

 一瞬にして全身が()び付いたブリキ人形のように固まるものの、それでも俺は、ギギギッとぎこちなくとも少しずつ少しずつ背後のベッドへと振り返る。

 そこには――。

 

「あはっ」

 

 上半身だけ起こした2人の姿――黒き凶星を瞳に宿しながらも爛々(らんらん)と眼を輝かせているアイと、その隣で力無く首を横に振っている影分身の俺の姿があった。

 ……今日、俺は死ぬのかもしれない。

 

 

 








2023.12/9補足関係以外削除しました。
2024.3/14:補足関係を一部削除しました。

以下、補足です。読み飛ばして構いません。
書いた方が良いかな? と思った事を書き綴っていたら、非常に長くなりました。ごめんなさい。
(NARUTOの設定を知らない方向けです)


■補足

・死に瀕して身体エネルギー活性化はオリ設定です。

・今話にて出てきましたように、シスイ君の万華鏡写輪眼の片方の能力は、オビトの神威(かむい)(すり抜け、吐き出し、吸い込み、マーキング地点への移動)です。
万華鏡写輪眼ガチャtier0or1のSSRだよ! やったね!!

・NARUTO原作を読む限り、オビトの神威のすり抜けは、純粋にすり抜けるのではなく、『相手or物と重なり合った部分の自分の肉体(衣服等も込み)が神威の時空間へ移動している事で、すり抜けているように見える』というものです。
今話でシスイ君が転落死をやり過ごしたのは、地面と重なり合った部分(全身)が神威の時空間(現実とは異なる空間)へ移動したという事になります。
わかりづらかったですよね……。

・余談になりますが、オビトの神威の他の能力は、

①吸い込み→自身含め対象を神威の時空間に連れ込む。但し、吸い込み時実体化&対象に接触する必要あり(ミナトvsオビト戦)。
②吐き出し→神威の時空間の物(気体も含む)を吐き出す(ナルト&カカシ&キラービー&ガイvsオビト戦)。
③マーキング地点への移動→自分を吸い込んで神威の時空間を経由し、(あらかじ)めマーキングした場所or現在地に自分を吐き出す事で移動(ナルト&サスケ&サクラ&カカシ&オビトvs大筒木カグヤ戦等)
です。




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