迷い人と星の子   作:ポテチバタースキー

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お待たせしました。
お気に入り、評価始め、皆様読んでいただきありがとうございます。
更新頻度が落ちている拙作に過分な評価をいただいてしまって、本当に恐縮しています。重ね重ねありがとうございます。m(_ _ )mペコリ
今話は2話編成の1話目になっていますので、ご注意ください。
又、冒頭は3人称的な文体です。
では、どうぞ。






第9話ー①:二次交渉前の一時 10/14更新

 

 

 

 

 夜の(とばり)が下りた、ホームレス達が集まっている公園の一角。

 いつもと変わり映えのしないダンボールと青いビニールシートで造られた仮住まいの群れの中から、見窄(みすぼ)らしい格好をした1人の老人が()い出てきた。

 

「うぅ……まだ(さみ)ぃなぁ……歳を取ると近くなるからいけねぇ……」

 

 2月も半ばに差し掛かったとはいえ、冬の残滓(ざんし)を感じさせるだけの肌寒さは健在だった。

 その老人は両腕を(さす)りながら、用を足すのに頃合いの場所を探そうと歩き始める。

 夜風に吹かれて立ち並ぶ木々の葉がざあざあと不気味に揺らめくものの、玲瓏(れいろう)な月が暗闇を照らしており、周囲に人の姿は見当たらない。

 

「お(じい)さん、ちょっと良い?」

 

 ふと、誰も居ない(はず)其処(そこ)で、老人を呼び止める声が聞こえてきた。

 老人は、昼間に飲んだ酒が抜けていなかったのかと、1人納得して振り返る。

 

「おぅ? こんな夜中にどうした、(あん)ちゃん?」

「俺の眼を見て欲しいんだ。俺の眼、()()に見える?」

 

 金髪の少年の赤い瞳には、特殊な形をした4枚刃の手裏剣状の模様――各刃先から隣の刃に向けて、時計回りに鎌の刃が付いているような4枚刃の手裏剣――が浮かび、暗闇の中でも怪しく光っていた。

 木陰から歩み出た少年の眼を見て、老人は答える。

 

()だな。つうかよぉ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()たぁ、随分と浮世離れしたナリしてるじゃねぇか」

「そっか、ありがとう。お爺さん、おやすみなさい。……やっぱり、アイが特殊体質なだけなのか?……」

「おぅ、兄ちゃんもな。夜も(おせ)ぇから、さっさと帰っとけよぉ」

 

 月明かりに身を(さら)している()()()()姿()の少年から視線を切って、老人は再び歩き始めた。

 こんな夜更けに、人が木陰に(たたず)んでいた事への違和感を自覚すると同時に、何故か心の中で生じた少年への忌避感に従って。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 苺プロダクションとの一次交渉が不調に終わった日から2週間経った。今日再び、斉藤壱護と相見(あいまみ)える予定になっている。

 2週間ものインターバルを設けたのは、この世界の人間の幻術耐性について検証していたためだ。

 本番で()()()()()()の失敗は許されない以上、当然であろう。

 (もっと)も、検証するとしても誰を対象にするのかという問題に、すぐにぶつかってしまったのだが。

 俺の下手クソな幻術を対象に掛け損ねたらヤバイ……というより、最悪、口封じのために対象を殺さないといけなくなる事もあって頭を悩ませたものの、()()()()()()()が居る事に考え至り夜な夜なコツコツと検証を重ねていく事が出来た。

 その結果、幻術失敗事例は500人中0人。

 事案の性質上、慎重に慎重を期して1000人単位でサンプルを採りたいところであったが、アイが特殊体質である確率が高いと結論づけて良いのかもしれない。

 

「おじさん、来るかなー?」

「どうかな……。待ち(ぼう)けの可能性も視野に入れておいた方が良いかも」

「まぁ、来ないなら来ないで、カラオケで遊べば良いさ」

 

 現在、俺とアイ、節子姉さんは、幸燦園(こうさんえん)近くにあるカラオケ店のカラオケボックスにて、斉藤壱護の来着を待っているところだ。

 テーブルを境にして向かい合うソファーの片側に、左から俺、アイ、節子姉さんが座っていて、何をするにしても好都合な状況にしてある。防犯カメラ、盗聴、盗撮機器の類いが無いのも確認済み。

 交渉の場にカラオケ店を選んだ理由は、……何のことはない、妥協の産物である。

 この時代(2003年)、レンタル会議室の類いが殆ど無い。

 加えて、幸燦園(こうさんえん)は相手方に建物の構造を見られたくないためアウト。神威(かむい)の時空間も、俺の幻術では記憶を消すなんて芸当は出来ないからアウト。アウェイの苺プロダクションの事務所も、これからやる事を考えれば当然アウト。

 そうなると、消去法的にカラオケボックスくらいしか俺達にとって都合の良い場所は無かったのだ。

 

「しっかし、支翠(しすい)が転生してるなんてなぁ……。世の中、不思議な事もあるもんだ」

「まぁ、普通あり得ないからね」

 

 苺プロダクションを訪問した日の翌日、節子さんを説得するにあたって、俺の前々世(1度目の生)前世(忍時代)の事をカミングアウトした。

 端から見れば異常な事を話しているのは言うまでもなく、流石に受け入れ難いだろうと思っていたが、節子姉さんは俺という異物を受け入れてくれたのだ。

 

「ま、引け目に感じる事は無いさ。その話をした時にも言ったけど、支翠が幸燦園(ウチ)の子である事に変わりないし、アタシが支翠の味方で居続ける事も変わらない。だから、支翠も遠慮せずに、な?」

「節子姉さん、重ね重ねありがとう。……そういえば、節子姉さんの超能力みたいなのは、いつから出来るようになったの?」

 

 柔らかい笑みを向けてきた節子姉さんにお礼を言ってから、今まで聞きそびれていた節子姉さんの『柱間ァァァ!!』について質問した。

 まだ予定時刻まで1時間近くある事に加え、店内で一番奥の部屋故に人の気配も無い。話を()いても大丈夫だろう。

 

「ああ〰〰……。あれはなぁ、昔、死にかけた事があってな。それから何故か出来るようになったんだ」

「えっ? 節子姉さん、死にかけたって……何して?」

 

 過去を懐かしむような、けれども、それだけでなく恥じ入り悔やむような――そんな複雑な表情を浮かべている節子姉さん。

 事故? それとも、ヤンチャしてた事と関係があるのか?

 (いず)れにせよ、ただ死にかけただけで、あんな膨大なチャクラを持つ事は出来ない(はず)だ。

 俺のみならず、アイも興味深そうに耳を澄ませている。

 

「色々経験してきた支翠はともかく、アイちゃんに聞かせる話じゃないけどな、……昔のアタシは悪ガキだったんだ。親がマトモな人間じゃない事もあって、荒れに荒れて仲間を引き連れて喧嘩三昧(ざんまい)さ。んで、……丁度クリスマスの日の夜遅く、喧嘩しても負け無しで調子に乗ってた当時のアタシは、当時の1番の親友に、川に()かる橋の上に呼び出されてな。不意打ち気味にグサッと腹をサバイバルナイフで刺されて、真冬の川へ突き落とされたんだ。結構恨まれてたらしい」

 

 節子姉さんの独白を聴いて、アイはショックを受けたように目を見開き口元を手で覆っていた。

 節子姉さんのハードな体験談には俺も心配と驚きを禁じ得ず、同時に、その状態でよく生還できたなとも思う。

 無傷でも、衣服を(まと)った状態で(こご)える程に冷たい川の水の中を泳ぎ切って岸へ辿り着くのは、至難の(わざ)だ。

 腹部に致命傷を抱えているのなら、まず不可能だと断言していい。

 

「あんまり訊くべきじゃないんだろうけど、……それからどうなったの?」

「いや、別に構わないさ。支翠も言いづらい事、話してくれたしな。……そんでな、『ああ、こりゃ死んだわ』って思ってたところまではハッキリと覚えてるんだけど、そっから先は、どうにも記憶がなぁ……。多分、意識を失ったんだと思う。ただ、面識の無い、死に装束っぽい格好で宙に浮いてる爺さんと鎧姿の2人のオッサンに会った夢は、何でか鮮明に覚えてるんだけど……。ともかく、目が覚めたら川岸に流れ着いてたんだ。しかも、刺された腹の傷は元通りに治った状態で」

「えっ、じゃあ傷が勝手に治ってたって事? それとも、刺された事も夢だったの?」

「いや、服には刺された時の穴が空いてたから、刺されたのは本当の筈なんだ……。つまり、あり得ない事に傷が勝手に治ったって事になるんだよなぁ……。しかも、あの日以来、体がやたら頑丈になった気もするし……」

 

 右隣に座るアイが思わずした質問に、節子姉さんは首を(ひね)りつつ答えた。

 それを聴いて俺は潜考する。

 死に装束っぽい格好で宙に浮いてる爺さんと、鎧姿のオッサン2人、ね……。

 当時の節子姉さんの傷が治癒していた事と、先般の出来事を鑑みれば、ただの不思議な夢で片付けてはいけないな。

 何者だ?

 節子姉さんは俺みたいな転生をしていない筈だから、六道仙人ではないだろうし……。

 後々邂逅(かいこう)した時の対応を誤らないためにも、もう少し情報が欲しい。

 そう考えた俺は、節子姉さんに再度質問する事にした。

 

「節子姉さん、夢の話だけど、そのお爺さんと2人のおじさんは、どんな容姿をしてた?」

「ん〰〰っと、爺さんの方は(すげ)ぇ個性的でさ、(ひげ)が滅茶苦茶長くて、鬼みたいに2本の角生やしててな。それと、額に赤い丸のマークをつけてた。……まぁ、角といい、赤い丸のマークといい、爺さんなりのファッションだったんだろうな」

「変なお爺さんだねー」

「へ、へぇ……」

 

 可笑(おか)しいな……。

 そんな容姿の人を転生する時に見た覚えがあるような……。

 ま、まさかね……。

 

「そんで、鎧姿のオッサン2人はというと、片方は豪快な感じで、女のアタシも(うらや)ましくなるくらい(つや)のある黒いロングヘアでさ、真ん中に()()()()()()()()()()が入った鉢金を頭に巻いてたな。本人の見た目がどう見てもアラサーなんだけど、実年齢は初老らしくて驚いたわ」

「えぇ〰〰! それって、女の人ならずっと綺麗なままって事だよねっ。夢でも羨ましい!」

「ほ、ほぉ……」

 

 あ、あれぇ……?

 何か俺が知ってそうな人っぽいなぁ……。

 き、気のせい……?

 

「んで、もう片方は少し陰気な感じで、ツンツン頭の黒いロングヘアで顔は整ってるんだけど、目つきが悪かったな。……ああ、そういえば、目つきの悪い方のオッサンは後ろに立たれるのが嫌らしくて、背後に忍び寄るもう片方のオッサンに何度かキレてたっけか。喧嘩するほど仲が良いってやつっぽい」

「へぇーっ、戦国時代の人だから後ろに立たれたく無かったのかなぁ? 面白そうな夢だけど、チョンマゲじゃないおじさん達も変だねー」

「だろ? 夢とはいえ日本人で鎧姿ならチョンマゲだろ、普通。……しっかし、考えれば考える程、可笑(おか)しな夢だよなぁ……」

「……」

 

 釈然としない様子の2人とは対照的に、節子姉さんが誰と接触したのか大凡(おおよそ)察してしまった俺は、とうとう言葉に窮してしまった。

 その正体は、六道(りくどう)仙人と細胞が兵器な男(千手柱間)、それと柱間ガチ勢(うちはマダラ)だ……。多分。

 瀕死の節子姉さんに柱間のチャクラを渡したといったところか。

 そうだとするならば、独りでに傷が治ってる事も、あの膨大なチャクラ量も、超能力的柱間アクションも理解できる。本家本元のチャクラを貰っているのだから。柱間細胞的な副作用が見られない辺り、今のところは節子姉さんの体に順応しているとみていい。あくまで、今のところは、だが。

 節子姉さんにコンタクトを取った理由が分からないとか、何故、柱間細胞的な副作用が今まで起こってないのかとか、色々疑問は浮かぶけどさぁ、……仙人ェ……柱間ェ……マダラェ……。

 関係改善してるっぽいのは好ましいし、若かりし頃の節子姉さんを助けてくれた事には心から感謝するけど、節子姉さん、超絶バフかかったままなんですけど!?

 柱間細胞ですら、柱間の顔やら腕やらが浮き出てきたりして自己主張が強かったのに、今回は柱間のチャクラそれ自体だよ!?

 やっぱ、将来のためにチャクラコントロールとか教えた方が良いんじゃないの、これ?

 でも教えたら教えたで、ある日突然暴発して、幸燦園が樹海になったり真数千手(でっかい大仏)生えてきたりしない?

 ……ほっといた方が良い?

 それとも教えた方が良い?

 どっちがベスト?

 ……六道仙人、お知恵をプリィィィズ!!

 

「支翠、急にどうした? 胃を(さす)りながら百面相して。具合悪くなったか?」

「い、いやぁ、どうしたものかなぁ……って」

「シスイ君、大丈夫ー? そうだっ! まだ時間あるしぃ、……私の()()で、寝よ?」

 

 背中を丸めてる俺へ誘うような視線を送りながら、チェック柄のスカートの(すそ)を指先で摘まみ、これ見よがしにヒラヒラとはためかせているアイ。

 アイの女性的な柔らかさを帯びつつある太腿(ふともも)とスカートが織り成す絶対領域は、余りに(まぶ)しく倒錯的だ。

 どうも、彼女の言う『ここ』とは地肌の太腿の事らしい。言い換えれば、スカートの中に頭を突っ込めという事でもある。

 アイの意図を理解して、慌てて顔を逸らそうした次の瞬間。

 タイミングを計ったように、その最奥に(まと)っているものが目に入ってきてしまった……。

 まさかの黒……だと……。

 メンタルに特大の衝撃を受けて固まった俺を余所(よそ)に、節子姉さんはアイを(たしな)める。

 

「アイちゃん、はしたないからやめなさい」

「えぇ〰〰っ」

「支翠も男の子なんだ。そのうち、ボンッって爆発しちまうぞ?」

「大丈夫だよっ! むしろぉ……えへへっ」

 

 何を思い浮かべたのか、アイは照れ笑いしている。可愛い。

 ……苺プロダクションを訪問した日の夜、こんなに可憐な彼女が、その身に獣を宿したかの如き有り様で、俺のパジャマを根こそぎ()いたのは気のせいだったんだ……。

 ……パジャマを()ぎ取る過程で、俺の体に舌を這わせたり、あちこちに甘噛みして噛み跡を付けたりしていたのも気のせいだったんだ……。

 ……謎の馬鹿力で両腕を押さえつけられて、俺が乱暴されそうな女の子みたいな格好になっていたのも気のせい……。

 

「2人にはまだ早い。チューまでにしときなって」

「けちっ! でも、これは良いでしょ? えいっ」

「ふぁっ?――」

 

 不意を突かれて、アイの両手でガシッと頭を(つか)まれた俺は、気づけば体を横にして、ふにふにとした柔らかいものの上に頭を乗せていた。

 正面には、アイの満足そうなご尊顔。

 視線を上に向ければ、『やれやれ……』と言わんばかりの、温かみのある苦笑を浮かべた節子姉さん。

 今、俺はアイに膝枕をされている――そう認識した途端、(ほお)が急激に熱くなり始める。

 

「ねね、節子お姉ちゃん。シスイ君ってさ、転生(てんせー)してるーって言っても、初心(うぶ)な照れ屋さんだよねー」

「だなぁ。おっ、支翠のほっぺたが(あか)くなってきた」

 

 起き上がろうとしてもアイに額を押し止められてしまい、1ミリたりとも起き上がれなかった。

 最後の(はかな)い悪あがきとして、両手で顔を覆い、俺の顔を品評している2人から逃げ切りを図る。

 ……それから暫くの間、アイに、熱を持っている耳朶(みみたぶ)(いじ)られたり、手で隠しきれていない部分の頬を突っつかれたり、髪の匂いを()がれたり、服の中に手を突っ込まれて腹を(まさぐ)られたりして、俺は気恥ずかしくも穏やかな時間を過ごしたのであった。

 

 

 

 








2023.12/9:補足関係以外削除しました。
2024.3/14:補足関係を一部削除しました。

シスイ君の永遠の万華鏡写輪眼の模様は、オビトの万華鏡写輪眼の4枚刃ver.をイメージしているんですけど、表現がムズイィィイイ!!
何とか伝わっていたら嬉しいです。

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