迷い人と星の子 作:ポテチバタースキー
今話は2話編成の1話目です。下ネタ系苦手な方にはごめんなさい……。
では、どうぞ。
月明かりを受けてベランダに立ち、感極まった表情を浮かべている黒髪の女性――
俺と同じ模様の万華鏡写輪眼を持っているという事は、家波結奈が前世の妹、家波ユナである事の証左に他ならない。
万華鏡写輪眼の模様がユニークではない事を考えれば、『家波ユナと同質の魂と容姿を持ち、永遠の万華鏡写輪眼まで開眼している転生者』の場合は別人になるが、天文学的な確率なため無視していいだろう。
「ああっ……ユナ……っ」
合わせる顔が無いと、会う資格は無いと、理解していても
だが同時に、前世でユナを死なせた時の記憶が次々とフラッシュバックしてきた。
穴という穴から血を流し、寂しげな笑みを浮かべたまま事切れていたユナの姿。
神威の時空間内でユナの遺体を火葬した時の、人の死を感じさせる独特な臭い。
火葬後に
「はっ、はっ、はっ……」
呼吸が乱れ始めた。ユナから目を逸らしてはいけないのに、胸の苦しさの余り意、志に反して俺の体は
寒い、寒い、寒い。
恐い、恐い、恐い。
途端に心の奥底から浮き上がってきた己の弱さを抑えようと、胸元のパジャマを雑に握り締める。
1番辛かったのは俺では無い。亡くなった当人だ。
ユナ然り、カンナ然り、両親然り。
罰を受けるべき俺が先に根を上げる事など、あってはならない……!
「むにゅ……ししゅい君……?」
左隣で寝ていたアイが目覚めてしまった。
「はっ、はっ、はっ……アイ、ごめ、ん」
「っ! シスイ君、ゆっくり」
アイは過呼吸の俺にぴたりと寄り添い、背中を優しく
彼女の体温と匂いが、少しずつ俺の熱を取り戻させていく。
本当に俺には
「大丈夫、大丈夫だよ。シスイ君」
「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ……アイ、ベランダに、ユナが、居る。顔は、絶対に、見ちゃ駄目だ」
「っ!……分かった」
呼吸が少し落ち着いたタイミングで端的に伝え、その言葉を聴いてアイはベランダへと顔を向ける。
本来、写輪眼持ちに目を合わせるのはタブーであるが、アイには幻術が効かない。恐らく、ユナの瞳術・
だが、ユナのもう1つの瞳術・
幻術に掛かったら最後、
「シスイ君、誰も居ないよ?」
「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ、……いや、そんな
何とか呼吸を落ち着かせ顔を上げると、確かにアイの言う通り、そこには誰も居なくなっていた。ベランダ側の窓に月明かりが
ユナは
俺が夢で
いや、……確実に人の気配を感じた。
だから、俺は反射的に起きたんだ。
という事はだ。
ユナは、既に
仙人モードになれば、気配を隠すのが上手いユナでも感知できるだろうが、なるまでに時間がかかり過ぎて現実的では無いな。
「アイ、俺の側から――」
離れるなよ、と言いかけた、その時。
部屋の扉が開く音と共に、俺の背後から強烈な人の気配を感じた。
ほぼ同時に、俺を見ていたアイが切迫した表情で叫ぶ。
「シスイ君、後ろ!」
「っ!?」
「お・に・い・ちゃ〰〰ん!! 会いたかったよぉ〰〰!!」
「むぶっ!」
振り返って
アイの声に
黒のパーカー越しからは分からなかった、彼女の豊かな胸に顔から
「ひぐっ、ひぐっ、……やっと、やっと会えた……っ」
「……っ」
「私もカンナ
泣きじゃくるユナにされるがまま、俺は呆然としてしまう。
これは夢……か?
俺にとって余りにも都合が良すぎる。
そもそも、俺が前世で判断ミスをしなければ、ユナもカンナも長生き出来たに違いない。
時代が時代だったとはいえ、俺がもっと思考を巡らせていたら、2人とも穏やかな最期を迎える事だって十分にあり得ただろう。
少なくとも、血を垂れ流して死んだり、人体実験のモルモットとして
恨まれて当然。憎まれて当然。殺されて当然。
それが現実の筈だが……。
「全部、全部観てたんだよっ。カンナ
ユナは俺を抱き締めるのを止めて、俺の両肩に手を置き正面から見つめてくる。
その
「そう、か……。不出来な兄でごめんな……護れなくてごめん」
「そんな事ないっ! お兄ちゃんが
「……そんな綺麗な理由じゃない。あの時の俺は死に場所を探してたんだ。俺の自己満足のために、大切な人の死を利用しただけなんだよ。それに、仇討ちを果たせずに木の葉の里の無関係な人達を大勢殺したしな」
「……お兄ちゃんは、相変わらず自分に厳しいよね~。私達の幸せを壊した里の連中なんて、
ユナの過激な物言いに嫌な予感を覚え、顔を上げる。
ユナは特に
昔のユナはどれだけ怒りに満ちていても、こんな事は言わなかったのに……。
「まだまだ話したい事は沢山あるんだけどぉ……。その後ろの娘が星野アイちゃん? もしかして、一緒に寝てるの?」
「ああ、そうだ。その、い、一緒に寝てる。俺の彼――」
「シスイ君の『カノジョ』の星野アイですっ! よろしくね、
今まで空気を読んで黙っていてくれたらしいアイは、ユナを警戒するように背後から俺の体に抱きつき、自身の側に引き寄せる。
毎度お馴染みの謎の怪力を発揮していて、俺はあっという間にアイの
だが、アイはそれだけに留まらず、俺の左
「んぶっ!?」
まさかのディープキス。
アイの舌が俺の口内を縦横無尽に動き回り、俺を
前よりも激しいお陰で、混じり合った
流石に、前世の妹の面前でディープキスという
この痴態を見たユナはといえば……。
「は、はぁぁあああ!? お、お兄ちゃん!? う、羨ま……じゃなかった、何やってんの!?」
「ん゛!?」
「んふふふっ」
「っ!! ぐぅ〰〰っ!!」
万華鏡写輪眼のまま、目をひんむいて。
アイもアイでチラチラとユナへ視線を送り、これ見よがしにディープキスを見せつけている。
ユナの口から倫理感がぶっ壊れていきそうな不穏な言葉が聞こえた気がしたが、聞こえなかったという事にしておこう……。
俺にその気は無い……。
「ちょ、お兄ちゃん!! ロ○コンだったの!? お兄ちゃんはおっぱい好きでしょ!? 私、前世でお兄ちゃんの秘蔵コレクション見たんだからねっ!! 全部、美巨乳ヒロインのえっちな漫画や美巨乳厳選のエロ本だったのも、知ってるんだからっ!!」
「んぶふっ!?」
ユナの暴露が深々とメンタルに突き刺さる。
な、何たる事……。
前世の時点で、俺の性癖が妹にバレていたなんて……っ!
アイにも聞かれたし、今後どんな態度で接していけば……。
居たたまれない思い一色になりかけた瞬間。
アイが右手の爪を俺の腹に突き立ててきた。徐々にアイの指がめり込んでいく。
いた、いたたた!!
パジャマ越しなのに痛い!
筋肉突き破って内臓
「ぷっはぁ……、シスイ君」
「……は、はい」
「やっぱり、大きなおっぱい好きなの?」
「や、『やっぱり』?……も、黙秘権は?」
「あると思う?」
至近距離で俺の目を
アイの豹変振りに、ユナも「うわぁ……この娘、こっわ……」と
今の俺の顔を鏡で見たら、さぞ引き
「い、いつもの、可愛い笑顔のアイちゃんが良いなぁ……」
「
「うぐぅ……」
ニコリともせず追及の手を緩めないアイ。
万事休すか……。
恥も外聞を捨てて白状しようとした時、ユナが口を挟んできた。
「……はっ!?……突然のキス展開で流されかけたけど、勝手にお兄ちゃんと交際するなんて事は、お天道様が許しても私が許さないよ! 星野アイ、お兄ちゃんを返しなさいっ!」
俺の左腕がユナに思いっきり引っ張られる。痛い。
だが、アイに抱え込まれている俺はびくともしない。
ユナが忍としての力を取り戻している事を考えると、俺とアイの体がベッドの上から1ミリも動かないのは物理法則を無視しているような……。
このユナの行動を敵対行動と捉えたのか、アイは、俺からユナへと視線を移す。
アイの瞳?
レボリューションしそうな程に真っ黒で、輝きを失ったままですよ。
……
……ビビりまくっていて頼りないなんて思われたくないんだからねっ!
「……いや、あのな? アイと交際しているのは――」
「ユナさん?
俺の言葉を
ゴングの鐘が鳴ってしまった。幻聴の
こうなってしまっては男の俺に止める
現実逃避、現実逃避。
「と、年上の妹だぁ!? 生意気言いやがったな、このっ!! まな板娘は大人しく言う事を聞きなさいっ!」
「
「はぁ〰〰!? 私はまだ、ピッチピチの18歳なんだけど!! 乳臭いガキにお兄ちゃんはあげられないんだよっ! 全てが上手くいけば、カンナ
とんでもない発言をしているユナに諦めは全く見られず、両足を踏ん張って綱引きをするような格好で俺の左腕を引っ張り続けている。
肩外れそうで痛いよぉ……。俺の体、頑張れ頑張れ!
「『ピッチピチ』っておばさん臭い。それに、今は18歳でも私達が20歳になったら27歳でしょ? 立派なおばさんだよねっ。お化粧しなくて大丈夫なの?」
「こ、こんの……っ!」
「あっ、そうだ。おっぱいは好きな人に揉んで貰えば大きくなるらしいから、これから毎日シスイ君に揉んで貰おっと。良いよねっ、シスイ君?」
「……えっ?」
急に話を振られて反応が遅れてしまった。
アイとユナの視線が俺の方へ向き、俺の一挙手一投足が見られているのを肌で感じ る。
片や瞳に漆黒の凶星を
この状況、どのように答えても穏便に済まないのでは……?
「え、絵面的に……俺、犯罪者になるからさ、節子姉さん辺りに頼む方が良いんじゃないかなぁ……」
「大丈夫。だって、シスイ君は私の『カレシ』で『パートナー』なんだから。将来のための
「お兄ちゃん!! ぺたんこ娘の色香に
「黙っててくれないかな? ユナ
「ババア扱いして邪魔すんな!!
俺そっちのけで、再びいがみ合い始めたアイとユナ。
2人の視線が衝突し、空中で火花を散らしているのを容易に幻視できる。
それからも、アイとユナは互いにメンチを切りながら、俺の引っ張り合いをし続け……。
俺は自分の体が四散しない事を祈りつつ、事態の収束を待った。
2023.12/9:補足関係以外削除しました。
拙作のオリキャラ、ユナちゃんの設定等の話は次話あとがきにてします。
今度こそ、あとがき短く頑張りたい……。