迷い人と星の子   作:ポテチバタースキー

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お気に入り、感想始め、皆様ありがとうございます。
今話は2話編成の1話目です。下ネタ系苦手な方にはごめんなさい……。
では、どうぞ。






第11話ー①:女の戦い? 11/11更新

 

 

 

 

 月明かりを受けてベランダに立ち、感極まった表情を浮かべている黒髪の女性――家波(いえなみ)結奈(ゆな)を見て、思わず心臓が()ね上がった。

 俺と同じ模様の万華鏡写輪眼を持っているという事は、家波結奈が前世の妹、家波ユナである事の証左に他ならない。

 万華鏡写輪眼の模様がユニークではない事を考えれば、『家波ユナと同質の魂と容姿を持ち、永遠の万華鏡写輪眼まで開眼している転生者』の場合は別人になるが、天文学的な確率なため無視していいだろう。

 

「ああっ……ユナ……っ」

 

 合わせる顔が無いと、会う資格は無いと、理解していても(なお)、健康体のユナを目にして涙が(あふ)れてくる。

 だが同時に、前世でユナを死なせた時の記憶が次々とフラッシュバックしてきた。

 穴という穴から血を流し、寂しげな笑みを浮かべたまま事切れていたユナの姿。

 神威の時空間内でユナの遺体を火葬した時の、人の死を感じさせる独特な臭い。

 火葬後に(のこ)った、変わり果てた彼女の――。

 

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

 呼吸が乱れ始めた。ユナから目を逸らしてはいけないのに、胸の苦しさの余り意、志に反して俺の体は(うつむ)いていく。

 寒い、寒い、寒い。

 恐い、恐い、恐い。

 途端に心の奥底から浮き上がってきた己の弱さを抑えようと、胸元のパジャマを雑に握り締める。

 1番辛かったのは俺では無い。亡くなった当人だ。

 ユナ然り、カンナ然り、両親然り。

 罰を受けるべき俺が先に根を上げる事など、あってはならない……!

 

「むにゅ……ししゅい君……?」

 

 左隣で寝ていたアイが目覚めてしまった。眠気眼(ねむけまなこ)で眼を擦りながら、ベッドから体を起こすアイ。

 

「はっ、はっ、はっ……アイ、ごめ、ん」

「っ! シスイ君、ゆっくり」

 

 アイは過呼吸の俺にぴたりと寄り添い、背中を優しく(さす)り始めてくれた。

 彼女の体温と匂いが、少しずつ俺の熱を取り戻させていく。

 本当に俺には勿体無(もったいな)い娘だ。ユナの恨みが俺だけに向くようにしないと……。アイに飛び火しかねない。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。シスイ君」

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ……アイ、ベランダに、ユナが、居る。顔は、絶対に、見ちゃ駄目だ」

「っ!……分かった」

 

 呼吸が少し落ち着いたタイミングで端的に伝え、その言葉を聴いてアイはベランダへと顔を向ける。

 本来、写輪眼持ちに目を合わせるのはタブーであるが、アイには幻術が効かない。恐らく、ユナの瞳術・月読(つくよみ)レベルまでなら大丈夫だろう。

 だが、ユナのもう1つの瞳術・別天神(ことあまつかみ)は別だ。別天神は誇張(こちょう)でも何でもなく、格が違う最強幻術。

 幻術に掛かったら最後、(わず)かな違和感すら覚える事無く操られてしまう。俺の万華鏡写輪眼でも対処できない。

 

「シスイ君、誰も居ないよ?」

「ふぅーっ、ふぅーっ、ふぅーっ、……いや、そんな(はず)は……」

 

 何とか呼吸を落ち着かせ顔を上げると、確かにアイの言う通り、そこには誰も居なくなっていた。ベランダ側の窓に月明かりが()し込んでいる、いつもの光景。

 ユナは何処(どこ)へ行った?

 俺が夢で寝惚(ねぼ)けてただけか?

 いや、……確実に人の気配を感じた。

 だから、俺は反射的に起きたんだ。

 という事はだ。

 ユナは、既に幸燦園(こうさんえん)の建物内に入った可能性がある。

 仙人モードになれば、気配を隠すのが上手いユナでも感知できるだろうが、なるまでに時間がかかり過ぎて現実的では無いな。

 

「アイ、俺の側から――」

 

 離れるなよ、と言いかけた、その時。

 部屋の扉が開く音と共に、俺の背後から強烈な人の気配を感じた。

 ほぼ同時に、俺を見ていたアイが切迫した表情で叫ぶ。

 

「シスイ君、後ろ!」

「っ!?」

「お・に・い・ちゃ〰〰ん!! 会いたかったよぉ〰〰!!」

「むぶっ!」

 

 振り返って咄嗟(とっさ)に構えようとしたが、完全に遅かった。

 アイの声に(かぶ)せる形で飛びかかってきたユナ。

 黒のパーカー越しからは分からなかった、彼女の豊かな胸に顔から(うず)まり、直後、頭を掻き抱かれる。

 

「ひぐっ、ひぐっ、……やっと、やっと会えた……っ」

「……っ」

「私もカンナ義姉(ねえ)も、お兄ちゃんの事恨んでないのに、勝手に恨んでるって思い込んでるの(ひど)いっ! ばかっ、あほっ、ムッツリチキンっ」

 

 泣きじゃくるユナにされるがまま、俺は呆然としてしまう。

 これは夢……か?

 俺にとって余りにも都合が良すぎる。

 そもそも、俺が前世で判断ミスをしなければ、ユナもカンナも長生き出来たに違いない。

 時代が時代だったとはいえ、俺がもっと思考を巡らせていたら、2人とも穏やかな最期を迎える事だって十分にあり得ただろう。

 少なくとも、血を垂れ流して死んだり、人体実験のモルモットとして(さら)われ、自身の尊厳を守るために服毒して自死する事にはならなかった。

恨まれて当然。憎まれて当然。殺されて当然。

 それが現実の筈だが……。

 

「全部、全部観てたんだよっ。カンナ義姉(ねえ)が死んじゃった後の事も」

 

 ユナは俺を抱き締めるのを止めて、俺の両肩に手を置き正面から見つめてくる。

 その(うる)んだ赤い瞳を受け止める事が出来ず、俺は顔を背けてしまった。

 

「そう、か……。不出来な兄でごめんな……護れなくてごめん」

「そんな事ないっ! お兄ちゃんが仇討(かたきう)ちしようとしてたの観てて、平穏な生活から遠ざかっていってて辛かったけど、嬉しかった! そこまで私達の事、大事に想ってくれてたんだなって」

「……そんな綺麗な理由じゃない。あの時の俺は死に場所を探してたんだ。俺の自己満足のために、大切な人の死を利用しただけなんだよ。それに、仇討ちを果たせずに木の葉の里の無関係な人達を大勢殺したしな」

「……お兄ちゃんは、相変わらず自分に厳しいよね~。私達の幸せを壊した里の連中なんて、()()()()()()()のにさ」

 

 ユナの過激な物言いに嫌な予感を覚え、顔を上げる。

 ユナは特に可笑(おか)しな様子もなく、面白くなさそうに唇を尖らせているだけだった。

 昔のユナはどれだけ怒りに満ちていても、こんな事は言わなかったのに……。

 

「まだまだ話したい事は沢山あるんだけどぉ……。その後ろの娘が星野アイちゃん? もしかして、一緒に寝てるの?」

「ああ、そうだ。その、い、一緒に寝てる。俺の彼――」

「シスイ君の『カノジョ』の星野アイですっ! よろしくね、()()()のユナさん?」

 

 今まで空気を読んで黙っていてくれたらしいアイは、ユナを警戒するように背後から俺の体に抱きつき、自身の側に引き寄せる。

 毎度お馴染みの謎の怪力を発揮していて、俺はあっという間にアイの(ふところ)に収まってしまった。

 ()しくも数日前に混浴した時と同じく、アイが俺を抱え込むような、あすなろ抱き。

 だが、アイはそれだけに留まらず、俺の左(ほお)に自身の左手を当てて俺の顔を右に向けさせ、横合いからキスしてきた。

 

「んぶっ!?」

 

 まさかのディープキス。

 アイの舌が俺の口内を縦横無尽に動き回り、俺を(むさぼ)り食わんばかりに激しく(から)みついてくる。

 前よりも激しいお陰で、混じり合った唾液(だえき)が俺の口の端から垂れていき、とろっと淫靡(いんび)さを(かも)しながら俺のパジャマへ落ちていく。

 流石に、前世の妹の面前でディープキスという羞恥(しゅうち)プレイは勘弁したいのだが、アイの右腕で体を押さえつけられていてピクリとも動く事ができない。

 この痴態を見たユナはといえば……。

 

「は、はぁぁあああ!? お、お兄ちゃん!? う、うらや……じゃなかった、何やってんの!?」

「ん゛!?」

「んふふふっ」

「っ!! ぐぅ〰〰っ!!」

 

 歯噛(はが)みして、俺とアイのキスをガン見していた。

 万華鏡写輪眼のまま、目をひんむいて。

 アイもアイでチラチラとユナへ視線を送り、これ見よがしにディープキスを見せつけている。

 ユナの口から倫理感がぶっ壊れていきそうな不穏な言葉が聞こえた気がしたが、聞こえなかったという事にしておこう……。

 俺にその気は無い……。

 

「ちょ、お兄ちゃん!! ロ○コンだったの!? お兄ちゃんはおっぱい好きでしょ!? 私、前世でお兄ちゃんの秘蔵コレクション見たんだからねっ!! 全部、美巨乳ヒロインのえっちな漫画や美巨乳厳選のエロ本だったのも、知ってるんだからっ!!」

「んぶふっ!?」

 

 ユナの暴露が深々とメンタルに突き刺さる。

 な、何たる事……。

 前世の時点で、俺の性癖が妹にバレていたなんて……っ!

 アイにも聞かれたし、今後どんな態度で接していけば……。

 居たたまれない思い一色になりかけた瞬間。

 アイが右手の爪を俺の腹に突き立ててきた。徐々にアイの指がめり込んでいく。

 いた、いたたた!!

 パジャマ越しなのに痛い!

 筋肉突き破って内臓鷲掴(わしづか)みされちゃう!

 

「ぷっはぁ……、シスイ君」

「……は、はい」

「やっぱり、大きなおっぱい好きなの?」

「や、『やっぱり』?……も、黙秘権は?」

「あると思う?」

 

 至近距離で俺の目を(のぞ)き込んでいるアイは、底無しの闇を宿す瞳でもって回答を催促してきた。

 アイの豹変振りに、ユナも「うわぁ……この娘、こっわ……」と(つぶや)いて引いている。

 今の俺の顔を鏡で見たら、さぞ引き()った笑顔を浮かべているに違いない。

 

「い、いつもの、可愛い笑顔のアイちゃんが良いなぁ……」

可笑(おか)しな事言うね、シスイ君。いつも通り可愛いでしょ? 話を()らそうとしても無駄だよ」

「うぐぅ……」

 

 ニコリともせず追及の手を緩めないアイ。

 万事休すか……。

 恥も外聞を捨てて白状しようとした時、ユナが口を挟んできた。

 

「……はっ!?……突然のキス展開で流されかけたけど、勝手にお兄ちゃんと交際するなんて事は、お天道様が許しても私が許さないよ! 星野アイ、お兄ちゃんを返しなさいっ!」

 

 俺の左腕がユナに思いっきり引っ張られる。痛い。

 だが、アイに抱え込まれている俺はびくともしない。

 ユナが忍としての力を取り戻している事を考えると、俺とアイの体がベッドの上から1ミリも動かないのは物理法則を無視しているような……。

 このユナの行動を敵対行動と捉えたのか、アイは、俺からユナへと視線を移す。

 アイの瞳?

 レボリューションしそうな程に真っ黒で、輝きを失ったままですよ。

 ……一先(ひとま)ず、俺の口から真剣交際の旨を伝えよう。俺がやるべき事だ。

 ……ビビりまくっていて頼りないなんて思われたくないんだからねっ!

 

「……いや、あのな? アイと交際しているのは――」

「ユナさん? この部屋(ここ)は私とシスイ君の『愛の巣』なんだよ? 私達は、これからずっと一緒に居るの。『()()()()』さんのお(うち)は、この部屋(ここ)じゃないよ?」

 

 俺の言葉を(さえぎ)って、アイは感情を乗せずに、けれども明らかに拒絶の意思を含ませて言い放った。

 ゴングの鐘が鳴ってしまった。幻聴の(はず)なのに、終末を告げる鐘の音が確かに聞こえたのだ。

 こうなってしまっては男の俺に止める(すべ)は無い。

 現実逃避、現実逃避。

 嗚呼(ああ)、今日は月が綺麗だなぁ……。

 

「と、年上の妹だぁ!? 生意気言いやがったな、このっ!! まな板娘は大人しく言う事を聞きなさいっ!」

()だ。耳が遠くて、はっきり言わないと分からないのかな? 邪魔だからさっさと帰ってね、お・ば・さ・ん?」

「はぁ〰〰!? 私はまだ、ピッチピチの18歳なんだけど!! 乳臭いガキにお兄ちゃんはあげられないんだよっ! 全てが上手くいけば、カンナ義姉(ねえ)とシェアして明るい家族計画を楽しむんだからっ!!」

 

 とんでもない発言をしているユナに諦めは全く見られず、両足を踏ん張って綱引きをするような格好で俺の左腕を引っ張り続けている。

 肩外れそうで痛いよぉ……。俺の体、頑張れ頑張れ!

 

「『ピッチピチ』っておばさん臭い。それに、今は18歳でも私達が20歳になったら27歳でしょ? 立派なおばさんだよねっ。お化粧しなくて大丈夫なの?」

「こ、こんの……っ!」

「あっ、そうだ。おっぱいは好きな人に揉んで貰えば大きくなるらしいから、これから毎日シスイ君に揉んで貰おっと。良いよねっ、シスイ君?」

「……えっ?」

 

 急に話を振られて反応が遅れてしまった。

 アイとユナの視線が俺の方へ向き、俺の一挙手一投足が見られているのを肌で感じ る。

 片や瞳に漆黒の凶星を(はら)み、片や万華鏡写輪眼の赤い瞳が……。

 この状況、どのように答えても穏便に済まないのでは……?

 

「え、絵面的に……俺、犯罪者になるからさ、節子姉さん辺りに頼む方が良いんじゃないかなぁ……」

「大丈夫。だって、シスイ君は私の『カレシ』で『パートナー』なんだから。将来のための予行(よこー)演習(えんしゅー)だよ」

「お兄ちゃん!! ぺたんこ娘の色香に(まど)わされないで! おっぱいなら私のがあるでしょっ!! 私なら(はさ)めるよっ!!」

「黙っててくれないかな? ユナ(ばあ)

「ババア扱いして邪魔すんな!! ()り壁風情(ふぜい)がぁ!!」

 

 俺そっちのけで、再びいがみ合い始めたアイとユナ。

 2人の視線が衝突し、空中で火花を散らしているのを容易に幻視できる。

 それからも、アイとユナは互いにメンチを切りながら、俺の引っ張り合いをし続け……。

 俺は自分の体が四散しない事を祈りつつ、事態の収束を待った。

 

 

 

 

 








2023.12/9:補足関係以外削除しました。

拙作のオリキャラ、ユナちゃんの設定等の話は次話あとがきにてします。
今度こそ、あとがき短く頑張りたい……。
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