迷い人と星の子 作:ポテチバタースキー
今話も2話編成で、1話目の冒頭は3人称? ぽい感じです。又、下ネタ系、オリ設定多めですので、ご注意ください。
では、どうぞ。
第12ー①話:2人の語らい&お料理タイム 11/25更新
2003年9月、とある病院の一室。
1人の少女がテレビに向かって熱狂していた。
「ふぉぉおおお! せんせ、やっぱりアイは世界一のアイドルだよね!!」
「ま、まぁ、一際目を引くのは否定しないな」
少女――天童寺さりなによる布教活動のターゲットとなった研修医・雨宮吾郎は、その熱量に引き込まれそうになりながらも、努めて冷静に
どうもライブ映像らしい。
B小町という地下アイドルグループがヒラヒラしたアイドル衣装を身に
「ありぴゃんときゅんぱんは歌が上手いし、めいめいとみどりんはダンスが良い。けど、やっぱりアイには敵わないね! それとね、アイとみどりん、すっごく仲良いの!」
「へぇ、同じアイドルグループなのにか」
吾郎は思わず
表向きアイドルグループとして仲良くやっているように見えても、裏では必ずしも、
とりわけ、B小町のようなアイ1人が際立っているグループなら尚更だ。
吾郎の心の内を
さりなは隣の吾郎に振り向いて、興奮気味に口を開いた。
「ほんとだよ! だって、曲歌い終わった後にアイがいっつも抱きついたりしてるし、特典のトーク映像でもずっと手握ったりして引っついてるんだから!!」
「パフォーマンスじゃなくて?」
「違う!! せんせも2人の表情を見たら分かるよ!」
気炎を
確かに、アイの表情は、平時のそれ――ファンを魅了する
B小町の中でも長身の銀髪美少女――ミドリも、アイの過剰なボディータッチ――熱烈なハグや
「ねっ?」
「確かに仲良さそうだな。……というより、仲良すぎないか? この2人」
「それは他のファンも『推しが百合百合してる』とかネットで言ってるね。でも、2人が仲良しなの見てて皆幸せなんだよ! ライブ中もね、アイが1番輝けるように、みどりんがアドリブでさりげなく立ち位置や踊りを調整したりしてるの! アイもそれを分かってるんだと思う。以心伝心、相思相愛だよね!」
「アイドルっていうと、目立ちたいと思う子が多いと思ってたけど、こんな子も居るんだな」
アイという一番星を引き立てる、縁の下の力持ち。
有り
そんな役割を進んで引き受けているミドリに対して、吾郎は少し興味を持った。
実際にミドリの動きを注視していて、彼女の動き方は、アイ以外のメンバーのそれとは異なっているように映る。
『アイと、その他の仲間達』にならない数センチ単位の位置取りに、アイの輝きに呑み込まれないレベルの、けれども、アイのパフォーマンスに華を添えるキレッキレなダンス。
素人の吾郎でも、その難しさは
ふと、吾郎は
「見てて思ったんだけど、このミドリって子、本当はもっと出来るんじゃないか? 他の子と比べて呼吸の乱れが直ぐ回復してるし」
「え? あっ、ほんとだ。まだ見始めてそんなに時間が経ってないのに気づくなんて凄いね、せんせ!
「いや、俺じゃなくても別に……」
さりなのキラキラした尊敬の眼差しに面映ゆくなり、つい目を逸らした吾郎。
褒められる事に余り慣れていないのだ。
「みどりんの本気って、どれくらいなんだろうね?」
「さあな。ただ、結構激しいダンスでこれだから、男顔負けかもな」
「いつか見れたら良いなぁ……」
「見れる。絶対にな」
将来への楽しみだけではない、悲観的な感情を含んださりなの
アイと同じ12歳の彼女が、明るい未来を
だが、現実とは無常なもので。
明くる年の1月に、天童寺さりなは天国へと旅立っていった。
※※※※
苺プロダクションに入社してから
中学3年生の俺とアイは、夏休みが明けても、相も変わらず大人に混じって芸能界で働いている。
中学2年生の終わり頃に引っ越しを済ませ、幸燦園近くにあるマンションの一室が今の俺達の家だ。
アイは年齢上限ギリギリまで幸燦園に居る事を望んだが、厄介オタクや厄介記者対策が必要になってきた事もあり、引っ越しに同意して
俺の
それでもかなり渋っていたが。
「シスイ君、今日のお昼ご飯なにー?」
「きつねうどんとオムレツとツナ入りトマトサラダだな。これからラスト一品のオムレツを作るところ」
「おおー。オムレツって結構大変だよねー」
今日は土曜日という事もあり、俺はキッチンにて調理中で、アイはベッドでゴロゴロしている。
1人暮らし用のマンション故に、右側を向けばキッチンから居間兼寝室の様子が丸見えだ。
あっ、今、アイの白いスウェットがめくれ上がって、
「んふっ、シスイ君のえっちぃ」
「い、今のは不可抗力で事故でアクシデントだから」
「でも、シスイ君、おっぱい好きでしょ?
「ごふっ」
ベッドから起き上がったアイは、ニヤニヤと
妹のユナに
ノーブラな自身の胸を俺の胸元に
アマゾネス共めぇ……、余計な入れ知恵をしおってからに……!
「こ、興奮してませんっ! オ、オムレツ、ちゃっちゃか作りますっ!」
アイに背を向け、キッチン脇の冷蔵庫から卵と牛乳、サラダ油、塩、
すると、俺の背後に人の気配が。
しゃがんでいる俺の所にやってきたアイは、俺の背中におぶさってきた。
「……目は口ほどに物を言うって聞くけど、ほんとだよねー。ほらほら、これが好きなんだもんねー?」
「ち、ちょっ……」
「私はいつでもウェルカムだよー?」
俺の首元に腕を回して、ぎゅうぎゅうと胸を押しつけてくる。
背中に当たる柔らかいものの感触が大人の女性になりかけている事を告げているようで、俺の理性が獣欲で満ちた本能に負けそうだ……。
しかし。
「……そればっかりは駄目だ。軽はずみにやるべきじゃない。……アイを傷つける事になるから」
「私がそれでも良いって言っても?」
「ああ、それでも駄目だ。……アイ、愛してるよ」
「んふふふっ。……やっぱりシスイ君は『私の特別』だね。私も愛してるっ」
俺の右頬に自身の左頬を擦りつけ始めたアイ。 もちっとしていて、つるんっとした、たまご肌で、お肌の状態は女性の理想そのもの。
これで特別な事は何もしていないのだから、世の女性が知ったら
「アイ、立ち上がるけど良い?」
「んっ。大丈夫」
「よいしょっと」
アイを背負ったまま立ち上がり、調理台に向き直った。念のため、
「おお〰〰っ!! このエメラルド色の腕って、
「ま、それなりに便利なのは確かだな。俺みたいな永遠の万華鏡写輪眼になってないと、中々大変だけど」
「大変って?」
「全身に激痛が走る上、段々視力が悪くなっていって最後は失明する」
「ええっ!? こわー……」
アイの驚いた声を聞きつつも、調理の手は止めない。
フライパンにサラダ油を引いてからガスコンロを点火し、それと並行して、割った卵をボウルの中で
卵は1人3個。
良質なたんぱく質、大事!
「そういえばさ、永遠の
「近親者の眼を移植するんだ。それで成功するかは運次第なんだけどな。俺の場合は、……その、ユナと眼を交換した」
「……ふぅーん」
アイの機嫌が急降下していくのを肌で感じた。
アイとユナは、初対面の時から犬猿の仲のままだ。
だが、ここ最近は少しだけマシになったように思う。
皮肉や
一時期はお互いを完全に無視して、米ソも真っ青な冷戦状態だった。
苺プロの職員もB小町の他のメンバーも、例外無く押し黙って逃げていた辺り、状況のヤバさが分かるというもの。
「……シスイ君。浮気、駄目だよ」
「絶対にしないよ。ユナの事は妹としてしか見てないし」
だが、妹だ。しかも、エロゲにありがちな義妹ではなく、実妹。
手を出そうなんて気は
「……なんてね♪ シスイ君が浮気するなんて全く思ってないよ。信頼してるっ」
「ありがとう」
アイに感謝の言葉を返して、塩、
胡椒がダマにならず、それでいて卵液が泡立たない加減で、
「ねね、シスイ君」
「ん?」
「昨日、シスイ君が銀髪アイドルな
「……いや、大した事じゃないよ。少し
わざわざ言うような事ではない。
アイに嫉妬して悪質な
クソガキ5号は、遅くとも来週の終わりには『自己都合退職による契約解除』という
「ほんとに?」
「ああ、本当に」
クソガキ5号は若干天パ気味の茶色のロン毛で、B小町のメンバーの1人。
クソガキ5号のアイへ向ける視線がやたら刺々しく見えたため、それとなく監視していたら案の定だった。
皆が帰路につく中1人残ったクソガキ5号は、アイのロッカーへ牛乳や腐った生魚をぶちまけるだけに飽き足らず、「施設育ちの
その一部始終をガラケーで録画した俺は、背後からクソガキ5号の首を
その後、クソガキ5号に対しては、ユナの
要するに、『人の形をした害虫を駆除しました』という、つまらない話に過ぎない。
「……嘘じゃないみたいだけど、何かモヤモヤするなぁ」
「アイが気にする事じゃない。本当に大した事じゃないから」
アイに右頬を引っ張られながらも、卵液を
……ところで昨夜、ユナに
既に
クソガキ共を処理する時に限って、そういう目で見られるんだよなぁ。
以前クソガキ1号と2号を処理した時に、異物だらけのトマトジュースにしようとしたのが尾を引いてるのかねぇ……。
それはともかく。
「……さてさてっ、これからオムレツを焼きますっ!」
「おおーっ!!」
アイはノリ良く掛け声に応じてくれた。可愛い。
いざっ、熱したフライパンに卵液投入!
ジュワァッと卵の焼ける音が聞こえたと同時に、
本来、弱火と中火の間くらいの火の強さでやる方がセーフティーなのだが、今回は強火のままだ。
ささっと作らないと卵が焦げつく上に、サイドテーブルに仮置きしているきつねうどんが伸びてしまう……!
「シスイ君、本気モードだぁ」
「そりゃ、な」
「B小町のダンスレッスンの時より全然真剣だよねー」
「アイのオムレツだからな、これ」
アイと他愛のない話をしながらも万華鏡写輪眼お料理モードで卵液の状態を見切り、尚も
頃合いを見計らってフライパンをコンロの火から離し、卵の生地がフライパンにこびりついていないのを確認。
それから、右手で握っているフライパンの
柄の方を少し持ち上げて傾斜をつけているため、少しずつ半熟な卵の生地がズレていき――。
柄の反対側のヘリに生地が乗った瞬間、ラスト1回強く叩いた。
「おおーっ、上手く引っくり返って綺麗なオムレツの形になってるー!」
「ふぅっ、……失敗しなくて良かった」
「私、失敗してても気にしないよ? シスイ君の料理、
「いや、俺が気にするから。『俺がアイに料理を作る時は、完璧なものを作るべし』――自分ルールというやつさ」
「ふふっ、変なのっ」
アイはクスクスと
後は仕上げで、フライパンを少しだけコンロの火に当てて、オムレツが崩壊しないように整形するだけだ。
「……よしっ、完成!」
「美味しそうっ。あっ、私、シスイ君のにもケチャップで文字書いてみたいんだけど、良い?」
「
アイを床に下ろしてから、平たい取り皿にオムレツを移し、オムレツが乗った皿をアイへ差し出す。
「はい、アイのオムレツな」
「ありがとっ」
「どういた――んむっ!?」
突然、アイの顔がドアップで映る。
この
「んはぁっ……。料理作ってくれたお礼だよっ」
アイから何回もキスされているが、
「ご、ごほん! さて、俺の分も早く作ろう」
先程と同じ手順でオムレツ作りをやったものの、集中力が切れたようで……。
結局、俺のオムレツは所々焦げたものになってしまった。
原作との相違点等については、次話のあとがき『補足』にて書いておきましたので、もしよろしければご参照ください。