迷い人と星の子 作:ポテチバタースキー
今回も2話編成になっています。セクシャルな要素、アンチ・ヘイト要素ありですので、予めご了承ください。
では、どうぞ。
翌日。
俺とアイは、苺プロの事務所を訪れていた。
アイと相談した結果、チンピラ社長の『大事な話』とやらを取り
「それで大事な話……の前に、何で
満面の笑み――
その闖入者――前世の我が妹ユナも堂々と迎え撃っていて、
早い話、会議室入り口でお互いにメンチ切ってます……。
「何を当たり前な事を。私は
「……専属サポーターでも、お呼びじゃないんだよ?……前々から言おうと思ってたんだけどさ、年下で
「あ゙? お兄ちゃんはお兄ちゃんだろうが。お兄ちゃんの
言外に『お前は違うけどな』と告げたユナ。
その言葉にアイの
一方、俺とチンピラ社長はどうしているのかといえば、……会議室の隅で縮こまってますよ。哀れにも震える
「お、おい支翠、あの猛獣共どうにかしてくれ。い、いつもに増して『触るなキケン』じゃねえか」
「わ、分かってるなら言わないで下さいよ、社長。お、俺を人身御供にしてやり過ごそうなんて、そうはいきませんからね。……何で言ってくれなかったんですか。事前に言ってくれたら、どうにか出来たかもしれないのに……」
俺とアイをこの場に呼んだのはチンピラ社長、お前ダルォォオオ!?
せ、責任取れやぁ!!
「し、仕方ねえだろ! 『お兄ちゃんレーダーに反応があったので来ました。異議、反論、抵抗は一切認めません』つって、お前達が来る2分前に勝手に押し入ってきたんだからよ!……あの猛獣共はお前という餌をご所望なんだ。餌になってくれ。肉片の残りカスくらいは弔ってやる。……何で結奈にお兄ちゃん呼びされてるのかは相変わらず分からねえが、まぁ頑張れお兄ちゃん?」
「ふ、ふざけんな、社長! あんた社長でしょ!? B小町のマネジメントでもそうですけど、大人として憎まれ役の1つくらい、きっちりやって下さいよ! ミヤコさーん! この酒盛りチンピラ社長と交代してくださーい!」
小声で押し問答している俺とチンピラ社長を
あ、何か嫌な予感。
「……
「は?……はぁぁあああ!?」
ユナは
「お、お兄ちゃん!? ヤったの!?」
「
「い、いやいやいや、違う! その、アレはヤってない!」
ユナの非難と
波状攻撃を受けて、俺は思わずたじろぐ。
当然、俺はヤってない。俺からのセクシャルなアクションは、キスとハグしかしていない。
他は有事への備えとして、芸能活動開始前夜に
「そんな……っ! シスイ君、昨日の『愛してる』って言葉、嘘だったの……っ? 私、信じてたのに……っ!」
流れ弾にとうとう被弾してしまった。
アイは両手で口元を覆い、
マウントの取り合いで勝ちにいく気らしい。
ともかく、……
「ちょ、愛してるのは本当だし、そう言ったけど――」
「へぇー……言ったんだ、お兄ちゃん。……ギッシギシ音を立てて腰振りながら、『愛してる』とか、『気持ちいいよ』とか、
そう言ってユナは、瞳から光が消えたレ○プ目で、俺を見
「……ユナさんや。
「もぉぉおおお!! 寝取られ歴3年とか、私、どれだけ脳破壊されたら良いの!? でも、お兄ちゃんに頼られたら嬉しくて、きゅんきゅんするし! 結局、私は都合の良い女扱ぃぃいいい!? ああああああ!?」
頭を抱えたまま、天井を
彼女の禁断の
言うまでもなく俺は、ユナの告白をその都度丁重に断ってきた。
だが、人がロボットでは無い以上、積み重ねた想いはそう簡単に消えないし、変わらない。ユナのみならず、俺
心の整理がつくまで待つしかないのだろう。
「……支翠。こういう場合、組織を
「佐藤社長? 死にたいのかな?」
「っ! ひぃっ……!」
アイの迫力に呆気なく押し負けて、チンピラ社長は及び腰だ。
真っ黒な微笑を
「次、シスイ君を
「ま、待て待て! そんな事したらお前も困るだろうが」
「シスイ君を失う可能性より全然マシだね。この際だからハッキリ言うとさ、ミドリちゃん以外のメンバーいらないし」
「アイ、お前それは言っちゃ駄目だろ……」
眉を八の字にして、チンピラ社長は困ったような表情を浮かべている。
彼の立場に立ってみれば、強く叱責できないのは仕方が無い事。
アイや俺、
その状況下で、苺プロにとって最重要で代えのきかないアイが、『叱責されたから辞めまーす』と契約解除権を行使して抜けた場合どうなるか。その後、業績がV字回復する可能性はゼロといっていい。
「そうかな? 事実だけど。……あの人達さ、何というか意欲? とか必死さ? みたいなものの方向性が私達と違うんだよ。生活環境の違いで、しょうがないんだろうけどね」
「分かってると思うが、あいつらだって努力してない訳じゃねえぞ?」
「それは否定しないよ。でもさ、大切な人とか自分の大事なものを本当に護りたかったら、他人に
アイの言わんとするところは理解できるし概ね賛同するが、俺との比較は他のメンバー達に酷だと思う。俺の場合、転生というアドバンテージでどうにかなってるだけだ。
実のところ、体術はダンスに通ずるものがある。それは、基本の各動作を反復練習で覚え、流れる水のように切れ目無く動く事。
俺は、長年に渡る体術の修練で得た経験を、ダンスに持ち込んだ。
だから、ダンスレッスンでの通しの練習なんかは、ミドリちゃんモードで真面目にはやるものの、一連の動作を流す形で問題ない。
「それに、ミドリちゃんだって他の部分では頑張ってるんだよ? 『女の子らしさ』とか、『アイドルらしい魅せ方』とか」
「あぁ〰〰……。確かにあいつも、始めは見た目とのギャップ凄かったもんな。大人しそうな銀髪美少女なのに、俺っ娘で脚をドッカリ開いてたっけか……」
「そうそう。ミドリちゃんの教育、本当に大変だったんだよー。ステージではアイドルしてるミドリちゃんにしたの、私だからね?」
アイの言う通り、他の部分については俺も最大限努力しているのだ。
プロフェッサー・アイから徹底的に指導されて、『ギャップ萌えで通るだろ』みたいな考えは
例えば、「女の子はそんなパンダみたいなお化粧はしないよ。今まで何を見てきたのかな?」とか、「笑顔の時、口角の位置が2ミリ低い」とか、「何でミドリちゃんの時、アイドルの衣装着た途端に照れてるの? 衣装のスカートが恥ずかしいのかな? ブーメランパンツだけ履いて学校に行けば恥ずかしさも克服できるよね」とか……。
俺、頑張ったよ……。
「まぁ、あれだ。皆が皆、お前やミドリみたいに出来る訳じゃねえんだよ。お前達はレアケースだ。分かってやってくれ」
「無理っ」
「はぁ〰〰……」
笑顔で即答したアイに、社長は深い深い嘆息を漏らす。
彼からすると、俺達側に妥協ないし譲歩をして欲しいみたいだが、少なくとも、嫉妬して
「それでさ、『大事な話』って何?
「……ああ、そうだったそうだった。……
「――あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!……ああっ、……ビタミンお兄ちゃんが足りなくなってきた……。お、お兄ちゃんハグハグさせて……撫で撫でお兄ちゃん……」
砂漠で水を求める旅人のように、フラフラとした足取りで俺へ手を伸ばしてくるユナ。
そう思った俺はユナの手を取ろうとしたが、それより先にユナの手を叩き落とした者が居た。
アイだ。冷ややかな目をユナへ向けている。
「それを口実にシスイ君へアプローチしていくの見え見えだよ。私が許すと思ったのかな?」
「……ッチ!
「ふふっ、負け犬の遠吠えだね。……昨日ね、シスイ君は私の事、『最初で最後の最高な彼女』って言ってくれたんだぁ。
「……お兄ちゃん、言ったの?」
ユナは、ぐりんっと首だけ
……ユナには辛いだろうけど、正直に言おう。
恋人と妹との線引きを明確にすべきだ。
「……ああ、言ったよ」
「ぐふぅ……っ!! 666敗目……あ、諦めたら、そこで試合終了……! 何のためにお兄ちゃんの
ユナは足をガクガクと震わせて倒れそうになるも、膝に手をつき耐え忍んでいた。
俺の行動……分析されてるのかぁ……。
赤の他人ならドン引き間違いなしだが、それをユナがやってるとなった途端『
「お前ら、第2ラウンドは勘弁してくれ……。とにかく、席に着け。話が進まん。社長命令だ」
チンピラ社長は会議室のテーブルを指差し、本題に入ろうとする。
けれども、アイとユナは従わず、白けた目をしていた。わざわざ噂話に興じる主婦のような仕草をして。
「ねぇ、
「
「だよねー。ミヤコさん辺りに代替わりして、佐藤社長は酒飲み係の係長になった方が良いんじゃないかな?」
「酒飲んでれば、昇進、昇給して貰える課なら、社長は間違いなく敏腕サラリーマンでしょうね」
社長本人にギリギリ聞こえる声量でコソコソ話しているアイとユナ。
な、何て
チクチク口撃された社長は黙っている訳も無く。
「お、お前ら、本当は仲良いんだろ……っ! そうなんだろ……っ!」
「「
「バッチリハモってるじゃねえか!」
「ハモったから仲が良いって、どうしてそうなるのか意味が分からないなー。佐藤社長、目だけじゃなくて頭も
「不本意ながら同じく。社長、大丈夫ですか? 頭の中のスポンジ、交換時期来たんじゃないですか?」
社長のツッコミに、アイとユナは心底嫌そうに顔を
社長としての威厳皆無。
「ぐぬぅ……っ! い、言わせておけばぁ……!」
チンピラ社長はプルプルと震え、怒りを
確かに社長は、考え方がズレてるし、アイを利用する気満々だし、場当たり的な傾向があるし、コンプラや内部規律もいい加減だし、酒が入ると
……いや、残念な事に妥当だわ。
話の後、基礎鍛練をこなして、残りの時間をアイと2人でのんびり過ごしたいのだ。
「アイ、ユナ。そろそろ席に着こう。社長の『大事な話』とやらを聞いて、俺も用件を済ませたい」
「んっ、シスイ君がそう言うならー」
「お兄ちゃんが言うなら、私もそうするよ」
先程とは打って変わって、2人共、素直に応じてくれた。片側3席のうち、真ん中だけ空席にしてある。俺が真ん中に座るのは確定のようだ。
その様子をサングラス越しにどんより見つめている社長は、ボソリと一言。
「納得いかねえ……」
普段の行いって結構人に見られているものなんだなぁと、改めて思いましたまる。
拙作のオリキャラ、ユナさんは、(『お兄ちゃんを諦める』なんて一言も言って)無いです。(『アイの言動を傍観する』なんて一言も言って)無いです。(そもそも、専属サポーターなんていう役職は)無いです。