迷い人と星の子 作:ポテチバタースキー
今話も分割2話構成です。原作設定から大きく逸脱&2話目の★★★★以降は3人称擬きになっていますので、ご注意ください。
では、どうぞ。
「僕が所属している劇団に、何かご用件でも?」
路地裏の俺達から少し離れた、表通り側に立つ金髪碧眼の少年。
その少年に対し、突如発症した容姿コンプはともかくとして。俺は努めて平静を装い、言葉を返した。
「ええ、これから劇団ララライの金田一様へご
「はい。申し遅れました、僕は劇団ララライ所属のカミキヒカルと申します。以後お見知り置き下さい」
少年――カミキヒカルは、俺に近づき名刺を差し出してきた。年若いなりで、もう名刺持ってるのか。面食らったわ。
「ご丁寧にありがとうございます。私は苺プロダクション所属の
カミキ少年の名刺を受け取ってから、俺も名刺を差し出す。
このカミキ少年、恐らく俺と同世代だろうに、随分と大人びた言葉遣いだ。格好つけて話している様子も無い。
大人の世界で揉まれているが故か?
理由はともあれ、少々感心してしまう。
「ところで、陸路さんの後ろにいらっしゃる、美しいお二方も?」
名刺を受け取りつつ、アイとユナへ視線を移したカミキ少年。その彼の問いに、俺は最低限の情報だけ答える事にした。
出会ったばかりの他人にペラペラ話そうとは思わない。
「ええ、その通りです。私の右後ろにおりますのが、弊社のアイドルグループ、B小町所属のアイ。左後ろにおりますのが、私の先輩であるユナさんです」
「……よろしくお願いします」
「カミキ君、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
アイとユナが妄想の世界から帰ってきていた事にホッとしたのも
ユナもカミキ少年も気づいていないようだが、俺は気づいた。
笑顔を浮かべてはいるが、
「もしよろしければ、僕もご一緒して良いですか? と言っても、
「私は構いませんよ。アイ、ユナさんも、それで良い?」
「私は構わないわ。お……支翠君」
「……私も良いよ」
やはりアイの様子が変だ。
いつもなら、赤の他人とファーストコンタクトを取る時は、アイドル仕様とはいかないまでも
どうしたんだ?
俺がカミキ少年に対して一瞬覚えた不気味な違和感と、何か関係があるのか?
「それでは行きましょうか。あっ、僕はまだ中学3年生なので敬語は要りませんよ」
「それじゃ、お言葉に甘えて。……俺も中3だから、カミキ君も敬語不要で構わないよ。よろしく、カミキ君」
「こちらこそ、陸路君」
お互いに挨拶を済ませ、俺とアイ、ユナ、それからカミキ君を加えた一行は、劇団ララライへと歩を進めた。
歩き始めるや否や、アイが俺の左側を、ユナが俺の右側を陣取ったため、俺の前を歩かざるを得なくなったカミキ君は振り向きながら会話する羽目に。
彼は「両手に花で
※※※※
カミキ君に案内されて、劇団ララライの
カミキ君に「金田一さんを呼んでくるから、少し待ってて」と言われ、俺達は稽古場の入り口で一
「シスイ君。稽古場、広いねー」
「だな。それに思ったより人も多い」
トータルで30、40人程度だろうか。複数のグループに分かれて、演劇の稽古をしているようだ。台本を持っている人もちらほら。
俳優のワークショップが実地系な事は、事前リサーチで知っていた。
だが、劇団ララライのそれは想定していた以上だ。素人の俺から見ても、かなり本格的なもののように映る。熱量が凄い。
正直、舐めてたわ。今日が本格的な参加でなくて助かった。
「おに……支翠君」
「何ですかいのぅ? ユナさんや」
また『お兄ちゃん』と言い掛けたでしょ。
「演劇の稽古と言っても、台本読んでやるだけじゃないでしょ? アクションシーンの稽古もするのかな?」
「どうなんだろうなぁ……。怪我の事を考えると控えそうな気もするし……」
「私、支翠君のアクションシーンの稽古、じっくり観たいなぁっ」
何を想像しているのか、うっとりとした表情で少し
そんなユナへ、アイは冷ややかな目を向ける。
「
「……あ゙? クソアイドル、お前に言われたくないんだけど。ライブ中ベタベタし過ぎなんだよ。ほっぺチューとか、
一転してユナは
ユナの言う通り、ライブ中のアイからのスキンシップは過激そのもの。俺も最初にされた時は完全に不意打ちで、照れより先に度肝を抜かれた。『えっ? それをライブ本番でやっちゃうの?』と。
以降のライブでもアイの振る舞いが変わる事は無く、現在進行形で色々と俺の心臓に悪い。
多分、ユナへの
その証拠に、目の前のアイは自慢気に胸を張っている。
「ふふーん♪ あれはパフォーマンスだしぃ、それに
「ッチ!……私もB小町に入るべきだったか! でも、他人に欲望
舌打ちしたユナは、頭を抱えて
悪い意味で目立ってる!!
俺達の近くで練習していたグループの人達が、ユナの狂乱振りに引いてるじゃないか……!
しかも5、6メートル先に、
「ユ、ユナさん、落ち着こう?」
「無理よ!! 純愛を
「何だ何だ? カミキに呼ばれて来てみれば、面白
俺達に話し掛けてきた黒髪のオッサン。劇団ララライの代表・金田一敏郎だろう。
とにもかくにも、俺は大慌てで頭を下げる。
「お騒がせしてしまい申し訳ございませんっ!」
俺の言葉にユナも我に返ったらしく、俺の隣で慌てて頭を下げた。
「
金田一氏の言葉を聞いて、俺とユナは頭を上げる。
金田一氏の隣では、カミキ君がクスッとイケメンな微笑を漏らしていて、何とも気恥ずかしい。
「あ、ありがとうございます。今回ワークショップに参加する事になりました、B小町・アイと私――
「「よろしくお願いします」」
俺がアイとユナを
「よろしく。……鏑木から聞いたが、支翠、お前はアイのお気に入りで付き人なんだろう? ただ付き従ってるだけじゃないよな? お前、何が特技だ?」
「武芸を少々
本当は武芸というか、NINJAなんだけど。
「ほぉ……。具体的には?」
「主に素手での格闘術ですね。
「あの派手に動き回るやつか……。
「ご期待に沿えるよう頑張ります。……それで金田一さん。もしお邪魔にならなければ、今日のワークショップを見学させていただけないでしょうか? 稽古場の隅で構いませんので」
俺達側は見学前提で来ている。
だが、金田一氏始め、劇団ララライ側が難色を示すなら、表向きは素直に引き下がるつもりだ。表向きはな。
「別に構わん。参加する時のイメージが湧かないのは困るだろうからな」
「ありがとうございます」
俺は再度一礼。
それを見て、これで挨拶は終わりだと言わんばかりに金田一氏は身を
「それじゃあ、俺は戻る。カミキ、お前は今日、そこのアイ達に基本を教えてやれ」
「えっ? 今日は稽古日じゃ?」
「お前なら大丈夫だろ。昨日の時点で、既に出来上がってんだからよ」
「えぇ……そんな無茶な」
困惑しているカミキ君を放ったらかしにして、金田一氏は足早に去っていった。
思わず顔を見合わせる俺とカミキ君。
すると、カミキ君は苦笑いを浮かべて、俺達へ呼び掛けてきた。
「……それでは皆さん、行きましょうか。僕も未熟なんですけどね」
「今日はお世話になります。改めてよろしく、カミキ君」
「こちらこそ、陸路君」
それから俺達は、
そのお陰で、少しだけ頭では理解できたように思う。役を演じる事とは、役になりきる事であり、その役を演じているという演者の意志を観客に悟られない事。歯に衣着せぬ言い方をすれば、役という仮面で観客を
勿論、共通点があるというだけであって、俳優とアイドルでは全然違うけど。
それにしても、……カミキ君は
近い将来、彼は