迷い人と星の子 作:ポテチバタースキー
新年早々ごめんなさい。短め&当初の予定を変更した内容となっています。(理由はあとがきにて。)
それから、セクシャルな描写もちらほら……。
で、では、どうぞっ。
あっという間に4週間経ってしまった。
1週間後――来週の日曜日には、ワークショップ本格参加の1回目が控えている。
事前の連絡によれば、手荷物、準備無しでOKとの事だが、筆記用具とメモ帳くらいは持っていくべきだろう。
さて今、俺とアイが何をしているのかと言えば……。
「もう外真っ暗なのにぃ……勉強やだぁ〰〰……。今日勉強漬けだよぉ……」
そう、居間兼寝室の座卓にて受験勉強中だ。
目の前では、文字に
夕食や入浴
「もう少しだけ、な?」
「うー……」
「ラスト大問1問。その日本史の問題を終えたら、少し休憩して寝よう」
「んーっ……、分かってるよー……」
のそりと体を起こしたアイは、再び問題集へと向き合う。同じく俺も。
俺の方は現代文だ。マジで小説を問題に出すなよ。論理的思考を評価するなら評論文のみで良いだろ。
「ねね、そういえばさ」
「ん?」
「昔からシスイ君って歴史の漫画や本を読んでたけど、受験に備えてだったの?」
「いや、違うぞ? 純粋に趣味だな。ああいうのって、何度読んでも面白いんだ。ロマンがあるし、色々な見方が出来るから」
「うわぁ……優等生だぁ……」
手を止めて、
その彼女へ、俺は首を横に振った。
「いや、そんな事は無い。スポーツ好きや漫画好きと一緒で、歴史好きな人なんて大勢居る。歴史好きだから受験に有利になる訳でも無いし」
「でも、私が今やってる日本史とか、有利になるんじゃないの?」
「いや残念ながら、全くと言って良い程、問題に出ないから。知識が役立つ事は
「ふぅ〰〰ん、いがーい」
そう返事して、アイは本格的に問題を解き始めた。
互いに沈黙。
カリカリとシャーペンの音だけが聞こえる。
勉強が苦手と言っても、ここぞという時のアイの集中力は凄まじい。正直、俺では敵わないと思う。
少しばかりして、対席のアイが、精根尽き果てたような声と共に、座椅子の背
「やっとぉ……終わったぁ……」
「お疲れ様、ちょい待ってな」
「んっ」
ラストの記述の問題を書き上げる。
高校受験レベルなら大した難易度では無い。字を書くのに時間がかかるだけだ。
前々世での教育虐待のお陰というのは皮肉なものだが。
……よし、答え合わせも終わりっと。
「おまたせ、終わったよ」
「おつかれさまー。……シスイ君のとこに座って良い?」
「
座椅子ごと後ろに引いて、アイが座れるスペースを確保する。
座卓を回り近づいてきたアイは、俺の
俺の
気づいた時には、彼女のお腹に両手を回していた。アイに骨抜きにされているな。いや、今更か。
「んふっ。やっぱり、こういうの良いよねー」
「だな」
「何て言うのかな、私が何か失敗しても居場所が
「俺も同じだよ。俺の隣にはアイが居てくれるって、強く感じるんだ。……精神年齢は俺の方が上なのに、情けない限りだけれども」
「んふふふっ、私は嬉しいよ?」
アイは身を
その際、ゴチンと俺の
俺、空気、読む。
「……昔の私は、お母さんがアレだったから、こういう触れ合いをした事、1回も無かったんだよね。いつも1人ぼっちで、心にぽっかり穴が空いてる感じでさ」
「……」
動きを止めて語りだしたアイに、そうだろうな、と思った。
前々世の俺も似たような経験をしたし、アイと出会った日の事は今も鮮明に覚えている。
「でも小学校の入学式の日、シスイ君や節子お姉ちゃんと出会って、それから
「……まだまだ道半ばさ。幸せに限界は無いんだ。アイの事は俺が必ず護るよ」
髪を
それを受けて顔を上げたアイは、
「ふふっ、今のだけじゃ20点で赤点かなぁ」
「前も思ったけど、採点が辛いっ!」
「じゃあ追試してあげますっ。
そう言ってアイは、自身の
唇へキスすると認識した途端、俺の心臓がバクバクと激しく動き始める。
慣れる日は果たして来るのだろうか。
「じゃ、じゃあ……」
「……んっ!」
『早くしろ!』と、せがんできたアイに、
アイの女性的な柔らかい肢体と唇、鼻にかかった甘い吐息。
目を閉じていても感じられるアイの
「ちゅむっ、ちゅっ、あっ……」
けれども、その本能に流される事を良しとしない。キスを繰り返すごとに刺激されるが、懸命に理性で抑え込む。
アイは受け入れてくれるかもしれないが、その後を思えば彼女を傷つける事になるのは明らか。言うまでも無く、それは本意ではない。
「んっ、ちゅっ、ちゅむっ、……んはぁっ」
言葉を発さずとも、お互いに同じタイミングで顔を離した。彼女のほんのり紅潮した顔――とりわけ、その
「えへへへっ」
嬉しさ半分、照れ隠し半分といったところだろうか。アイは、俺の首筋へ顔を
「シスイ君、
「うっ……」
「でもぉ、それはシスイ君の優しさでもあるから、OKにしてあげるっ! 私、今、凄く満たされてるよっ! んふふふふっ」
「ありがとう、アイ」
俺の背中へ腕を回し、押し倒さんばかりに強く抱きついてくるアイ。その彼女に応える形で、俺もアイの背をゆっくりと撫でた。
少ししてアイの顔が、俺の首筋から離れていく。彼女の顔には、親しい人にだけ見せるリラックスした笑みが浮かんでいる。
「アイ」
「んー?」
「俺の胡座の上に座ってるけど、痛くないか?」
「だいじょーぶだよ。むしろ、シスイ君の方は大丈夫? シスイ君の
「何ら問題無いよ。アイは軽いからな」
健康的な食生活をしているし健康上の問題も全く無いから、
「ふふーんっ♪ だよねーっ! 私、小柄だしぃ、それに可愛いし!」
「ああ、アイは世界一綺麗で可愛いよ。何より、その心がな」
「おぉぅ……。あのチキンなシスイ君が、ストレートにこっ恥ずかしい事を……。何か悪い物でも食べた?」
「ぐっ……」
頬をより一層
場の雰囲気に流されて、ポロッと言葉が漏れてしまった。後々顔を押さえて
「でもぉ、えへへっ……嬉しいなぁ。……私を『星野アイ』として見てくれてる人って、シスイ君と節子お姉ちゃん達しか居ないからさー」
「まぁ、……
「ファンの人達も、当たり前だけど『B小町のアイドル・アイ』としてしか見てないからねー。もし私が普通な顔の女の子だったら、見向きもしないんだろうなぁって思うと、気持ちが冷めちゃう」
言葉は悪いけどね、と、アイは付け足した。
アイドルファンの推し活は、全てが全てそうでは無いにしても、異性、同性の理想像を求めての活動という側面が否めない。
それによって俺達が生活できている事を鑑みれば
やはり、……アイドル活動から出来る限り早く卒業すべきだな。
「あ、話は変わるけどさ。シスイ君、もうちょっとしたら誕生日だよね? 何欲しい? もしかしてぇ、……わ・た・し?」
目の前でアイが、こてんと首を傾けている。
……いけない、
「そうだなぁ……。アイと1日のんびり過ごせたら、それで良いかなぁ」
「えっ、スルー!?」
「いや、俺はアイのものだしアイは『俺の1番』だから、強いて言えば、もう手に入ってるのさ」
「何かモヤッとする言い方だなぁ〰〰……」
彼女は頬をプクッと膨らませて、不満を表明している。
その頬に右手を添えて、アイの目元を親指の腹で
「ごめんごめん。……前も言ったけど、そういうのは大人になってからな。さっきも凄くチャーミングだったよ」
「それはとーぜん! 何たって、私は『シスイ君の1番』な星野アイだからねっ! 愛情たっぷりな乙女は最強なんだよ?」
「ははっ、もう本当に……
「わわっ、シスイ君が急にデレたーっ!!」
今度は俺がアイを抱き寄せて、アイのもっちりほっぺへ頬擦り。
こんなに一途に想ってくれている恋人を前にして、冷静では居られない!
ずっと、アイのほっぺたを堪能していたい!!
けれども、……程々に留めておく。あんまりやると痛いだろうから。
そうして俺達は、再び鼻と鼻がくっつきそうな距離で視線を
「ここまでデレるシスイ君も珍しいよねー」
「そりゃあ、……この家にアイしか居ないし、アイを見習って俺も少しは良いよな? って思ってさ」
「ほぅほぅ……。つまりシスイ君が、ニワトリさんからオオカミさんへ進化していくんだね? きゃっ、ウサギな私は、もうちょっとしたら
俺の言葉を聞いて、アイは上目遣いをしながら、
俺もそのノリに
「それはもうね、大人になるまでに溜まりに溜まった愛情が爆発する訳でね? 熱い熱い夜を過ごしちゃう訳ですよ」
「熱い夜っ! んへへへっ、大人の私、どうなっちゃうんだろーっ?」
何を想像しているのか、アイは幸せオーラを
彼女が無防備な表情を見せてくれているという事に、何度目か分からない温かい喜びを覚える。俺が信頼されている証の1つなのだから。
無骨な俺の手を
「……私がね、『明日の朝ごはん、シスイ君と一緒に何作ろうかなぁ?』とか、『今度、節子お姉ちゃん達のとこに帰省するの、いつにしよう?』とか、『大人になっても、シスイ君や私達の子ども達と楽しくて温かい生活をしてるだろうなぁ』とか、こんな風に未来を想像できるようになったのはシスイ君のお陰だよ。これから先も、ずっと、ずぅ〰〰っと、愛してるっ!!」
「ありがとう。……俺もさ、ひたむきなアイに救われたんだ。これからも、ずっと愛し続けるよ。俺唯一の、み゙、未来のお嫁さん」
「むふっ、早めのプロポーズされて凄くきゅんってしたけどぉ、……見事に
「ぐふぅ……っ! き、傷口に塩塗らないでぇ! も、もう1回! もう1回チャンスを下さい!!」
頬を染めつつも
顔から火が出そうだ!
今日の俺、超恥ずかしい!!
いかん、我に返ってはいけないぞ……!!
このイチャイチャムードでは
「えぇ〰〰、どうしよっかなぁーっ」
「ご、後生だからぁ! 噛んで凄く格好悪くなったとか、身悶えしちゃうからぁ!!」
「でも、プロポーズのドキドキ感減っちゃうよね~」
「そ、それは、まぁ確かにそうだけど……! ああっ、俺の馬鹿!! 何で噛むんだぁ!?」
「あはははっ」
思わず天井を
けれども、彼女が屈託無く笑えているならば、それはそれで良いのかもしれない――と、羞恥で
※※※※
それからも、俺達の穏やかな触れ合いは続いた。俺は言わずもがな、アイも目尻を下げて笑っている。今後どれだけ忙しくなっても、こういう時間を
ふと、時刻が気になって掛け時計を
やっべ、寝る準備しないと。
「アイ。そろそろ着替えて、寝る準備をしよう」
「えっ? もうそんな時間?」
一旦首を
「勉強が終わってから、1時間近く経ってたんだぁ。10分くらいの感覚だったよ、私」
「俺もそんな感じで、幸せな一時だったよ」
「えへへっ。じゃあ続きは、眠るまでベッドで、だねっ」
そう言ったものの、アイは、俺の腰に絡めた脚を解かず抱きついたままだ。
ああ、このパターンはアイあるあるな――。
「シスイ君、私をベッドまで運んで欲しいな?」
「パジャマに着替えなくて良いのか?」
「部屋着、着たばっかりで綺麗だし大丈夫だよ。……それともぉー、私の生着替え、目の前で観たいのかなー?」
な、生着替え……。ゴクリと生唾を飲み込んでしまう。
いかんいかん、煩悩退散煩悩退散!!
ただでさえ、アイの色々柔らかい感触が俺の理性をゴリゴリ削っているのにぃ!!
「お、大人を
「体は同い年なんだから、良いよね? シスイ君の
アイはニンマリと笑っている。
俺が動揺すると分かっていてワザと言っているな……。
た、たまには、少しだけ反撃を……。
「そ、そう言うアイはどうなんだ? 脱衣所を交代で使う関係で見れてない俺の着替え、観たくな――?」
「観たいよ!!」
「お、おおぅ……」
アイの強烈な意志を感じさせる食い気味な返事に、ちょっとだけ引いてしまった。
彼女の瞳が
「でも、いざとなったら、布団の中でシスイ君の部屋着を
「やだもうー。……アイちゃん、完全にアマゾネススタイルじゃないですかー」
「ふふーん♪ それは褒め言葉だねっ。幸燦園の先輩達からの教えを、しっかり身につけた証拠なんだからっ!」
その言葉に嘘偽り無く、アイは得意気な表情を浮かべている。
ああっ、突発性アマゾネス症候群!
アイがぁ! アイがぁ!!
「だいじょーぶっ! シスイ君が本当に嫌がる事はしないよ?」
「それは心配してないけど、……あのアマゾネス共めぇ……」
感染源へ思うところがありつつも、アイを抱えて立ち上がる。
その際、コアラみたいな体勢のアイが落ちないよう、左手でお尻を支えておいた。
「やぁん、えっちぃ」
「み、耳元で悩ましい声、出さないでくれぇ……」
「仕方無いよー。シスイ君の手、ゴツゴツしててさ……えっちなんだもん。ふぅーっ」
「ぴゃっ!?」
突然、耳に息を吹き掛けられて、反射的に小さな悲鳴を上げてしまった。
ゾクゾクッと、何とも言えない感覚が背筋を走ったのだ。意志で抑えられるものでは無い。
ともかく、……奇襲はいけないと思うんだけどな!?
「あはははっ! シスイ君、女の子みたいな反応でおもしろーいっ」
「ま、まぁ、俺は大人だし? アイの
「でも、おっぱい好きだよねー。授○プレイ好きとか、割りと変態趣味だし」
「ごふぁっ!!」
部屋の照明スイッチの前まで歩き、照明スイッチへ右手を伸ばした、その瞬間だった。
突如、脳内で生命アラートが鳴り響く。
エマージェンシー、エマージェンシー!!
対メンタル特級ミサイルに被弾!!
メンタルダメージ特大!!
メンタル緊急回復のため、現実逃避開始!!
「ふふっ、シスイ君の
「ごふっ……」
「おーい、シスイくーん?……また固まっちゃったなぁ。もう私にバレてるの知ってるんだから、堂々としてれば良いのに。……よいしょっ、電気を夜モードに切り替えて、シスイ君を運ばないとねー。よーちよちよち、シスイくーん、お布団まで行きましょ〰〰ねー」
そこから暫く、記憶が
うっすら覚えているのは、部屋の電気が常夜灯に切り替わった事と、お姫様抱っこをされた事くらい。
何とかリカバリーを果たした時には、俺は既に布団を被ってベッドで寝かされていた。
「ハッ!?」
「あ、やっと戻ってきた」
左を向けば、アイが横向きになって寝ている。
俺の左腕を胸元に抱くだけでなく、両
ああっ、癒される柔らかさぁ。……ごほん。
「ア、アイが俺を運んでくれたんだよな? 重かっただろ? ありがとう」
「どういたしましてー。何でか分からないけど、全然重くなかったよ? 羽みたいに軽かった」
「俺の体重、60キロ前後あるんだけどなぁ……。アイのその力は何由来なんだろう……本当に分からん」
以前、
詳しく調べたいが、……検証しようが無いんだよなぁ。
1つ確かなのは、アイの意志と合致した時に発現している事。しかし、それは何をするにつけ、基本的に当たり前な事でもある。
「案外、シスイ君の忍術と同じだったりするんじゃないかな?」
「その可能性は……あり得るのか?」
怪力といえば、禁術・
それ以前に、アイを写輪眼で見てもチャクラが見えない。即ち、チャクラを練れていないという事だ。にもかかわらず、物理法則を無視したような怪力……。
うーん、考えれば考える程、謎が深まるばかりだな。
「ねね、シスイ君」
「ん?」
「やっぱり、私にも忍術教えて欲しいなぁ。シスイ君の言う事、ちゃんと聞くからさ」
「う〰〰ん……。ノーリスクなら良いんだけど、それ相応リスクが伴うからなぁ……」
実を言うと、近頃、チャクラの練り方や護身用の有用な忍術を、特殊体質なアイに教えるべきか迷っている。今回のワークショップのように、
だが、リスクもある。術のコントロールに失敗すれば悲惨な事態になり得る。チャクラを練れなくて術の発動それ自体が失敗する場合はともかく、術は発動したもののコントロールできなかった場合、軽い怪我に留まらず、手足の欠損や最悪死亡にまで至りかねないのだ。他にも、赤の他人に見られた時の処理が面倒だという事も。
「シスイ君の居ない所で使わないから、ね?」
「……冗談抜きで、術のコントロールに失敗したらアイが死ぬかもしれないんだぞ? 俺はそれが恐くて仕方無い。もう大切な人を
「だいじょーぶ。私は『星野アイ』だよ? シスイ君を残して死ぬなんて、あり得ないんだから。今までシスイ君との約束を破った事、無いでしょ?」
「それはそうだけどな……」
教えて良いのか否か……。
「今までみたいに、私を信じて?」
「……分かった。空いた時間を使って教えるよ。上手くいくかは分からないけど」
「やたっ! シスイ君、大好きっ!!」
興奮気味なアイは、俺に
そのお陰で、彼女の柔らかい双丘が胸板に押しつけられ、ふにゅんと形を変えている。
……不可抗力だから。不可抗力だからね。味わってないからね。
「
「うんっ、シスイ君の言う事しっかり聞くよっ! お礼に、今日は私がシスイ君を寝かしつけてあげるっ」
そう言うなり、アイは俺の頭を撫で始めた。
いつもは俺がアイの頭を撫でている事もあり、新鮮でいて、何だか奇妙な感覚だ。
「ははっ、何か子どもになったみたいだ。気持ち良いよ、ありがとう。それじゃあ、……おやすみ、アイ」
「ふふっ。おやすみ、シスイ君」
アイの優しい手つきが心地良くて、
2024.1.24.項目整理のため、あとがきを削除しました。