迷い人と星の子   作:ポテチバタースキー

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お気に入り、評価・ご意見始め、皆様ありがとうございます。
お待たせしました。長くなったので2話編成です。(1話目かなり長め。2話目アイちゃん視点で一分後予約投稿済み)
表現、内容ともに、ギリ大丈夫……だと思ってます……。
で、……では、どうぞ。
……アイちゃんが暴走したのであって、私は悪くない。






第17ー③話:アイちゃん的、兵は拙速を尊ぶ&ターニングポイント4(R17.9) 3/9更新

 

 

 

 

 神威(かむい)の時空間から戻り、脱衣所へ移動する俺とアイ。

 脱衣所に入った直後、アイは何かを思い出したように「あっ」と、言葉を漏らした。

 

「私、忘れ物しちゃった」

「ん? 忘れ物?」

 

 お互い、バスタオルも含めた着替え一式を既に持っていて、入浴関係の物も脱衣所か浴室のどちらかに置いてある。

 何を忘れたんだろう?

 

「うん、忘れ物。ちょっと取ってくるね。……シスイ君、待っててよ?」

「あ、ああ」

 

 着替えセットを乾燥機の上に置いた後、アイは顔を寄せて釘を刺してくる。

 俺は言葉に詰まりながらも、ぎこちなく首肯した。

 

「……逃げたりしたらダメだよ? 怒るからね?」

「に、逃げない逃げない。此処(ここ)で待ってるよ」

 俺が何度も首を左右に振ったのを確認して、アイは脱衣所を飛び出した。惚れ惚れする程に、しなやかで力強いダッシュ。華麗な90度ターンを決め、直ぐに俺の視界から消えていく。

 残された俺はといえば、着替えを置いて静かに待つだけ。無心となり、これから起こる事への耐性を少しでも身につけるのだ。最早嘆きたくなる程に張りぼてではあるが、せめてもの大人としての矜持(きょうじ)よ。

 数分程してアイが戻ってきた。その手には、500ミリリットルのスポーツドリンク1本とハンディカメラ。

 スポーツドリンクを持ってきたのは理解できなくもないが……。

 

「おまたせっ」

「おかえり。……それで、何故にカメラを?」

「ん? 撮るからだよ?」

「えっ? 何を?」

 

 俺の疑問に、アイは言葉ではなく大層良い笑顔で(もっ)て答えた。『シスイ君なら直ぐに分かるでしょ?』と言わんばかりに。

 

「まさか……!」

「うんっ。体洗い終わったら、お風呂場では初のホームビデオを撮るよ! 今日は()()()だし、私達の子どものためにも記録として残しておきたいからねっ!」

 

 そう言って、スポーツドリンクとカメラを着替えの横に置いていく。

 

「ホームビデオは良いと思うけど、お風呂場では不味(まず)いでしょ……! カメラが濡れて壊れるかもしれないし、それ以上に色々映り込んでヤバイ代物になるぞ……! 『お見せできませ~ん!』ってなっちゃうぞ……!」

「そこら辺はぁ、……ほら、どうにかなるよっ! あはははっ!」

 

 俺に指摘されるまで気づかなかったらしい。けれどもアイは特に気にした様子も無く、あっけらかんと笑い飛ばした。

 アイの中で決定事項かなぁ……、この感じは。

 完全プライベート用だから、極論アイが良いなら、まぁ良い……のか……?

 そ、それより……。

 

「あ、あのぉ……ところでですね、アイ様に1つお願いしたい事がありましてですね……」

「んー? どうしたの? 急に(かしこ)まって」

「お風呂入る時にタオルを巻いて欲しいなぁと、思っていましてですね……。お願いします……!」

「えぇぇ〰〰っ!? 待ちに待った混浴再開日なんだよ!? タオルなんて無粋だよ、無粋っ!! 裸のお付き合い以外、私は認めないんだからね!!」

「で、でも、俺達はまだ……って、あれ? それって、どういう……?」

 

 息巻いたアイに気圧(けお)されても尚、どうにか許しを得ようとしたが、ふと脳内で疑問が浮かぶ。

 再開日?

 えっ?

 1日だけじゃないの?

 

「これからは昔みたいに、()()一緒にお風呂に入るんだよ? 今までず〰〰っと我慢してたんだぁ。……さっきOKしたんだから、良いよね?……ね?」

 

 途端に、まん丸お目々を病み病みさせ始めたアイ様。前髪から(のぞ)くハイライトの消えた双眸(そうぼう)が、俺を(しば)りつけて逃さない。その拘束力たるや、既にブラックホール級だった。

 いつの間にか正座していた俺は、おそるおそる弁明する。なけなしの勇気を振り(しぼ)ってのお願いだ。

 

「……そ、それだと尚更、脳みそのブレーキがですね、ブッ壊れるかもしれなくてですね、アイ様を傷つけてしまいそうで恐いんですよ……。だから、せめてタオルを――」

「モーマンタイっ! ちょっと前にも言ったでしょ? 『私はいつでもウェルカムだよー』って。つまりね、どうなっても私がハッピーになるって事!……いやぁ、私のしんぼーえんりょ(深謀遠慮)っぷりには我ながら恐れ入るね! 私は天才だったかーっ!」

 

 アイは頑として譲らなかった。明るい調子に戻り、その場でスキップしだしそうな程のご機嫌具合。

 先刻の「アイの望みに最大限応える」という俺自身の発言も相まって、これ以上水を差すような事を言うのは気後れしてしまう。

 けれど、鋼の理性持ちではない精神年齢オッサンな俺が、唯々諾々と受け入れる訳にもいかなくて……。

 そんなお悩み中である俺の前に仁王立ちしたアイ。「こほんっ!」と(せき)払いを1つ挟んで、俺に告げる。

 

「という事で、シスイ君」

 

 他者を睥睨(へいげい)する、超然とした雰囲気を(まと)い――。

 

「その残ってるズボンとパンツ、自分で脱ぐのと私に脱がされるの、どっちが良い?」

「じ、自分で脱ぎますぅ……!!」

 

 ……ごめん、節子姉さん。

 アイと同棲(どうせい)するにあたって『節度を持った年齢相応の交際をする』って約束したのに、俺、失敗しちゃった。

 せめて、これから訪れるであろう生殺しな天国を、懸命に足掻(あが)きたいと思います……。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 野郎の入浴準備は早い。アイの準備が整う前にパパッと洗って湯船へ逃げようと画策したが、上手くいかず……。

 胴体に抱きつかれ、そのまま強制連行されてしまった。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁ!?」

「よいしょっと」

 

 脳みそが(あぶ)られ、視界が白く弾ける。

 ふにふにした肢体と極上のシルクのようなスベスベお肌、そして、齢15にして立派な母性を備えているお(もち)様。

 それらの刺激は、俺の想定を(はる)かに超えていた。

 素肌を(さら)している彼女の破壊力は、近い将来、俺が陥落するのを確信させるものがあったのだ。

 

「んふっ♪ シスイ君、……洗いっこ、しよっか」

「ッ――!?」

 

 俺に抱きついたまま、正面に回るアイ。

 必然、アイのアレやソレによって(こす)られてしまい、ビクンッと体が跳ねた。

 ずっと包まれたい、触っていたい、……()みしだきたい、征服したい――そういう欲求が理性をあっという間に駆逐していく。

 だが俺は両手を上げ、視線を天井へ固定。

 そう、……何とも(はかな)いレジスタンスである。

 

「あ、あああ洗いっこはハードルが高いと言いますか何と言いますか……っ!」

「カップルならやって当たり前なんだよ?」

「お、俺達まだ中3……」

「もう中3だよ? 私なんて後1年したら結婚できる年齢なんだし。……シスイ君はしたく無いの? 洗いっこ」

「滅茶苦茶やりたいですっ!!……あっ」

 

 前頭前野がガバガバになってしまったらしい。

 ()だった本音が駄々漏れだった。

 

「じゃあ、良いよねっ。シスイ君のここも……ふふふっ」

「ちょ……っ!」

「あはっ……♪ そうだっ! 今汚れちゃっても洗えばいいし……。んっ……はぁっ……気持ちいい?」

 

 何を考えついたのか、アイは喜悦に満ちた笑いを(こぼ)し、自身の体を擦りつけ始めた。密着したまま、(あお)るようにねちっこく。

 

「ぐ……っ! これ、洗いっこじゃないような……っ」

「今この時しか出来ない、洗いっこの準備だよっ……。はぁんっ……今ビクッて……」

「ぐぅ……っ!」

 

 砕けそうな程に食いしばった歯から、煩悶に満ちた吐息が漏れる。

 アイの双丘が、お腹が、アイの内腿(うちもも)が、俺を飽和攻撃しているのだ。

 現在このように耐えているだけでも大したものだと言えるだろう。

 ……だが、このままではいけない。マジでいけない。

 数分先か数十分先か。間違いなく事が起こる。

 その証拠に、『アイから誘ってるんだ。このままヤッても良いんじゃないか? わざわざ脚を(から)めてスリスリしているし、超絶簡単なホールインワンだろ?』なんていう無責任極まりない考えががが……っ!

 

「ア、 アアアアイ! 本当にス、ストップ――っんむ!?」

「んちゅ……んふぅ……じゅるっ……」

「ん゙ん゙ん゙ん゙ぅ゙!?」

 

 後頭部に両手を回され、アイからの(むさぼ)るようなキス。

 眼下に肌色一色な彼女が見えて、俺は慌てて目を閉じた。直後、咄嗟(とっさ)に舌先でチョンチョンと応戦。

 何かで気を逸らさないと僅かな時間も()ちそうにない……っ!

 ……それからもアイのターンは続く。どれくらい経ったのか分からないが、彼女の肩を何度タップしても(いま)だに止まる気配が無い。

 (むし)ろ時間経過に比例して激しさを増していった。

 

「んむぅ……ぢゅる……ぢゅぞぞっ……」

「ん゙ん゙ん゙ん゙っ!!」

 

 まともに呼吸が出来ない。死ぬ。

 目を(つぶ)っているが故なのか、それとも酸欠故なのか。感覚器からのフィードバックがいつもより鋭敏で――。

 もう何もかもが暴発寸前だ。理性の残り(かす)も粉砕されてしまった。

 思考が溶け、支離滅裂に――。

 ああ、もう――。

 

「ッ――――!!」

 

 過去経験した事の無い解放感が、俺の全てを塗り潰した。

 脈動するそれは彼女の体を盛大に(けが)し、湿り気を帯びた柔肉へ卑猥(ひわい)な接触を繰り返している。

 ああ、何て言う事だ……。

 やっちまった……。

 全能感にも似た感覚と罪悪感が、じんわりと心の内で(にじ)んでいく。

 

「んふふふっ♪ ちゅぱっ……んふぅ……」

 

 独特な臭いが漂う中、アイは俺の口内を蹂躙(じゅうりん)し続ける。汚してしまったのにもかかわらず、愛でるような手つきで俺の(ほお)を撫でながら。

 膝から力が抜け意識が薄れていく俺とは対照的に、彼女は尚も元気溌剌(はつらつ)だった。

 1人ゲーゲンプレスだった。

 も、もう……限界……。

 

「んー? ぷはぁっ」

 

 俺が力無く寄り掛かってきた事を疑問に思ったのだろう。アイがキスを止めてくれた。

 だが……。

 

「ご、ごめんね! 少し燃えちゃってさ! だいじょーぶ?」

「……や、やりすぎ」

 

 一言返すのがやっとの俺。

 酸欠から解放されたかと思えば、今度は強烈な虚脱感に押し負けて彼女の首元へ顔からダイブしてしまった。アイの少し汗ばんだ肌が温かくて、自然と落ちついていくような……。

 

「少し休む?」

「……ああ、ごめん」

 

 脳が強制終了する程、活力を失ったらしい。

 疲れた。(だる)い。眠い。

 風呂済ませて綺麗にしないといけないけど、……もういいや。

 少し寝よう。アイなら何とかしてくれるさ……。

 俺はアイに抱き止められたまま、その場で意識を手放す事にした。

 頭を撫でてくれている彼女の、(いつく)しむような手つきが安らかな眠りへ(いざな)ってくれる。

 地下への階段を一段一段下りていくように、意識が現実から離れていく。

眠りに落ちる、その直前。

 

「ふふっ……♪ シスイ君には悪いけど、これからは私のペースでやっていくね?」

 

 何て言ったかは分からないけど、酷く蠱惑(こわく)的な彼女の声を聞いた気がした。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 緩やかに意識が浮上していく。

 真っ先に感じたのは、固い床と肌を打つシャワーのお湯、後頭部を支える人肌の枕。

 俺は……。そうだ、ぶっちぎりで過去ワーストの醜態を(さら)したんだった……。

 長らく閉じていた目をゆっくり開いていく。

 

「あっ! 目、覚ました……って、何で直ぐ目を閉じちゃうのかなー?」

「そ、そりゃそうでしょ! 膝枕されてると、下からアイのむ、胸が丸見えなんだからさ!」

「好きに見て良いのにぃ。触っても良いのにぃ。チュッチュッしても良いのにぃ」

「……い、いやいやいや、そういう訳には……って、ずっと膝枕状態?」

 

 ()きながらも急いで横転。

 アイの(ひざ)から降りて、体を起こす。

 ()()()()()()()()()()()()のは気がかりだが、それよりもアイの体調の方が大事だ。彼女の体が冷えてしまうではないか。

 

「違うよー。ついさっきから。床や体に付いたアレの後始末してから、シスイ君の頭と背中以外を洗ってたんだぁ」

「……えっ?」

 

 安堵したのも(つか)の間、後半部分の発言内容に耳を疑った。

 

「だからね、シスイ君の頭と背中以外を洗ったんだよー」

「……本当に?」

「うんっ、本当に」

「ぐふっ……」

 

 追加ダメージも中々大きく、四つん這いになる俺。

 アレの後始末は、まぁ予想していたさ……。

 けど、そこまで手取り足取りお世話されたとは……っ。

 くそ、全く気づかなかった……っ。

 もう……お婿(むこ)に行けない……っ。

 ……ああ、そうだ。お礼を言わないと。

 

「アイ、……その、ありがとう。大変だったよな」

「ぜんぜーんっ! 赤ちゃんのお世話みたいなものだったから! 色々()()もあったし、気にしないで?」

「……そ、そっか」

 

 赤ちゃん扱いかぁ……。

 それと「収穫」の内容は何……? 

 ちょっと恐くて()けないな……。

 

「とにかくさ、洗いっこだよっ」

「その、……ソフトな感じでお願いしますぅ……」

「ん〰〰……さっきいっぱい出したから、今更じゃない?」

「そ、それはそうなんだけどもぉ……」

「……仕方無いなぁ~。今回だけだからね?」

「あ、ありがとうございます……! ありがとうございます……!」

 

 渋々譲歩してくれたアイに、コメツキバッタの(ごと)くペコペコ頭を下げる。

 アイがやろうと思えば、実力による現状変更は容易だからな。神威で逃亡したらアイとの関係性が壊れる事になるだろうし……。

 要するに、他に有用な手段が無いのだ。

 

「それじゃ、シスイ君からねっ! 椅子に座って?」

「あ、ああ……」

 

 鏡に映るアイを見ないようにしつつ、言われた通りバスチェアに座る。

 

「ふんふんふーん♪ まずは頭からいくよーっ!」

 

 彼女の掛け声と同時に、頭にシャワーを掛けられた。

 (ぬる)いシャワーのお湯が、オーバーヒートした脳みそによく効く。

 

「シスイ君って、いつもどう洗ってる?」

「適当にパパッと。アイにお任せするよ」

「らじゃーっ」

 

 アイはシャンプーを(てのひら)で泡立てて、頭皮を()(ほぐ)すように洗ってくれている。

 うーむ、エクセレント。気持ち良いわぁ。

 

「流すよー」

 

 少しして再びシャワータイム。泡がお湯と共に流れていった。

 続いてリンス。

 やはりと言うべきか、昔とは違って今ではアイの方が手慣れていて丁寧だった。

 ……俺がアイの髪を手入れして良いのかなぁ。

 止めた方が良いんじゃ……?

 そんな俺の内心など露知らず、アイはテキパキと次へ進んでいく。

 

「次は、背中洗いまーすっ」

「お願いしまーす」

 

 ボディソープの泡を乗せた左右の掌で、俺の背中をスリスリしてくれている。

 アイの指が味わうように背中全体を這っていて、気持ち良いような(くすぐ)ったいような。

 

「最後にぃー、……サービスタイムでーすっ」

「ま、まっぁぁああああ!?」

「んっしょ、んっしょ……これ、思ってたよりやりづらいなぁ」

 

 俺に抵抗する(すき)を与えず抱きついて、アイは自身の胸を俺の背中へ擦りつけ始めた。

 先程とは違い泡が潤滑油になっているため、にゅるにゅる滑っている。

 けれども、背中でぬちょぬちょ弾むアイの双丘とその先端は、しっかりと自己主張していて――ッ!

 

「どう?……って、()くまでもないかな? むふふっ、相変わらず元気だねー?」

「み、見ないでぇ!! ああああ!!」

 

 反射的に顔を覆いシャウトした。

 果たして、この状況で無反応の男は存在するのだろうか。普通の男なら絶対に反応する。絶対に。

 

「あっ……んっ……」

「も、もう大丈夫!! 交代!! 交代を!!」

「もう少しだけ……んぁっ……わわっ!」

 

 2度目の醜態は避けたい。

 アイの拘束が緩んだタイミングで立ち上がり、シャワーで泡をさっさと流す。ついでに顔も手早く洗った。

 一体いつから泡風呂店になったんだ……。

 

「いじわるっ」

「意地悪じゃあありませんっ!……んで、交代するにあたって……、その、胸とかは自分でやって欲しいんだけど……」

 

 アイが座れるよう隅へ移動しつつ、背中越しにアイの反応を(うかが)った。

 

「ん〰〰……シスイ君次第かなぁ」

「うぐぐぐ……」

「シスイ君、頑張れ頑張れ! シスイ君の甲斐性を見せる時だよっ!」

 

 そう言いながら、アイはバスチェアに座る。

 (あわ)せて俺も彼女の後ろへ移動。

 

「シスイ君、どぞー」

「それじゃあ、頭から」

 

 彼女がやってくれたように俺もやっていく。

 ただ、心持ちゆっくりと、それでいて髪を傷つけないよう注意を払うのを忘れない。それと、うなじ辺りは僅かに力を込めて。案外洗うのが不十分だったりするからな。

 

「んふふ、気持ちいいよ?」

「お気に召したようで何よりでございます」

「もっとやるがよいー」

(おお)せのままに、お姫様」

 

 鏡に映る彼女の顔をチラッと確認。

 ふにゃふにゃした緩んだ表情をしていた。

 見ているこっちもほっこりする。

 先刻の暴走は一過性だったのだろうな。きっと、1度きりの大噴火だったのだ。そうに違いない。

 それなりに長い時間洗髪したため、アイに声を掛ける。

 

「そろそろ流すぞー」

「んーっ」

 

 シャワーを近くから当てて泡を落としていく。

 彼女の長い髪が蛸足(たこあし)配線にならないよう気を付けないと。

 その後、トリートメントを(くし)()かすようにして馴染ませ、髪は一旦放置。脱衣所からタオルを取ってきて、タオルターバンにしておいた。

 

「ええっと、……次は」

「体だよ?」

「……あ、ああ」

「えーっとね、下は自分でやるからいいや。シスイ君、困ってお風呂場から逃げるかもしれないし」

 

 現在進行形で困ってるんですけど……。

 

「というわけで、上よろしくー」

「……む、胸も?」

「うんっ!」

 

 そんな天真爛漫(らんまん)に「うんっ!」って言われても……!

 

「ほらほら、やってー? シスイ君の大好物だよー?」

 

 自分の胸を下から押し上げて、ぷるんぷるん揺らしているアイ。

 鏡越しとはいえ、思わず目を奪われてしまう……!

 たゆんたゆんではなく、ぷるんぷるん。美しいフォルムでハリがあるが故の揺れ方だった。

 世界の真理がそこにあったのだ……!!

 

「ふーんっ?」

 

 ……直ぐさま我に返り、目を逸らす。

 『素直じゃないなぁ』と言いたげな、アイの生温かい視線に気づいたから。

 

「あれ? 背中からやるの?」

「……ああ。……一応確認だけど、スポンジは不味(まず)いよな?」

「うん、肌が傷つくかもしれないからね」

 

 ともかく、第一関門の背中を泡(まみ)れの掌でスリスリしていく。

 鬼門のおっぱいは最後に回す事にした。

 天文学的確率でも、もしかしたらアイが翻意してくれるかもしれないし……っ!

 

「ふぁっ……流石(さすが)だね、シスイ君っ!」

「……そ、そうか?」

「うんっ、自分でやるのと全然違って……ハマっちゃうよ、これ!」

 

 タコだらけの手が良いらしい。

 彼女の背中は、ふにふに柔らかいけれども、その下にはしっかり筋肉もあって。当然傷や出来物も無い。日頃の努力の賜物と言えるだろう。

 ……そうだ、一通り背中をスリスリしたしイタズラしてみるか。

 少し仕返しするくらいなら許される(はず)

 触れるか触れないかの加減で人差し指を立て、つーっと背骨のラインをなぞってみた。

 

「ひゃわっ!」

「ふははははっ、俺を(いじ)り倒した罰よ!」

「……子どもっぽーい。やっぱりお姉ちゃんの私が()()()しないとダメなんだねっ」

「男はいつまでもガキのままさ。お世話は、まぁ……程々に。……流すぞー」

「んーっ」

 

 流して背中は完了っと。

 それから、俺にとって刺激の低い首周りや腕を洗い終え、残すは脇周りとお腹、……おっぱいとなった。

 

「お、お腹と脇周り、いきまーす……」

「んふっ、どーぞ?」

 

 新たに泡を盛った両手を、彼女の後ろからお腹に回す。 手探りでも腹部のどこら辺かは大体分かる。鳩尾(みぞおち)から下へ向け、丁寧にスリスリ開始。

 

「んっ、何かえっちだね」

「……えっちなのは果たしてどっちかなぁ」

 

 あそこまでやるとは思いもしなかったわ。

 

「仕方無いよー。やりたかったからさー」

「そっかー、仕方無いかー」

「うんうん、仕方無い仕方無い」

「……」

「……ひゃんっ」

 

 おへそをソフトタッチでお掃除。ホジホジはしない。

 ヘソは皮膚組織が薄いから、ちょっとした事で傷つく。その傷から感染症ルートだ。

 これ、お仕置きではないぞ。ただ綺麗に洗っただけだから。

 ……しっかし、お腹の触り心地良いなぁ。

 背中や腕もそうだったが、この程良い脂肪と筋肉のバランスが絶妙でさ。ずっとお触りしていたくなる。

 アイの神秘だぁ……。

 ……いけないいけない。

 

「……混浴は……まぁ、ともかく。次からは、その、もう少し加減してな?」

「善処しまーす」

「……本当に反省しているのか~? この~っ!」

「あははははっ!! 脇くすぐるのダメぇっ!!」

 

 何故かアイがバタついて(もだ)えているけれども、俺は先程同様、オーダー通りに脇を洗っているに過ぎない。

 可笑(おか)しな事は何もしていないのだ。

 偶々(たまたま)俺の指が、百足(むかで)の脚のように(せわ)しなく動いているだけで。

 

「あはははははっ!! や、止めてぇ!! シ、シスイ君のドS~!!」

「誰がドSか。ノーマルだわ……多分」

 

 (くすぐ)るのを程々に(とど)めて、お

 腹と脇腹の洗い残しを洗っていく。お腹がピクピクしているのが掌越しに伝わって、少し……いや結構えっちだった。

 

「カ、カノジョに、こんなイジメするなんてぇ……っ! 私じゃなかったらお怒りモードだよ?」

「イジメじゃない、洗ってるだけな。こういうのはアイ以外にやろうと思わないよ」

「ふぅーん、……少しだけ許してあげてもいいかな?」

「寛大な彼女様でありがたや、ありがたや」

 

 両手を擦り合わせて拝んでおいた。実際、ユナとの関係を考えれば、余りにも寛大だ。

 もし俺が彼女と同じ状況下にあった場合、そこまでの寛大さを持てないに違いない。

 

「それじゃあ、……最後よろしく、ね?」

「……かなり頑張ったから、免除して欲しいなぁ」

「ダメ。……もう一踏ん張り頑張って?」

「……うぐぅ」

「ただの洗いっこだからさ、なーんにも問題無いよ? 私がOKしてるんだから、ね?」

 

 アイは此方(こちら)へウインクを飛ばした後、鏡の方に向き直った。

 同意があるから……良いのか?

 いや、そんな事は……。

 で、でもぉ……っ!

 

「シスイ君、お・ね・が・い?」

「うぅ〰〰……っ! わ、分かった、やります!!」

 

 『おっぱいは所詮脂肪の(かたまり)』と自己暗示を掛けて乗り切るっ!

 

「ふふふっ♪」

 

 アイさんよ、余裕綽々(しゃくしゃく)なところ悪いがね、今の俺は一味違うんだぜ?

 大方、動揺しまくるだろうと予想しているのだろうけど、その予想、引っ繰り返してやろうじゃないか!

 両手に泡、準備OK!!

 いざ……っ!!

 

 

 

「あああぁぁぁっ!?」

「ええっ?」

 

 俺は思わず両手を抱えて(うずくま)ってしまった。

 手では初の生乳。(まさ)に別次元だった。

 沈みつつ跳ねるとでも言えばいいだろうか。

 下から少し触れただけでも至高の柔らかさで、ぷるるんっと。

 圧倒的戦力差。勝ち目無し。自己暗示など微粒子レベルで消し飛ばされた。

 かつて北伐をやろうとした諸葛孔明も、こんな気持ちだったのかもしれない。

 

「シスイ君?」

「あ、あああああのね? 余裕だから! 余裕余裕!!」

「顔真っ赤で言われてもねぇ?」

「し、しょうがないでしょうが!! 男の子は純情なんだよぉ!!」

 

 振り返った小悪魔アイちゃんがニタニタ笑っていた。

 こ、このぉ……。

 

「ほら、続きだよ?」

「あっ、ちょっ……ぁぁああああ!?」

「シスイ君なら大丈夫だと思うけど、おっぱいに触る時は優しく、ね?」

 

 バスチェアをどけて俺の目の前に座ったアイは、俺の両手を(つか)み自身の胸へ――。

 

「あばばばば!?」

「おっぱいの下と谷間は汗を掻きやすいからさ、丁寧に……んっ」

「お、おぱぱぱぱ!?」

 

 下からぷるんぷるんしたかと思えば、谷間をスリスリ。付け根も念入りに。

 されるがままの俺は奇声を上げる事以外、何も出来ない。

 

「残りはぁ、……シスイ君がやって?」

 

 再びバスチェアに座り、俺に背を向けたアイ。

 俺は……俺はぁ……どうしたら……。

 

「シスイ君、ここまできて逃げたりしないよねー? おっぱいすら洗えないなんて言ってたら、結婚後レスになっちゃうの確定? それが原因で離婚? 私、悲しい未来は嫌だなぁ……不安だなぁ……」

「そ、そんな事は無い!」

「じゃあ今、私を安心させて?」

「……うぎぎぎ……俺が暴走したら殴り飛ばして止めてな」

 

 手玉に取られてるような感じは無くは無いが、アイが不安視する未来を否定せねば……!

 俺は掌に泡を装填(そうてん)し、今まで通り彼女の後ろから両手を回す。掌よりワンサイズ大きい膨らみに、下から手を添えた。

 

「んっ……、そこからどうするのかなー?」

 

 お(わん)型の美しいそれの側面部分から。

 掌でスリスリではなく、さわさわ。フェザータッチレベルで。

 スリスリ擦ると痛いかもしれないし。それに、俺の削りに削られた精神的にも……ね。

 それでも、泡のぬるぬると柔らかい弾力が合わさって無敵すぎる……。

 鼻血出そう……。

 

「あっ……んぅっ……ふぅっ……」

 

 度々指から逃れるように、ぷるるんと跳ねる。

 アイがピクピクしてるけど、ま、まぁ、後ちょっとだ。上側をやれば終わりになる筈……。

 

「んはぁっ……シスイくぅん……まだぁ残ってるよ?」

「……いや、終わり――」

「先っぽ、ね?」

 

 俺の両手を逃がさないためだろう、俺の両腕を脇で挟み込んで固定してしまった。

 引き抜けない。

 横乳と脇のダブルパンチで不整脈を起こしそうだ……。

 

「ほらぁ、早くぅ」

 

 鏡に映るアイの顔は、どこか熱に浮かされたような表情をしていて。今まで見た事が無い程に、大人の(つや)があった。

 色々手遅れではあるものの決めかねていると、アイが俺の指を誘導していき――。

 

「少しで良いからぁ」

「……あっ!?」

「そのまま指で……んんぅ……んぁっ……ふぁっ……」

 

 熱の(こも)った吐息が、余りにも淫靡(いんび)

 彼女の色香が風呂場を一気に塗り替えていく。

 ……指の腹に当たる突起物は気のせいだ。

 硬くなり始めているのも。

 少し粘着質な水音が聞こえ始めたのも。

 全て気のせい。

 そうだと言ったらそうなのだ。

 今まで清い交際をしてきたのに、この一時でその努力が粉砕されるなど、あってはならな――!!

 

 結局、洗いっこが終わったのは(しばら)くしてからであった。

 スッキリした顔のアイとゲッソリした顔の俺が、仲良く鏡に映っていた。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

「はぁ〰〰っ、お風呂気持ちいいねー」

「だなぁ」

 

 洗いっこを終えた俺は、アイの望み通り、彼女を抱き(かか)えた状態で湯船につかっている。

 目の前には、お団子ヘアにシフトしたアイのうなじ。

 色っぽいとは思うけど、それ止まりだ。

 天地神明に誓ってヤって()いないぞ。

 ただ、情けない事に流されて、その……すっからかんにされてしまって……。

 推して知るべしというやつだ……。

 

「飲み物飲ませて~?」

「コップ無いんだけど」

「口移しだよ?」

「……反対側のカメラ、まだ起動してないよな?」

「うんうん、してないよっ」

 

 逆さになった風呂桶に乗っているハンディカメラが、俺達の方に向いていた。

 まぁ、……洗いっこのアレコレに比べたら映っていても問題無いか。

 手元のスポーツドリンクを開けて、1度口に含む。それから、おっかなびっくり後ろから覆い被さるようにキスして、少しずつ飲ませていった。

 こくこくっと、嚥下(えんか)するアイ。

 少々無理な姿勢なため()せないか懸念したが、大丈夫そうだ。

 

「次は私がしてあげるね?」

「あ、ああ」

 

 アイは俺の腕の中で反転して向き合い、俺を(また)いで膝立ちになった。

 ふるふるしている2つの果実に目線が惹き寄せられたのも(つか)の間、すかさずアイからのキス。

 アイから流し込まれるスポーツドリンクが、気怠い体によく染みる。

 

美味(おい)しい?」

「美味しいよ」

「じゃあ、もう1回してあげる」

「あ、ありがと――んむっ」

 

 ペットボトルが空になるまで、お互いに繰り返した。

 口から垂れたら舌で全部()め取って。

 ……率直に、脳みそが色ボケしている自覚はある。正気に戻ったら自責の嵐だろうけど、アイが嬉しそうだからさ。まぁいいや。

 

「ふぅ〰〰っ、極楽極楽。シスイ君、もうちょっとギュッてして?」

「はいよ」

 

 再び俺の懐に収まったアイのお腹を、少しだけ強く抱き寄せる。

 アイは(ほお)を緩めて、俺の肩に頭を預けた。

 

「ずっとこうしていたぁい」

「気持ちはよく分かるよ。温かいし」

「ねー。……私の抱き心地どう?」

「最高。ずっと抱き締めていたいくらい」

「んふふ、ありがと。私もね、さいこーだよ? 何て言うのかな、優しさに包まれてるって感じ?」

「ありがとう」

 

 お礼に、彼女のおでこへキスを落とす。

 

「えへへっ。……ところでさー、高校どこにする?」

「ん〰〰……生活環境だけ考えれば、芸能活動に配慮のある高校か通信制高校のどちらかが良さそうかなと思うけど」

「だよねー。どっちにしようかなぁ」

 

 アイは(あご)に手を当てて悩みだした。

 彼女にとって初の受験となる。

 分からない事だらけで不安もあるだろう。

 前々世で経験した身として、適宜サポートしないと。

 

「正直さ、学校の面倒な人間関係とか嫌なんだよねー。スクールカーストみたいなやつとかさ。そういうのを考えると、通信制高校の方が良いのかなぁ」

 

 中学でも嫉妬(しっと)()き出しな馬鹿共が何人か居たし、嫌気が差すのも無理はない。

 それでもB小町よかマシなんだけどもな。

 

「あっ、でも、通信制高校だと制服デート出来なくなるかも?」

変化(へんげ)の術を使えば出来るぞ」

「それはそうなんだけど、やるからには本物が良いなぁ。他の人にバレないように、こっそりとさ。シスイ君はJKの私、見たくない?」

「……み、見たいです」

「よしよし、少しは素直になったねー」

 

 アイは少し()け反るような格好をして、俺の頬にチュッと口づけした。

 

「洗いっこの効果は大きかったかなー?」

「……ま、まぁ、まだ時間はあるからさ。高校の事は仕事と勉強の合間にじっくり考えれば良い」

「話逸らしたー」

「うぐぅ……」

 

 そりゃ逸らしたくもなる。精神面で大人な(はず)の俺が、雰囲気に身を委ねてしまったのだからな……。何たる失態……!

 

「そういえば、明日からまた学校だよねー……。面倒くさいなー……」

「影分身の俺に行かせて、家でのんびりするか?」

「シスイ君だけに負担を掛けるのは嫌だよ? 苺プロと契約する前もクタクタになってたし……」

「あの時は張り込み調査だったからな。今は肉体もそれなりに成長しているし、学校に行かせるだけなら余裕はあるさ」

 

 幸い、明日の時間割は座学だけだ。負担は少ない。

 けれどもアイは、心配の色を隠さずにいた。

 苺プロの調査は自分の意志でやった事だ。気にしなくて良いのに。

 

「本当に?」

「本当に。たまには羽を伸ばそう」

「それじゃあ、……シスイ君に甘えちゃおうかな?」

「お任せあれ」

「ありがとっ!」

 

 恐らく、俺に抱きつこうとしたのだろう。

 アイが身を(よじ)った、次の瞬間――。

 

「お゙ぅ……!!」

「あっ、……ご、ごめんね?」

 

 事故発生。

 彼女の膝が思いっきり急所に入ってしまった。

 途端に冷や汗ダラダラ。無意識のうちに股間を押さえ、背筋が丸くなっていく。

 目の前で彼女の双丘がぷるんぷるんしているが、意識を向ける余地など無い。

 

「あ、あわわっ、どうしよ!? シスイ君、しっかりっ!! きゅ、救急車呼ぶ!?」

「い、いや、……し、(しばら)く時間を……」

「で、でもぉ!!」

「だ、大丈夫……休めば……治るから……」

 

 実に良い膝だった。俺が無防備だったとはいえ、ここまでジンジンする大ダメージを与えるとは……。

 力が全く入らないぞ……。視界が暗くなってきた……。貧血……?

 

「そ、そのまま白く燃え尽きちゃいそうだよ!?」

「あいるびー……ばっく……ははっ」

「シスイくぅぅうううんん!!」

 

 渾身の笑顔を向けると、アイは珍しく慌てふためいた様子。

 肩を(つか)んでガックンガックン揺すったり、「治療」と称して俺の頭を谷間に掻き抱いたり、どさくさに紛れてお触りしようとしたり。

 俺がリカバリーするまでの間、テンパりつつも何だかんだやりたいようにやっていた。

 俺がリカバリーしてからは、未来の俺達に向けてビデオメッセージ撮影。

 メッセージ自体は「皆、健康に過ごしてね」とか、「アイと子ども達を大事にしろよ、未来の俺」とか、普通な内容だったのだが、……懐のアイからまさかの手ブラを要求された。

 俺が挙動不審になったのは言うまでもない。

 風呂上がり後は、……体の拭き合いなる第2ラウンドが勃発(ぼっぱつ)して……。

 目を(つぶ)っていても、バスタオル越しでも刺激が強すぎた。

 アイが不規則にクネクネするし、口元を押さえて「んっ……ふぅっ……んふぁっ」ってエロチックな声漏らすし……。

 そっとタオルで拭いただけだぞ。進んで何かをやった訳では無い……無いのだが……。

 ともかく明日以降の俺、まともな仕事に就くまで何とか最後の一線を守ってくれ。頼む。マジで頼む!!

 

 

 

 







最後の方、間に合わなかったんで駆け足になりました……orz
作中の婚姻可能年齢について、民法改正前のため男18女16となります。

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