迷い人と星の子 作:ポテチバタースキー
今話はアイの誕生日のオリ設定と、セクシャルな描写、表現がちょいちょいありますので、ご注意ください。
アイが
アイは幸燦園に少しずつ馴染み、年相応の表情を見せ始めている。
学校では猫を被り普通っぽく振る舞っているが、幸燦園内では一緒に寝るのは勿論の事、風呂も俺と一緒、俺がトイレに行く時ですら一緒に行こうとする。
アイが歳を重ねていった時にどうしたものか……。
ともかく、アイにとって、幸燦園が安心できる場所になりつつあるのは好ましいことに違いない。
節子お姉ちゃん始め、この施設のメンバーが概ねまともな道徳、倫理観を持った人達であることは、奇跡的な幸運であると言えるだろう。
アマゾネス3姉妹も、ショタコンを拗らせなければなぁ……。
はぁ……。
あのアマゾネス共、節子お姉ちゃんにシバかれて以降、確かに俺への過剰なスキンシップは無くなった。
それは良かったのだ、それは。
だが、アマゾネス3姉妹は執念深い。
節子お姉ちゃんの死角から、ギラついた捕食者の目で頻繁にガン見してくるのだ……。
舌なめずりをして、独りでにビクンビクンしている時すらあるのだ……。何か床が濡れてる時もあるし……。
それらアマゾネス共の奇行にアイも気づいたようで、最近のアイは、俺の引っ付き虫をしながらアマゾネス3姉妹相手に眼力勝負をしている。
何で俺じゃなくて、アイとアマゾネス共が眼で語る戦いをしているんだ……。
俺がアイを護るどころか、アイに護られるかもしれない……。
俺の童貞がな!!
閑話休題。
さてさて、今日は、運動会を先週に終えたばかりの、日曜日の昼下がり。
リビングテーブルにて俺は、節子お姉ちゃんと小声で雑談している。
右隣のアイが俺の右太腿を枕にして、お昼寝しているからだ。
スヤァ〰〰というオノマトペが見えそうなくらい、ぐっすりおねむの様子。可愛い。
「やっぱり、5月に運動会やるのは暑いぃぃ〰〰。やるにしても冬で良いよね? 節子お姉ちゃん」
「それはアタシも昔思った。年によってはクソ暑くなるのに、何で5月? ってな」
「学芸会の方がまだマシだよね。汗だくにならないし」
「そりゃ……あれ?
節子お姉ちゃんは不思議そうな顔をしている。
やっべ、口が滑った。
節子お姉ちゃん相手だと気が緩む。
節子お姉ちゃんを信頼できる人だと判断したからだろうな。
とりあえず誤魔化さないと。
「知ってはいるよ。上の学年の人達が言ってたから」
「ん?……ああ、運動会の時に聞いたりしたのか」
上手いこと勘違いしてくれたみたいだ。
節子お姉ちゃんは、納得したというように頷いた。
セーフ、割りとギリセーフ!
「そういやぁ、アイちゃんの誕生日が近いの知ってるか?」
「いや、初耳だね。アイと誕生日の話をしたことがあったけど、アイが『自分の誕生日が分からないんだ』って言ってたから、そこで誕生日の話は止めたんだ」
横を向いて寝ているアイの頭を優しく撫でながら、俺は答えた。
その会話をした時の、アイの寂しげな笑みが脳裏に過る。
自分の誕生日すら分からないことによる疎外感は
会話後のフォローは出来る限りしたが、それだけで癒えるものではない。
「そっか……アイちゃん、可哀想に……。アタシは手続きした時にアイちゃんの誕生日を知ったから、教えとくぞ。7月11日な」
「節子お姉ちゃん、ありがとう。それで、いつも通り誕生日会やるんだよね?」
「勿論! ささやかながら誕生日プレゼントも用意する予定さ」
「おおっ。流石、節子お姉ちゃん。……俺もアイに何かプレゼントしたいけど、何が良いんだろう?」
恐らく俺は、毒親の実母を除いて最も長くアイと一緒に居る筈だが、いまいちアイの好みを把握出来ていない。
例えば、彼女はカードキャプターさ◯らを観たりしているが、別に好きだから観ているわけではなさそうなのだ。
俺が近くにいるから観ている――みたいな。
推察するに、劣悪な家庭環境が原因で、アイは趣味や嗜好を養う機会が得られなかったのだろう。
今後暫くアイに必要なことは、様々な経験をすることだな。
その数多の経験の中で、好きなものが出来てくるだろうし。
誕プレ……誕プレ……どうしよう……。
うーむ……。
「そんな悩まなくても、アイちゃんは支翠からのプレゼントなら何でも喜ぶさっ」
「そうかなぁ……」
考え込んでいる俺に、ニカッと笑い掛けてきた節子お姉ちゃん。
そうは言っても、不安なものは不安なんだよな……。
思うに、非常に短期間の一過性の物、使い勝手の悪い物、現時点で本人が興味を示していない物はアウト。
先の2つが駄目な理由は言わずもがな。3つ目も、後々興味を示した時にプレゼントした方が嬉しいだろうから。
実用性があって、女の子らしい物……。
可愛らしいデザインの白物家電?
いや、駄目だ。俺の小遣いじゃ買えないし、ズレている。
うーん……誕プレってこんなに難しかったっけ?……
「そういう所、支翠は小心者だよなぁ。普段、大人顔負けの考えを披露したりするのにさ。可愛らしいから良いけどなっ」
節子お姉ちゃんは、未だに悩んでる俺を可笑しそうにクスクスと笑う。
そりゃ、アイにとって俺からの初めての誕生日プレゼントになるから悩みもする。
アイは、まだまだ子どもなんだから。
ここで失敗したら、彼女がまた傷つく恐れだってある。
節子お姉ちゃん程、俺は人間的に練達していないのだ。
俺が長いこと悩み続けていると、アイがモゾモゾと動き始めた。
「ん〰〰っ。シスイ君、今何時ぃ?」
「今は午後3時過ぎだな。おはよう」
「アイちゃん、おはよう!……こういう時って、おはようで良いのか? んんぅ?」
「まぁ、ニュアンスとフィーリングで良いんじゃない? ちょっと、アイの飲み物取ってくる」
起き上がったアイが寝ぼけ眼で目を擦っているうちに、俺はキッチンへ向かった。
冷蔵庫の中には、お茶、牛乳、カル◯スの原液、オレンジジュースがあったので、カル◯スを作ってアイの元へ持って行く。
「はい、眠気覚ましのカル◯スどうぞ」
「シスイ君、ありがとうー」
にへらっと笑ったアイは、カル◯スを受け取り、ゴクゴクと勢い良く飲んでいく。
アイを幸せに導くことは、まだまだ道半ば……いや、道半ばどころか、スタート地点だ。
それでも、彼女が年相応の笑みを浮かべるようになっただけでも、彼女の事情に踏み込んだ意義はあったと思える。
それだけ、アイが安心できているという事なのだから。
俺が決意を新たにしている中、アイは、コップのカル◯スを飲み干すと同時に口を開く。
「っぷはぁ〰〰! やっぱ、カル◯スおいしいよねー」
「だな。飲み過ぎは注意しないといけないけど、体にも良いらしいし」
確か、乳酸菌使ってるんだっけ?
そんな話を何処かで聞いたような……。
俺が自身の記憶を探り始める前に、アイはリビングテーブルに身を乗り出してきた。
「ねね、シスイ君と節子お姉ちゃん、さっき何話してたの?」
「ん? 運動会暑かったなぁって話だよ」
「そうそう、アタシの時も5月で暑かったって話さ」
「ん〰〰……本当かなぁ?」
アイは、半眼で俺と節子お姉ちゃんを交互に見てくる。
本気ではなさそうだが、俺と節子お姉ちゃんが嘘を
アイと生活し始めて分かった事だが、アイは嘘に敏感だ。
歩く嘘発見器レベルで正確に感知し、とりわけ嘘を吐かれることを嫌う。
それが実母からの虐待による結果と考えると、胸が痛い。
個人的には、嘘も方便という
後々嘘を吐かざるを得なくなった時に、俺の考えはアイに理解して貰えるだろうか……。
「本当だよ、本当。嘘吐いてないよ」
「ああ、アタシがアイちゃんに嘘吐くわけないだろ?」
正確には、嘘
実は、ここ幸燦園では、新入所者の初めての誕生日会と誕生日プレゼントをサプライズでやることが恒例行事となっている。
それ故、誕生日当日までアイには伏せないといけないのだ。
「むぅ〰〰……何かモヤモヤするけど、シスイ君と節子お姉ちゃんは意地悪しないから良いやっ」
アイ、直感が鋭いな。
角度を変えて訊かれたら、嘘を吐かざるを得なかったかもしれない。
「そうそう、幸燦園でアイちゃんに意地悪する奴なんて1人も居ないさ。もし居たら、ぶっ殺……じゃなかった、とっちめてやる。……ところで、2人とも明日学校だろ? 宿題は大丈夫か?」
節子お姉ちゃんが早々に話題を変えた。
サプライズの方が喜びも大きくなるだろうから、ボロを出したくないのだろうな。
ぶっ殺すなんて、物騒な言葉が聞こえかけたのは幻聴だ、幻聴。
「俺は大丈夫だけど……」
ちらりとアイを見やる。
アイは、ばつが悪そうに目を逸らしていた。
俺と節子お姉ちゃんは、じ〰〰っとアイを見つめる。
時間にして10秒も経たなかったが、俺と節子お姉ちゃんの視線に耐えきれなくなったらしい。
「ううっ……宿題やだぁ〰〰!」
開き直ったアイは、立ち上がって駄々っ子のように叫んだ。
いや、まだ6歳だから当たり前の反応ではあるんだけども。
「アイちゃん、宿題やっときな。
「うぅ〰〰……宿題してくる……。シスイ君も一緒に来てくれるよね?」
うぐぐぐ……アイのこういう表情には弱いんだ俺は……。
『代わりに宿題やって?』とか、『宿題手伝って?』とか、涙目で言われたら断れる自信が無いぞ……。
「アイちゃん、支翠に問題解いて貰ったりしたら駄目だぞ?」
「分かってるぅ……」
俺がアイの宿題を代行することに懸念を抱いたのだろう。
節子お姉ちゃんは、2階にある俺達の部屋へ移動し始めたアイに、やんわりと釘を刺してくれた。
ありがたい。アイと同い年の俺から言うと、角が立つからな。
それから、アイの求めに応じた俺は、力無く階段を上るアイについていった。
※※※※
月日は流れ、今日は7月11日。
アイの誕生日当日。
今日は土曜日ということもあって、用事がなければ
ということで、日中は俺とアイが若い職員と一緒に遊びに出掛けて、帰ってきた時にサプライズという予定だ。
アイも、自身の誕生日自体は既に知っている。
節子お姉ちゃんからアイの誕生日を聴いた日の夜に、俺から伝えた。
誕生日を知った時のアイは余り実感がないらしく、「そうだったんだ」と普段通りの受け答えだった。
毒親による虐待の影響だろうな……。
さて、まずはアイと一緒に遊びに行く予定なのだが……。
「アイは何処か行きたい所ある?」
「ん〰〰……ないかな? シスイ君と一緒なら何処でも良いっ」
隣で無邪気な笑顔を浮かべてるアイから、ドキドキっ♡アイちゃん誕生日計画(仮題)が
俺の脳みそに、ピシッと亀裂が入ったような錯覚に陥る。
青天の
「ほ、本当に行きたい場所、……無いのか?」
「ないっ! シスイ君は?」
「俺も特には……。アイが行きたい所に行く予定だったから」
困った……。困ったぞ。
年少故に行きたい場所の1つくらいはあるかと思ったが、本当に無いようだ。
見通しが甘かった。
どうしたものか……。
普通、女の子を連れてサッカーや野球は駄目だよな……。
人数が揃わないと出来ないということもあるが、それ以上にチョイスが致命的な気がする。
……こういう時は、大人の知恵を拝借するかぁ。
精神年齢イコール童貞な俺には、女の子との遊び先をチョイスするなんて無理だったのだ……。
心折れた青ニートになりかけた俺は、近くに座っているショートボブの女性職員――
この山中さん、実は俺達に同伴予定の職員でもある。
推定年齢20代前半で、スタイル良し、器量良し、性格良しと、割りとパーフェクトウーマンだ。
因みに、幸燦園で生活している男の先輩達が年上好きになった原因でもあったりする。「山中さんと比べたら、同級生の女子なんてクソだよな! あいつら洗濯板だし」なんて声もちらほら。
「山中さん、何処か良い場所知ってます?」
「そうだねぇ〰〰……、暑いしプールはどうかな~? 2人とも、水着持ってるでしょ~?」
「おおっ、確かに良いかもしれない!」
体を動かすからアイも退屈しないだろうし、泳ぎも上達する。
加えて、幸燦園の予算を考えても市民プールなら許容範囲内な上、幸燦園の先輩達と比べても、俺達が
早速、隣に座っているアイに再度尋ねてみる。
「アイが嫌だったら別に良いんだけど、プールはどう?」
「ん〰〰……シスイ君と2人で?」
「いや、山中さんも一緒だな。誰か大人がついていないと入れないから」
「むぅ〰〰……」
何やら考え始めたアイ(ほぼ7歳)。
そんな悩むような事か?
学校でもプールを嫌がる様子は無かったのだが。
アイの行きたい場所に行くという本旨から外れていることに罪悪感を抱きつつも、俺は説得を試みる。
無論、強要するつもりは全く無い。
「泳ぐの一緒に練習してみないか? 少し練習すれば必ず出来るようになるし、アイの新しい趣味になるかもよ?」
「……じゃあ、シスイ君が泳ぎ、教えてね?」
「OK、良いよ。それじゃあ準備して、暑くなる前に行こう。……そういうことで、山中さん。今日はよろしくお願いします」
「はいはぁ~い、よろしくね~」
山中さんに挨拶した後、俺とアイは一旦リビングの席を立ち、2階の俺達の部屋に水泳の道具一式が入った各々のバッグを取りに行く。
それから、バッグを手にして1階リビングに戻ってきた俺達は、各々のバッグの中に、冷蔵庫からスポーツドリンクを数本入れた。
これにて、俺とアイの準備は終わり。
後は、山中さんの準備を待つのみとなった。
「ちょ、ちょっと待っててねぇ~っ」
「まだ大丈夫ですよ。時間はあるんで」
山中さんはというと、見るからに準備に手間取っている。
具体的に言えば、荷物を抱えてリビングを行ったり来たりしている。
山中さんが両手に抱えている物を見るに、結構な荷物の量になりそうだ。……デカい黒のブラジャーが腕に引っ掛かって宙吊り状態なのは、見なかった事にしてあげよう。
『えっ!? 何処か抜けてるおっとり系美人なのに黒なの!?』とか、『布面積小さくない!?』とか、山中さんのイメージ崩壊しそうけど、目が疲れてただけなんだ。うん、大きさも色も見間違えただけなんだ。
しっかし、プールに行くだけで、何故あそこまで荷物が必要なんだ?
……ああ、そうか。
女性の場合、化粧品類は必要だもんな。それと、濡れた髪のケアのために、トリートメントやドライヤー、櫛も持参することになるのか。
世の女性の苦労が
山中さんの慌ただしい動きを目にして、女性のケアの大変さを染々考えていると、アイにTシャツの袖をちょんちょんと引っ張られた。
アイの方に目を向けてみれば、アイは頬を膨らませて不満そうな雰囲気を醸し出している。
「……今度は2人で行きたい」
「もう少し歳を取ったらな。俺達の歳だと、保護者無しじゃあプール入れないからさ」
「……もう少し歳取ったらってどれくらい?」
「後、4年くらいかな?」
「じゃあ、4年経ったら2人で行くの、約束だよ?」
「ああ、約束する」
「えへへっ」
アイのご機嫌は回復したみたいだ。俺に頭をグリグリと擦り付けてきた。
こんな可愛らしい娘を虐待するなんて信じられんな、あの毒親。
おろ?
何やらアイが、クンカクンカと俺の臭いを嗅ぎ始めたんだが。まぁ良いか。好きにさせておこう。
暫くして、ドタドタという足音が、アイにされるがままになっている俺の耳に入ってきた。予想通り、山中さんだ。
さっきまでラフなTシャツ姿だった山中さんは、シンプルな白いワンピースを着こなしている。その姿は、深窓の令嬢といった
「支翠君、アイちゃんおまたせ~! 遅くなってごめんねぇ」
「いえ、そんなに待ってないんで、気にしないで下さい。ただ……」
「ただ?」
「その、……山中さんのバッグに下着が引っ掛かったままです……」
「ああっ!? 恥ずかしいぃぃ〰〰! 支翠君、ありがとうっ! 急いで戻ってくるね~っ」
赤面した山中さんは、バッグに引っ掛かっていた黒のショーツを豪快に握り締めて、急いで戻っていった。
正直、見て見ぬ振りをしたかったが、外出する以上は誰かが言ってあげないと……。
黒いショーツがスケスケに見えたのは気のせいだ。
……ぶっちゃけ、男視点で見れば、ポンコツ臭がする美人で性格の良い巨乳グラドルが身近に居るようなもんだよなぁ。
こりゃ、年頃の男は性癖ぶっ壊れるわ。
俺は、思春期男子諸君の悲哀に想いを馳せる。
色々と事情を抱えてなかったら俺も危なかったかもしれないなんて、微塵も考えていない。本当に本当だ。……本当だよ?
童貞は真正のチキンなんだよ?
「……ねぇねぇ、シスイ君」
先程まで機嫌良くクンカクンカしていたアイは臭いを嗅ぐのを止め、おどろおどろしい声で話し掛けてきた。
髪を前に垂らして、さながら某ホラー映画の女のよう。
あ、あれぇ?
「……ああいうの、私も着れるのかな?」
「え゛っ、……ま、まだ早いんじゃないか?」
「いつになったら着れるの?」
「お、大人になったらじゃない? それに、人によって合う、合わないがあるだろうし」
「……私には合わないの?」
「い、いや、そんな事はないと思うけど。ただ、ああいう下着は普段履かないからな?」
何で俺が際どい女性用下着の話をしないといけないんだぁぁあああ!!
節子お姉ちゃんでも山中さんでもいい、誰か助けて!!
「……シスイ君は、何でそんなこと知ってるの?」
あああ!! 墓穴掘ったっぽい!!
アイさん、貴女、本当に小学1年生?
詰め方が恐い!
嘘
先達の英霊達よ、俺の自己保身の犠牲になってくれ。
「せ、先輩達の会話で偶々聞いたんだよ!」
「……嘘じゃないみたいだね」
やっと顔を上げたアイは、至近距離から俺の目を覗き込んできた。
いつもの瞳の輝きは遥か彼方へ行ってしまったのか、今の彼女の瞳には光すら飲み込みそうな黒々とした何かが宿っている。
「う、嘘なんて吐かないから、安心してくれ。なっ?」
ひぃっと悲鳴が漏れそうになるが、何とか飲み込んでアイに微笑みかける。
こういう場面で引くような反応は良くないからな。
恐いけど……。滅茶苦茶恐いけど!!
尚も離れようとしないアイに
「おまたせぇ~! ってあれ? どうしたの2人とも?」
至近距離で顔を突き合わせてる俺とアイに、山中さんは口元に人差し指を当てて小首を傾げてる。
「いや、何でも――ふがっ!?」
アイが、突然俺の頭を抱き締めた。
アイの胸元から離れようとしても、万力のような強い力で抱き締められていて離れられない。
どう見ても構図がヤバイ……!
それに、こ、……呼吸が……!
「ふふっ、アイちゃん大丈夫だよ~。誰も
「……」
「支翠君苦しそうだから、離してあげな~?」
「……むぅ」
アイの腕をタップし続けて、やっと解放された。
幼女の胸に顔を埋めて窒息死という、最悪の事態は避けられたな……。
山中さんは微笑ましいものを見たというような柔らかい表情だけど、俺は社会的にも物理的にも死活問題だから必死よ!
「おっ! 3人とも、そろそろ行くのか?」
今日の下準備をしていた節子お姉ちゃんが、リビングに顔を見せに来た。見送りのようだ。
「うん、そろそろ行くよ」
「支翠、アイちゃん、今日は暑くなるから気をつけてな。具合悪くなったら直ぐに言うんだぞ?」
「分かった」
「うんっ、節子お姉ちゃん」
節子お姉ちゃんのありがたい気遣いに、俺とアイは素直に返事をした。
俺とアイの頭を撫でた後、節子お姉ちゃんは山中さんに向き直る。
「
「ええっ〰〰! 節子姉さん、そんなに私頼りなさげですかぁ〰〰!?」
「冗談だ、冗談。ただ、栞は、チャラ男に『これから俺達と良い所に行かね?』って言われたら、
「それって、頼りないってことじゃないですかぁ〰〰! 節子姉さん、酷いっ!」
「ははっ! まぁ、栞にはアタシが仕込んだから大丈夫だろ! ウチの子達を任せたぞ」
「はい、任されましたっ!!」
節子お姉ちゃんに、頬を紅くして敬礼した山中さん。
節子お姉ちゃんが誰かを弄るのを初めて見た衝撃もあるが、仕込むって何を……?
えっ?
えっ??
節子お姉ちゃん、マジで何者……?
こうして、思考がフリーズした俺と、2人のやり取りにきょとんとした表情のアイ、頬を上気させ張り切っている山中さんは、20分程遅れて市民プールに向け出発したのだった。
2023.12/9:補足関係以外削除しました。
今更ですが、拙作では、
「」は、会話文と、主人公始め視点者が実際に耳で聞いた言葉に使っています。
『』の方は、会話文内の人物の発言と、視点者の疑問や驚嘆、想像上の発言等で使ってます。
分かりづらくて申し訳ないです。
以下、読み飛ばしても構いません。
アイの誕生日について
正直、設定が公開されないとわからないので、オリ設定になってます。
個人的に、1巻の吾郎のセリフを鑑みるに、17歳間近の16歳ではなさそう? と勝手に推測。
幼稚園、保育園は入所義務はないので、徹底的にネグレクトを受けた場合、自分の誕生日を知らないという状態は生じ得るかなと。転生でもしない限り、子どもが戸籍謄本や住民票の写しなんて取れませんし。
ざっくりキャラ紹介
黒髪ショートボブの23歳。ゆるふわおっとり系美人、性格も良し。
高校生の時、栗林節子に助けてもらった事に恩を感じ、幸燦園に勤めている。
過去、芸能スカウトから声を掛けられたことも。
G寄りのFで美巨乳。ホムン○ルス先生のえっちな漫画に出てくる美巨乳美少女レベルの美巨乳。
そう、美巨乳なんです。大事なことなので(ry
男受けは良いけど、女受けは悪いキャラをイメージしています。