迷い人と星の子   作:ポテチバタースキー

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皆様、読んでいただきありがとうございます。短めなお話です。
今話はセクシャルな描写があります。お、お許しを……。


第4話ー②:無自覚な嫉妬

 

 

 

 市民プールがある公営施設までの移動手段には電車を使う。

 徒歩の場合、最低でも片道20分はかかるが、電車を利用する場合、幸燦園の最寄駅から1駅分と徒歩数分で済むからだ。

 

「よぉ~し、切符買うから2人ともついてきてね~」

 

 この時代(1998年)は、まだSu◯caやPA◯MOが存在していない。皆、切符を買って電車に乗ることになる。

 休日で混雑している駅で迷子にならないよう、俺はアイと手を繋いで山中さんについていく。

 

「はいっ、2人とも、切符だよ~」

「ありがとう、山中さん」

「……ありがとう」

 

 俺とアイは、山中さんが買ってくれた切符を受け取って、改札機に切符を通す。

 アイは初めて電車に乗るとの事だったので、適宜アイにレクチャーしながら。

 改札を通ってホームで電車を待つこと数分。

 電車がホームに入ってきた。

 

「おお~っ」

 

 アイは、興味深そうに電車を目で追っている。

 俺も初めて電車を見た時は、こんな感じだったっけなぁ。

 今では無感動。大人になって(けが)れたもんだ……。

 

「この電車に乗るからねぇ~。行くよ~」

 

 山中さんの掛け声に従って、俺達は停まった電車に乗り込んだ。

 電車内をパッと見た限り、座席は殆ど埋まっているが、立っている人は余りいないといった程度の人口密度。

 

「アイ、そこの席空いてるから座っちゃいな」

「良いの?」

「良いよ」

 

 近くの席が1席空いていたので、アイに譲る。

 アイの席を確保できて良かった。

 俺と山中さんは立ったままだ。

 

「電車ってこんな感じなんだね」

 

 物珍しそうにキョロキョロと視線をやりながら、アイは呟いた。こういう年相応の仕草を見ていると、心が和む。

 とはいえ、初々しい反応をするアイをのんびりと眺めているわけにもいかない。

 

「もう少し見ていたいだろうけど、次の駅で降りるからな」

「うん。分かってるよ、シスイ君」

「はぁっ〰〰!! もう我慢できないよぉ〰〰!! アイちゃんも、お兄ちゃんしてる支翠君も可愛すぎるぅ〰〰!!」

「わぷっ!?」

 

 突如として秘めたる感情を爆発させた山中さんに、俺とアイは抱き締められた。

 山中さんのたわわな感触の自己主張が強すぎる……。

 アイの手前、みっともない姿を曝せないことは頭で分かっているが、童貞にこの刺激はキツイ……。

 そんな俺達3人を他所(よそ)に、電車は緩やかに減速していって、とうとう車内アナウンスが入った。

 停車するまでの猶予が殆ど無い……!

 

「んむぅ〰〰! ぷはぁっ!! や、山中さん! もう駅着くって!」

 

 俺は、懸命に(もが)いて何とか声を発せる体勢に移行し、山中さんに駅への到着が近いことを伝えた。

 踠いた際にパイタッチしてしまったのは、完全に不可抗力だと抗弁しておきたい。

 小学1年生の腕力じゃあ、真正面にある山中さんの双丘に触れずに口元の気道を確保するのは、無理だったんだ……。

 顔には絶対出さないが、……圧巻だった。

 ふにゅんって……ふにゅんって……。

 一方のアイは、今も特に抵抗しておらず、山中さんの母性の象徴を受け入れているように見受けられる。

 腕をだらーんと脱力させてるけど、……ち、窒息してないよね?

 

「あっ、降りないと!……せ、節子姉さんには内緒でねっ?」

 

 慌てて抱擁を解いた山中さんは、『てへっ☆彡』という台詞が文字として見えそうなくらい、あざといウインクをして節子お姉ちゃんへの隠蔽(いんぺい)を図る。

 しかし、俺は見逃さない。山中さんが冷や汗を一筋垂らしているのを。

 

「山中さん、とりあえず降りましょう。アイ、そろそろ降りよう」

「そ、そうだねぇ! 降りよう、降りようっ!」

「……」

 

 危うく降り損ねるところであったが、俺達は目的の駅で下車して、改札口を出る。

 そこから少しばかり徒歩だ。

 山中さんのおっぱいホールド以降、アイは上の空のまま俺の横を歩いている。まるで、周囲の光景が目に入っていないかのような歩き方だ。

 俺や山中さんが同伴しているから怪我はしていないが、正直、危険な上、見ていて不安を覚える。

 お節介かもしれないが、俺はアイに体調の程を()くことにした。

 

「アイ、具合悪くないか? 大丈夫?」

「……うん、大丈夫。ちょっと考え事してるだけだよ」

「具合悪くなったら、何時でも言ってねぇ~」

「……うん」

 

 アイは、俺と山中さんの言葉に生返事をして、何やら再び思索に(ふけ)っているみたいだ。

 時折、山中さんの方をチラチラと見ながら。

 市民プールの施設が目視で確認できる距離になって、やっとアイが口を開いた。

 

「……ねぇねぇ。シスイ君は、おっぱい好きなの?」

「ぶっ!? いきなり何を!?」

「いいから答えて」

「い、いやいやいや、ここ外だから! そういう会話はするものじゃ――」

「いいから」

 

 有無を言わせない程、アイの圧が強い!

 今日に限って、こんな厳しい質問ばかり飛んでくるのドウシテ……?

 アイの誕生日を祝いたいだけなのに……。

 

「あっ、私も知りたいなぁ~。支翠君どうなの~? 私のおっぱいどうだった~?」

 

 まさかの掩護射撃をした山中さん。ニッコニコしてる。

 バックスタブを食らうとは思わなんだ……。

 ……仕方無い。6歳の子どもとはいえ、性癖オープンという絶体絶命のピンチなのだ。

 山中さんを肉壁にして、この難局を乗り切る!

 

「……山中さん、節子お姉ちゃんに『電車内で感情を抑えきれず子どもを抱き締めてて、危うく駅を過ぎかけました』とか、『道中、俺の性癖を暴こうとしてました』とか、言って良いですか?」

「ア、アイちゃ~ん、そういう話は外でしちゃ駄目なんだよ~!」

 

 見立て通り、山中さんは掌を返してアイの質問を抑える方向で動いてくれた。明らかに焦っている。

 山中さんの弱点は、節子お姉ちゃんに自身の失敗談を知られること。節子お姉ちゃんの言葉に、あれだけ嬉しそうにしていたら一目瞭然だ。

 

「……何で?」

「そ、それはね、変な男の人達が、アイちゃんに嫌なことをするかもしれないからだよ~っ」

「……嫌なことって?」

「そ、それはぁ!……ひぃ〰〰ん!! 支翠君、助けてぇ〰〰!!」

 

 アイの無機質な瞳と掘り下げる質問に、早々に耐えられなくなったらしい。保護者(仮)に成り下がった山中さんが、俺に泣きついてきた。

 チッ! 肉壁にもならなかったか……、この駄乳め。

 さて、再び俺にお鉢が回ってきたわけだが、性癖開示よりはマシだ。黒々とした輝きを瞳に宿しているアイに、面と向かって説明するとしよう……。恐いけどな!

 

「た、例えばさ、知らないオッサンがアイの体をベタベタ触ってきたら嫌だろ?」

「うん」

「そういう事をしてくる人達を寄せ付けないために、外で、お、おっぱいがどうとか話をしちゃ駄目なんだ。分かった?」

「……なんとなく」

「それと、男の人に訊いたら駄目だぞ。詳しいことは、幸燦園(いえ)に帰ってから山中さんに訊いてみれば良いさ。ねっ? 山中さん」

「うん、分かった」「ええっ!?」

 

 アイの了解の声と、山中さんの仰天した声が重なる。

 俺からキラーパスが来るとは思っていなかったのか、山中さんは狼狽(ろうばい)という言葉を見事に体現していた。

 適材適所って良い言葉だな! ヨシッ!!

 ボク、コドモダカラワカラナインダ。

 山中さんの(すが)るような眼差しに気づかない振りをして、施設内に入る。

 施設内の案内図通りに歩いていき更衣室前に着いたので、俺は山中さんに話を切り出した。

 

「それじゃあ、山中さん、アイをお願いします。俺は男子更衣室の方なんで」

「えっ? シスイ君も一緒じゃないの?」

「俺は男だからな。こういう場所で一緒に着替えるのは不味い」

 

 アイが、俺の方に振り向いて目を見開いている。

 アイとしては、俺と一緒に着替えるつもりだったんだろうな。

 

「支翠君も女子更衣室(こっち)に来れば良いのにぃ~。6歳なら大丈夫だよ~多分」

「いや、駄目でしょ。俺は1人で諸々(もろもろ)出来ますよ、大丈夫です」

「何というか、支翠君は紳士だねぇ。言葉遣いもそうだけど、本当に6歳? って思っちゃう。……それじゃ、アイちゃんは女子更衣室の方に一緒に行こうね~」

「うぅ〰〰……」

 

 未練がましそうに、首を捻って此方をじ〰〰っと見つめながらも、山中さんに促されるまま女子更衣室へ歩いていくアイ。

 アイと山中さんが女子更衣室に入ったのを見届けて、俺も男子更衣室へ歩を進めた。

 

 

 

 

 








2023.12/9:補足関係以外削除しました。

 無垢な子どもにセクシャルな質問をされて慌てふためく大人達の構図を書いてみたかったと、作者(容疑者)は供述しており……むにゃむにゃ。
 書いている最中に、シスイ君が山中栞さんを雌豚調教する話を一瞬でも思い浮かべてしまった私は色々と駄目かもしれない。


 下ネタ苦手な方には本当にごめんなさい!(土下座)


次回、「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」の巻。多分。
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