迷い人と星の子   作:ポテチバタースキー

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第4話ー③:事件

 

 

 学校で使っている水着に着替えた俺は、現在、アイと山中さんが更衣室から出てくるのを待っている。プールに入水する前のシャワーも、更衣室で済ませた。

 プールの出入口付近の壁際で、持ってきた500ミリペットボトルを開け、スポーツドリンクを一口含む。

 市民プールでは往々にしてプール場内へ水着以外の持ち込みを不可にしているが、この市民プールでは水分補給目的の飲み物につき持ち込みOKとのことだ。

 2人が来ないことには何も始まらないので、俺は監視員や来場者の様子を観察することにする。

 こういった場所にナンパをしに来るような不届き者が居ないとは思いたいが、警戒するに越したことはない。

 ……1人不自然な男がいるな。

 壁に背を預けて座っているのだが、体や水着が(ほとん)ど濡れていない。加えて、視線を散らしてはいるが、プールの出入口にばかり視線が向いている。

 ……怪しい。

 アイも山中さんも器量が良い。

 とりわけ、山中さんはグラドル上位レベルのスタイルの良さだ。

 ロリ◯ンやペ◯を除けば、山中さんは間違いなくナンパのターゲットになってしまう。

 監視員に報告するか?

 例えば、『あのお兄さん、具合悪そうだよ?』のような形で。

 ……いや、駄目だな。『泳ぎ過ぎて疲れたんで、(しばら)く休憩してるんっすよ~。あははは』と逃げられる可能性がある。

 有事において、あくまでアイを護ることが最優先だが、日頃世話になっている人を見捨てる程落ちぶれるつもりはない。

 かつての失敗を繰り返すな。最悪を考えろ。使える物は全て使え。自分の命も含めて。

 そう頭の中で反芻(はんすう)しながら、俺は、ペットボトルの残りが6割程度になるまで飲み進めた。

 荒事になった時に、6歳の子どもが大人に勝つためには武器が必須。これはその準備だ。

 ペットボトルを見つめ荒事に発展した時の攻撃手順を検討していると、誰かに肩を叩かれた。

 

「シスイ君、どうしたの?」

「うんうん、支翠(しすい)君、らしくない顔してるよ~?」

 

 アイが俺の肩を叩いたようだ。

 アイと山中さんが心配そうに(のぞ)き込んでくる。

 

「少し気になることがあってね……」

 

 そう返答し、俺は2人の姿を視界に入れる。

 アイはスクール水着で、山中さんは競泳水着だ。

 アイがつるーんぺたーんすとーんなのに対して、山中さんは水着の一部分だけ主張が激しい。胸部装甲の所だけムチムチパッツンパッツンだ。

 ……狙われかねないな。事前に伝えておこう。

 

「アイ、山中さん、話があるんだけど」

「シスイ君?」

「ん~?」

此処(ここ)から少し離れたプールサイドに、若い男が座ってるの見える? あの男、様子がおかしいから、監視員の目の前で水泳の練習をしよう。アイには申し訳ないんだけど、最悪の場合、直ぐに帰った方が良いかも」

 

 俺は問題の男に背を向けて、アイと山中さんの視線が不自然にならないようにしつつ懸念を伝えた。

 

「様子がおかしいって?」

「あ〰〰……確かにね~」

 

 山中さんは概ね把握したようだが、アイはいまいち分からないようで首を傾げてる。小学1年生の子どもに分かれという方が無理な話ではある。

 横目で男の方に視線をやると、既に男は移動を開始していた。移動する男の方向は、プールの出入口方面。俺達と男との距離は縮まり、確実に10メートルを切っている。

 目指している場所は、監視員の椅子から死角になっている此処か。

 今からアイを連れて逃げ切れるか?

 アイが山中さんと一緒に更衣室に逃げても、外で出待ちされたら意味がない。どう考えても男の方が早く着替え終わる。

 それに加え、この時代(1998年)は携帯電話が普及しているとは言い難い。少なくとも、山中さんが携帯電話を使っている姿を見たことがない。

 それが意味するところは、更衣室から警察を呼ぶことが出来ないということだ。

 この状況下での最善手は、……俺が足止めして2人が逃げる時間を稼ぐことだな。

 子どもの肉体でも、前世(忍時代)の戦闘経験がある俺なら時間を稼げる筈。俺が命を懸けてやれば、男子更衣室の中で事故や正当防衛を装うなり、相討ちに持ち込むなり、やり様は(いく)らでもある。伊達(だて)に鉄火場を(くぐ)ってきた訳ではない。

 

「アイ、山中さんと逃げろ。俺が時間を稼ぐ」

「えっ?」

「思いの(ほか)、面倒事になりそうだなぁ〰〰。ほらっ、支翠君も逃げるよっ」

 

 ぐんっと、山中さんに腕を引っ張られた。

 山中さんは、アイと俺の腕を取って女子更衣室へ大急ぎで移動し始める。

 それに比例するように、男も歩くスピードを早めて俺達に向かって来る。

 残念なことに、逃げ切るには俺達に不利な要素が多すぎた。

 山中さんは比較的華奢(きゃしゃ)な上、子ども2人連れ。

 対する仮想敵の男は、180センチ近い大柄で単身。

 床は、水で濡れてるプールサイド。

 結局、女子更衣室まで後少しという所で、男に捕まってしまった。女子更衣室への進路を妨害する位置に体を入れ込んでくる辺り、想定していたよりも厄介な手合いかもしれない。

 

「お姉さん、お子さん達可愛いっすね。お子さん達も一緒で良いんで、俺とちょっと泳ぎません?」

「いえ、結構です~。この子達を安全に連れ帰る方が大事なので~」

「まぁまぁ、そう言わずに。楽しみましょうよ」

 

 下卑(げひ)た笑みを浮かべ、山中さんをじろじろと不躾(ぶしつけ)に見る男。予想通り、山中さん狙いか。

 幼いアイも、ただ事ではないと理解したらしい。アイの顔は青ざめ、強ばっている。

 

「とりあえず、どいていただけませんか~? 帰れないので~」

 

 そう言いながら、山中さんが俺とアイの腕から手を離してくれた。最悪の事態に至った場合、俺達2人を逃がすためだろう。

 けれども、そのお陰で俺は実力行使のために動けるようになった。言うまでもなく、山中さんの意図に反するが。

 

「いやいや、……貴女みたいな女性には滅多にお目にかかれないのでねぇ……お子さん達どうしましょっか」

 

 下劣な欲望を隠そうともしない男。山中さんの胸や下腹部を舐め回すように見ている。

 典型的なゲスチン野郎だな、コイツ。

 だからこそ、足元がお留守になってることに気づかないんだが。窮鼠(きゅうそ)猫を噛むという(ことわざ)を知らないようだ。

 男の意識が山中さんに集中していると判断した俺は、(おび)えているアイの前にさりげなく移動し、左手に握っているペットボトルを背に隠す。

 暴力沙汰になった場合、股間を奇襲して男を暫く再起不能にさせるか。

 ただ、……状況が状況とはいえ、此方(こちら)からの先制攻撃は(よろ)しくないな。戦国の世なら問答無用で殺しにかかれるが、今は法の支配に基づく法治国家の時代。他人の目がある場所で先制攻撃すれば、俺に非があると受け取られてしまう。

 ひいては、祝うべきアイの誕生日を汚し、幸燦園の皆にも迷惑を掛けてしまう事態にまで発展する恐れがある。

 とりあえず物理攻撃の前に、やれることは全てやろう。

 国家間の戦争同様、相手の嫌がることを徹底的にやるべし。

 

「監視員さぁぁあああん!! 助けてぇぇええ!!」

「なっ!?」

 

 注目が集まるように、俺は大声で叫ぶ。

 プール場内に居る一般客の視線が集まってくる。

 ナンパの前提条件は、注目が集まらないことだろう。

 ならば、その前提条件をぶち壊してやればいい。

 男に音を消滅させる(すべ)を持たない以上、俺の声を防ぎようがない。

 

「このガキッ!!」

 

 この男、気が短いようだ。

 逆上した男は、俺を殴ろうと自身の右拳を振りかざす。

 血相を変えて手を伸ばしてくる山中さんが視界の隅に入っているが、距離的に間に合わない。

 ……此処で俺がやられるわけにはいかない。

 俺の直ぐ後ろにはアイが居る。

 何が何でも……食らいつく!!

 その瞬間、男の右拳の軌道がコマ送りのように見えた。

 どの程度のスピード、パワーで迫ってきているのか、そして男の筋肉の動きをも正確に把握する。

 ああ、……()()()()()()()()だ。

 俺は、殴ってきた男の右拳に合わせて首を(ひね)り、勢いそのままに軸足となった右足を回転、――男の股間目掛け、左手に隠し持っていたペットボトルを斜め下から振り上げた。

 

「ぐあっ……!」

 

 ジャストミート。

 (うめ)き声を上げた男は、股間を押さえて(うずくま)っている。遠心力で凶器と化したペットボトルが股間に直撃したんだ。ダメージは大きいに違いない。

 一方の俺は、真後ろに居るアイを巻き込まないよう注意しつつ、男の拳で右斜め後ろの方向に吹っ飛んだ。子どもの体では身体能力不足でいなし切れなかったのだ。

 

「シスイ君!!」

「支翠君!!」

 

 アイと山中さんが、殴られた俺に急いで近寄ってくる。

 既に涙目になりつつあるアイと、深刻な表情の山中さんの姿が視界に映った。

 それから少し遅れて、一般客の悲鳴が各所から上がる。

 子どもが殴られて派手に吹っ飛んだのは、紛れもない事実だ。ショッキングな光景だろう。

 

「そこの男!! 何やってるんだ!!」

 

 チラッと視線をやると、険しい顔をした監視員が男に対して怒鳴り声を上げ、此方(こちら)に向かって駆けつけてきた。直後、監視員はトランシーバーで応援を呼んでいる。

男の方は(うずくま)ったままだ。

 

「シスイ君!! シスイ君!!」

「支翠君、頭打ってない?」

「頭は打ってないです。大丈夫ですよ」

 

 パニックに陥ってるアイの頭を水泳帽子越しに撫でながら、俺は山中さんに答えた。

 

「警察には通報した! 問題の男は、その男だな?」

 

 俺達が会話しているうちに、応援の監視員4人が現れた。

 監視員達は(いま)だに(うずくま)っている男を取り囲み、男を床に押さえつける。所謂(いわゆる)、私人による現行犯逮捕だな。

 

「ふぅ……」

 

 男が完全に制圧されたことを視認した俺は、上体を起こして安堵の溜め息を吐く。想定外はあったものの、何とかアイと山中さんを護れたな。

 

「ひぐっ……ひぐっ……うぇぇっ……」

「直ぐに起き上がったら駄目だよ~」

「問題ないです。それより、2人とも怪我しなくて良かった」

 

 泣きじゃくってるアイの背中を(さす)りつつ、再度山中さんに健常である旨を伝えた。多少の打撲程度、気にすることでもない。

 俺の言葉を聴いて、(うれ)いを帯びた顔つきに変じた山中さんが何か言葉を発そうとした時、監視員の1人が山中さんに近づいてきた。

 

「保護者の方ですよね? あの男に殴られたお子さんの具合は如何(いかが)ですか?」

「はい、そうです~。本人は『頭を打ってないから大丈夫』と言っているんですけど、念のため、これから病院に連れて行こうと思ってます~」

「わかりました。警察には、私の方からそのように説明しておきます」

「お願いします~。あっ、連絡先は幸燦園(ここ)にお願いしますね~」

 

 そう言って山中さんは、監視員のメモ帳とペンを借りて、幸燦園の住所と電話番号を書いていく。

 書き終えた山中さんからメモ帳とペンを受け取った監視員は、わかりました、と一言残して、取り押さえられている男の方へ戻っていた。

 監視員とのやり取りを終えた山中さんは、俺に向き直り、俺の両肩を掴んで場違いな笑顔を浮かべている。目が笑ってない。恐い。

 

「それじゃ、支翠(しすい)君。これから病院に行こうねぇ~」

「いや、本当に大丈夫――」

「アイちゃんも心配だよね~?」

「ひぐっ、ひぐっ……うん……」

「じゃあ、着替えて行こっか~」

 

 俺に拒否する時間を与えず、俺とアイの手を引いて女子更衣室へ歩き始める山中さん。

 いつもの、ほんわかした笑顔は何処(いずこ)に……。

 嗚咽(おえつ)を漏らしているアイを味方につけて、俺が反駁(はんばく)する余地を無くすとは……。

 いや勿論、2人に心配掛けたのは申し訳ないと思ってるけども、後生(ごしょう)だから男子更衣室で着替えさせてくれ……。

 そんな俺の内心も(むな)しく、俺は山中さんによって女子更衣室に連行されたのだった。

 余談になるが、山中さんが監視員の1人に俺の着替えを女子更衣室に届けさせた結果、俺は、完全アウェーの女子更衣室でシャワーと着替えをしなければならなかったことを此処(ここ)に報告しておく。

 俺がシャワーを浴びたり着替えたりする時だけでなく、アイや山中さんのシャワーや着替えの時も常に側に居ることを要求されて、……非常に気まずかったのは言うまでもない。

 

 

 

 

※※※※

 

 

 

 

 山中さんに連れられて幸燦園(こうさんえん)の近くにある病院で受診した結果、頬の打撲以外は異常無しとの診断だった。

 会計を終えて、俺達は病院を出る。

 病院の待ち時間が長かったせいで、外はもう夕方だ。

 アイの誕生日なのに、こんな形で俺が時間を食い(つぶ)すことになるとは……。完全にA級戦犯だ……。マジで万死に値するわ、俺……。

 病院の出入口脇のスペースで、俺はアイに深く頭を下げた。

 

「アイ、今日は本当にごめんなさい」

「ん~? 何でシスイ君が謝るの?」

「アイの誕生日を台無しにしたようなものだから……。結局、心配掛けただけだったし」

 

 罪悪感で心が()じ切れそう……。

 アイのお兄ちゃんポジを自称するなら、こんな無様を(さら)していて良い訳がない。

 

「でも、私達の事、……あの恐い人から助けようとしてくれたんでしょ?」

「うんうん、あの時は監視員さんを呼ぶ以外に良い方法は無かったと思うし、私とアイちゃんは支翠君に助けて(もら)ったようなものなんだよ~。本当は私がやらないといけないことだったんだけどねぇ……。ごめんね支翠君、アイちゃん」

 

 頭を下げていて山中さんの表情は分からないが、山中さんの申し訳なさそうな声が聴こえてきた。

 

「いや、……それでも俺は……」

 

 山中さんが言うように、客観的に見て、どうしようも無い部分は確かにあった。

 けれどアイにとって、幸燦園に来てから初めての誕生日なのだ。今日という1日を、全てにおいて良い意味で特別にしたかった。後悔の念が(つの)っていく。

 

支翠(しすい)君は優しいねぇ~。……また近いうちに、気を取り直して遊びに行けば良いんじゃないかなぁ~? ね? アイちゃん」

「うんっ。だから、頭を上げて?」

「……分かった」

 

 アイの言葉を聴いて、俺は頭を上げる。

 夕日をバックに後ろ手を組んでいるアイは、優しげな笑みを浮かべていて、風で(なび)いた彼女の黒髪は、夕日に照らされ星屑(ほしくず)のような輝きを(まと)っていた。

 まだ小学1年生なのに絵になるなぁ。

 

「それじゃー、幸燦園(いえ)に帰ろー!」

 

アイは意気揚々と、帰り道とは()()()()()()へ率先して歩き始めた。

 

「そうだな、帰るか。……アイ、幸燦園はそっちじゃないぞ」

「だねぇ~。……アイちゃん、アイちゃん! 帰り道そっちじゃないよ~! 反対だよ~」

「えっ?……あ、あはははっ……」

 

俺と山中さんの呼び掛けに、アイは恥ずかしそうに笑って、小走りで戻ってくる。夕日故か、恥ずかしさ故か、はたまたその両方か、アイの頬は(あか)くなっていた。

 気を取り直して、俺達は家路につく。幸燦園(こうさんえん)は近いから、そこまで時間は掛からないだろう。

 

「夕日が綺麗だねぇ~」

「そうですね、ここまで綺麗なのを見たのは久し振りかもしれないです」

 

 染々と呟いた山中さんに、俺は相づちを打った。

 柔らかい夕日が、俺達を包み込むように照らしている。

 人の営みに影響されない超然とした姿には、無意識に見入ってしまいそうな人智を超えた壮麗さがあるように感じた。

 

「助けて貰った身で言えた義理ではないけど、支翠君、あんまり危ない事しちゃ駄目だよ~? アイちゃんも心配だもんね~?」

「うん、……シスイ君が怪我するの、やだなぁ」

「ぜ、善処(ぜんしょ)します……」

 

 山中さんとアイに釘を刺されて、思わず(ども)ってしまった。

 まぁ、そりゃそうですねって話だ。

 しかし、……今回の一件で確信した。

 このままではいけない。かつて(忍時代)の力を早急に取り戻す必要がある。

 輪廻天生の術の時に、前世の父さんと母さん、それから誰かのチャクラが流れ込んできたのは間違いない。輪廻天生の術の構造からして、術者以外のチャクラが流れ込むことなんてあり得ないのにもかかわらずだ。

 それはつまり、この体に、最低でも俺自身のチャクラと前世の父さん、母さんのチャクラが既に存在していないと可笑(おか)しいということ。

 それに、……昼間のあの感覚は写輪眼のそれだった。この世界で術が発動する可能性は多分にあるとみていい。

 ここで、『何故、現在に至るまで自らの意志で術を発動できないのか?』と疑問が生じることになるわけだが、俺自身のチャクラ、正確には俺の肉体、身体エネルギーに問題があると考えるのが合理的だろう。写輪眼系統は身の危険や死に瀕する時の感情で偶発的に発動し得る性質があるから、例外だ。

 とりあえず今後、自分の体を使って危険な事を含め色々実験する予定であることは、バレないようにしないとな。

 

「支翠君、善処なんて言葉、よく知ってるねぇ~。……それと、私に敬語は要らないよ~。節子姉さんみたいに、支翠君とアイちゃんには『(しおり)お姉ちゃん』って呼んで欲しいなぁ~」

「分かったよ、栞お姉ちゃん」

「むぅ〰〰……栞お姉ちゃん」

 面白くなさそうに頬を膨らませて返事をしたアイ。

 渋々な感じが滲み出ている。

 病院内では普通に打ち解けていたのに、どうしたんだ?

 

「ふぁぁ〰〰!! 本当、可愛いなぁ~もうっ!」

 

 栞お姉ちゃんは立ち止まり――栞お姉ちゃんのおっぱいホールドが、再び俺とアイを襲う!

 ま、また、呼吸が……!

 

「んむぅ〰〰!!」

「……」

 

 アイが沈黙していることもあって、俺は懸命にヘルプサインを出すも、栞お姉ちゃんはハグするのに夢中で聞こえていないようだ。

 この人、何で俺達にだけ此処までスキンシップが激しいんだ!?

 幸燦園では普通なのに!!

 ……ショタコン?

 ショタコンなのか?

 アマゾネスの族長なのか!?

 計算でやっていたらそれはそれで恐いが、天然っぽいから余計に(たち)が悪い!

 

「あっ、……またやっちゃったぁ~……でも、2人とも可愛すぎるのがいけないっ」

 

 そう言って、栞お姉ちゃんは俺とアイを解放した。

 限界オタク化していて反省の色なしだが。

 

「はぁはぁっ……」

 

 体が酸素を欲していて、呼吸が乱れる。

 栞お姉ちゃんのおっぱいは凶器(物理)だろ、本当!

 おっぱいに包まれて死にましたとか、どんな死に方だ!!

 甘き死じゃねえよ!! ただの窒息死だよ!!

 マジで()ぎ取ってやろうか!!

 内心荒ぶりつつも、おっぱいホールド後に次第に(うつむ)いていったアイの様子が気にかかった。

 

「はぁはぁ……アイ、大丈夫か?」

 

 少し間を置いて、アイは俺に向き直って――口を開く。

 彼女の瞳に、先の溌剌(はつらつ)さは見る影もなく、今日一番の漆黒の闇を(たた)えていた。い、嫌な予感がする……。

 

「……ねぇ、シスイ君。私もおっぱい、大きくなるかな?」

「ごほっごほっ! お、俺じゃなくて栞お姉ちゃんに訊いてぇぇえええ!!」

 

 俺は、今生……否、人生初、心の底から絶叫した。厳しい質問の連撃に耐えれなかったんだ、許せ。

 その後、「何で?」、「シスイ君、答えて」と、壊れたカセットテープの如く、繰り返し質問するアイを宥(なだ)めるのに、相応の時間がかかったのは……推して知るべしだ。

 

 

 

 








2023.12/9:補足関係以外削除しました。
2024.3.14:補足関係削除しました。

今話の術やチャクラ周りの話はオリ設定込みです。ご質問がある方には個別にお答えしたいと思いますので、ご容赦ください。







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