幼馴染との配信チャンネルをクビになった俺が、RTA配信を始めたら有名になった話   作:三口三大

12 / 17
12. お願い

 佐助からの連絡。心は最近の気まずさを思い出すも、迷っている暇なんかなかった。イヤホンを装着し、電話に出る。心が口を開くより先に、佐助の声がした。

 

「今、大丈夫? 周りにモンスターとかいない!?」

 

 佐助の慌てている様子がスマホ越しにわかった。心は周囲に視線を走らせる。気配はない。が、いきなり現れたりするので、警戒しながら答える。

 

「何?」

 

「猿吉から聞いた。今、B19階にいるんだろ?」

 

「そうだけど」

 

「帰還玉は無いの?」

 

「無い」

 

「大丈夫?」

 

 佐助が心配してくれている。嬉しいのに、素っ気ない態度で返してしまう。

 

「大丈夫だけど」

 

「そっか。なら、今から……」

 

「……何?」

 

「あ、いや、俺もそっちに行くわ」

 

「は? 何で?」

 

「B19階を探索したい気分になったから」

 

「急に?」

 

「急に。心がいるって聞いたからさ。だから、力を貸してくれないか? 心がいないとB19階の探索が難しいんだわ」

 

「べつに、私がいなくてもできるでしょ」

 

「最近、気づいたんだ。俺、心がいないと何もできない」

 

「そんなことないじゃん。一人で配信とかしてるみたいだし」

 

「あれも心が応援してくれたから、できたんだよ」

 

「私はべつに」

 

「いつも俺の配信を見てくれるじゃん。ココアさんって、心でしょ」

 

「……気づいていたの?」

 

「当たり前だろ。いつから一緒にいると思ってんの。俺が何かをするためには、心の力が必要なんだ。だから、今回も力を貸してくれ! 頼む! 心の力が必要なんだ!」

 

 佐助の言葉が、心の脳内で鳴り響く。

 

 心の力が必要なんだ! 心の力が必要なんだ! 心の力が必要なんだ! ……。

 

 その甘美な響きは、心の口元をにやけさせるには十分すぎた。

 

「……仕方ないわね。佐助がそこまで言うなら、手伝ってあげる」

 

「よし。なら、蓮の池の場所とかわかる? 多分、転送の魔方陣があった場所から北に2キロほど行ったところにあるんだけど」

 

 心は頭の中で地図を広げる。蓮の池の場所はすぐにわかった。今のいる位置は、転送の魔方陣があった場所から少し離れているが、それほど問題ではない。

 

「うん。わかる」

 

「んじゃ、そこで。あ、でも、蓮の池の周りにはモンスターが比較的多くいるから、近くに隠れておいて。俺が合図を送る」

 

「了解。時間はどれくらい掛かりそう?」

 

「ここからだと5分かな」

 

「駄目。30秒で来なさい」

 

「善処するよ。んじゃ、また後で」

 

 通話が終了する。心はにやにやしながらスマホをしまう。やはり、佐助には自分が必要だった。

 

(ようやく佐助もわかったか)

 

 そのとき、心は気配を感じて、目を向ける。置き去りにしたはずの仏像が迫っていた。

 

「やれやれ。しつこい男は嫌われるわよ。私のことは、()()()()なんてね」

 

 心は軽快なギャグを交えながら、剣を抜く。左足の痛みはもうなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。