幼馴染との配信チャンネルをクビになった俺が、RTA配信を始めたら有名になった話   作:三口三大

15 / 17
15. 共闘

 心は、文字通り背水の陣だった。背後には蓮の池。そして目の前には、3体の仏像がいた。直立不動の仏像と座禅を組んでいる仏像、寝ている仏像の3体だ。佐助からは隠れろと言われていたが、しつこく追跡してくる仏像と戦っているうちに、今の状況になってしまった。

 

 しかし、心の顔に焦りの色は無かった。むしろ、落ち着いているし、内側から力が湧いてくる。猿吉が今の状況を見たら驚くだろう。佐助が近づいてくるにつれ、心のレベルが上がっていくからだ。

 

 心の背後に空間のひずみ。金色の拳が心を襲う。が、心は振り替えずにしゃがんで避けた。さらに左端に2つ、右端に4つの空間のひずみ。心は灼熱剣で左側のひずみを斬り、霊水剣で右側にある2つの剣を斬った。ここまでの戦いで、直接ひずみを攻撃した場合、ひずみが消えることがわかった。残った2つのひずみから殴りかかってくるも、2つとも避けて、直立不動の仏像に跳び蹴りを放つ。仏像はボーリングのピンみたいに揺れるもその場に留まって、微笑みかけた。

 

(やっぱり、硬い。ってことは、攻撃すべきはこっちじゃないのかも)

 

 心は体勢を整えようとしたが、足に違和感。見ると、地面に空間のひずみがあって、そこに足が取られてしまった。

 

「くっ――」

 

 そのとき、右手を掴まれた。さらに、目の前に現れたひずみから飛び出た拳に腹を殴られ、くの字に折れる。心は白目を剥きかけるが、次の瞬間には力強く奥歯を噛んで、『炎魔(えんま)剣法――炎龍剣(えんりゅうけん)』を発動した。灼熱剣が燃え上がり、心は体を捻りながら跳び上がる。灼熱剣が描く炎の軌跡は、飛び立つ龍のようであった。龍が金色の手を噛み切る。寝ている仏像が激しく揺れ動き、手を失った腕はひずみの中に消える。心は涎を拭いながら確信する。

 

(やはり、こっちの腕の方に攻撃すればいいみたいね)

 

 心は剣を構え直した。攻略法はわかったが、1対3では分が悪い。さらに茂みの奥から微笑みかける2体の仏像を見つけ、頬を冷や汗が伝う。万事休す。――が、すぐに笑みを浮かべた。

 

(やっと来たか)

 

 そのとき、水柱を上げながら、蓮の池から1つの影が飛び上がった。鳥を思わせる影。その影は宙で回転した後、人の姿となって、心の前に降り立つ。黒い忍び装束を着た背中を心はよく知っていた。佐助である。佐助は振り返り、ゴーグルを上げて言った。

 

「元気そうだな」

 

「あんたが遅いから、一発喰らっちゃったじゃない」

 

「大丈夫だろ。一発くらい」

 

 そのとき、佐助のそばに空間のひずみ。金色の手が佐助を襲うも、佐助はその手首を掴んで攻撃をいなす。さらに手首を掴んだまま、肘部分を強く押し込んだ。するとその勢いで、ひずみの中から金色のマッチョが姿を現した。佐助は素早い動きで、金色のマッチョの首に左足を振り下ろし、右足の膝でマッチョの顎を蹴り上げる。骨の折れる音がして、金色のマッチョは動かなくなった。直立不動の仏像が倒れる。

 

「こいつの倒し方はこんな感じ」

 

「ふーん。そうやればいいのね」

 

 心は伸びてきた拳を避けつつ、灼熱剣で金色の手を地面に突き刺した。そして、霊水剣で肘を強く押すと、ひずみからマッチョの上半身が現れたので、その首を狙い、霊水剣を振り下ろす。霊水剣がマッチョの首に刺さった。が、切断には至らない。だから、柄を両手で持ち、地面にぶつけて叩き切った。寝ている仏像が倒れる。

 

「さすがだな」

 

「当たり前でしょ」

 

 心は涼しい顔で答え、残りの仏像たちに目を向ける。仏像たちに逃げる様子はなく、微笑みながら迫ってくる。

 

「まだ戦う気なんだ」

 

「おそらく勝てると思っているんだろ。奴らは目の前の事象ではなく、俺のレベルを見て判断している。奴らには、俺がただのアリにしか見えないんだと思う」

 

「なるほど。佐助がアリに見えるなんて、見る目無いんじゃない?」

 

「違いないね」

 

 2人を囲むように無数のひずみが生まれ、6つの拳が佐助と心を襲った。佐助はそのうちの1つを左足で受け止めると同時に2つの拳を両脇に抱え、左足で拳を押し込む反動を使い、金色のマッチョを2体引きずり出した。露わになった首筋を心の霊水剣が狙う。『水魔(すいま)剣法――飛瀑剣《ひばくけん》』。水の勢いをまとって振り下ろされた剣は、2体まとめて肩ごと荒々しく斬り落とした。

 

「よし。残りは1体!」

 

「いや、もう終わりだよ」

 

「え?」

 

 そのとき、大地が震え、鳥型のモンスターが飛び立った。仏像も逃げ出し、佐助と心を巨大な影が覆う。地中から木々を倒しながら巨大な仏像が現れた。その高さは100メートルを超え、B19階に悠然とたたずむ。

 

「何、あれ」

 

「やつはここのフロアボス。さっきのモンスターを4体以上倒すと出現する」

 

「ど、どうすんの?」

 

「どうもしない。逃げる」

 

 佐助は心を引き寄せると、帰還玉を地面に投げつけた。割れて魔方陣が出現する。心は佐助の周りを漂う光の球体に気づき、見せつけるように体を密着させた。佐助が目を向けると、心は「は? 何?」と睨み返す。

 

「そんなに密着しなくても大丈夫だけど」

 

「駄目なの?」

 

「いや、駄目じゃないけど」

 

「なら、いいでしょ」

 

 そんなことを話しているうちに、2人は光に包まれて、その場から消えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。