幼馴染との配信チャンネルをクビになった俺が、RTA配信を始めたら有名になった話 作:三口三大
佐助と心が仲直りした後の話。
まず、紀夫に関しては、猿吉が動画を桜花ギルドに提出したことで、紀夫の冒険者免許ははく奪された。それでも猿吉の怒りは収まらず、曝露系インフルエンサーにも情報を流し、紀夫は大炎上。紀夫がやったことは『脅迫罪』に当たるとして、警察まで動き出した。
心は、紀夫たちとやっていたチャンネルを閉鎖することにした。最後の大事なお知らせ配信にて、チャンネル史上最高の視聴者数26754人が見る中、お気持ちを表明した。
「皆さん、いつも当チャンネルを応援していただき、ありがとうございます。突然の報告で申し訳ないのですが、当チャンネルは本日をもって閉鎖したいと思います。理由につきましては、いろいろな事情があって、まだ話せないのですが、いずれ何らかの形でお伝えでできたらなと思います。そして、私の今後についてですが、私を助けてくれたサ――」
そこで心の配信が打ち切られたため、視聴者は困惑したものの、翌日には別の話題に移り、登録者8万人のチャンネルは人々の忘却の彼方へと消えていった。
そして佐助も自身のチャンネルを閉鎖した。朱雀のおかげで、報告していなかった件についてギルドから咎められることは無かったが、冒険者からの反響が大きく、サスケに関する問い合わせが、ギルドやチャンネルに殺到した。そのため、ほとぼりが冷めるまで表舞台から身を引くことにした。配信とかしたら、人が集まってしまうと思い、とくに報告することなく、チャンネルを消したのだが、その結果、様々な憶測が飛び交い、RTA走者サスケは都市伝説のように語られるようになった。
佐助がチャンネルを消した時、隣で見ていた心は言う。
「本当に良かったの? 何だかんだ楽しんでいたんじゃない」
「まぁね。けど、いいよ。また余計なことしちゃうかもしれないし」
「ふーん。仕方ない。なら、私が一緒にカップル配信してあげる」
「いや、いい」
「何でよ。カップル配信で生ぬるいことやっていれば、余計なこともしないでしょ」
「配信はしばらくいいかな」
しかしこの考えは、朱雀とのやりとりで、すぐに撤回することになる。
チャンネルを消した後、佐助はB4階にある洞穴にて、朱雀と面会した。先に来ていた佐助は、穴に入ってきた赤髪で赤いコートを着た女に頭を下げる。
「お疲れ様です。例の件、ありがとうございます」
「うむ。お疲れ。今回に関しては、それほど難しいことではなかったよ。君に罰を与えるよりも、得体の知れない冒険者がいて、その人物とギルドが、実は裏でつながっていた方が面白いのではないかと伝えたら、ギルド長にも納得してもらえた」
「相変わらずですね。組織として、それでいいのかって感じはしますが」
「でも今回は、ギルド長のロマンのおかげで余計な処罰を受けずに済んだ。物は使いようだよ、佐助君。一応、私が君とのパイプ役ということになっているから、今まで通り、何か新しいことがわかったら、私に報告して」
「はい」
「それにしても、君はあのチャンネルを消したんだな。ネットでいろいろと話題になっているじゃないか。君のチャンネルが消えたことを悲しむ声もある」
「そうですね。まぁ、でも、ほとぼりが冷めるまでは表舞台に出ない方がいいかもしれないと思いまして」
「なるほど。賢明な判断かもしれないな。しばらくは配信をするつもりがないのかい?」
「はい」
「そうか。なら、配信の手伝いをする気はあるか? 実は君に頼みたい案件があったりするんだよね。配信のことを知りつつ、このダンジョンにも詳しい君なら適任かなと思って」
「いいですけど、珍しいですね、朱雀さんがそういう仕事をするの」
「これも実績を作るためさ。あの組織を変えるためには、いろいろと実績が必要なんでね」
「そういうことなら、ぜひ、やらせてください」
「そう言ってもらえると助かるよ。あ、でも、探索の方を優先してもらっても構わないから。我々にとっては、探索の方も大事だし」
「はい。承知しました」
こうして佐助は、出演者ではないが、スタッフとして様々な配信に関わることになる。そこで色々な事件に巻き込まれるのだが――それはまた別のお話。
朱雀と別れた後、佐助がダンジョンを歩いていると、心からメッセージが来た。
『今、どこ? B1階にいるんだけど。一緒に探索したい』
『B4階』と書いて、朱雀との会話を思い出し、『今からそっちに行くわ。話したいことがあるし』と付け足してから、送信した。
『何?』
『会ってから、話す』
佐助はスマホをしまい、駆け出す。事後報告が原因で、また関係がこじれるようなことは避けたい。毎日自力で起きるのはきついし、ご飯を作るのも大変だ。それに、心と喋らないと調子が上がらない。だから、配信の件はちゃんと伝えようと思った。