転生近界民のアカデミア『リメイク』   作:暁月鈴

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思った以上に執筆に手間取りました。
戦闘描写が難しすぎる……


第11話「準決勝」

 

 二回戦最後の試合はバクゴウが勝利を収めた。

 最初こそは、全身を固めたまま攻撃を仕掛けるキリシマにダメージを与えきれずに押されていたバクゴウだったが、キリシマの防御が緩んだ瞬間に爆破によるラッシュを仕掛け、キリシマをあっという間にノックアウトしたのだ。

 

 こうして全ての二回戦が終わり、準決勝第一試合。トドロキVSイイダの試合が始まった。

 

 やはりと言うべきか、騎馬戦の時に使った『レシプロバースト』を開幕から使用して速攻を仕掛けるイイダに対して、トドロキは氷結による拘束を狙う。

 

 迫りくる氷塊全てを危なげなく回避し、イイダは僅か三秒ほどでトドロキとの間にあった距離を詰めると、トドロキが再び氷結を放つよりも先に脳天に向けて蹴りを放ち、地面に打ち倒した。その直後、イイダはトドロキが起き上がる前に体操服の襟ぐりを掴み、場外に向けて走り出す。

 

 やっぱり、イイダは初めから場外狙いのようだな。

 

 このまま進めばイイダが勝つだろうが、トドロキがそう簡単にやられるはずも無く。トドロキはステージの半分ほどの距離を引きずられた所で『個性』を発動させた。

 

「あ」

『捕まったな』

 

 おれとレプリカがそう言うのと同時に、イイダの動きが止まった。トドロキの氷結がイイダの足についているエンジンのマフラー部分を詰まらせたのだ。

 

 トドロキの攻撃は大規模攻撃ばかりだったため、こういった小技は意識から抜けていたのだろう。イイダは動揺し、その場で立ち尽くしてしまう。その隙に、トドロキがイイダに触れると、イイダの顔を除いた全てが氷で包み込まれた。

 

『飯田くん行動不能!! 轟くんの勝ち!!』

 

 イイダが動けないことを確認したミッドナイトが勝利宣言を告げるのと同時に会場は歓声で包まれる。

 

(そろそろ行くか)

 

 ステージ上にある氷が撤去されていく様子を少しの間眺めた後、おれは控え室へと足を運んだ。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

『さあ、続く準決勝第二試合! 普通科、空閑遊真VSヒーロー科、爆豪勝己!! 下剋上を成す普通科ボーイの前に、入試試験一位の実力者が立ちはだかる!!』

 

 周囲からの歓声をよそに、おれは目の前の相手に視線を向ける。

 普通科がここまで勝ち上がってきたことが気に食わないか、バクゴウは怒っていた。両手は震え、顔はまるで般若のようだ。

 おれが一、二回戦と同じ構えを取ると、バクゴウは不敵な笑みを浮かべ、パチパチと火花が散る両手をだらりと下げたまま腰を落とす。

 

『レディ……スタァァァァート!!』

 

「死ねぇ!!!」

 

 バクゴウは開幕と同時に両手をおれの方へと向けると、殺害宣言と共に爆破を放ってきた。爆風と共にステージは抉れ、辺りに爆音が鳴り響く。その一撃をトリオン体への換装を終えた直後に展開したシールドで受け止め、無傷でやり過ごす。

 

 しかし、バクゴウの攻撃がこれで終わるわけもなく。

 

「まだまだ行くぞオラァ!!」

 

 間髪入れず、連続で爆破を放ってきた。どうやらバウゴウは動き回りながら爆撃を行っているようで、四方八方から爆破が放たれる。爆破が放たれるたびにステージはゴリゴリと削れ、発生した土煙が辺りを覆い隠す。

 

 バクゴウの姿を眩ます程の土煙が広がるなかでも、爆撃は止まることなく放たれ続ける。音や光、そしてレーダーに表示される位置情報から爆撃がどこから来るのかを予測し、その位置に合わせてシールドを展開することで爆破を防ぎながら、バクゴウの徹底した立ち回りに関心する。

 

 初手の一撃に加えて、おれの剣の間合いに入らない位置からの爆撃。そして、土煙で自信の姿を隠すことで、反撃されるリスクを減らしている。流石は一般入試一位といったところか、よく考えられた立ち回りだ。

 

『おっと? これは一体どういう事だ!? 空閑がここでまさかの防衛一方! 芦戸、常闇の2人を圧倒して勝ち上がってきたのに、爆豪相手に攻撃出来てねーじゃん! どうなってんだ!?』

 

『仕方ないだろう。今回のルールだと、アイツは先手を取られやすい』

 

『ん? どういうことだ、イレイザー?』

 

『アイツは攻撃するとき、必ず軍服のような服装を着た姿になっている。恐らく、あの姿にならないと武器が使えないんだろう。つまり、アイツが攻撃するときは、最低でも『姿を変える ⇒ 武器を出す』の二つの工程を踏む必要がある。あの爆豪がその隙を見逃すはずがない』

 

『なるほど!!』

 

 実況と解説の声を右から左へと聞き流しながら、おれはこの状況をどう打破しようかと考える。

 ……とは言っても、どうしようか。こっちから攻めるのはやめておいた方がいいな。バクゴウの姿をちゃんと捉えきれない以上、今までのようにあまり怪我をさせることなく一撃で意識を落とすのが難しい。当たり所が悪かったらシャレにならん。

 

 ここは一旦仕切りなおすか。タイミングは……次の爆撃の後がいいかな。

 

ズドンッ!!

 

 おれは爆撃を防いだ直後に、右足でステージを強く踏みつける。重い音と共に発生した衝撃波がステージを揺らし、辺りを覆っていた土煙をほんの少し押しのける。僅かに晴れた視界で捉えたのは、揺れによって足を取られたのかぐらりと体制を崩すバクゴウの姿。

 

 この次はグラスホッパーを使って上に逃げるつもりだったが……予定変更だ。土煙が押しのけられたことで、バクゴウの姿を捉えたおれは床を蹴り、バクゴウの懐へと飛び込む。バクゴウの反射神経を考慮して、今までよりも少しだけ早く。

 

 このままトコヤミを倒した時と同じようにスコーピオンを振るおうとしたが、それは叶わず。バクゴウは不安定な姿勢なのにも関わらず、両の掌をおれの元へと向けてきた。その掌からは、パチパチと火花が迸る。この速度に反応出来るのか、こいつ。

 

 おれはすぐに足を止め、爆撃に備えて前方にシールドを展開する。直後に放たれた爆破がステージを砕き、今回何度目かの土煙が辺りを覆い隠す。

 

 土煙が晴れ、視界が良好になったおれの目は少し離れた位置で片膝をついたバクゴウの姿。動き回りながらの絨毯爆撃に加えて、無理のある姿勢での全力爆破を行ったんだ。かなり体力を使ったのだろう、息は荒く、肩は激しく上下に動いている。

 

 途中で路線変更したが、仕切りなおすことには成功した。向こうが立て直す前に仕留めようと、おれは足に力を込める。さっき防がれたことも考慮して、先ほどよりも速く動こうと一歩踏み出した

 

 ――――その時だった。

 

「おい白髪野郎!! テメェいつまで舐めプかましてんだ!!」

 

 怒りに満ちた表情と共にバクゴウの口から放たれた怒声。それがあまりに予想外なもので、おれは思わず動きを止めた。

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 爆豪勝己は激しい怒りを抱いていた。その原因となるのは、今自身の目の前で驚いた表情で立ち尽くす普通科の少年、空閑遊真だ。

 

 最初は存在すら認知していなかった、普通科の少年。しかしそれが、障害物競争では他を大きく引き離して一位を取り、騎馬戦では終始狙われ続けたのにも関わらず、最後まで1000万を軽々と守り抜き。トーナメントでは芦戸、常闇共に瞬殺で終わらせた。

 

 自分達ヒーロー科を圧倒する実力を有する普通科。自身の目の前に、突然立ちふさがった彼の存在に爆豪は苛立ってしょうがない。それに加えて――――

 

()()()()()()()()

 

 この事実が、爆豪の怒りをより引き出していた。

 

 完膚なきまでの一位を取るという、この体育祭における爆豪の目標。この目標を達成するためには優勝するのは勿論のこと、対戦相手の全力を上からねじ伏せる。要は本気を出した相手に勝つ必要がある。

 

 だというのに、遊真は本気を出す素振りを一切見せない。彼が本気でないことなど、その目を見れば一目瞭然だ。

 

「俺が欲しいのは完膚なきまでの一位なんだよ! 舐めプのクソカスを倒しても、何の意味もねぇ!! 全力で来ねぇと、意味がねぇんだよ!!」

 

 だからこそ、未だにポカンとした表情をする遊真に向けて、爆豪は吠えた。

 

「だから、全力で来やがれ!! テメェの全力を俺にぶつけて来い!! それを俺が、上からねじ伏せる!!」

 

 完膚なきまでの一位を取るために、遊真に本気を出させるために。

 

 爆豪の叫びを聞いた遊真は一度小声で、何かと対話する様子を見せると目を閉じる。軽い深呼吸の後に、ゆっくりと開かれた瞳は酷く冷え切っており、今までにない凄みを感じられた。

 

「「……っ!!」」

 

 遊真の纏う雰囲気の変化を間近で感じ取った爆豪とミッドナイトの二人は揃ってピクリと身体を震わせる。ようやくその気になったかと、爆豪は凶悪な笑みを浮かべ、改めて構えを取る。

 

 そして、自然体のままだった遊真が一歩踏み出した――――次の瞬間。

 

「がっ!!」

 

 爆豪の右足に激痛が走った。痛みを堪えつつ、今も痛みを訴える右足に視線を向けると、そこには無機質な赤い瞳をこちらに向け、右足に刃を当てている遊真の姿が。

 今までとは比にならない速度で攻撃を仕掛けた遊真に爆豪は動揺を見せるが、それも一瞬。すぐに意識を切り替えて、反撃しようと掌を遊真の元へと向けようとするが、その時にはそこに遊真はいなかった。遊真は爆豪が反撃するよりも先に、爆豪の背中から回り込むように左側へと移動し、爆豪のがら空きの左足を目掛けて右足と同様に、刃を落としたスコーピオンを叩きこんだ。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!??」

 

 右足に続き左足にもダメージを負い、立っていられなくなった爆豪はステージに膝をつく。痛みに悶える爆豪の腹に、遊真は容赦なくグラスホッパーの勢いを乗せた蹴りを見舞う。

 

「ゴッ!!」

 

 ただでさえ高いトリオン体の身体能力に加えグラスホッパーの勢いを追加した蹴りは、意図も容易く爆豪を吹き飛ばす。口から胃酸を吐きながら何度も地面に身体をぶつけつつも、爆豪は気合いで爆破を放ち、何とか蹴り飛ばされた勢いを殺すことに成功する。

 

 場外負けを回避した爆豪はボロボロの身体に鞭を打って顔を上げると、今度は大量のグラスホッパーが自身を取り囲むように配置されていることに気づいた。

 その内の一つに遊真が足を乗せると――――

 

 

キュパパパパパパ

 

 遊真は残像が見えるほどの速度で、爆豪の周囲を跳ねまわった。すれ違いざまに叩き込まれる刃が、爆豪の腕や胴体といった身体中のあらゆる箇所に傷を付ける。この包囲から抜け出そうにも足は痛みで動かせず、反撃をしようにも複雑な起動を描いて跳ねまわる遊真を捉えることが出来ない。

 

「ああああああああーッッ!!」

 

 目で追えないならと、爆豪の取った行動は広範囲の爆破攻撃。放った爆破が周囲のグラスホッパーを打ち消したことで、爆豪は何とか脱出することに成功した。

 

 全身が傷だらけになりながらも顔を上げた爆豪だったが、その視界はすぐに黒で塗りつぶされた。遊真が爆豪の顔を覆い隠すように、右手でアイアンクローを決めたのだ。更に――――

 

「カハッ……」

 

 そのまま爆豪の頭を勢い良くステージに叩きつけた。ただでさえボロボロだった爆豪はこの一撃を受けたことで完全に意識を失い、この場から動くことは無かった。

 

 

 

 これにて、準決勝第二試合が終了した。

 結果は、空閑遊真の圧勝である。しかし、あまりに壮絶な試合内容を前に、会場にいる誰もが言葉を失っていた。

 

 そんな中でも生徒の心配が勝ったのか。真っ先にイレイザーヘッドが声を上げた。

 

『……おいミッドナイト、今すぐ爆豪を婆さんの所まで運べ! 早くしないとヤバい事になるぞ!』

 

 その言葉を受けて我に返ったミッドナイトが、大怪我を負った爆豪を救護ロボに乗せ、リカバリーガールの元へと搬送する。その直後にミッドナイトの勝利宣言が行われると、会場は再び騒がしくなる。

 

 会場にいる誰もが、改めて遊真の実力を認識する中。当の本人は周囲から突き刺さる視線をなんてことないように無視してステージを後にした。




今回遊真の使用した技

「乱反射(ピンボール)」
 敵の周囲に多数のグラスホッパーを設置し、周囲を三次元的に飛び回ることで敵を攪乱する。
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