6月中に出したかったのですが、執筆に時間がかかってしまいました。
アンケートを取った結果、1人称と3人称使い分ける形に戻すことにしました。
読者が読みやすいような構成をまだまだ模索中なので、アドバイスとかあれば、コメント欄にでもぜひお願いします。
また、前回のお話の最後、校長先生からの「提案」の部分を「お願い」に変更しています。
とまあ、いつも以上に前置きが長くなりましたが、今回のお話、楽しんでいってくれると嬉しいです。
――――ヒーロー科で実施される職場体験に参加して欲しい。
根津校長からそんなお願いをされた遊真の脳裏に、1つの疑問が浮かび上がる。その疑問とは「どうして参加して欲しいのか」というものだった。
そもそも、この職場体験というものはヒーロー科で実施されるというだけあり、その体験内容も分かりやすくヒーローになるために行うものだ。しかし、ヒーロー科への転科を断ったことからも分かるように、遊真は『ヒーローになりたい』とは思っていない。
なぜなら、遊真にはヒーローになる理由や、目的がないのだから。
だというのに、どうして根津校長は職場体験への参加をお願いしたのだろうか。その理由を遊真は自分なりに考えてみるのだが、「コレだ」と納得のいく答えは出てこない。
だから遊真は直接問いかけた。参加して欲しいその理由を。
「一言で言うと、君に『職場体験に来てほしい』と願うヒーロー事務所がたくさんあるから、なのさ。」
その質問に対する回答として帰って来たのは、参加して欲しいと願う人が多いからというものだったが、その説明に遊真の
不快感からほんの少し眉を顰める遊真をよそに、根津校長は机の引き出しから『ヒーロー事務所 指名一覧』と記載された紙束を取り出すと、その紙束を遊真へ差し出した。遊真がその紙束を受け取ったのを確認した後、根津校長は説明を続けるが――
「これはね。一昨日の体育祭の結果から「君に職場体験に来てほしい」と願っているヒーロー事務所を全て纏めたものさ。職場体験の参加先は、指名を頂いたヒーロー事務所の中から選択することになっていてね。その中でも君の指名数は5,237票とぶっちぎりn」
「で、ホントの理由は何なんだ?」
――その説明は、どこか苛立ちの含まれた遊真の声によって遮られた。
つまらないウソをつかなくていいから。そう言いながら根津校長をじっと見つめる遊真の瞳孔は真っ黒に染まり、その姿からは体育祭で見せたような得体のしれない何かを感じられた。その圧力を前に、この場にいる者達は思わず息を吞む。
緊迫した空気が漂う中、1人の教師が声を上げた。
「校長。やはり正直に話した方がいいのでは? 彼を相手に嘘を吐いても意味が無いでしょう。」
マフラーのような物を身に着けた人物に、イレイザーヘッドにそう言われた根津校長は、一度考え込むかのように腕を組む。そして嘘を吐いたことに対する謝罪をすると、酷く申し訳なさそうな表情で説明を始めた。参加して欲しいと願う、本当の理由を。
「……実は体育祭を見た"上"の人達が君に目を付けていてね。
(ああ、なるほど?)
その説明を聞いて、根津校長の言いたい事を理解した遊真は「そういうことか」と呟いた。参加して欲しいと願った本当の理由、それは―――
「―――形だけでも向こうの指示に従うことで、その"上"の人間の介入を抑制したいと……そういうことか?」
「そういうことさ。形だけでも答えた方が僕らとしても助かるし、君のためにもなると思うんだ。」
そう言うと根津校長は椅子から立ち上がり、遊真に向けて頭を下げた。
「どうか、職場体験に参加してくれないかい?」
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……そっちも大変なんだな。
参加して欲しいと願う本当の理由を聞き終えたおれはそんなことを考えていたが、すぐにその思考を片隅へと追いやり、職場体験に参加するかどうかを考える。
とはいえ、答えは「参加する」の一択だろう。"上"からの介入なんて面倒なことは避けたいし、体験してみるのも悪くないだろう。ヒーローの仕事を間近で見る機会なんてこの機会を逃したらめったにないだろうからな。
おれは職場体験に参加することを校長先生に伝えた。
「ありがとう。そう言ってくれて助かるよ。それじゃあ、この資料は渡しておくから、今週末までに希望する事務所を決めて提出するようにね」
了か……ん? ちょっと待て今週末? 今日って木曜日だよな。……じゃあまさか。
「この数の中から2日で決めろと?」
「うん、急な要求でほんとにごめんね。だけどこちらも忙しいから、出来るだけ早く決めてほしいんだ。」
提出期限の短さには驚いたが、冷静に考えてみれば2日もあれば十分だろう。そんなことを考えながら一礼をして、職員室を後にする。そして、資料の内容をしっかりと確認するために教室へと向かおうとして―――
「……そう言えは、昼ごはんまだだったな。」
『ぐぅ』という音と共に空腹を感じて足を止めた。確認の前にまずは何か食べようと、おれは体の向きを変え、食堂へと向かった。
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そして時は流れ、放課後。
いつもなら帰路を辿っているであろうこの時間に学校に残ったおれは、体験先をどこにするかについてレプリカと話し合っていた。
「とりあえず、ヒーロービルボードチャートだっけ? その順位が低いヒーローは除外しようか。多分、そこに行っても退屈しそうだし。」
『なるほど。そうなると体験先はトップ10~20あたりのヒーローにするのが無難だろう。』
「だな。えーと、この中でその順位に入っているヒーローは……っと。」
おれはランキングのトップ20に入っているヒーロー事務所がどれなのかを調べようと、スマホを取り出した。―――そのときだった。大きな声で、誰かが声を掛けてきたのは。
突然聞こえてきた声に手を止めて、その声が聞こえてきた方へと視線を向ける。そこにいたのは、雄英高校の制服に身を包み、ねじれた水色のロングヘアをした一人の女性だった。
その人を見て驚いた。この人、たぶん相当強い。ニコニコと笑うその姿からは想像できないが、実力はその辺のヒーロー以上。今のヒーロー科1年生全員を纏めて相手しても余裕で勝利できるだろう。
そんな彼女は笑顔を絶やさずに真っ直ぐおれの所まで歩み寄ると、反対側の机から身を乗り出して、マシンガントークの如く話し始めた。
「ねえねえ君でしょ! 体育祭で大活躍した普通科って! 私はヒーロー科3年生の波動ねじれ! 気軽にねじれちゃんでいいよ!! それでさ、どうしてそんなに髪の毛真っ白なの? 体育祭の時一瞬で服装が変わってたけど、あれはどういう仕組みなの? それからね!」
簡単な自己紹介の後に続く質問の嵐に戸惑ったが、その質問攻めは朝にも対応したため慣れており、1つ1つ質問に答えていく。何というか、先ほどまで警戒していたのが馬鹿らしく思えてきた。そのまま会話をつづけていると、ネジレチャンの興味は机に置いたままだった資料に移ったようで、今度はその資料について聞いてきた。その質問に答えようとして―――思いついた。
「ところでネジレチャン、1つご相談なのですが。」
3年生のせんぱいなら、おれよりヒーローに関する情報を持っているだろう。
そう考えたおれはこの資料が何なのかを説明した後、ネジレチャンに資料を渡し、体験先をどこにしようか悩んでいることを伝えた。笑顔を浮かべながらその説明を聞いていたネジレチャンは、おれが説明を終えると同時に、受け取った資料を後ろの方からパラパラと捲りだした。その後、お目当てのものを見つけたとばかりに目を輝かせ、1つのヒーロー事務所の名を上げた。
「あったあった! じゃあさ、私がインターンしている所に来ない?」
「インターン? ネジレチャンが?」
「そう! リューキュウ事務所!!」
そう言って、ネジレチャンは資料を机に広げると『リューキュウ事務所』と書かれている場所を指さした。
調べてみると、どうやら『ドラゴン』に変身する個性を持ったヒーローらしい。
……なるほど、いいかもなここ。ランキングもトップ20に入っているし、かなりの実力者であろうネジレチャンからのお墨付きときた。
「それならここにしようかな。アドバイスありがとうございます。」
「いいよいいよ! 私、先輩だからね! それじゃあ、君が来るの楽しみにしてるね!!」
ネジレチャンはそう言うと、上機嫌に手を振りながら軽い足取りでテクテクとこの場を離れていく。おれはその後ろ姿を眺めた後、体験先を記した紙を提出するために職員室へと足を運ぶ。
こうして書類は無事に提出され、おれの職場体験先は決まったのだった。
はい。というわけで、今回のお話はリメイク前とは大きく変わっています。
主な変更点としては『波動ねじれの登場』と『体験先の変更』の2つです。
遊真をヒーローと関わらせるために、ねじれちゃんを参加させました。好奇心旺盛なねじれちゃんなら、普通に遊真に会いに行きそうなので、ヒーロー科との接点を持たせるにはちょうど良かったんです。
また、それに伴い体験先もリューキュウ事務所へと変更しました。情報が少なすぎるヨロイムシャより書きやすそうというのも理由としてありますが。
評価や感想、誤字脱字の報告なども書いていただけると嬉しいです。
それではまた次回。