第4話「体育祭」
校内に侵入してきた二人の
雄英高校にある施設の一つ『USJ』で、ヒーロー科一年A組が授業を行っている最中に、おれが戦った二人の
オールマイトの殺害を目的に現れたそいつらは
この事件は瞬く間に世間へと広がり、今もなお「USJ襲撃事件」という名で報道されている。その内容は、雄英のセキリュティに対する不信感や
この前代未聞の事件のこともあり、翌日の学校は臨時休校となった。特に予定も無かったため、午前中は課題を。午後は戦闘訓練を行うことで時間を潰した。
そして翌日。学校のHRの時間にて。
「―――そして、これが一番大事なことだが……二週間後に、雄英体育祭を開催する」
担任の先生から体育祭を行うことが告げられた瞬間。クラスの皆は騒ぎ出した。そんな騒ぎを余所に、おれはレプリカに小声で質問した。
「レプリカ。雄英体育祭って?」
『一言で言えば、規模の大きな体育祭だ。その規模は、前世で言うとオリンピックにも匹敵するほどで、競技の様子はテレビで生放送される』
――――ほう。そりゃすごいな。
その規模の大きさに思わず感嘆の声を漏らす。だが、あんな大事件があった後にそんな大規模な体育祭を開催する余裕はあるのだろうか?
同じことを考えていた人がいたのだろう。クラスの一人が開催しても大丈夫なのかと質問した。その問いに対して先生は、逆に開催することで、雄英の危機管理が盤石であることを世間に示すと答えた。それに、この体育祭はどうやら、ヒーロー科の生徒。またはヒーロー科への編入を目指す生徒にとっては欠かせない行事らしい。
この体育祭で良い結果を出した生徒には、プロヒーローからのスカウトが入り、ヒーローへの道がぐっと広がるとのこと。また、リザルトしだいでは、他の科の生徒がヒーロー科へ編入することも認められているようで。だからなのか、うちのクラスメイトの何名かの目つきが何時にもまして鋭く感じる。
そしてHRも終わり、この日の授業が始まった。
この日の授業が全て終わり、放課後。
「あ゛ー……疲れた」
休校の影響もあってか、いつも以上に速い授業のスピードにクタクタになったおれは、教室の机の上で突っ伏していた。いくら前世の記憶があるとは言え、このペースの授業はかなりきつい。やっぱり、夜は戦闘の復習だけではなく、学校の予習の時間も入れたほうがいいかもな。
そんなことを考えているうちに帰りのHRも終わり、さっさと帰ろうと席を立つ。そのとき、おれはあることに気付いた。
――――クラスメイトが皆して帰る素振りを見せず、一塊になって行動していることに。
辺りを見渡してみれば。一人、また一人と荷物を持たずに席を立ち、校門とは別の方向へと足を進めている。
「レプリカ。あいつらどこに向かってるんだ?」
『彼らの進行方向にあるのは、A組の教室だ。目的は恐らくヒーロー科の偵察だろう』
なるほど。確かに対戦相手の情報を集めるのは大事だが、意味あるか?それ。
あんなに大人数で偵察したら流石にバレるし、するにしても、戦闘の様子を。放課後の自主練習とかを見ないとダメだろう。
行く意味がないと判断したおれは、そのまま荷物を纏め、学校を後にした。
そして、二週間の時が流れ。体育祭当日。
予め指定されていた控え室で、思い思いの行動を取るクラスメイトの皆をのんびりと眺めながら、開催の時を待っていた。……ただ
(まあ、予想通りの雰囲気だなぁ)
ヒーロー科の引き立て役として使われるからだろうか。目に見えてやる気の無い人だったり。二週間前の偵察時に何を言われたのか、物凄く不機嫌そうな人だったりと、場の雰囲気はかなり悪い。
そんな雰囲気の中でも時間は刻々と過ぎていき、とうとう入場の時間がやって来た。入場門の近くへと移動すると、いくつかのクラスが既に並んでいた。
そして、学年全員が集合した、その直後。会場に設置されたスピーカーから聞き覚えのある声が響き渡る。
『さあさあさあ! 刮目しろ、オーディエンス!! 群がれ、マスメディア!! いよいよ、雄英体育祭が始まるぞ!!! この一年ステージで戦いを繰り広げる選手の入場だぜ!!!』
その声の主は、おれが学校に侵入してきた
『雄英体育祭!! ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせお前らあれだろ、こいつらだろ!? 敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星――――』
と、ここで一泊置き。これから入場するクラスの名が、先ほど以上の大きな声で放送された。
『ヒーロー科!! 一年!!! A組だろぉぉ!!?』
そのアナウンスと同時に、A組が会場へと足を踏み入れる。そして、その瞬間。アナウンスの声に負けないほどの大きな歓声が会場全体に響き渡った。それに続くかのように、カメラのシャッター音が止まることなく聞こえてくる。
『A組だけじゃない! 話題性には劣るが、こっちも精鋭揃いだ!! ヒーロー科一年B組!! 続いて普通科C・D・E組! サポート科のF・G・H組も来た! そして経営科……!』
先ほどのA組の紹介と比べると、その紹介はあまりにも雑すぎて。観客の歓声も先ほどと比べて小さく感じる。そのせいか、クラスの雰囲気がさらに悪くなる。それは他の普通科、B組ヒーロー科も同じのようで、何名かはそろいもそろって顔を顰めていた。
その一方で。サポート科、経営科のクラスの雰囲気は悪くなく、平穏そのものだった。何か理由でもあるのか?
『A組に対して敵対心を抱いてないからだろう。そもそも体育祭に対する熱意がないか、参加する目的がヒーロー科や普通科とは全く違うことが理由だろう』
ふむ。確かに周りを見れば、B組のヒーロー科の生徒と普通科の生徒の何人かはA組のことを警戒するかのようにチラチラとみているのに対して、サポート科と経営科は一切A組に視線を向けていない。
そうして、すべての生徒が壇上前に並ぶと、鞭を持った一人の女性が壇上に現れた。
「選手宣誓!!」
全身をピチピチのタイツで包んだその女性の名はミッドナイト。刺激の強すぎるその恰好に、男子生徒の何名かが顔をそらし、18禁なのに高校にいてもいいのかという、疑問の声まで聞こえてくる。
そんな生徒の声を静かにするよう言って沈めた後に、一人の生徒の名を呼んだ。
「選手代表!! 一年A組……爆豪勝己!!」
そして壇上へと歩を進めるのはどこか不良を彷彿とさせる一人の少年の姿。人混みをかき分けながらズカズカと歩むバクゴウに対して、嘘でしょと驚く声と、入試一位だからなぁと呆れ混じり呟く声が聞こえる。入試一位という声に対して、ヒーロー科入試のなと不機嫌そうに吐き捨てる声まで聞こえてきた。
そうこうしているうちにバクゴウは壇上に上がり、設置されたスタンドマイクの前に立つ。そんな彼を見上げる、同じクラスのA組の生徒の大半はどこかソワソワとしていた。何かしらのお願いをしている人もいる。
そんなA組の反応を疑問に思いつつ、おれはバクゴウへと視線を戻す。そして、
「せんせー……俺が一位になる」
彼はいきなり優勝宣言を行った。突然の優勝宣言に場は一瞬の静寂で包まれ、その直後。
会場はブーイングの嵐で包まれた。「調子に乗るな」や「ふざけんな」。「ヘドロやろー」といった罵声が主にB組や普通科の生徒から聞こえてくる。反対に、A組の生徒たちはどこか諦めたような表情をしていた。
そんなブーイングなど知ったことかと言わんばかりに「せいぜい跳ねの良い踏み台になってくれ」とバクゴウは自身の親指で淡々と首を掻っ切る動作を行い。その行動が、さらにブーイングを加速させる。そんな周りの反応を見て、宣誓させる人選ミスってないかと、心の中でそう思った。
「さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう! いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が
バクゴウが元いた場所へと戻り、ブーイングが鳴りを潜めた所でミッドナイトが進行を進める。
彼女の背後に設置されたスクリーンの画面がスロットのように回転し、止まる。画面には、障害物競走の文字がデカデカと表示された。
ルールは全クラスが参加し、二回戦への出場権をめぐる争奪戦。スタジアムの外周およそ4㎞がコース。そしてこの競技一番の肝は
ミッドナイトがスタート位置につくように促すと、ヒーロー科。そして普通科の生徒たちが少しでもスタート位置に近い位置を取ろうとして、あっというにゲートの前は人で溢れかえり、押すな押すなといった声が聞こえてくる。……というかゲート小さいな。絶対にこの人数が通ること想定してないだろ、あれ。
その光景を目にしたおれは、あえて後ろの方に陣取ることにした。今考えていることをやるのなら、人が少ない所の方が都合が良い。
そうして、近くに人がいない位置で足を止めた後、体操服の右ポケットに手を入れ、そこに入れてあるトリガーを取り出し、握りしめる。顔を上げると、ゲートに備え付けられたライトが一つ、また一つ音を立てて消えていく。そして最後。三つ目のライトの光が消えたと同時に。
「スタートッ!!!」
ミッドナイトが手にした鞭を振り下ろしながら声を張り上げ、スタートの合図を出した。
その直後、あっという間にゲートは人でいっぱいになる。その光景を眺めながらおれはニッと笑みを浮かべ――――
「さーて、いっちょやるか……トリガー、
玉狛の隊服を身に包み、おれは行動を開始した。