『さあ、ついにヒーロー科の奴らも最終関門に到着したぜ!! 先頭では轟と爆豪による二位争いが勃発中!! 制するのはどっちだ――――って、何だ何だ!? 後方でいきなりの大爆発発生!!』
おれがゴールしてからそれなりの時間が経過し、ようやく後ろにいたやつらも最終関門に入り込んできた。中でも、先頭で繰り広げられるトドロキとバクゴウによる二位争いはモニターにも大きく表示され、実況を行うプレゼントマイクの声にも熱が入る。
そんな中。はるか後方、最終関門の入り口付近で突然の大爆発が発生する。かなりの数の地雷が爆発したのだろう。爆発した一帯を覆い隠すほどの、大量の桃色の煙が辺りに立ち込める。
そして、ロボットの装甲にしがみついたままの緑色の髪をした少年が一人。立ち込める煙を引き裂きながら宙を舞い。一気に先頭へと躍り出た。
『A組の緑谷、爆発で猛追――……つーか、抜いたァァァ!!!』
後から判明したことだが、どうやらあいつは周辺の地雷を片っ端から搔き集め、それを自ら起爆させることで生み出した爆風を第一関門のロボットの装甲で受け止め、その勢いのまま空を飛んだようだ。
……よくあんな事をやろうと思ったな。ミスったらヤバかっただろ、あれ。
こうして先頭に躍り出たミドリヤだが、そのスピードは徐々に遅くなっていく。トドロキとバクゴウの二人はそんな彼を追いかけ、二人がミドリヤを追い抜いた、その瞬間。
ミドリヤは空中で体制を整えると、持っていた装甲を大きく振りかぶり、地面に勢いよくたたき付けた。結果、またも複数の地雷が起爆し、大爆発を引き起こした。突然の爆発にトドロキとバクゴウは体勢を崩すが、再び爆風を利用したミドリヤは宙を舞い、最終関門を飛び越え、地面に転がるように受け身を取って着地すると、地面を蹴って駆けだした。
『緑谷、間髪入れずに後続妨害! なんと地雷原即クリア! お前のクラス、どんな教育してんだイレイザー!!』
『おれは何もしてねぇよ』
「アイツらが勝手に火をつけ合っただけだ」そうぼやくイレイザーヘッドに対して、プレゼントマイクと観客の皆は反対にワイワイと盛り上がっている。そして、ついにミドリヤがゴールゲートを潜り抜けたとき
『二位争いも、ついに決着! その座をつかみ取ったのは轟でも、爆豪でもなく、まさかの彼!! A組ヒーロー科、緑谷出久だァァァ!!』
予想外なことをやってのけたミドリヤに対して、おれは素直に拍手を送り。観客席からは一層大きな歓声が贈られる。そんなミドリヤに続くかのようにトドロキ、バクゴウと後続の人達も次々とゴールしていく。その顔ぶれは、やはりヒーロー科の生徒だらけだ。それに、ゴールした人達は皆しておれの方へと視線を向けてくる。特に、トドロキとバクゴウに至っては険しい顔をしており、向けられる視線には負の感情すら混じっている。ここまで注目されるのは、この種目で一位の座をつかみ取ったからだろう。……皆が雄英指定のジャージを着ている中、一人だけ玉狛の隊服なのも理由かもしれないが。
「予選通過者は上位42名!! 残念ながら落ちちゃった人も安心なさい! まだまだ見せ場は用意されているわ!!」
競技に参加した全生徒が走り終える。またはリタイアした所で第一種目が終了した。予選通過者のうち39人がヒーロー科で、残りの三人のうち二人は普通科。一人はサポート科の人だった。
ヒーロー科でただ一人、予選を通過することが出来なかったであろう特徴的なベルトを腰に巻いた妙にキラキラとした少年は目に見えて落ち込んでおり、障害物競走で蛙のような動きをしていた少女がそんな彼を慰めていた。
「そして次からいよいよ本番よ! ここからは取材陣も白熱してくるよ! キバりなさい!!! さーて、第二種目よ! 私はもう知っているけど~~何かしら!? 言ってるそばから…コレよ!!」
ミッドナイトの背後にあるスクリーンの画面が再びスロットのようにクルクルと回り、『騎馬戦』の文字が映し出される。……寄りにもよってチーム戦かよ。しかも、蹴落とし合った後に。
チーム戦で最も重視されるのはチーム同士の"連携"だとおれは思っている。チーム全体の地力が低くても連携一つで格上から勝ちを引くことだって可能だ。だからこそ、おれにとってこの種目は目に見えて不利だ。
本選に出場する人の中でおれと仲のいい人は誰もいない。つまり信頼も何もないわけで、そんな人達と連携することは難しいだろう。
そんなことを考えている間にも、この競技の説明が続く。
まず、競技時間は十五分で、参加者は二人から四人までの騎馬を自由に組んで、チームを作ること。
基本的なルールは普通の騎馬戦と同じで、違うのは各生徒達に先の障害物競走の順位に従ってポイントが割り振られること。騎馬を組んだ生徒達のポイントを合計したものがその騎馬のポイント数となる。つまり、より多くのポイントを入手したチームが勝ちということだ。分かりやすくて助かる。
そして、この騎馬戦はポイントが無くなっても、騎馬が崩れてもアウトにはならず、競技を続行できる。但し、悪質な崩し目的の攻撃は一発で退場になるとのこと。
そして、肝心の与えられるポイント数は、42位なら五ポイント、41位なら十ポイントといった具合にしたから順に増加していく仕組みのようだ。
「――そして、一位に与えられるポイントは……」
「1000万!!!」
いや、ちょっと待て。
突然跳ね上がったポイント数に、思わず心の中で突っ込みを入れる。そんなおれの心境など知ったことかとばかりにミッドナイトは笑みを浮かべながら続ける。
「上位の人ほど狙われちゃう、下剋上のサバイバルよ!!!」
(チームを組む難易度がめっちゃ跳ね上がったな、これ)
周囲の人達から突き刺さる、獲物を狙う肉食動物のような視線を感じながら、おれはため息をついた。
ルール説明が終わり、チームメンバーを決めるための交渉の時間となった。だが……
(まあ予想通り、だな……ホントにどうしよっか)
案の定と言うべきか、周りにめちゃくちゃ避けられていた。開幕から狙われることが確定しているほどに規格外なポイントを所持している上に、上手く連携できるかも分からない。そんな人とチームを組みたがる人なんてなかなかいないだろう。とはいえ、このままでは失格待ったなしだ。流石に失格負けはいやだから、何か打つ手はないかと考える。
(ラービットに騎馬をさせるっていうのは……ルール的にダメだよな)
この騎馬戦のルールは「参加者は二人から四人までの騎馬を自由に作ること」 人ではないラービットでは人数不足でアウトだろう。……いや、ちょっと待てよ。
――――参加者は、二人から四人までの騎馬を
この時おれは、ある一つのアイデアが頭に浮かんだ。ルールの穴をつくような行為だが、今抱えている問題を全て解決できる。
にやりと笑みを浮かべ、ある人物に声をかけようとした、その時だった。
「ふふふ……良いですね。目立ちますね……! 私と組みましょう! 一位の人!!!」
その声と共に突然目の前に現れたのは、トレッドヘアーのように纏まった癖のあるピンク髪にスコープのようなゴーグルを身に着けた少女だった。
「私、サポート科の発目明と申します! 貴方のことは知りませんが、立場を利用させてください!」
彼女は、メイはそう名乗ると同時にこちらへと詰め寄り、そのまま止まることなく話し続ける。
「貴方と組むと、必然的に注目度がNo.1になるじゃないですか?現に貴方、観客の方々に滅茶苦茶注目されてますし! それでですね、私のベイビーも目立つ訳です!! そうすれば、大企業の目にそれが入る可能性が高くなる! 勿論、貴方にもメリットはあると思うんです!」
「お、おお?」
何を言っているんだろうか、こいつは。
自分の言葉で話すメイに困惑していると、レプリカが言いたいことを翻訳してくれた。
『"ベイビー"というのはおそらく、メイが自ら製作した発明品のことだろう。今一番注目されているユーマに自身の発明品を活用してもらい、自身の発明品を大企業の目に止まらせたい。ということだと思われる』
ああ。そういうことか。
「要はおれを利用したい、と」
「はい!!」
悪びれる様子もなく答えるメイを見ながらおれは思考する。
正直、選択肢としては悪くない。むしろ、かなりいい方だ。その理由は大きく二つ。
一つは、目的と貢献するための手段がはっきりしていること。もう一つはメイの言葉にウソが全く無かったことだ。おれが出した答えはもちろん
「それじゃあ、よろしくな、メイ」
「はい、こちらこそ! では早速、私自慢のベイビー達をお見せしますね!!」
そう言って、所持しているサポートアイテムの解説を始めようとするメイを「あともう一人チームに誘うから、少し待ってほしい」と言って宥める。
「もう一人、ですか? ですが、他に誘えそうな人は見当たりませんよ? 一体だれを誘うつもりなんです?」
「ああ。それはな――――」
『十五分間のチーム決めと作戦タイムを得て、いよいよ騎馬戦の始まりだァー!! 大注目はなんといっても、普通科の身でありながらヒーロー科を圧倒して見せた少年、空閑遊真のチーム……って、待て待て待て待て! それありかァ!?』
プレゼントマイクは驚いていた。空閑遊真の予想外なチームメンバーに。
そんな予想外な空閑遊真のチームメンバーは騎手一人と騎馬二人の三名。
騎手は発目から受け取ったサポートアイテムを装備した空閑遊真。
後ろ馬は同じく自身の作成したサポートアイテムを装備した発目明。
そして前騎馬は特徴的なベルトを腰に巻いた青山優雅。
そう。空閑がチームに誘ったのは、ヒーロー科で唯一予選落ちした少年。青山優雅だった。
予選落ちした人と組むという予想外な行為だが、別にルール違反ではない。今回の騎馬戦のチームの組み方は、参加者は二人から四人までの騎馬を自由に組むこと。自由に組んでも良いと明言されている上に、参加者だけで騎馬を組めとは言われていない。
そして、彼が青山を誘った理由は二つ。一つは遠距離攻撃手段が欲しかったこと。もう一つはチームを組むメリットを提示出来ることだ。
ヒーロー科が体育祭に参加する目的は己の実力をプロヒーローにアピールすること。一応はレクリエーションがあるものの、観客はおまけ程度にしかそれを見ない。だからこそ、彼は青山をチームに誘った。
『ああ、そういうことか。確かにルール違反ではないな』
イレイザーヘッドも気づいたようで、青山をチームに加えることがルール違反でないことを説明する。最後に「ミッドナイトさんも何も言わない辺り、青山の参加を認めてるんだろう」と言ってミッドナイトの方に目をやると、ミッドナイトはOKマークを手で作って答える。
『なるほどなァ。そんじゃあ、改めて初めて行こうか!! さァ上げてけ鬨の声! 血で血を洗う雄英の合戦が今! 狼煙を上げる! 準備はいいかなんて聞かねぇぞ!! それじゃあ行くぜ、残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』
その言葉と同時に、周囲の騎馬は空閑のチームに視線を向け。
『3! 2!! 1!!!』
空閑は周囲を警戒しながら、開始の合図を待つ。
『START!!!』
ゴングが辺りに鳴り響き。雄英体育祭第二種目、騎馬戦が今、始まった。
リメイク前と違う要素
青山優雅、騎馬戦に参戦!!
※ちなみに最初は青山じゃなくてミッドナイトを参加させようと思ったりしました