転生近界民のアカデミア『リメイク』   作:暁月鈴

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第7話「騎馬戦②」

 

「つってもよぉ! 実質、それ(1000万)の争奪戦だ!!」

 

「はっはっはー! 悪いけど、頂いちゃうよー!!」

 

 スタートと同時に無数の騎馬が飛び出し、1000万を奪い取ろうと迷いなく、おれ達の元へ突き進んでくる。その表情は真剣そのもので、油断する様子は見られない。

 真っ先に仕掛けてきたのは、競技開始前におれ達の近くを陣取っていた二つのチーム。一つは声だけしか聞こえない人(声からしておそらく女性だろう)を騎手にしたチーム。もう一つは髪の色が灰色の少年を騎手にしたチームだ。

 

「まずは二騎か。思ったより少ないな……ユウガ」

「OK☆」

 

 1000万なんて規格外なポイントを持っている時点で、開幕からポイントを狙われ続けることになることは想定内。なんなら、もっと数が来ると思っていた。おれは焦らずユウガに声を掛け、レーザーを騎馬の足を目掛けて撃ってもらう。

 相手の個性をまだ把握できていない以上、うかつに接近すると手痛い反撃を受ける可能性がある。おれ一人だったらよけきれるだろうけど、メイとユウガが巻き込まれるのはマズい。

 

 だからこそ、反撃されても対処しやすいであろう射撃はかなり安定した牽制手段だ。

 

 目論見通り、ユウガのレーザーは迫りくる騎馬の足を鈍らせる。その隙におれはメイから受け取った捕縛銃を素早く構え、二連発。捕縛銃から放たれた弾丸は、空中で弾けネットへと変化し、二つのチームに覆い被さる。

 

「うわっ、何このネット!? 全然解けないんだけど!?」

 

 二つのチームはネットから抜け出そうと必死にもがくが、抜け出せない。暴れれば暴れるほど、逆にネットは身体に纏わりつく。

 

「ふっふっふっ……そのネットは滅茶苦茶丈夫に作られているんです! その強度は異形型や増強系の方のパワーにも耐えるほど!! 更に、暴れれば暴れるほど体に絡みつくオマケ付き!! しっかり時間をかけて解くことをお勧めしますよ!!」

 

 自作のサポートアイテムが活躍したことが嬉しいのか、メイは上機嫌にネットの説明をする。しかし、その最中に、地面に異変が起こる。

 突然、地面が沼地のように、ドロドロに変化した。メイとユウガは抜け出そうと必至に足を動かすが、沼から足が出ることはなく、逆に沈んでいくばかり。

 

 この攻撃は、いったいどこから来たのか。辺りを見渡すと、その答えは以外とすぐに見つかった。先ほどメイのネットで捕まえたチームの内、灰色の髪の少年がいたチーム。その前騎馬の、歯がそのまま剝き出しになった少年が地面に手を付けており、地面はそこを始点に変化していた。

 

「けっ、動けねぇならそっちの動きも止めてやる。塩崎!!」

「お任せください!!」

 

 前騎馬の少年がそういうと同時に、植物のツルのような髪をした女性の髪が伸び、網の隙間を抜けて、こちらへと迫ってくる。おそらくこのツルが、シオザキという人の個性だろう。

 迫りくるツルを見据えながらスコーピオンを起動。ポイントを奪い取ろうと伸びてくるツルを全て切り落とし、この場から脱出するために背中のジェットパックを起動する。

 

 背中のジェットパックとメイとユウガの足からジェット噴射が放出されると、メイとユイガの足はズボリという音を立てながら地面から引き抜かれた。そのままおれ達は空へと舞い上がり、この場から離脱する。

 

『飛んだーッ! 空閑チーム、窮地を脱出!! さっきの銃といいジェッパといいすげぇな、サポート科!!』

『アイテムを存分に使えるサポート科の強みを十分に生かしているな』

 

 二人の実況、解説の声に、観客からも歓声が上がる。メイも、自身のサポートアイテムが評価されて嬉しそうだ。

 正直、このまま時間いっぱいまで滞空し続けられたらかなり楽になるのだが、どうやら、それは無理そうだ。このジェットパックは本来なら一人か二人で使うもの。一時的な飛行は出来ても、三人分の体重を持ち上げ続けるだけの力はなく。今も少しずつ、ゆっくりと高度が下がっていく。

 その途中で、背後から爆発音が響き渡った。

 

(爆発音……てことは、こっちに来るのは)

 

 爆発音の鳴る方向へと視線を向ける。そこにいたのは予想通りの人物。自身の掌を爆破させ、その衝撃で飛びながら単機突撃を仕掛けてくるバクゴウの姿があった。

 

「調子に乗ってんじゃねぇぞこのクソモブ共ォォォ!!」

 

『オイオイ、爆豪騎馬から離れているぞ!? 良いのかアレ!!?』

 

 プレゼントマイクの指摘に、ミッドナイトは「テクニカルなのでOK!」と返す。但し、足が地面についたらアウトらしいが。ただ、このルールはおれにとってもありがたい。いざとなったら、グラスホッパーで同じように逃げ出せるし。

 と、ここで更にレプリカからの警告が入る。

 

『ユーマ。足元にも注意だ』

 

 言われた通りに足元を見てみれば、着陸しようとしていた所一面に、紫色の球体が散りばめられてた。多分、踏んだらマズいヤツだよな、あれ。

 

 着地まではまだ猶予があるし、まずはバクゴウをどうにかするか。

 

 おれはそう考え、バクゴウへと目を向ける。目を血走らせ、青筋を頭に浮かべながら突っ込んでくるその姿は、まるで理性を失った獣のようだ。

 

「死ねぇ!!」

 

 右手を大きく振りかぶりながら放たれた一撃をおれはシールドを起動して防ぎきる。その衝撃で互いの距離が離れた瞬間、すぐさま捕縛銃を構え、発射。先ほど二つのチームを捕縛したネットがバクゴウを覆い被さらんとする。

 

「当たるかよクソが!!」

 

 しかし、バクゴウは打ち出されたネットを爆破の衝撃で吹き飛ばすと、そのまま空中で器用に体制を整え、再び接近しようと、掌を爆破させる。

 

 位置的に、ユウガのレーザーでの迎撃は不可能。捕縛銃は見てからでも避けられる。このまま1000万を()ってやる。そう考えたのだろうバクゴウは勝利を確信したような笑みを浮かべる。ただまぁ――――

 

 ――――おまえがそう来ることは読んでいた。

 

 焦ることなくグラスホッパーを起動し、バクゴウが吹き飛ばしたネットに当たる位置に配置する。爆破の衝撃によって吹き飛ばされたネットは、グラスホッパーに当たり、再びバクゴウを目掛けて飛んでいく。

 吹き飛ばしたネットが戻ってくるとは思っても無かったようで、あっさりとバクゴウはネットに捕まった。

 

「しまッ……クソがァァァァァァ!!!」

 

 憤怒に満ちた叫び声を上げながら、バクゴウは地面に落ちていく。そのまま脱落してくれれば良かったが、地面に落ちる寸前に、同じチームの人が肘から出したテープのような物で回収された。

 

「お前ら、しっかり捕まっとけよ」

 

 着地が荒くなるから。メイとユウガにそう言って、おれは二本のスコーピオンを繋げることで出来た、鞭のようにしなる一本のスコーピオンを右手の甲から出し、右手を振るい、人のいない方へと伸ばす。

 

 ―――マンティス

 (メイン)(サブ)の二本のスコーピオンを連結させることで出来た一本のスコーピオンを引き伸ばし、通常のスコーピオンでは出すことが不可能な射程距離を実現する技。

 

 引き伸ばしたスコーピオンの先端が地面に刺さると同時に先端の形をグラップリングフックのように変化させ、抜けないように固定。そのままスコーピオンを引き戻すと、おれ達はスコーピオンを刺した場所まで引っ張られるように移動し、土煙を立てながら着陸した。

 

『う、上手い! 上手すぎる!! 爆豪による単機攻撃も、峰田チームの着地狩りにもきっちり対応しやがった!! ……と、ここで残り時間が半分を切った!! 持ち点がどうなっているのか、現在のランクを見てみよう!!』

 

 プレゼントマイクがそういうと同時に、モニターに現在の順位が表示される。

 迫りくる騎馬を全て撃退し続けたことで警戒されたのか、仕掛けてくるチームも減って来た。余裕の出来たおれはモニターに目を向け、そこに表示されている結果に驚いた。

 なんと、順位の高いチームのほとんどがB組のチームだったのだ。それに、バクゴウのポイントがいつの間にか0になっている。バクゴウのいる方向に視線を向けてみれば、ネットに絡まった状態のまま、金髪の人に向けて怒鳴り声を上げていた。おそらく、あいつにポイントを取られたのだろう。

 

『あれっ!? ちょっと待てよ。なんというかこれ、A組そんなにパッとしてねえぞ? どっちかと言うと、B組の方がやや優勢か? というか、爆豪のポイントが0って……』

 

 この結果に驚いているのはプレゼントマイクも同じのようで、戸惑ったように声を出している。

 

 どうやらB組はクラス全体で協力しあっているチームがいくつかあるようだ。今も、ようやくネットから抜け出したバクゴウを他のチームが足止めしている。B組が優勢になっているのは、この作戦が上手く刺さっているのだろう。

 

 と、ここまで考えた所で、一つのチームがこちらへと歩み寄って来た。

 やって来たのは赤と白に分かれた髪に、顔に火傷の跡が残る少年が騎手のチーム……トドロキのチームだった。

 

「……そろそろ()るぞ」

 

 こちらを威圧するように睨みつけるトドロキを見据えながら、おれはスコーピオンを構える。

 

 騎馬戦はまだ、始まったばかりだ。

 

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