一番星を輝かせたい   作:むー

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「で、お兄ちゃんはそのあかねちゃん? って人と今日はずっとお話ししてたんだ」

 ベットに横たわる妹──雨宮ルビーが拗ねたような声でチクチクとトゲを刺してくる

「ああ、意外と話があってな」

「むぅ……」

「怒るなって」

 自分から学校のそれも部活の話をして欲しいと言ったくせに嫉妬するなんて……と思わなくもないが妹は少し我儘なくらいが可愛い

「怒るなって」

 頭を撫でてやると気持ちよさそうに眼を細める

「それで、他には?」

「ああ──」

 その日学園であった話をいくつかするとケラケラと笑い

「ふぅ……今日も楽しかったありがとうお兄ちゃん」

 ひとしきり楽しむと笑い疲れたようで、ルビーの瞼が垂れ下がってくる

「今日はもうお休みだな」

「うん……明日は学校行けるかな……」

「ああ、体調も良くなってきてるからな。明日は一緒に学校行こうか」

「ほんと……約束だよ?」

「ああ、約束だ」

 眠くて身体を動かせなくなっているルビーの小指と自分の小指を絡め小さい頃から続けているやり方で安心させてやる

「お兄ちゃんいつもの……」

 甘えてくる可愛い妹に笑みをこぼし

「はいはい、おやすみ、ルビー」

 目を閉じるルビーの額へキスをする

「えへへ、おやすみ、お兄ちゃん」

 

「……はい、カット。オッケーです」

 カチンコの音が響き自分の中のスイッチが切り替わる

「ふぅ……」

 程よい緊張感から解放され一息つく

「……」

 その横でルビーは幸せそうな顔をしながら目を閉じている

「ルビー? 起きろ」

 優しく肩を揺するも

「うへへ……」

 乙女が出してはいけないような寝言を言い起きようともしない

「──アクア、そこどいて」

 急にアクアの腕を引っ張り場所を入れ替えると

「とっとと起きなさい!!! このクソブラコン!!!」

 良く通るその声と明らかな怒気を滲ませながらルビーの頭を引っ叩く

「っ痛ったぁ〜!? 何すんのさロリ先輩!?」

 幸せな夢(さっきのシーン)に浸っていたルビーはかなに牙を剥く

「何じゃないわよ何じゃ! 今は撮影中! 出番が終わったんならとっとと引っ込んでなさいこのブラコン娘」

 正論を感情のままにぶつけるかな

「だからって叩くことないじゃん! ……お兄ちゃ〜んロリ先輩がいじめる〜」

 それに対してただ自分の感情のままに兄に泣きつくルビー

「こら!! アクアはこれから私との撮影があんのよ。さっさと退きなさい!!」

 ぶーぶーと不満を垂らすルビーだがさすがに撮影のことを考えると引くしかないことぐらいは理解をしている

 かなに首根っこを掴まれながら

「お兄ちゃ~んまた後でね~」

 手を振ってくる妹に苦笑しながら手を振り返す

「アクア君」

 ヌルっと背後に忍び寄っていたあかねからプレッシャーが放たれる

「」

「気を付けてね?」

「はい……」

 たった一言だったがその一言に込められた感情に恐怖し背筋が伸びるアクア

「ほら、かなちゃんが呼んでるよ」

 アクアの態度に少しだけ溜飲を下げかなの元へと向かうよう背を押すとアクアはいそいそと現場へと向かっていく

 その後ろ姿を見送りつつ

「……絶対負けないんだから」

 ぼそり呟いた声は

((怖っ!))

 一連のやり取りをはらはらと見ていた大輝とメルトにのみ届いてしまったのだった

 

 

「じゃ、有馬さんの登場シーン行きまーす3、2、……」パチン

 

 ガチャッと部屋の扉の開く音が聞こえると大輝は真っ先に入口へ向かいお客様を迎え入れる

「いらっしゃいませ、かなお嬢様」

 常連の子安かながいつものようにまるで自分の部屋に入るかのような自然さで入ってくると

「こんにちは、アクアは?」

 大輝への挨拶を簡単に済ませると部屋の中を見渡す

「申し訳ございません。アクアは只今他のお嬢様のご案内中でございます」

 慇懃に頭を下げる大輝に

「へぇアクアにお客様ねぇ……あんな根暗野郎を指名するなんて一体どんなもの好きかしら」

 明らかに不機嫌になりつつ目敏くアクアの姿を見つける

「かなお嬢様、勝手に移動されては困ります」

 迷わずアクアの元へ行こうとするかなを大輝が押しとどめる

 嫌そうな顔を隠しもせずかなは大輝の近くにある本を手に取り中をざっと見ると

「いいじゃない別に、あぁこれもらっていくわね」

 そう言い残し小切手をポイっと投げてよこす

「ああかなお嬢様!」

 大輝は小切手を拾いつつ声だけでかなを止めようとする()()をする

(よっしゃ相変わらずの金蔓だぜ)

 そろそろかなが来る時間であることを察知し最新のアクア写真集をこれ見よがしに置いておいたのだった

 大輝たちが教員たちをどうとでもできる立場であるため、教員たちからは黙認こそされているものの、ホスト部は内容が内容だけに部費などはもらえていない

 それ故にお金はいくらあっても足りないくらいなのである

 紅茶やお菓子などは()()()()お金を取らずにサービスでやっている

 そんな事情から大輝はあくまで非公式にアクアやメルトの写真集やら何やらを裏で売りさばいているのであった

 彼にとってこれはあくまで社会勉強である

(小規模な店舗でどれだけ儲けをだせるか、経営について実地にて勉強しているだけだ)クックック

 ──あくどい笑みを浮かべているがあくまでも社会勉強なのだ

「アクア」

 そんな彼をよそにかなはアクアの元へとたどり着く

「ん? あぁ子安来てくれたのか」

 アクアはその姿を見つけるとかなへと彼にしては珍しい複雑な笑顔を向ける

「あら、いやそうな顔ね」

「そんなわけないだろ」

「ならそんな顔しないで」

(子安のことは嫌いじゃないんだがなぁ)

 アクアのかなに対する感情は複雑としか言い表せない

 打てば響くような軽快なやり取りやその歯に衣着せぬ物言いなど好ましく思う部分も多い

 しかし

「あらあなた、まだいたのね私こいつに用あるからどいてくれる?」

 来るたびに自分に会いに来てくれている他の女の子を睨みつけ

「す、すみません~!?」

「あ……」

 追い出したりするこの自分勝手なところは好きになれないところだ

「おい子安、毎回毎回なんで人の客を追い出すなってあれほど言ってるだろう?」

「あら、あの子は親切で私に場所を譲ってくれただけよ。それよりもこの前のドラマ見てくれた?」

 アクアの小言には耳を貸さず自分の話をする

「それよりもってお前な……」

 そんな自分勝手な呆れてしまうものの

「あの公演はいい出来だったな」

 自分の好きな話題なのでついつい乗ってしまう

「ふふ~ん! そうでしょ?」

 彼女は再ブレイクの兆しが見えてきた一流の女優である

 中学のころから活動を始めたがあまり役に恵まれず、数年前にネットのみで配信されたドラマで端役なのにもかかわらず太陽のように輝き注目を集めた

 そんな彼女だったがその演技力に胡坐をかき傲慢な態度から敵を作ってしまい一時期干されてしまっていた

 それでも変わらずにいた彼女の伸びきった鼻っ柱をへし折ったのが四条あかねだった。

 たかが学生のお遊びと高をくくっていたかなを、アクアが無理やりあかねが主演を務める劇へ招待したところ、その圧倒的な才能に脳を焼かれたようだった

 それからは自分の才能に胡坐をかくことをやめ、監督やPたちに直接謝罪をいれ少しずつ仕事を取り戻していった

 そうして得られたのがこの前のドラマだった

「ああ、調子取り戻したみたいで安心したよ。最近小綺麗な演技しか見られなかったから久々に子安が飛び切り輝いてる姿見られてよかった」

 アクアはかなの瞳をまっすぐに見つめ交じりっ気のない心からの称賛を送る

 誰よりもかなの演技力を信頼し、誰よりも応援していたアクアからのその本心からの称賛に

「~~~~~!!?? あ、当り前じゃない! なんてったって私は子安かな。天才女優ですもの!」

 顔を真っ赤にしながら胸を張ると

「ちょっとおそとはしってくるわ」

 茹でだこのような顔のままピューと部室を走って出ていく

「え、あ、ああ行ってらっしゃい」

 

(((ああいうところがあるから憎めないんだよなぁ)))

 その場にいるただ1人以外の誰もが微笑を浮かべそんな感想を持っていた

 

「……急にどうしたんだあいつ?」

 ただ1人アクアだけがその行動の意味を理解できず首をかしげていた

((お前はほんとにいつか刺されるぞ……))

 大輝とメルトの心の声は今日も一致してしまうのだった





誤字修正本当に助かります
ありがとうございます
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