「じゃ、次のシーン行きまーす。3、2,……」カチン
「あれアクたんにルビーちゃん? 久しぶりだねぇ」
家を出るとお隣から声が聞こえてくる
「あ、メムお姉ちゃん! 久しぶり~」
「メム姉さん、おはようございます。というかまた引きこもってたんですか……」
ルビーの嬉しそうな声とアクアのダメなものを見る眼と声に天国と地獄を味わうメム
「ち、違うよ!? お仕事でちょーっと納期がギリギリになっちゃったから4日ほど徹夜してただけだよ?」
慌てて仕事をしていたという言い訳を並べる
「それはそれで、メム姉さん目元が酷いことになってるぞ。可愛い顔が台無しだ」
「あははぁ大丈夫だよ~」
メムはアクアの言葉に少しドキッとしながら歩きだすと
「おっとと……」
倒れかかってしまう
「っと、やっぱり無茶してる」
それを予測していたらしく、支えると膝の裏へ腕を回しヒョイっと抱き上げる
「え? え?」
眼を白黒させているメムの反応を無視して
「ちゃんと飯食ってるか? 軽すぎだぞ?」
そんなことを言う彼はそのままスタスタと自分の家の方へと歩き出す
「どうせ家の中もひどい有様なんだろ? そんな状況じゃまともに休めないだろ。ルビー鍵開けてくれるか?」
「は~い」
2人で連携して家の中へ運んでいく
「俺の部屋で悪いけど少し寝ててくれ、今消化にいいもん作ってくるから」
「じゃあその間は私がメムお姉ちゃんのこと見守ってるね」
「頼む」
2人の息の合った連携に状況を理解する間もなくアクアのベッドに寝かされていた
(は? え? なにこの状況、というかアクたんいつの間にか逞しくなり過ぎじゃないめっちゃドキドキしちゃったんだけど……)
「どう? お兄ちゃんのベッドで寝てる気分は」
「うえぇぇぇ!!??」
ついルビーの存在を忘れ妄想にトリップしていたが
「んん……どうもこうもないよ。ごめんね迷惑かけて」
呼吸を整えここまで助けてくれたアクアとルビーに感謝を告げる
「あ、逃げた~」
「大人をからかわない!」
「あはは」
2人のけらけらと笑う声がキッチンにまで響く
「おい、あんまり騒ぐなよ! 体に障るぞ」
お鍋を持ってアクアが部屋へ戻ってくる
「ほら卵がゆ。熱いから気をつけてな」
「あー! いいなぁお兄ちゃんの卵がゆ。美味しいんだよ!」
ルビーがメムに差し出された鍋をのぞき込むと
「こら行儀悪いぞ、明日の朝また作ってやるから。そろそろ学校行くぞ」
「あ、そうだったじゃあメムお姉ちゃんゆっくり休んでってね」
「じゃあ鍵置いていくから飯食って一休みしたら好きにしてくれ。帰るんだったらポストに鍵いれといてくれ」
「「じゃ、いってきまーす」」
「い、いってらっしゃい……」
「……はい、カット。オッケーです」
「「「お疲れ様でした〜」」」
「MEMお前、映画の時から思ってたけど演技の才能あるな」
アクアからの賞賛に
「あはは、まぁ配信者やアイドルもやらせてもらってるからね〜多少はできる様にはなるよ」
少し赤くなっている頬をかく
「でも本当に演技経験2回目とは思えないくらい堂に入っていたね」
ルビーが後ろから抱きついてくる
(ちょっとこっち来てね?)
かけた言葉とその笑顔とは真逆の冷たい声でMEMちょの耳元へ呼び出しを告げる
(ヒッ!?)
その声と背後から感じるドス黒いオーラにも気が付いてしまい
(オワタ)
「じゃあお兄ちゃん、ちょっとMEMちょと
「そんな報告はいらん」
しっしと集ってくるコバエを散らすように手を振るとアクアは大輝達のものとへ行く
(た、助けて、アクた──ん!!)
心からの助けを求めるMEMちょに気づかずに
「じゃ、行こうかMEM
その顔に見合わぬ剛腕でMEMちょを引き摺り
そこは女人以外禁制の地
「「「で、お兄ちゃんのお姫様抱っこの感想は?」」」
「」
──そこはMEMちょにとってこの世の地獄であった
恋する乙女達からのあまりの圧に白目を剥きそうになるMEMちょだが
(ここで逃げたら逆にヤバい……!!)
主に
「思ってたよりもサッと抱き上げられてさ」
「あ、アクたんって細いけど胸元とかはしっかり筋肉付いてて硬くってやっぱり男の子なんだなぁって」
「ちょっとドキッとしちゃいました……」
顔を真っ赤にして男の子の胸の中の感想を言うMEMちょに
(((可愛いなコイツ)))
と少し萌えつつ
「じゃあお兄ちゃんのお姫様抱っこと引き締まった胸筋を堪能した罪で今日も反省会の会場貸してね?」
役を演じているだけで悪い事をしているわけでは無いのにこの仕打ちかぁと思わなくもないが
「はい……」
逆らうと後が怖いので大人しく受け入れる
「じゃあMEMちょへの追及はここまでとして……ルビー!! あんたまたやったわね!!」
「いいじゃんあのくらい! ──」
「「ギャーギャー! ワーワー!」」
(この子達拗らせ過ぎ……)
ドラマ撮影の合間はMEMちょにとっては地獄でしかないのだった
導入編おしまい