「お前…ウェスカー!?何でここに!?」
叫ぶデルタ。
強化ガラス越しに、しかもコントロールルームから大分離れている。
普通なら聞こえる筈が無いが、集音出来るためウェスカーにばっちり聞こえていた。
「私をコソコソ探っている鼠がいることは気が付いていた。よって、細心の注意を払っていた」
「……まさか、相乗り予定の幹部は囮に使ったのか?自分の死を偽装して身を守るために」
「ほう、なかなか勘が鋭いじゃないか」
ウェスカーは少し感心したように言った。
彼が生き残った理由。そもそも彼はヘリに乗っていなかったのだ。
予定上では幹部のセルゲイ大佐と相乗りする筈だったが、影武者を用意して自分は別ルートで帰還。結果、ヘリが爆破され自身も死んだ扱いになった。
「君たちのお陰で私は死亡扱い。アンブレラから予定以上に楽に逃れられた上、こうしてB.O.W.の戦闘データを集められた。そして、君のデータもな」
「俺の存在とデータを他会社に売るつもりか?」
「言わなくても分かるだろ?これから君にはここで実験体と戦ってもらいデータを取らせてもらう」
「成程。けどソレに俺が素直に従うと思ってんのか?」
デルタは右腰の銃をウェスカーに向けた。
「この距離からでも十分お前を狙える」
「君にはソレが出来るかもな。しかし、君は私の提案を受けざるを得ない」
ウェスカーは横から何かを引っ張り出した。
「!?レベッカ!?」
「ありきたりだが有効な手だろ?」
縛り上げられ、口にガムテープを張られたレベッカのこめかみに銃口を向けるウェスカー。コレでソレゾレの立場は決まった。
「~~~~!ッチ!」
「ッフ、話は決まったな。では、コイツの相手をしてもらおう」
「今まで君がいい気になって屠ってきた物は屑だ。これから戦ってもらう最高傑作と比べたらな」
実験場のエレベーターが上がり、中から巨大な人影が現れた。
B.O.W.の中でも最高傑作。Tウィルスの名を冠するに相応しい生物兵器であり、アンブレラ最強の切り札。
「タイラント。ソレが君と戦ってもらう敵の名だ」
暴君がデルタ目掛けて咆哮をあげながら飛び掛かった。
「ッチ!」
横に跳んで避けながら、タイラントに銃撃を行うデルタ。
しかし効いている様子はない。一瞬怯むもすぐさま行動してきた。
今まで様々なB.O.W.を屠ってきたフォトンブラッド弾。ハンターでも三発撃ち込めば確実に撃破してきた。
しかし、タイラントには通じない。最高傑作の前では豆鉄砲に過ぎなかった。
「ハハハハハ!タイラントの再生力はハンターを軽く凌駕する!その玩具は素晴らしいがタイラントには届かないようだな!」
「だったら数で!」
猛スピードで接近するタイラント。
デルタは下がりながら銃撃を行うが、少し怯むだけ。すぐさま行動に掛かる。
命中箇所に赤い火が小さく燃えて表皮を軽く炙るだけ。数秒も経たずに火は消えて走ってきた。
何発も何発も銃撃を行う。
しかしタイラントは止まらない。
いつの間にか間近にまで接近し、一気に飛び掛かった。
「ッチ!」
横に転がって飛び掛かりを避ける。
デルタがいた場に右手の鋭い歪な爪を振り下ろすタイラント。
頑丈な筈の床が破壊され、凄まじい破壊音と共に小さな瓦礫が舞い上がる。
「オオオオオぉォぉ!」
爪を床から引っこ抜き、立ち上がろうとするデルタを横薙ぎに切り払おうとするタイラント。
デルタは咄嗟にしゃがんで爪の斬撃を避け、同時にフォトンブラッド弾を撃ち込む。
今回はタイラントが攻撃に集中していたおかげか効いた様子を見せた。
このチャンス、逃すわけにはいかない。
「チェック!」
≪Exceed charge≫
音声認識と共にベルトからフォトンブラッドがラインを通じてデルタムーバーにエネルギーが供給される。
しかチャージには時間が掛かる。その隙にタイラントはデルタをその剛腕で殴り飛ばした。
下から掬い上げるようなアッパー。
その怪力によってデルタは空中に打ち出され、無防備な状態を晒すことになった。
デルタが落ちるタイミングに合わせて爪を突き出すタイラント。
だが、爪が刺さろうとする瞬間、デルタは上手くソレを避けてみせた。
身体を丸めて縦回転。
タイラントの鋭い凶悪な爪は空振りとなり、縦回転の勢いを乗せて顔面に踵落としを食らわせた。
一瞬怯むタイラント。その千載一遇のチャンスを逃す程、デルタは甘くない。
「くらえ!」
空中で銃を構え、デルタは引き金を引いた。
撃ち出される三角錐状の砲弾
フォトンショットがタイラントの胴体にめり込もうとする。
が、しかし……。
「!?」
タイラントは咄嗟に防御してみせた。
両腕で守りを固め、フォトンショットを受け止める。
だが完全とはいかない。タイラントの腕から赤い火が燃え上がり、ダメージを受けている。
もう一押し。タイラントの防御を邪魔できれば、コイツを倒せる!
「らあ!」
フォトンショットの砲弾に、デルタは跳び蹴りを打ち込んだ。
デルタの足元に搭載されたフォトンマズル。
本来は蹴りと同時にフォトンブラッドを少量だが叩き込むための武器。
デルタはソレを応用し、フォトンショットの砲弾を杭のように打ち込もうとしてきた。
偶然にも、その構図はモデルとなった原作ファイズのデルタの必殺技、ルシファーズハンマーに酷似していた。
「ぐあ!?」
「オオオオオ!!?」
弾かれる両者。
無理な攻撃をしたせいか、タイラントの抵抗によるものか。
フォトンショットが遂にめり込み、体内に確かに浸透した。
赤い炎に包まれるタイラント。彼はそのまま力なく倒れた。
しかし、デルタは弾き飛ばされて落下。地面に倒れると同時にベルトが外れ、変身が解除された。
「!? しまった!」
素顔を晒して焦るデルタ……いや、万丈竜一。
デルタギアを回収しようとするが……。
「素晴らしい、素晴らしいぞ!」
「……ウェスカー!」
デルタギアはウェスカーによって先に拾われてしまった。
「ハハハハハ!なんてことだ!?あのタイラントを……最高傑作を本当に倒してみせたぞ!セルゲイにも見せてやりたかったな、上には上がいるのだと!」
ご機嫌に笑いながらデルタドライバーを腰に巻くウェスカー。
「もうウイルスなど必要ない。この力があれば……私は超人の力を手に出来る!」
「やめとけ。そのベルトはお前には使えない」
竜一が忠告するが、ウェスカーはソレを鼻で笑った。
「フン、舐めるなよガキめ。貴様に使えて俺に使えない筈はない」
ウェスカーはデルタフォンのトリガーを引く。
「変身」
≪Standing by≫
音声認証を完了させ、デルタムーバーに接続。
赤いラインが身体に張り巡らされ……。
「ぐ…ああああああ!!!?」
赤い炎が全身を包み込んだ。
「な…何故……!?」
「ソレ、欠陥品なんだよ。俺以外が・・・人間が使うとそうなる」
デルタ最大の欠点。ソレはアマゾンしか使えないという点である。
フォトンブラッドを動力源にしているせいか、装着者にキックバックエネルギーが掛かる仕組みになっている。
イクサも同様。むしろデルタはイクサと比べたら幾分か改善されている。
コレを何とかするための装置を開発する。これもデルタの製造目的だった。
「仮に、その欠陥が無くても普通敵の武器を正直に使う?何かしらの対抗策があるって想像できるだろ」
「こ…こんな……筈では……」
燃え尽きるウェスカー。
作中でもトップの悪役であった彼にしては実にあっけない最期であった。
「さて、これで一件落着……とはいかないか」
竜一は駆け付けたクリスたちの方を向いてため息を付いた。