真・恋姫†無双 外史『劉懿伝』   作:老虎

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党固の禁

数多ある外史が紡ぐ物語は、時にその外史を監視する者の予想を裏切り駆け出すことがある

 

これから始まる物語もまたその一つ

 

大徳、奸雄、小覇王

 

三つの英雄を繋げ新たなる時代を切り開いた男

 

名を劉懿、字を公斥、真名を鏡夜

 

太傅陳蕃の懐刀と呼ばれた彼が中枢を離れ

 

何を思い考え動いたのか――――――

 

―五年前―洛陽―

 

「己が欲望のため霊帝閣下を弑し自らが皇帝の座に就こうとした大将軍竇武、そして竇武に影から力を貸し国の政治と財を欲しいがままにしようと企んだ陳蕃、以上の二名を首魁とした謀反人100余名・・・・その全てを処刑する!」

 

声高らかに宣言するは十常侍が筆頭、張譲。

 

「ふざけるなぁあああああああっ!!!陛下!眼をお覚ましなされ、真の謀反人はこやつら十常侍ですぞ!?彼奴らのような腐れ宦官のお言葉になど耳をお貸しなさるなぁあああああ!!!」

「・・・・・・・・」

 

自らの無実と十常侍の非を叫ぶ竇武、それとは対照的に黙して語らぬ陳蕃。

 

「ふん、そのけたたましく叫びを上げる獣をとっとと連れ出し煩わしい口を首ごと落とせ」

「っ張譲ぉおおおおおおおお!!!」

 

兵士たちに連れられていく竇武。

 

「貴様はなにか言う事は無いのか?陳蕃・・・・」

 

張譲が厭らしい笑みを浮かべながら問いかける。

 

「この期に及び是非もなし」

「そうか・・・・連れて行け」

 

つまらない、そう言わんばかりの表情で兵士に命ずる張譲。

 

「・・・・」

 

この時、陳蕃の脳裏に一人の青年の姿が思い浮かんでいた。

 

「(公斥、無事に逃げ延びるのだぞ・・・・せめてお前だけでも・・・・)」

 

太傅陳蕃がその最後に思い浮かべたのは子でも無ければ妻でも無く友人でも無い、自らの懐刀として長年仕えてくれた青年の姿。何時か自分が出来なかった事を必ず、あの青年ならば成し遂げると信じて・・・・

 

―洛陽北東部の森―

ただひたすらに駆け抜けていた、襲い来る刺客を返り討ちにし、転んでも直ぐに立ち上がり。既に体中傷だらけ泥だらけ、誰が見ても明らかに疲労困憊であるにも関わらず駆け続ける。

 

「っ・・・・ぁ・・・・!!」

 

10年間仕え続けていた主人である陳蕃様が処刑された、己らが欲望に従い腐敗した政治を続けてきた十常侍を弾劾すべく暫く動き続けていた。が、それはどこからか露見していた。大将軍竇武や他賛同していた100余名と共に処刑された。

 

「っ・・・・!」

 

当初は、義理を果たすべく陳蕃様の家族を逃がそうとも考えた。だが彼の家族らは頑として動かなかった、曰く「陳蕃は朝廷随一の功臣、彼を慕う者も多いのだから我らに危害は及ぶまい」と・・・・甘すぎる、十常侍という連中に対する見識も、先を見通す視野も。

 

「覚悟ぉ!!」

「邪魔だぁあああああああ!!!」

 

草むらから飛び出てきた男を一太刀で切り伏せる。

 

「っ・・・・ぁ・・・・あ・・・・」

 

おそらく十常侍は竇武、陳蕃様に関わる者は三族はおろか部下だったもの、交友のあるもの問わず須く討つだろう。

 

「生き延びて・・・・やる・・・・必ず・・・・」

 

処刑の前日、陳蕃様の記した手紙を見た。『おそらく竇武と私の謀は失敗する、だから逃げろ』・・・・大まかにそう記されていた。だからひたすらに逃げた、ただただ・・・・かつて陳蕃様と語った『夢』を潰えさせないために・・・・

 

「劉懿」

 

ふと、聞こえてきた声・・・・俺はこの声に聞き覚えがある。

 

「応累か!」

 

俺が呼びかければ草むらから小太りの男が姿を現す。この男は応累、陳蕃様に仕えていた間諜で幾度か俺と共に仕事もしたことがある・・・・同僚とも言うべき男だ。俺が表を、応累が裏を支えていた。

 

「簡単に殺されるわけが無いとは思っていても、やはり姿を確認するまでは心配なものだ」

「お前も無事だったか」

 

細い目の奥から、いつもの鋭い眼光では無く本気で安堵した様子を見せる。

 

「・・・・洛陽は、どうなった」

「・・・・酷いありさまだ、竇武、陳蕃様に関わりのあった者は女子供問わず殺された・・・・生き残っているのは俺とお前ぐらいなものだ」

 

予想はしていた、それでも実際それを聞いてしまうと心が締め付けられる、悲鳴を上げ軋む。

 

「これから、どうするのだ?」

「・・・・一時身を隠そうと思う。何をするにせよ、どう動くにせよ、今動こうとすれば全てが潰える」

「分かった、幸い私の部下も無事だったのでな。しばらくは大陸各地で情報を集める事にするよ」

 

僅かに、静寂の時間が訪れ、先に口を開いたのは応累だった。

 

「・・・・君は、まだ諦めるつもりは無いのかね?陳蕃様と語り合った『夢』を」

「無論だ、諦める理由も無い」

「ならば、安心した。もし君が再び立ち上がるならば私は・・・・何時如何なる場所からでも馳せ参じよう」

「ああ、頼むよ戒」

「任せろ、鏡夜」

 

握手を交わし、互いに違う道へと歩み始めた二人。

 

この二人が再会し物語が再び動き始めるのは・・・・これより五年後になる。




このあとがきコーナーでは作者のちょっとした雑談と次回予告を掲載していきます。

この話に登場した戒(応累)は北方三国志の登場人物です。張飛の妻と息子を暗殺者から護ろうとして仁王立ち・・・・間者なのに強くね!?と感じたのは私だけだったんでしょうかね?

では次回予告、時が突然流れ流れて五年。もはや隠遁生活も身に付いた頃に訪ねてきたのはほんわか大徳の劉備と種馬北郷、こんな二人で大丈夫かと不安に思う鏡夜が出した決断とは!!「真面目にやらんかぁ!!(in愛紗)」・・・・次回『再動』をお楽しみに!!
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