さて、俺と灯里、伽耶が劉備軍に参入して半月が経つ。時間が経つに連れて色々と問題が浮き彫りになってきた・・・・そう、俺を仲間に引き入れに来た時の一刀と桃香(劉備)の言っていた足りないもの、がかすむぐらいに。
「・・・・兵が足らん、兵糧が足らん、武具が足らん、防具が足らん」
義勇軍であるが故・・・・以前に兵がいない。そこらの山賊程度ならば俺に愛紗(関羽)、鈴々(張飛)、伽耶がいれば何とでもなる。一刀だってそれなりに戦えるようだから問題無い・・・・が、兵が居なければ多勢に無勢。どうあがいても限界はある、やはり兵は必要なのだ。そしてそれに伴い武具に防具、兵糧が足りない、兵がいたとしても以上の三つが無ければ話にならない・・・・武具、防具は最悪戦場で奪うとして問題は兵糧だ・・・・それというのも・・・・
「うにゃ?」
「なんすか?」
鈴々と伽耶、二人に大食らいを擁するが故に・・・・だ。ただの大食らいなら節制を要求するだけだがこの二人は間違いなく一騎当千の猛者、飯を食わせないでいて力が出ない・・・・ではシャレにならないのだ。
「・・・・あのーお兄さん?」
そう言えば俺が劉備軍に入ったら桃香からの呼び方がなぜか「お兄さん」になった、他の子たちは名前なのに・・・・まぁ悪い気はしないけど。
「どうした?」
「うんとね、ちょっと提案なんだけど・・・・」
「ふむ」
この半月、桃香は的外れな事を言う事も多かったがその分こちらの意表を突くような意見を言う事もままあった。聞くだけならば決して損はしないだろう。
「えっとね、公孫賛って知ってる?私と同門のお友達なんだけど・・・・」
「白馬長史だろう?」
公孫賛、白馬義従と呼ばれる白馬で統一された精鋭騎馬隊を率いて烏丸討伐に多数の功績を残した名将と聞いている。
「その公孫賛ちゃんが幽州に赴任したって話を聞いたの、だからね・・・・一度行ってみてもいいかなぁ・・・・なんて。お手伝いとかすれば当面の食住は何とかしてもらえると思うし」
思ったよりまっとうな意見だ、桃香が言う通り公孫賛を手伝いその代価として一時的に食料と雨露をしのぐ場を提供してもらえるならば・・・・
「交渉とかは・・・・あー、いいや。まぁそのへんは任せる」
「うん!任せてよ!」
なんでだろう、いろんな意味で不安しか無い。
―幽州・易京城―
あれから公孫賛の居城である易京まで来たのだが・・・・
「桃香!ひっさしぶりだなぁ!」
「白蓮ちゃん!!」
桃香と抱き合い再会を喜ぶ公孫賛、本当に仲が良かったんだろうなぁ・・・・と見て分かる。
「あれから二年かぁ」
魯植先生の下を離れてから、と言う意味だろう。
「桃香はあれからどうしてたんだ?」
「えっとね、困ってる人を助けてたよ!」
うん、間違ってない。間違ってないのに何かが間違っているように思えるのは気のせいだろうか?
「他には?」
「ほぇ?」
「まさかそれだけってことは・・・・」
「それだけだよ?」
唖然とした表情の公孫賛、まぁ分からんでもない。桃香は無能では無い、それどころか性格が天然な事を除けば非常に優秀な人物だ。官軍に入りまともに戦っていたならばとっくの昔に太守ぐらいにはなれてただろう。
「バカかお前はー!!」
だからこそ公孫賛の叫びがわからないでもない。
「お前ぐらい優秀だったらとっくに太守とか・・・・上手く行けば州の長官ぐらいなれてただろ!?」
「でもね白蓮ちゃん、私・・・・どこかに所属しちゃったら決まった範囲内の人しか助けられないから・・・・それが嫌で・・・・」
桃香が優秀である事を以前確認した俺も同じ事を言ったが、その時も桃香は同じ答えを返してきた。
「公孫賛殿、貴殿も桃香の友人であるならば十分ご存知でしょう?桃香がこういう性格であるのは」
「まぁ・・・・そうだけど・・・・?お前・・・・」
ん?俺の顔を見た公孫賛が首をかしげた。俺の顔になにか・・・・
「・・・・っ・・・・劉懿!?」
「・・・・へ?」
『え?』
あれ?ありのままを説明するぜ?気がついたら公孫賛が俺に抱きついていたんだ、何を言ってるか分からねーだろ?ってかやばいやばい!桃香程じゃ無いけど柔らかい感触がぁ!?
「ちょっ!?鏡夜さんから離れて下さい!」
「白蓮ちゃん!?お兄さんから離れて!!」
灯里と桃香が引き剥がしに来た。
「私を、私を覚えてないか!?」
引き剥がされながら縋りつき問いかけてくる、その姿に俺は少しづつ記憶を掘り下げていく。ん?見覚えがあるぞ・・・・だがあれは・・・・もう少し視線が・・・・あ。
「お前・・・・六年前の・・・・」
「覚えててくれたのか!!」
思い出した、六年前・・・・俺が洛陽から逃げる一年前だ。その頃、幽州で暴れていた張純と言う賊の討伐に俺は兵を引き連れて向かった。張純は幽州各地から人を捕まえ烏丸に売り渡しそれを資金源とし反乱を繰り返し、また烏丸からの援護を得ていた。
「あの時の娘か・・・・」
三万対八万・・・・数字だけを見るならば圧倒的不利ではあったがそれと地の利を過信した張純の軍を俺は徹底的に奇襲と伏兵で掻き回し、更に当時既に渤海太守であった袁紹を煽て援軍を得た事により壊滅させる事に成功した。その時に売られる一歩手前の少女たちを救出する事に成功したのだが・・・・その中に『白蓮』と名乗る少女がいた。
「と言うか・・・・お前、あれ真名だったのか・・・・」
「う・・・・うるさいな、あの時は私だって怖かったんだ・・・・それで助けてもらったのが嬉しくて・・・・つい」
「・・・・鏡夜だ」
「へ?」
「俺もあの頃みたいに白蓮と呼ぶから鏡夜、って呼べ」
「わ、分かった・・・・///」
ん?妙に顔が赤いが・・・・
「うぅ・・・・まさか白蓮ちゃんもなんて・・・・」
「が、頑張りましょう桃香様!」
桃香と灯里がなにか言っているが気にしない事にしよう。
「さてと、改めて本題に入ろう白蓮」
「あ、ああ・・・・そうだな」
ん、と白蓮が居住まいを正したのを確認してから俺が話を続ける。
「まぁ単刀直入に言おう、一時期で構わんからここに置いて欲しい。客将として扱ってくれて構わん、人でが足りないと言う情報も来ているから軍事、内政問わず手伝おう」
「それはありがたいが・・・・鏡夜と桃香の能力は知っているが他の皆は?」
「関羽、張飛、李厳は武勇に優れ、諸葛亮、鳳統、徐庶は知力に優れる。経験不足ではあるが教え込めば相応の仕事が出来ると思う。ここにいる・・・・俺らの旗印の北郷一刀だがまだ経験も浅く異国人であるがゆえに文化に馴染んでいない、が思考に柔軟性があり鍛えれば使い物になる・・・・一刀以外は直ぐに使ってくれて構わない」
うんうん、と首を縦に振る白蓮。
「じゃあよろしく頼むよ」
「おやおや白珪殿、私の紹介はしてくださらんのですか?」
部屋の入り口から声と共に姿を見せたのは白を基調とした衣装に身を包んだ女性。
「常山郡に槍を使う在野の武芸者がいる・・・・と聞いたがな、外見まで一致している。君のことか?趙雲とは」
「よく、ご存知で」
「優秀な間諜がいるもんでな、一定以上の力があるやつの話は直ぐに入ってくるさ」
「蛇の道は蛇、と言うことですかな?」
ニヤリ、とあちらが笑ってきたのでこちらも笑い返す。
「なんでだろう、あの二人が笑ってるとものすごく怖いんだけど・・・・」
「ご、ご主人様もそう思う?」
「まるで肉食獣のような笑い方ですね・・・・」
「なんか近寄りがたいのだ・・・・」
「ガタガタ」
「ブルブル」
「ほらほら朱里ちゃん、雛里ちゃん、大丈夫ですからねー」
「・・・・怖いなぁ・・・・」
「ハハハハハハハハハッ」
「フフフフフフフフフッ」
どこまでも易京の太守執務室の中で、二人の笑い声は響き渡る・・・・
ちなみにオリ主である鏡夜の名前ですが作者が三国志で新規武将を作成する時に必ず作る名前です。相性は常に劉備と良く、生まれ年は馬超と同じ。まぁ今作では劉備軍参入時28歳とやや(?)年上設定にはなっておりますがキッチリ劉備との相性良し(むしろフラグ)と言うことで。
さて次回予告!とうとうくだされた黄巾討伐の勅令、幽州を離れる決意をした鏡夜を縋りつきとめようとする白蓮「待て!私はそんなことしてないぞ!?(in白蓮)」次回!『乱に起つ』をお楽しみに!