死に別れENDばかりのゲームに転生しました。   作:超高校級の切望

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願いは踏みにじられるもの

「墓守の、特尉………これほど、とは…………」

 

 無茶な改造で全身ボロボロになった『彼岸の園』の強化人間はその言葉を最後に事切れた。

 アンデッドとして復活しないよう、わざわざ装具を用いて殺す。

 

「マナコ………!」

 

 狙いは彼女。御子だの奇跡の子だの、好き勝手言っていた。あの子の意思になど、まるで興味を持っていない。

 

「それに、この【陣地】……」

 

 物の大きさがおかしい。これは、【陣地】の主が子供の時に見られる現象。

 今日はペットの発表会があった。闘病生活の長い子に、せめて見せてあげようと親が来て、しかしそこで死んだ………いや、マッドベビーが現れたタイミングといい、『彼岸の園』の信者といい、偶然ではない。

 

「人の命を、何だと…………!」

 

 まだ出会って一ヶ月。それでも、一緒に居た。親とはこういうものなのだろうかと考えた………。

 故に()()()()()()()()。敵を討てと……

 

 

 

 

 

「ここなら安全だ………」

 

 何人か保護した一般人を地下の霊安室まで誘導した。いや、正確には霊安室ですらないが………。

 流石に地下はあると知っていても、そこまではイメージできなかったらしい。そもそも死体が動き出すこの時代の霊安室はだだっ広い部屋が広がっているだけで、そこに死体が安置されるのはごくごく稀。病院関係者にとっても殆どただの地下室だ。

 逆説的に、ここでは異形が生まれないだろう。【陣地】の主はそこが何のための場所かわからず、そこに病院関係者が訪れた姿を見たことがないから。

 

(たしか、秘密基地みたいなものだったか……)

 

 小説の内容によると、彼女にとって大嫌いな病院の職員達から隠れる場所。死体がないとはいえ、この時代『死』に関わる場所から遠ざかるのが普通だ。

 そういう意味ではアンデッドになる素質………『死』に惹かれる素質があった、だったか?

 

「墓守!」「殺せ!」

「!!」

 

 と、【陣地】の主を探しに行こうとして出会した信者共が叫ぶ。取り出したのは、アンデッドの肉片か………!

 それを口に含み自らの脳を銃で撃ち抜く。

 

「ちっ…」

『しにたくないいいいい!!』『えんえんのいのきいのち血ちち父!』『おまえはしななな!!』

 

 アンデッドを確実に生む方法がある。

 アンデッドの一部を死体に接触させることだ。とても簡単。だからアンデッドに殺されると高確率でアンデッド化する。

 

 昔はそうでもなかったらしいが、死が乱れた今は殆どの確率でアンデッド化する。それだけ世界そのものが歪んでいるのだ。

 

「てめぇ等ごときが助長させてるとは言わねえがな!」

 

 人形から変異仕掛けている先頭の頭を殴り砕く。首まで裂けるほどの大口を開け鋭い牙で噛み付こうとしてくるアンデッドの上顎に剣を付きたてそのまま引き金を引き肉を抉り上顎を肉体から引っ剥がす。

 

『しななないででくれれ!』

 

 恐らくは誰かを不死にしたかったであろうアンデッドの両手が裂けカマキリのように変異する。

 振るわれる軌道を予測しその隙間に体が入るよう後ろに跳ぶ。風切り音が鳴り、壁や廊下が僅かに傷つく。

 

『おれお……おれおれ蛾おまえを市なしゃせあああ!』

 

 振るわれる4本の鎌。ひとつひとつが俺を即死させるほどの威力。アンデッドとしての素質が高かったのだろう。

 

『老化ははしし橋いらない!』『ほかの火とにめいわくでしょう!』

 

 と、【陣地】の破壊に反応したのか壁から新たな異形が生まれる。即座に鎌を振り回し切り刻まれるが、鎌を振り切った。

 関節を狙い銃を打つ。尤も、そこまでの腕ではないので破壊できた腕は一本だけ。

 

『だれ誰怠!! もうだるまし七い!』

 

 それでもさっきよりマシ。銃弾を受け罅割れた鎌が壁とぶつかり、砕ける。残り2本………。

 右斜め上から襲いかかる鎌を体を斜めにして回避する。左から来た鎌を………刃ではない部分を蹴りつけ止め……

 

『シャアァ!』

「ぐっ!?」

 

 下顎が2つに割れ、鎌が肥大化する。

 異形化の進行による物理法則からの逸脱。

 肉体改造でも限界があるはずの断面積に比例する出力に依存しない、あり得ざる筋骨格の出力。一気に壁まで吹き飛ばされる。

 

「おえ………げほ!」

 

 生体装甲の隙間から吐血する。内臓がやられた……!

 体内に熱した鉄球でも入れたかのように、熱く重い。

 

『おれがぁ、おまママおまおまえをしなせにゃああああ!!』

「づぅ!!」

 

 剣を持っていた左手に鎌の先端が突き刺さり床に縫い付けられる。ボタボタと人を外れた口から垂れる粘つき黄ばんだ唾液が顔にかかる。

 

「誰の、話をしてやがる!」

『だる、だれ………? だだ、だ……代打だだだ達磨だるを!?』

 

 急速な異形化に加え、強化。生前の未練が強いのだろう。俺の言葉に反応しガタガタ震えだす。

 ()()()()()()()()()()

 

『あぇ………?』

 

 首元に刺さった剣を見てギョロンと困惑したように眼球が動く。

 反撃される前に振り上げ、頭を真っ二つにする。

 

『キャアアアアアア!!?』

「づぁ!?」

 

 腕を振り回し、乱暴に鎌が抜ける。腕が引き千切れるかと思った。

 アンデッドは………両頬を鎌の腹で抑え切られた部分をくっつけようとしてやがる。

 

『俺がががお前をしなしゃんせ、しなせな……不思議ふし、不死ににに………!! いっしょに、あいつと、いっしょににに!!』

「そうかよ………」

 

 『彼岸の園』に入るのは二通りの人間。不死になりたいか……不死にしたい………違うな。死んでほしくない誰かが居るか、居た人間だ。

 

「だったら、こんなガキを使うんじゃねえよ!!」

 

 この時代でも治せぬ病気は確かに存在する。病気というより、正真正銘の【病魔の呪い】だが………。

 少なくともこの【陣地】の主は治せる病気を金とクソ院長の性癖のために長年治されずに居た子供だ。

 そんな子供の命を、人生を利用しておいて自分は誰かと生きたいなどと、寝言も寝ていえ!!

 

『邪魔するなああああ!!』

「っ!? お前が、邪魔だ!!」

 

 完全に頭がくっつかぬまま襲いかかってくるアンデッド。整合性が合わさり始めた言葉。

 ()()()ここで殺さなくてはならない。

 鎌を回避しながら病室に飛び込む。外に繋がる窓は壊せないが、部屋の扉や中庭に続く窓なら壊しやすい。

 

『俺はぁ、彼奴とぉ!!』

 

 入って来たアンデッドに向かい、ベッドを蹴り上げる。

 

『……………ァ』

 

 病室、ベッド………その2つにアンデッドが何を幻視したのかはしらない。でも、予想はできる。

 予想通り固まったアンデッドにベッドの影に隠れ接近し、引き金を引く。

 放たれるエネルギー弾が腹にいくつもの穴を開ける。

 

『ガ、ギャ! グギェ!』

「頼むから、死ねよ」

 

 最大限の殺意を込めて首を斬る。

 頭を斬る。

 胸を斬る。

 腹を斬る。

 斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬る!!

 

「未来のために死ぬような奴が、生きて未来を歩く奴の邪魔するな………」

 

 細かい肉片になったアンデッドにそう吐き捨て、病室を出る。

 別の病室に入り変身を解く。懐から取り出した治癒ナノマシンを体に打ち込む。

 

「げほ、はっ………くそ、ったれ!」

 

 暫くまともに動けない。

 成り立て相手にあれじゃあ、【陣地】を形成する【呪い憑き】を相手にできるのか?

 

「……………鏡華」

 

 懐から鏡を取り出し、その名を呼ぶ。正直頼りたくないというか………頼ったら絶対に不味いことになる相手を呼ぶ。背に腹はかえられない。

 

「ふふ、うふふ………なぁに、隼人?」

 

 鏡を中心に、部屋の空間が塗り潰される。

 誰もいないはずの病室に声が響き、窓ガラスに少女が写る。

 正直コイツについては全然知識が足りない。一応設定上名前は存在していたが、主人公には一切関わらないキャラだからだ。

 唯一わかっているのは『五条家の汚点』と呼ばれる奴等に関わっていること。恐らくは、同胞なのだろうが…………。

 

「私にお願いごと? その巣から逃げたいのかしら?」

「この【陣地】に囚われている一般人を、外に逃がせ」

「…………あら」

 

 窓ガラスにしか………いいや、反射面にしかその姿を確認できない存在。そんな設定すら知らなかった。だから、信用できるか解らない。

 それでも、彼女にとって俺は唯一の話し相手。彼女だって俺の不興を買いたくない………筈。

 少なくともアンデッドよりは信用できる……よな?

 

「あなたって、死にたくないくせに他人を優先しすぎよ? ああ、でも………貴方が助けた相手だけは助けてあげる。それ以外は助けないけど、貴方も外に出してあげるわって、言ったら?」

「!!」

「ふふ、うふふ………迷うよね。そうよね、死にたくないものね?」

 

 甘く甘く、蕩けるような声色で誘惑してくる。

 死にたくないなら逃げても良いのだと笑う。その声が、心にスルリと絡みつき染み込んでいく。

 そりゃそうだ、俺だって死にたくない。

 それでも助けようとした人達が死ぬのは嫌な気分だ。

 だが、出会さなかった人達は………正直俺のせいじゃないという考えが浮かぶ。というか、死んでる可能性のほうが高いのだ。

 

「ねぇ、今なら誰も見てないわ? 見捨てましょう、助かりましょう。その選択が辛いなら慰めてあげる。苦しくて眠れないなら子守唄を歌ってあげる。だから、ね? 逃げましょう? 生きていれば、心の傷だって小さくなるわ」

「……………要求は変わらない」

「…………あらら?」

 

 俺の言葉に態とらしく驚いて見せる鏡華。彼女にとっては、どちらでも良かったのだろう。

 

「それに……………娘が居る。親として、カッコ悪い姿を知られたらそれこそ死にたくなる」

「ああ、あの子………あの子は……あれ、一般人じゃないわよね?」

「……………否定はしない」

 

 つまりマナコをこの世界から逃がす気はないということだろう。俺としても詳細不明の異能をあの子と接触させるのは避けたい。

 

「…………よし」

 

 体は、動く。傷は癒えた。指を喉奥に突っ込んで胃に溜まっていた血を吐き捨てる。

 

「うぇ……えほ………じゃあ、俺は行く。後は任せた」

「うん。任されちゃう………こういう時だけじゃなくて、今度は普通に呼んでね。私は貴方とお話出来るだけで嬉しいんだから」

 

 そう言って鏡の向こうで手を振る鏡華。一応手を振り返し、病室を出る。

 

「変身!」

PLAIN(プレイン)ver2】

 

 変身し、もとより肉体改造で人のサイズでの限界に近い筋骨格の出力を持つ俺の体は更に強化される。その身体能力を持って、薄暗い廊下を走る。

 

 

 

「行っちゃった………」

 

 鏡の少女はその光景を見てポツリと呟く。

 少しだけつまらなそうに。

 

「まあ、良いけどさ………」

 

 彼が死にたくないのは知っている。でも、そのくせ優しいのも知っている。

 だからどっちを選んでも彼への好意は揺らがない。

 彼が自分の命を優先すれば、心に残った傷が彼を死後アンデッドへと変えるだろう。

 彼が他人の命を優先して殺されても、彼はアンデッドに変わるだろう。だって、どっちも選べたのだ。それは強い未練になる。

 

 生き残ったら?

 それはそれでいい。今より成長した彼が見れる。お爺さんになろうと愛する自信がある。

 

「ふふ、うふふ。答えに迷う彼も、可愛いかったなあ………」

 

 何なら今すぐ自分の【陣地】に閉じ込めてしまいたかった。きっと怒るだろう、憎むだろう。その目に自分しか写さなくなるかも? 嗚呼、やっぱり攫えばよかった!

 彼にだって性欲はあるし、何なら怒りのまま乱暴に貪られるのも良い!

 いや、待てよ? 怒りと恥辱に震える彼を押さえつけて犯すのもありだ………。

 

「おっと、いけないいけない………」

 

 淑女らしからぬ顔をしてしまって。慌てて垂れていた涎を拭う。

 そして、クルリと指を回す。はい、これでお終い。

 彼の頼みは無事完了。もうこの【陣地】に一般人はいない。いるのは『彼岸の園』と墓守とアンデッド、序に彼に家族として受け入れられた子供。

 

「さぁて、それじゃあ彼の頑張りを見せてもらおうかな」

 

 何処ぞに彼の全てを知った気になっている阿婆擦れ女が居る。悔しいことに、それはまあ事実だ。

 あの女は自分が知らないことも知っているし、自分が知っていることもすぐに知るだろう。

 だが、それでも………彼を見つけたその日から、彼がその日何をしたか、その時何をしていたか真っ先に知れるのは自分だけの特権。

 

「あ、間違えた………」

 

 彼を見つけた、ではなかった。彼が見つけてくれた、その時からだった。

 

 


 

■■鏡華

 

 『五条家の汚点』とされる集団に関わりがある少女。

ゲームには名前しか登場しない。続編で登場するかな。

 その場合どんな選択肢を選んでも好感度があがる。可愛いね。

 結構な地雷女だが『WoD』の三大核地雷女と呼ばれる四条世看と佐条の姉とある女に比べたらだいぶマシ。

 え、地雷であることには変わらない? そうだね!

 

 

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